短編集・2巻

仙 岳美

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小さい星人

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夜、仕事帰り山を登る。
山と言っても大きい公園の中の小さい丘。
団地くらいの高さしかない。
その頂上で時間閉店間際に駆け込んだスーパーで買った見切り品のソーセージパンを頬張りながら缶コーヒー開け、夜空を見上げ、その星のパノラマと自分を比較し、ありきたりの表現だけど、自分を小さく感じ落ち着く。
そう、私は辺境の丸い小さい星で平和にひっそりと暮らし、パンを頬張る小さい星人。

 それから数十分経ち、もう少しそこに居たい気分なので何かやる事を考え、『そうだ』と思い、腰にぶら下げたホルダーから支給品の黄色いカッターナイフを抜き取る。
そのカッターは数多の人に使われ、傷だらけなその姿が何か愛しい。
そのカッターには最初の持ち主さんの名前と思われる〇〇と名前がマジックで書かれていた。
〇〇さん、どんな人なんだろう……
そんな事を考えながら、そのカッターの普段の労をねぎらおうと刃の留めネジを緩め、刃を抜き取り、ブレードレーンの隙間に沢山詰まり溜まったシールカスを爪で穿ほじり出し、全て取り除いてあげる。
そんな簡単なクリーンアップが終わると何かそのカッターが喜んでる様に勝手に思い、良い気分になり、丘を下り家路へと私は戻る。
書かれた名前は薬品などで落とせない事はなくもないけど、何か懐かしいファミコンのカセットチックで面白く感じ、業務中に見てもクッスとしてしまい、なにやら癒されるので、あえてそのままとした。

[終]
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