尊き君と永遠に

仙 岳美

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電彦

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登場人物
 語り・宇都木 誠治 男性25歳

 友人・       女性25歳

🚃
 ある晴れた
   土曜日の午後、
     僕は電車に乗っていた。

 乗客の姿はまばらで、座席には余裕で座れたが、あえて僕は座らずに、縦に長い乗車ドア窓前に立ち、そこから陽に照らされ黄金色に輝き、表面がサラサラと波の様に揺れている広大な流れる稲葉畑の景色を、僕はただ時に長される様な心持ちにあえてし、見ていた……その事には、ちゃんとした理由がある……それは……僕は前日にSNS上であるイザコザに巻き込まれて憔悴し、その気分を切り替えたく、久しぶりに、古い友人を訪ねる事にしたからだ。
のどかな景色を眺めるのは、気持ちをある程度落ち着かせ、その友人と会う前の心整理と言うか準備であると思ってくれれば良い。(いきなり憔悴混乱し過ぎた状態では悪いと思うしさ)
 ついでにその友人の事も軽く紹介しとくと……僕とは高校の時の同級生で、席が僕の前だったと言う良くある経緯で軽い会話から意気投合し、入学早々二人で異世界歴史研究部と言う活動内容がわかりづらいヘンテコな部を作り活動していた友人である。(最初は部活として承認される最低人数である三人いたが、すぐにひとりは方向性が曖昧な事に嫌気が差したのか辞めてしまった事から半年で廃部、後は二人でめげずに前向きにしぶとく卒業迄非公認で見事継続と、言いたいところではあるが、そもそもその部活の主な活動内容は、幸いにも二人のただの思いつきの行き当たりばったり的な、友人宅での雑談に落ち着いたので、なので……経費はかからないと言うかいらなかった……)

 やがて電車は名も知らない大河に架かった橋を通過し、短いトンネルに入り、程なくし杭留町くいとめちょうと言われる町の三川みかわと言う名の駅に到着した。

 駅を出てて小さいバスロータリーを抜けると、生活用水路の壁に突き当たる、その水路の壁に沿って右にジャリ道を少し歩くと友人の住むアパートは右側に見えて来る。
そのアパート前の敷地は、以前は空き地だったけど広い駐車場を備えたコンビニへと変わっていた。その事に時の流れを感じ昨日事前電話がズーッと話し中で繋がらなかった事もあり、少し嫌な予感が走り、小走りでコンビニの前を素通りしアパートの前に行き、友人が住む二階の方を見上げると、ドアの脇に木は枯れてはいるが見覚えのある鉢が置いてあった……微妙である……。
それに加え、久しぶりに見たアパートは修繕されており、外壁のくすみやヒビは消え、白く綺麗に塗り替えられ、錆び錆びで危な化だった階段もしっかりと直されていた。
 普通に考えて良い事だ……でも僕は以前に見たどこか味わいのある古ボロアパートを少し期待していた事もあり、残念にも思えた、そしてその新生スッキリとしたアパートの変わり様に友人はまだ代わらずに住んでるのだろうかと、更に不安な気持ちが積もったが、その不安はすぐに払拭された、なぜなら、階段横の集合ポストの表札名は、漢字からローマ字に変わるも代わらずに友人の名字だったからだ。(最初は越してしまったのかとギョッとした)
 階段を上がり一番奥の友人の部屋のインターホーン押すとすぐに、
「ほーい、あけなー」と懐かしいどこか抜けた友人の声が聞こえ、ホッとし、ドアを開けると、友人である彼女は相変わらずに本棚に囲まれたベットの上にあぐらをかき、弁当を食べていた。
彼女は僕を見るなり、目を丸くし
「お~、お前か久しぶり~、まあ入りなされ」
そう招き入れてくれた彼女はすぐに箸を口に咥え、その空いた手を背に回し、ゴソゴソとクッションを取り僕の方にほうり、誰かの真似なのか、少し変な口調で。
「食事中で、すまんのう~」
「あ、お構いなく」
「所で今日はどうしたの?」
「別に、特には、何か顔を見たくなってさ」
彼女はそう聞くとニッコリし、
「そう、冷蔵庫にコーラーあるから飲んでいいよ」
と言ってくれた。
僕が冷蔵庫を開けると、
「グラス、私のもー」
「うん」
僕は食器棚から適当に取ったグラスをレンジの上の盆に置き、コーラを注ぎそれを持って、彼女の前にあぐらをかき座った。
彼女は僕を見るなり、
「君、何か疲れてるね、どうしたの」
僕はSNSでの経緯を話した……。
「ふむふむ、あー それは、大変だったね」
と彼女は眉間に皺を寄せ、
  語り口調で喋りだした。

「素直に受け入れる事ができない魅力を感じる人間がいたらその者は質の悪い守護霊や妖怪類、この手の怪しい物が憑いている可能性がある、その人間に現実で深く関わっていけない事はおろか、SNS上でもあまり関わらない方が良い、何故なら彼らは言葉で倒せるほど柔ではないからだ、また言葉で人を倒せると思ってる者は、即ち言葉で殺される資質も同時に持っている事になる、彼らが得意とするのは、言葉尻を掴んだ反撃だ、最初から勝ち目なんぞは、存在しえない、狩られるだけである」

「なるほど、でも僕は言葉で人を殺そうと迄は、思わないよ、少し意見を言った迄だよ」

「確かに私もそう思うよ、例えだよ、そもそも君みたいな精神が病んでる子はSNSの住人との付き合いは、程々にした方が良いと言ってるんだ、君にとって何が得なのかを考えてみたまえ、相手を言い負かすより、現実の得を取るのが勝ちさ、話したい事があったら私が聞くから」
《グー》
そこで彼女の弁当の匂いに胃腸が刺激されたのか僕のお腹が鳴ってしまい、会話は切れ、彼女はコーラを一気に飲み干すと、スカシゲプをし枕元の充電中のスマホ取り、
「ピザとるよ、私はミックスにするから君はチキンテリマヨにしたまえ」
とサッサと注文してしまった。
(え、まだ食べるの)と思いつつも何か彼女にも降りてる気がした……そう彼女も……。

[天邪鬼]に続く。

題材
[山彦]
 山頂で昔からヤッホーと、良く意味はわからないけど不思議と皆んな疑問に思わずな言葉を吐くと、斜面などに反響して遅れてその言葉が返ってくる、この仕組みを知らない昔の人は、声を真似する妖怪の仕業と考えていた。
どうも作者は最近、SNS上の会話は山彦の様な、ただの反響音の様に思える……。
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