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回天……
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前作[境駅……]の続きです。
やがて岸が見えて来た、
その岸から見た町は、
所々まだらに赤かった……
要するに火事である。
それを見た彼女は言った。
「これは結構おお事かもしれないね」
『おお事』その言葉で僕は、
ふと思い出した、津波……
怖くなり、彼女に聞いた。
「ねえ、津波大丈夫かな」
その問いに彼女は、
「それはラジオで心配は無いと言ってたから大丈夫だよ」
船頭さんも首を縦に振った。
『えっそうだった』と思ったけど確かに津波が来ると知っててプロの船頭さんが舟を出すわけない、僕は自分のマヌケさに呆れながらもホットし、すぐにまた助兵衛(スケベ)な事を頭の中に思い描いた。
が、その対象である彼女は、
「しばらく岸に居よう」
と残念な事を言い出した。
「え、なんで」
「私の住んでる所は、川に挟まれた中洲なんだよね、ある意味袋のネズミなんだ、火事は馬鹿にはできないんだ」
彼女がそう言うので、岸に座り船頭さんがくれたキャラメル味のスナック菓子を彼女と摘みながら火事を見ていた、何故か……遠目に見る火は僕を安心させた……そして、
「今夜が峠かな、此処に朝迄いる事になるかなー」と彼女は呟いた。
「えっ!」
僕にとっての今現在の朝迄とは、イコォール、アレを『また今度』(早くて来週)と遠回しに言われた事と同じだった、残念に思った時《ゴッゴ》と雷が鳴り、ポツポツと雨が降り出し、その雨はドシャブリに変わって行った。
それを見た彼女は、
「これは天が味方したね、もうすぐ家に帰れるよ、君は公明か信長なのかい」
「確かに大事な日には、よく雨には降られるけど」
(今回は皆んなにも僕にも嬉しい雨だった、それは遂に運が回天してくれた様に思えた)
「なるほど、コレは天意だね、私も従うとしよう」
『従う……』
何かその言葉を聞いた時に僕はゾクリとした……。
そして火はみるみる消えてゆき、けたたましく鳴り響いていたサイレンもしなくなり、岸はシーンと最初から何事もなかった様に静まり帰り、辺りは静寂に包まれていった。気づいたら船頭さんは、いつの間にか舟を出しており、その姿は岸から離れた所に見え、僕の方を振り向き、《君に良い旅路をーー》と声をかけ、ながら手を振ってくれた。
彼女もいつの間にか僕の真横に立っていた、そして僕の手を取り、
「悪夢は終わったね、行こうか」
その手は日向の温もりの様に暖かく感じた、その時、僕と彼女の身体は空に向けてブッワッと浮き上がり、彼女とは両手を繋ぐ体勢で向き合いながら、砂浜は遠くなってゆき、やがて陸も、見えていた舟も雲に隠れて見えなくなって行った……
……
…
……そして僕は目を覚ました、隣のベットには彼女が寝ていた、彼女も今、目覚めた所の様だった。[完]
題材
[回天]
絶望的な現状が突如として良い方に変わる事。
[今夜が峠、又は(山)]
病や大怪我などで寝込む人が、その夜が過ぎれば回復すると言う意味、ただ悪い意味でも使われる、それは朝迄命が持たないと言う事である。陰陽の両面合わせ持つ言葉。
やがて岸が見えて来た、
その岸から見た町は、
所々まだらに赤かった……
要するに火事である。
それを見た彼女は言った。
「これは結構おお事かもしれないね」
『おお事』その言葉で僕は、
ふと思い出した、津波……
怖くなり、彼女に聞いた。
「ねえ、津波大丈夫かな」
その問いに彼女は、
「それはラジオで心配は無いと言ってたから大丈夫だよ」
船頭さんも首を縦に振った。
『えっそうだった』と思ったけど確かに津波が来ると知っててプロの船頭さんが舟を出すわけない、僕は自分のマヌケさに呆れながらもホットし、すぐにまた助兵衛(スケベ)な事を頭の中に思い描いた。
が、その対象である彼女は、
「しばらく岸に居よう」
と残念な事を言い出した。
「え、なんで」
「私の住んでる所は、川に挟まれた中洲なんだよね、ある意味袋のネズミなんだ、火事は馬鹿にはできないんだ」
彼女がそう言うので、岸に座り船頭さんがくれたキャラメル味のスナック菓子を彼女と摘みながら火事を見ていた、何故か……遠目に見る火は僕を安心させた……そして、
「今夜が峠かな、此処に朝迄いる事になるかなー」と彼女は呟いた。
「えっ!」
僕にとっての今現在の朝迄とは、イコォール、アレを『また今度』(早くて来週)と遠回しに言われた事と同じだった、残念に思った時《ゴッゴ》と雷が鳴り、ポツポツと雨が降り出し、その雨はドシャブリに変わって行った。
それを見た彼女は、
「これは天が味方したね、もうすぐ家に帰れるよ、君は公明か信長なのかい」
「確かに大事な日には、よく雨には降られるけど」
(今回は皆んなにも僕にも嬉しい雨だった、それは遂に運が回天してくれた様に思えた)
「なるほど、コレは天意だね、私も従うとしよう」
『従う……』
何かその言葉を聞いた時に僕はゾクリとした……。
そして火はみるみる消えてゆき、けたたましく鳴り響いていたサイレンもしなくなり、岸はシーンと最初から何事もなかった様に静まり帰り、辺りは静寂に包まれていった。気づいたら船頭さんは、いつの間にか舟を出しており、その姿は岸から離れた所に見え、僕の方を振り向き、《君に良い旅路をーー》と声をかけ、ながら手を振ってくれた。
彼女もいつの間にか僕の真横に立っていた、そして僕の手を取り、
「悪夢は終わったね、行こうか」
その手は日向の温もりの様に暖かく感じた、その時、僕と彼女の身体は空に向けてブッワッと浮き上がり、彼女とは両手を繋ぐ体勢で向き合いながら、砂浜は遠くなってゆき、やがて陸も、見えていた舟も雲に隠れて見えなくなって行った……
……
…
……そして僕は目を覚ました、隣のベットには彼女が寝ていた、彼女も今、目覚めた所の様だった。[完]
題材
[回天]
絶望的な現状が突如として良い方に変わる事。
[今夜が峠、又は(山)]
病や大怪我などで寝込む人が、その夜が過ぎれば回復すると言う意味、ただ悪い意味でも使われる、それは朝迄命が持たないと言う事である。陰陽の両面合わせ持つ言葉。
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