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第一章

ハレイユ

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夜のうちに拠点にしている森を出て、大体半日程歩いた。
途中で猪の魔物が突撃してきたのでしっかりキャッチしてリリースしておいた。
それと思ったよりもパワーがあって困惑している。
猪をキャッチして右にずらしたはずが猪は星になってしまった。
あまり強すぎると怪しまれるし、なによりチート俺TUEEEがしたいわけじゃない。
俺がしたいのは人との交流だ。

そして、林から抜けると街が見えてきた。
廃墟となったあの町とは段違いの大きさをしている。
そして何よりも興味をそそるのは迷宮だ。
迷宮には魔物が生息しているが、それと同時に宝物もそんざいしていて見つけることができれば一躍億万長者になれるという話もある。
それに迷宮最深部に存在しているキングと呼ばれる存在。

これから巻き起こる迷宮ファンタジーにワクワクしながら入り口に並ぶ。
久しく聞いていなかったまともな人の声に感動して泣きそうになる。
というか泣けるものなら泣いていただろう。

遂に自分の番がやって来た。
町で拾ってきた木の板に伝えたいことを書き込んでいく。

【すまない。私はこの言葉を聞き取ることも喋ることもできないんだ。筆談でいいか?】

そう伝えると門番は裏の詰め所に連れていってくれた。
詰め所の衛兵がノートのようなものに書いて聞く。

【どこからきた誰なのかと許可証を提示してくれ】

【許可証?あまりこちらのことには疎くてな、最近来たんだ】

【まあそうだろうな、あんたみたいなやつは見たことがない】
【だが、許可証ないのだったらあんたがよければなんだが冒険者ギルドにいってみたらどうだ?あそこなら許可証代わりになる冒険者プレートが手にはいるんだ】

【それはありがたい。それでその冒険者ギルドはどこにあるんだ?】

【紹介状と地図を渡そう。冒険者プレートをもらったらまた詰め所に来てくれ】

【ありがとう世話になった】

拍子抜けするほど聞かれることが少なかったが、ここは迷宮都市ハレイユ。
本で見た限りでは治安はあまりよくなくて外からかなりの人が入ってくるそうなので、一人にあまり時間はとれないのだろう。

地図を頼りに冒険者ギルドに向かうと、それらしい建物の姿が見えてくる。
その建物には多くの冒険者と思われる荒くれものが多数出入りしている。
冒険者ギルドの中に入ると酒の匂いが鼻を刺す。
(昼から酒を飲むとか楽しそうだな)

それからカウンターにいって紹介状を渡し、筆談で会話をして冒険者プレートを手に入れて、詰め所に向かった。
ありがちな冒険者に絡まれるといったことはなかった。
つまらん。

しかし、冒険者プレートの他に大きな収穫があった。
受付のお姉さんが喋りながら教えてくれたお陰で、この異世界語の発音がかなりわかったことだ。
これで筆談なんていうめんどくさいことをしなくてすむ。
これでこの体につかえるようにした発音の魔法が役に立つ時がきたようだ。

早速迷宮に潜ろうとしたら迷宮に入るには冒険者ランクがF以上必要ならしい。
因みにに俺は初心者も初心者なのでGランクからだ。
取り敢えず宿にも泊まってみたいので軽い金稼ぎにゴブリン狩りをすることにした。

ゴブリンというのはG級の魔物で、人間に勝る能力は繁殖力と暗視くらいのもので、真夜中の暗がりならともかく、昼間なら大人ならだれでも勝てるほど弱いそうだ。
そんなんなら依頼を出す意味無いんじゃないかって思ったのだが、繁殖し過ぎると畑を荒らされたりするので間引く必要があるので国から常時依頼としてでているそうだ。

ゴブリン討伐の依頼は五匹倒して10マリア。
宿に泊まるのなら最下級でも100マリア必要らしい。
ゴブリン50匹を倒してようやく一泊。
まあ冒険のついでにやるような依頼なのでこんなものだろう。

しかしゴブリンか、この世界にきて20年見たことなかったな。
やっぱり垂れ下がった鷲鼻だったり緑色の肌をしていたりするのかな?
たとえばあそこにいるちびみたいに……
あ、これゴブリンだ。

「ギシャア!!ギシャア!!」

うわーすげーほんとにいたんだゴブリン。
いや龍がいるんだしいてもおかしくないけどやっぱすごいなこの世界。

襲いかかってくるゴブリンを片手で受け止め殴り飛ばす。
武器がないので素手でしか戦うことができないのだ。
だが、猪の脚を使って作ったこの手はそこそこ硬くて武器にもなっている。

順調にゴブリンやスライムといった魔物を倒しながら進んでいくと、ゴブリンの集団に出くわした。
そのゴブリンたちは、人間のパーティーのように木の盾を持ったものやこん棒を持ったものと、チームを組んで行動していた。

さっきまで単品ばっかで消化不良だったので丁度いい。
まとめて相手をすることしよう。

「ギシャアギシャア!」
「ギギシャァ」
「ギーギー!」
「ギシャ」

ゴブリンたちがチームを組んでいるのにもかかわらずバラバラに攻め込んでくる。
聞いていた通り知能は猿並みなんだろう。

ボコッ!ドコッ!ドドドン!!

やはり一撃だったな。
すこしオーバースペックすぎるかな?
いや、でもこれ最下級の魔物だしこんなものか。

討伐証明の耳をもぎ取ってもらった袋につめる。
そろそろ50匹分はたまった頃だろう。
一度帰るとしよう。

その時、遠くから大量のゴブリンの声が聞こえてきたが、めんどくさいので直帰することにした。
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