尊き君と永遠に

仙 岳美

文字の大きさ
上 下
1 / 28

電彦

しおりを挟む
登場人物
 語り・宇都木 誠治 男性25歳

 友人・       女性25歳

🚃
 ある晴れた
   土曜日の午後、
     僕は電車に乗っていた。

 乗客の姿はまばらで、座席には余裕で座れたが、あえて僕は座らずに、縦に長い乗車ドア窓前に立ち、そこから陽に照らされ黄金色に輝き、表面がサラサラと波の様に揺れている広大な流れる稲葉畑の景色を、僕はただ時に長される様な心持ちにあえてし、見ていた……その事には、ちゃんとした理由がある……それは……僕は前日にSNS上であるイザコザに巻き込まれて憔悴し、その気分を切り替えたく、久しぶりに、古い友人を訪ねる事にしたからだ。
のどかな景色を眺めるのは、気持ちをある程度落ち着かせ、その友人と会う前の心整理と言うか準備であると思ってくれれば良い。(いきなり憔悴混乱し過ぎた状態では悪いと思うしさ)
 ついでにその友人の事も軽く紹介しとくと……僕とは高校の時の同級生で、席が僕の前だったと言う良くある経緯で軽い会話から意気投合し、入学早々二人で異世界歴史研究部と言う活動内容がわかりづらいヘンテコな部を作り活動していた友人である。(最初は部活として承認される最低人数である三人いたが、すぐにひとりは方向性が曖昧な事に嫌気が差したのか辞めてしまった事から半年で廃部、後は二人でめげずに前向きにしぶとく卒業迄非公認で見事継続と、言いたいところではあるが、そもそもその部活の主な活動内容は、幸いにも二人のただの思いつきの行き当たりばったり的な、友人宅での雑談に落ち着いたので、なので……経費はかからないと言うかいらなかった……)

 やがて電車は名も知らない大河に架かった橋を通過し、短いトンネルに入り、程なくし杭留町くいとめちょうと言われる町の三川みかわと言う名の駅に到着した。

 駅を出てて小さいバスロータリーを抜けると、生活用水路の壁に突き当たる、その水路の壁に沿って右にジャリ道を少し歩くと友人の住むアパートは右側に見えて来る。
そのアパート前の敷地は、以前は空き地だったけど広い駐車場を備えたコンビニへと変わっていた。その事に時の流れを感じ昨日事前電話がズーッと話し中で繋がらなかった事もあり、少し嫌な予感が走り、小走りでコンビニの前を素通りしアパートの前に行き、友人が住む二階の方を見上げると、ドアの脇に木は枯れてはいるが見覚えのある鉢が置いてあった……微妙である……。
それに加え、久しぶりに見たアパートは修繕されており、外壁のくすみやヒビは消え、白く綺麗に塗り替えられ、錆び錆びで危な化だった階段もしっかりと直されていた。
 普通に考えて良い事だ……でも僕は以前に見たどこか味わいのある古ボロアパートを少し期待していた事もあり、残念にも思えた、そしてその新生スッキリとしたアパートの変わり様に友人はまだ代わらずに住んでるのだろうかと、更に不安な気持ちが積もったが、その不安はすぐに払拭された、なぜなら、階段横の集合ポストの表札名は、漢字からローマ字に変わるも代わらずに友人の名字だったからだ。(最初は越してしまったのかとギョッとした)
 階段を上がり一番奥の友人の部屋のインターホーン押すとすぐに、
「ほーい、あけなー」と懐かしいどこか抜けた友人の声が聞こえ、ホッとし、ドアを開けると、友人である彼女は相変わらずに本棚に囲まれたベットの上にあぐらをかき、弁当を食べていた。
彼女は僕を見るなり、目を丸くし
「お~、お前か久しぶり~、まあ入りなされ」
そう招き入れてくれた彼女はすぐに箸を口に咥え、その空いた手を背に回し、ゴソゴソとクッションを取り僕の方にほうり、誰かの真似なのか、少し変な口調で。
「食事中で、すまんのう~」
「あ、お構いなく」
「所で今日はどうしたの?」
「別に、特には、何か顔を見たくなってさ」
彼女はそう聞くとニッコリし、
「そう、冷蔵庫にコーラーあるから飲んでいいよ」
と言ってくれた。
僕が冷蔵庫を開けると、
「グラス、私のもー」
「うん」
僕は食器棚から適当に取ったグラスをレンジの上の盆に置き、コーラを注ぎそれを持って、彼女の前にあぐらをかき座った。
彼女は僕を見るなり、
「君、何か疲れてるね、どうしたの」
僕はSNSでの経緯を話した……。
「ふむふむ、あー それは、大変だったね」
と彼女は眉間に皺を寄せ、
  語り口調で喋りだした。

