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三角頭巾の彼女とハルジオン
しおりを挟む僕は新しい仕事の面接を受けたその帰り、その帰路路線がたまたま友人が住んでいた場所の最寄り駅を通るので電車を降り、久しぶりに寄ってみる事にした。
アパートとは、まだ存在していてくれた。
ただ、外から見た感じ、最後の住人であった彼女が、何処かに越してしまってから、もう誰も住んでる気配は無く。
その様子は静か眠っている様だった。
アパート前の敷地に建つコンビニも何処か片割れ、その勢いが失われてしまった様に感じた。
僕はアパートの階段を上がり、彼女の部屋のインターホンを無駄とわかっているのに押す。
『ほーい、入りなー』
とは、やはり、あのいつも聞いていた返事は返っては来ない、わかりきっているの事なのにやはり寂しい。
試しにドアノブを回してみると回り、ドアは開いた。『もしや』と、少し期待し中に入って見ると、やはりそこは、もう、閑散とした無の別世界だった。
でも完全な無の世界ではなかった。
それは、何処から吹き込んできたのか?
一輪のハルジオンが押し花の様に茶色い姿で床に落ちていたからだ。
その姿は、長い時間の経過を物語っていた、と共に、僕の再来をただ待ち続け、その使命は、僕に、物語の終わりを示す事だと思えてならなかった……
僕は、彼女が置いたかも知れないそのハルジオンを、一旦は持ち帰ろうと思ったが、自分を納得させ、まだ時たま揺れ荒ぶる心を押し沈める為のその答えとし、あえて地に捨て戻し、アパートを後にした。
「未完」
後日に追記……
そしてその帰り、駅のホームで、彼女が昔に教えてくれた、誰でもできる癒しの方法である、ただ目を瞑り……電車を待っていると、ふと彼女が駅前の蕎麦屋のカツ丼とカツカレーが好きでよく出前を取っていた事を思い出し、ちょうど昼だった事と面接受ける事の緊張からその日は朝飯を抜いて来た事もあり、急に空腹感を感じ、引き返し、その蕎麦に入る……と……
「ほーい、いらっしゃいー」
「!」
僕は、見上げる……と……そこには、白い三角頭巾を被った彼女が舌を出して立っていた……
彼女は、住居二食付きのその蕎麦屋に転職をしていた……
住まいは、そうその蕎麦屋の二階だった……それは奇跡だった、そして僕と彼女の物語は、これを期に、人知れずに続行する事にした……そう末長く永遠に。
後一つ……
僕は彼女に連絡先を変え、それを伝えずに勝手に行方不明になる事は、やめてくださいと正式に強くお願いした……
この人は、冗談がキツいよ……
ほんと生殺しだったよ、マジで。
それに、なにー、あのまぎらわしハルジオンは。
[二部完結]
題材・置き花
それは一輪とて、人はその意味を思い、物語を考えて、しまう物なのかも知れない。
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