転生したけど記憶はないです

よりおん

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終戦

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 魔帝の纏う闇のオーラは魔王とは比にならないくらい強い物だったが、それに対して俺も聖剣に光子化フォトナイズをかけたことで前に使っていた剣なんて棒切れに感じるほどつよくなっていた。

 そこからの戦いは終始俺の優勢ではあったが、決定打となるものは出ず、長いようで短いの時間が経過した。
 硬いガードが渾身の一撃で外れ、胸に止めの一撃を喰らわせようとした瞬間朧気だった剣の重みが完全に消えた。
 それは光子化フォトナイズの代償の耐久全損、武器の消滅のサインだった。

 後一歩、後一秒で全てが終わったのに!

「フハハハハ!!時間切れのようだな勇者!さっきここで倒すとか言っていたがその程度か、所詮人間ということだな、滅ぼしてくれるわ!」

「まだ…まだ終わってない!」

 そう自分に言い聞かせて魔帝に魔法をぶつける。

「忌々しい聖剣のないお前などおそるるに足りん!今ここで殺してくれる!」

 そう言って魔帝が一瞬で目の前まで移動してきて俺の腹を貫く。
 体から熱が抜けていくのを感じる。
 ここで、折れてしまおうか。そしたら楽になれる。
 そう思い項垂れる。

「やっと死んだか極光の勇者よ。これでのこる勇者は逃げた弱腰だけだな、世界はもうわが手中にあるな!
フハハハハ!」

 死ぬ瀬戸際の瞬間に魔帝のその言葉が聞こえた。

 このままここで信念を折って死んだら誰にこの人生を誇れるだろうか。
 死んでもこいつを止めると意気込んでいたが勇気が足りなかった。
 剣が無くても光子化フォトナイズはできる。
 光の魔法を誰よりも使える俺のならば聖剣を越える出力を出せる。
 それは肉体の消滅、つまり死を意味しているが、このまま死ぬ命なら最後まで燃やし尽くしてみようじゃないか。

光子化フォトナイズ

 そう唱えると遠ざかっていた意識が覚醒する。
 体が熱に溢れてくる。
 そしてそれと同時に体から何かが消えていくのを感じる。

「ほう、玉砕覚悟ということか」

「言った筈だ、ここでお前を倒すと」

「フハハハハ!面白い!貴様のその命今度こそ絶ちきってやろう!」

 自分でも感知できないほどに加速した肉体が魔帝にぶつかる。
 そして魔帝の腹に腕を突き立てる。

「グハッ!なんて速さだ…ここまでとは……だが我は滅びぬぞ!」

 魔帝の内臓をかきみだすさなか体の中にある石のようなものを掴み取る。

「グッ…それを!それを返せ!!」

 今まで余裕綽々といった感じだった魔帝が初めて見せた焦り。
 鬼気迫る表情で迫る魔帝を横目に石を握り潰そうとするがビクともしない。
 凄まじい硬さの石だ。
 更に力を入れるとヒビがはいった。

「止めろオオオオ!!」

 この調子では砕く前に肉体が消滅してしまう。
 全てを一撃でぶちこむ。

(ごめん、眞。約束守れそうにないわ)

超新星爆発スーパーノヴァ

 そう一言唱え全エネルギーを解放した。


 そしてこの瞬間、臨光光時りんこうこうじの肉体は完全に消滅した。
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