「素直に受け入れる事ができない魅力を感じる人間がいたらその者は質の悪い守護霊や妖怪類、この手の怪しい物が憑いている可能性がある、その人間に現実で深く関わっていけない事はおろか、SNS上でもあまり関わらない方が良い、何故なら彼らは言葉で倒せるほど柔ではないからだ、また言葉で人を倒せると思ってる者は、即ち言葉で殺される資質も同時に持っている事になる、彼らが得意とするのは、言葉尻を掴んだ反撃だ、最初から勝ち目なんぞは、存在しえない、狩られるだけである」

「なるほど、でも僕は言葉で人を殺そうと迄は、思わないよ、少し意見を言った迄だよ」

「確かに私もそう思うよ、例えだよ、そもそも君みたいな精神が病んでる子はSNSの住人との付き合いは、程々にした方が良いと言ってるんだ、君にとって何が得なのかを考えてみたまえ、相手を言い負かすより、現実の得を取るのが勝ちさ、話したい事があったら私が聞くから」
《グー》
そこで彼女の弁当の匂いに胃腸が刺激されたのか僕のお腹が鳴ってしまい、会話は切れ、彼女はコーラを一気に飲み干すと、スカシゲプをし枕元の充電中のスマホ取り、
「ピザとるよ、私はミックスにするから君はチキンテリマヨにしたまえ」
とサッサと注文してしまった。
(え、まだ食べるの)と思いつつも何か彼女にも降りてる気がした……そう彼女も……。

[天邪鬼]に続く。

題材
[山彦]
 山頂で昔からヤッホーと、良く意味はわからないけど不思議と皆んな疑問に思わずな言葉を吐くと、斜面などに反響して遅れてその言葉が返ってくる、この仕組みを知らない昔の人は、声を真似する妖怪の仕業と考えていた。
どうも作者は最近、SNS上の会話は山彦の様な、ただの反響音の様に思える……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パラサイト/ブランク

羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。

逆数え

うろこ道
ホラー
友達が神隠しに遭った。禁呪を犯してしまう少年を襲う、戦慄の結末。 ※表紙画像は「Adobe Stock(https://stock.adobe.com/jp/)」様の素材を使っております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

夜葬の村

中岡 始
ホラー
山奥にひっそりと存在する「夜葬の村」。 この村では、死者を普通の墓に埋葬せず、「夜葬」と呼ばれる奇妙な儀式が行われているという。 新聞記者・相沢直人は、その噂の真相を確かめるため、村へ足を踏み入れる。そこでは、村人たちが外部の人間を極端に警戒し、夜ごとに不気味な儀式を執り行っていた。そして村の墓地には、墓石の代わりに木の板が立ち並び、そこには「夜葬された者たち」の名前が刻まれていた。 取材を進めるうちに、村に関わった者たちが次々と奇妙な現象に巻き込まれていく。 山道で道に迷った登山者が見つけたのは、土の中から覗く自分自身の手。 失踪した婚約者を探す女性が辿り着いたのは、彼の名が刻まれた木の墓標。 心霊YouTuberが撮影した白装束の少女は、カメラからも記憶からも完全に消え去る。 村の医者が往診に訪れると、死んだはずの男が「埋めるな」と呟く。 ──そしてある日、村は突如として消失する。 再び村を訪れた相沢直人が見たものは、もぬけの殻となった集落と、増え続けた木の板。 そこに刻まれた名前の最後にあったのは、「相沢直人」。 なぜ、自分の名前がここにあるのか? 夜葬された者たちは、どこへ消えたのか? 本当に滅びたのは、村なのか、それとも── この村では、「死んだ者」は終わらない。 そして、夜葬は今も続いている……。

最終死発電車

真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。 直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。 外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。 生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。 「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!

処理中です...