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流れてゆく物……
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* * *
彼女の誕生日。
僕は有名な古本屋街の古本屋を訪ねた。
店内は静まり返っていた……。
「すみませーん、先ほど予約した宇津木ですが」と僕が無人のカウンター越しに言うと。
奥から店の店主らしき老人が出て来て。
「おお、宇都木さん、お待ちしておりました」と言い、背の壁一面に広がるガラスのショーケースの鍵を開け、中から僕が買い付けた本である商品を取り出し。
「ご注文の品は、これでよいですかな」
と僕に、両手で包む様に持った桐の小箱を開き、その中身を見せてくれた。
それは青い中敷きにその形がはめ込まれており、薄く透ける白いビロード紙に包まれた小さい金色の本。
『これだ、これに間違いない』と思い。
「はい、これで大丈夫です」
と僕はウェストポーチからその代金を入れた封筒を店主に渡す。
店主は中身を確認し。
領収書とサービスで図書券を二千円分を僕に手渡してくれた。
僕は軽くお辞儀をし、店を後にし、貰った図書券で本代が少し浮いたので、チョットだけお高いカレーでも食べて帰る事にした。
* * *
僕は、星空を見ていた。やがてその星達は流れ、僕が立たずむ草原に降り注いできた。
落ちて来た星は、本に変わっていった。すぐに回りは本だらけになった。
僕は『やったー』と思い、その本を拾い始め、両手に持てるだけ抱えた。
そのうち、少し先に人が居る事に気づいた、その人も本を拾っているように見えたがどうも違うらしい。
本を観てるだけで一向に拾わない。
どうやら、その人は落ちてる本を目視で精査しているようだった。
僕はその人に近寄る。
その人は女性だった。
その人の事は、どこかで見た事ある気がしたけど思いだせない、とりあえず挨拶をする。
「こんばんは」
「こんばんは」
「ここは、本の取り放題ですね」
「そうだね、でも君が今両手に抱えている本は、なんの価値もないよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ、小さい金の本を私は探してるの」
「小さい本?」
「そう、片手の中に収まるくらいの」
「そんな小さい本は読めるんですか?」
「うーん、虫眼鏡があればなんとか読めるかな、だから価値があるの」
「だから」
「そう、ほとんどの本は読めるでしょ、だから読めない本は稀少価値があるの」
僕はその話しを聞いて何か楽しい気分になって、なにかその人の手伝いをしたい気持ちになり。
「なるほど、僕も一緒に探してもいいかな、その小さい本を見つけても僕はいらないからさ」
「いいよ、ただし中々見つからないよ、こないだ私もやっと一冊見つけたんだから」
* * *
目を覚ます……身体が重怠い、少しして思い出した、僕はいつも通り彼女の家に遊びに来て……缶チューハイを飲み寝てしまったようだった。
すぐに足元に光物が視界に入った、それを目にした僕の心臓は凍り付いた……それは、昨晩彼女が自慢していた有名作家の有名な作品を小さく製本した金の豆本だった……そしてその本の横には僕が飲んでいたと思もわれるチューハイの缶が倒れていた、本はその缶から漏れた酒で濡れていた……それもドップリと……
どのくらい僕はその場で唖然としていたのだろうか……
やがてベットで寝ている彼女が目を覚ましてその変わり果てな本を目の当たりにした。
彼女は少し止まり、やがてその本を掴み、2枚ほどテッシュを抜くとその上へ乗せ、台所まで行き、塩をひとふりふりかけると包み、片手を立て一礼し、ゴミ箱に捨ててしまった。
僕は、彼女のその行動に唖然とした。
「え、いいの?」
「いいよ、その本は役目を終えたよ」
「怒らないの」
「怒らないよ、別にわざとしたわけじゃないだろう、君は」
「だけど」
「物より大切な物があるのさ」
と彼女は布団に入り、また寝てしまった……
* * *
ハッとし、目を覚ました僕は、夢の中で訪れた本屋をネットで探してみると、外見がそっくりと一致した本屋があり、その本屋はネット販売もしていた、すぐに昨晩酒浸りにしてしまった本名を検索エンジンにかける。
と、昨晩失った本と同じ本、それも状態は前の本より良く、初版で帯、折り込み広告、化粧箱も揃っている完品だった。
僕は迷わずにその本をポチりとし、発送を待たずして、そのまま取りに向かった……。
* * *
[未完]
* * *
題材・物
物それは、人の手にあっての物である、そしていつかその形は様々な事柄から限界を来たし崩れ去る時が来る、その時、その所有者は、その物を丁重に処分する事が好ましい。
題材・コレクター
