【R15】夜空の下で

仙 岳美

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登場人物
 
舟屋 岬(ふなや みさき 二十七歳) 


 声かけた彼女の格好はダーメジ加工がほどこされたデニムに黒いシャツ、その上からアメリカの国旗柄の上着を羽織り、オレンジ色のライフジャケットを付ている感じだった、特に目を引いたのは、割れた卵から飛び出て怒っている様なヒヨコのデザインの革ベルトのバックルで、それが少し面白くも、そしてユーモアのある人に感じ安心もできた。
でも心の安心とは裏腹に、
「あの~ 魚釣りたいんですけど、道具を何を買えば良いのかわからなくて…」
とそこで急に恥ずかしくなり、言葉に詰まってしまった、普通に考えて青年2人して恥ずかしい事である。
と、変な間になった所で、彼女は言ってくれた、
「今から私メバル釣りに行くけど一緒にくる?」
「え、いいんですか」
「全然いいよ、所で予算どのくらい」
「2人で一万五千円なんですが」
「それだと並の竿とリール1人分しか買えないね」と彼女は言った。
「そうですか」
やっぱり今夜中止かなと感じたら、
「でもメバルなら入門用の安い竿でも十分釣れるよ」
と彼女が店内を誘導してくれて、指を差した所には、祭りの出店などでよく目にする、上からプラスチック板にカバーされた景品のおもちゃの様にも見える、リール付きの伸縮竿がぶら下がっていた。下地には釣られているくせしてなぜか笑っている魚のイラストが描かれていた。
張られたシールの表記は3500円……まあまあの値段だと思ったけど、すぐにこんな物かなと思った、それでも僕が少し悩んでいたら彼女が渡り舟を出してくれた、
「私も同じ竿、予備で一本持ってるから貸してあげるよ」
それを聞いた友人が「じゃ俺が買うよ」言ってくれた。
「じゃあ、会計済ませて行こう」と彼女言う、
「餌と針は?」
「私が貸してあげるよ、安いもんだし」
そんな感じに話しが決まった時、カウンター奥から、
「そろそろ閉店だよ」
とやっと店主のお爺さんが出て来てくれた。
僕はラッキーな事に一銭も出さずに釣りを始める事ができた、でもこれで良いのかとも思いつつもやる気を取り戻し、彼女のママチャリの後を友人と付いて行った。
空は変わらずに星空だった。《続》
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