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白鬚先生
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白髭先生
語り・仙岳美
私は小学生の頃、集団登校が嫌いだった、理由はお腹が弱いから、おまけにその登校中いつも何かしらのゴミが浮いている臭いドブ川の石橋を渡らなければいけない、そのドブのツーンとする悪臭を嗅ぐと何やらお腹も痛くなってくる、憂鬱な月曜日は合わせて気分も滅って来る、そんなある日の事その黒い川に似つかわしくない白い鯉を見た。
その白い鯉の姿は、子供にとっては登校という強制的な行動を通じて毎日見させられる嫌なドブ川の光景にパッとした光りを差してくれた様に思えた。
その鯉を始めて見た日の私は授業中ズーその鯉の事を考えていた、学校が終わると走ってその鯉を見に行った、橋の上からはその鯉の姿は見えなかった、ところが私が根の強い雑草を掴みながら、滑る様に土手を降り橋下駄の岸に立つと、その白い鯉は何処からか現れ、私の足元に寄って来てくれた。
私は餌をその鯉に与えたくなり「少しまっててね」と呟き、学校前にある駄菓子屋で丸くて薄いエビ煎を一袋買い、川に戻った、鯉は待っていてくれたのか、まだその場に居てくれた、私はエビ煎を割り一欠片その鯉の手前に投げたらパックリと食べてくれた、その時私は何か初めて優越感と言う物を感じた、それまで私の遊び相手は昆虫やカエル・トカゲなどの飼っていないと意思疎通はできない生き物だけだったけど、初めて新たな視野が広がり何かに認められた気分になった、その感情は今で言う所の承認欲求で得られる感情に近い物だったのかも知れない。
それから私は下校中に一枚その鯉にエビ煎を与えていた、その一袋二十円のエビ煎は子供の手の平くらいの大きさの煎餅が五枚入っていた。
もっと沢山あげたかったけど、その時の私の小遣いではそれが限界だった。
そんな朝夕の楽しみを見つけた私は憂鬱だった朝の通学も楽しみになり、お腹の調子も良くなった、が、夏の始まる頃に台風が訪れ、そのどぶ川は溢れて荒れ、その鯉も何処かに流れていってしまったのか居なくなってしまった。
その後の私は悲壮感を紛らわす様に不貞腐れながら飽きた蝉取りを繰り返していた……
時折り鯉が戻って来る様に神社に祈ったりもした……りした、やがてどうにもできない物事の終わりを感じ取り、子供なりに諦める為の心のコントロールも学んだ。[終]
語り・仙岳美
私は小学生の頃、集団登校が嫌いだった、理由はお腹が弱いから、おまけにその登校中いつも何かしらのゴミが浮いている臭いドブ川の石橋を渡らなければいけない、そのドブのツーンとする悪臭を嗅ぐと何やらお腹も痛くなってくる、憂鬱な月曜日は合わせて気分も滅って来る、そんなある日の事その黒い川に似つかわしくない白い鯉を見た。
その白い鯉の姿は、子供にとっては登校という強制的な行動を通じて毎日見させられる嫌なドブ川の光景にパッとした光りを差してくれた様に思えた。
その鯉を始めて見た日の私は授業中ズーその鯉の事を考えていた、学校が終わると走ってその鯉を見に行った、橋の上からはその鯉の姿は見えなかった、ところが私が根の強い雑草を掴みながら、滑る様に土手を降り橋下駄の岸に立つと、その白い鯉は何処からか現れ、私の足元に寄って来てくれた。
私は餌をその鯉に与えたくなり「少しまっててね」と呟き、学校前にある駄菓子屋で丸くて薄いエビ煎を一袋買い、川に戻った、鯉は待っていてくれたのか、まだその場に居てくれた、私はエビ煎を割り一欠片その鯉の手前に投げたらパックリと食べてくれた、その時私は何か初めて優越感と言う物を感じた、それまで私の遊び相手は昆虫やカエル・トカゲなどの飼っていないと意思疎通はできない生き物だけだったけど、初めて新たな視野が広がり何かに認められた気分になった、その感情は今で言う所の承認欲求で得られる感情に近い物だったのかも知れない。
それから私は下校中に一枚その鯉にエビ煎を与えていた、その一袋二十円のエビ煎は子供の手の平くらいの大きさの煎餅が五枚入っていた。
もっと沢山あげたかったけど、その時の私の小遣いではそれが限界だった。
そんな朝夕の楽しみを見つけた私は憂鬱だった朝の通学も楽しみになり、お腹の調子も良くなった、が、夏の始まる頃に台風が訪れ、そのどぶ川は溢れて荒れ、その鯉も何処かに流れていってしまったのか居なくなってしまった。
その後の私は悲壮感を紛らわす様に不貞腐れながら飽きた蝉取りを繰り返していた……
時折り鯉が戻って来る様に神社に祈ったりもした……りした、やがてどうにもできない物事の終わりを感じ取り、子供なりに諦める為の心のコントロールも学んだ。[終]
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