その人達は、何が大事なのかを、よくわかっている人達。決して物が原因の空し争い事はおこさない。
彼女の誕生日。
僕は有名な古本屋街の古本屋を訪ねた。
店内は静まり返っていた……。
「すみませーん、先ほど予約した宇津木ですが」と僕が無人のカウンター越しに言うと。
奥から店の店主らしき老人が出て来て。
「おお、宇都木さん、お待ちしておりました」と言い、背の壁一面に広がるガラスのショーケースの鍵を開け、中から僕が買い付けた本である商品を取り出し。
「ご注文の品は、これでよいですかな」
と僕に、両手で包む様に持った桐の小箱を開き、その中身を見せてくれた。
それは青い中敷きにその形がはめ込まれており、薄く透ける白いビロード紙に包まれた小さい金色の本。
『これだ、これに間違いない』と思い。
「はい、これで大丈夫です」
と僕はウェストポーチからその代金を入れた封筒を店主に渡す。
店主は中身を確認し。
領収書とサービスで図書券を二千円分を僕に手渡してくれた。
僕は軽くお辞儀をし、店を後にし、貰った図書券で本代が少し浮いたので、チョットだけお高いカレーでも食べて帰る事にした。
* * *
僕は、星空を見ていた。やがてその星達は流れ、僕が立たずむ草原に降り注いできた。
落ちて来た星は、本に変わっていった。すぐに回りは本だらけになった。
僕は『やったー』と思い、その本を拾い始め、両手に持てるだけ抱えた。
そのうち、少し先に人が居る事に気づいた、その人も本を拾っているように見えたがどうも違うらしい。
本を観てるだけで一向に拾わない。
どうやら、その人は落ちてる本を目視で精査しているようだった。
僕はその人に近寄る。
その人は女性だった。
その人の事は、どこかで見た事ある気がしたけど思いだせない、とりあえず挨拶をする。
「こんばんは」
「こんばんは」
「ここは、本の取り放題ですね」
「そうだね、でも君が今両手に抱えている本は、なんの価値もないよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ、小さい金の本を私は探してるの」
「小さい本?」
「そう、片手の中に収まるくらいの」
「そんな小さい本は読めるんですか?」
「うーん、虫眼鏡があればなんとか読めるかな、だから価値があるの」
「だから」
「そう、ほとんどの本は読めるでしょ、だから読めない本は稀少価値があるの」
僕はその話しを聞いて何か楽しい気分になって、なにかその人の手伝いをしたい気持ちになり。
「なるほど、僕も一緒に探してもいいかな、その小さい本を見つけても僕はいらないからさ」
「いいよ、ただし中々見つからないよ、こないだ私もやっと一冊見つけたんだから」
* * *
目を覚ます……身体が重怠い、少しして思い出した、僕はいつも通り彼女の家に遊びに来て……缶チューハイを飲み寝てしまったようだった。
すぐに足元に光物が視界に入った、それを目にした僕の心臓は凍り付いた……それは、昨晩彼女が自慢していた有名作家の有名な作品を小さく製本した金の豆本だった……そしてその本の横には僕が飲んでいたと思もわれるチューハイの缶が倒れていた、本はその缶から漏れた酒で濡れていた……それもドップリと……
どのくらい僕はその場で唖然としていたのだろうか……
やがてベットで寝ている彼女が目を覚ましてその変わり果てな本を目の当たりにした。
彼女は少し止まり、やがてその本を掴み、2枚ほどテッシュを抜くとその上へ乗せ、台所まで行き、塩をひとふりふりかけると包み、片手を立て一礼し、ゴミ箱に捨ててしまった。
僕は、彼女のその行動に唖然とした。
「え、いいの?」
「いいよ、その本は役目を終えたよ」
「怒らないの」
「怒らないよ、別にわざとしたわけじゃないだろう、君は」
「だけど」
「物より大切な物があるのさ」
と彼女は布団に入り、また寝てしまった……
* * *
ハッとし、目を覚ました僕は、夢の中で訪れた本屋をネットで探してみると、外見がそっくりと一致した本屋があり、その本屋はネット販売もしていた、すぐに昨晩酒浸りにしてしまった本名を検索エンジンにかける。
と、昨晩失った本と同じ本、それも状態は前の本より良く、初版で帯、折り込み広告、化粧箱も揃っている完品だった。
僕は迷わずにその本をポチりとし、発送を待たずして、そのまま取りに向かった……。
* * *
[未完]
* * *
題材・物
物それは、人の手にあっての物である、そしていつかその形は様々な事柄から限界を来たし崩れ去る時が来る、その時、その所有者は、その物を丁重に処分する事が好ましい。
題材・コレクター
その人達は、何が大事なのかを、よくわかっている人達。決して物が原因の空し争い事はおこさない。
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