短編集・2巻

仙 岳美

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伝説の占い相談所

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登場人物

セント王
 最近公務多忙で、少しお疲れ気味

 武器[ダークマッドネスキングバスタードソード]
 技 [最終決戦奥義・逆鱗黒龍大車輪切り]
 

ブルー・スカイザー・イカレッテル
 身分、王都特命騎士

 武器[ナイトロングソード]
   [凡庸ショートソード]
 技 [家伝・必勝X切り]



「むむむ……」

少し気が病んでいる王は、目の前にひれ伏す騎士の前に古書を投げると命を下した。
「どこぞやに、根拠の無い事柄を吐き散らし、太古に国民を大いに惑わし拐かし反乱へと先導した占い師の末裔が潜んでおるという、その禍の火種に成り得る者を捕らえよ」

「はっ!……もし抵抗しましたら」

王様は、クワっと目を見開き。
「その場で、速やかに……殺せ!」

「はっはー」『王様最近怖ええだよな』

* * *

数ヶ月後……
 王の特命を受けたイカレッテルは廃都、荒野、あらゆる所を彷徨い歩き、苦労の末、遂に森の奥に伝説の占い相談所を見つけた。
伝記古書に描かれた挿絵と目の前の簡素な石壁の建物とを見比べる……
『此処で間違いない』

 外からの声がけに応答は無く、室内戦に備え、取り回しの効くショーソードの方を抜き、戸を蹴り開け、中に押し入ると、すぐに祭壇があり、その上には、椅子に腰掛ける人影があった。
「もし……」
返答は、無かった……
気配もほぼ感じ無い……
その事に、
『気配を消せるのか?』
『それとも囮の人形か』かとイカレッテルは、勘ぐると一瞬焦り、体勢を低くし、不意な遠距離攻撃に備え、柄を両手に持ち変え、ドッシリとした受身の体勢を取る……が……シーン……何も起き無い……背の戸も開いたまま……
 見ると足元には、何かの飲料水の空瓶と瑠璃のグラス、それに拳大の丸い紫水晶が転がっていた……
その事から占い師は、もう亡くなっている事に気づいた……
イカレッテルは王の命を完結させる為、その玉座の様な椅子に座る占い師に近づきその顔を確認するとミイラとなっていた……。
その姿は、時が経過するにつれ、自力で時を戻せなくなってしまった者の最終形態の様に思えた……
正しくそれは、伝説の光景だった……

 それから家宅捜索を終え、外に出て、ふと、完璧主義者でシツコイ、イカレッテルは、『念の為』と思い、建物の裏に回ると、井戸を覗き込む体勢のままの白骨遺体を見つけ、『最後迄世話をしていた親か妻か誰だろうか……当の占い師は水晶を見て何の未来を見、夢を見ていたのか……』
ただそう思い、ようやくもう此処に留まる事は、無用と思い立ち去ろうと振り返ると、目の前にあの建物の中にいたミイラが短刀を手にし立っていた!
「うおー、シルバーチャリオッツ!」
イカレッテルは、慌てて腰の剣を抜きながら斜め後ろに引き跳ねる!

ドーン!

イカレッテルの渾身の引き打ちを浴びたミイラは短刀を持つ腕諸共そのまま脇腹から首元へ、二つに袈裟切れ、その上半身は茂みに吹き飛び、残る下半身は片足を半歩出すと、そのままその場に倒れる……

『死体に魔が差したか』

そう思いながら、剣を鞘に戻し、ベルトの皮ポーチから取り出した鼈甲櫛で崩れたリーゼントを整えていると、キラッと木漏れ日が瞳を差し、見上げると一羽の閑古鳥が枝に溜り、鳴いた……

《カッコーアッホーアホカコー》

「……『そもそも自分自身の問題を解決できない者に他の者の問題など解決できようか……王様は何を恐れらておられるのか……』」

イカレッテルは、そう滑稽に思うと肩の荷が降りた気がし、急に空腹感を感じ、薄笑いを浮かべ、「怪し小賢し怪鳥……そして肴」と呟き、転がる短刀を拾い、その長年周囲に天敵が、いなかったせいなのか肥え、緊張感ゼロで軽快に鳴く、閑古鳥に投げ付ける。

《ヤッホーカッコー『サック「』カッ!」ケッケケケー》

《バッブプッシュュュー》
と血を吹き撒き散らしながら地に落ちた閑古鳥をイカレッテルは拾い上げ〆切り、両脚を木のツルで縛り、腰にぶら下げると手前の草を一本毟り採り、それを咥え、喉を湿らし。



人馬鹿し
  鳥捕えれば
    その鳴きも
      味になりけり
 
そう歌い終えると、イカレッテルは腰の、食材に変わり果てた閑古鳥をチラッ見し、ニコリと笑みを浮かべると、その場を後にした……。

[完]


題材・相談所
 それは、場違いの場所に建てれば、即ちただの無能を証明しているだけである。
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