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押し売りする者
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鈍い音と共に爆炎の勇者の剣が止まったのはアルティメットガールが差し出した腕に当たったからだ。
「なんのつもり?」
その剣は彼女の隣りに立っていたエリオに向けて振り下ろされていた。
さきほどの言葉と同様に殺気もなく強い意思もない抜剣に反応できたのは、アルティメットガールと狙われたエリオだけ。彼もさすがの反応で跳び下がっていた。
「止める気なく振り下ろしたわね」
「殺す気もなかったとはいえ、その聖剣を素手で受け止めるのかよ」
ここまでの会話がなされてようやく皆は事態の異常さに気が付き、逃げるように離れた。
「理由がないなら作る。お前が戦わないならヴェルガンと戦おう。発展途上中だが、なかなか骨のある奴のようだからな」
その言葉を聞いてエリオは剣を構えた。
「こちらには利の無い戦いね」
「そいつとの戦いにはあったのか?」
「万全の全力になった彼にわたしが勝てば、諦めてくれるはずだからよ」
「だったら俺を諦めさせてみろ」
「身勝手な人ね」
「よくそうやって褒められるんだ」
アルティメットガールは倒れているカイルの腕を取ってエリオのそばにすーっと移動する。
「彼をお願いします」
そう伝えてエリオに預け、彼女はマグフレアの前に進み出た。
構えを取ったアルティメットガールにマグフレアは笑顔を見せて襲いかかる。
マグフレアの聖剣はグレンよりも少し長く大柄だ。それを軽々と振り回す剣術だけでも手練れだと感じさせ、秘めたる力の大きさを戦いを見守る者に想像させた。
彼女はその剣を避けつつ、攻撃のかわしずらいボディーを狙いマグフレアを後退させる。
「思った通りだ。このレベルに達している奴は久々だぜ」
「このレベルってどのレベル?」
「少し前までの俺のレベルだ!」
嬉しそうに剣を振るマグフレアはさらに力強さを増していく。その力の幅が急激に上がったために、アルティメットガールはガードする腕を弾かれた。
「グランバースト」
上段から振り下ろした聖剣が豪炎を吐き出してアルティメットガールを飲み込んだ。
「どうした、そんな程度か? 手を抜いてると周りの奴らが燃え散るぜ!」
かなり離れている者たちにもその熱波が伝わる炎だが、勢いよく回転しながらケープの裾をひるがえしたアルティメットガールが内側から押し広げて吹き消した。
「安い挑発ね」
そう言って、アルティメットガールはひらりと着地する。
「だったら次はちょっとお高いぜ。支払えるか?」
振りかぶった聖剣が熱量を上げて光球を作りだしていく。
聖剣に生成された爆熱光球を見た彼女は、自分が使う魔法の何倍の威力かと思いながら、回避することを選ばずに左腕を体側に引いた。それは、避ければ後方にいる人たちに被害が及ぶからだ。
「ブラストカノン!」
水平に振られた聖剣の先端から高熱の光球が投げ出されると同時に、アルティメットガールも手のひらを突き出した。
「ファントムウォール!」
爆炎の勇者が撃ち出した爆熱光球に見えない壁がぶち当たり、垂直方向に燃え広がった炎と熱波を押し返していく。
「なかなか奇麗な宝石だったけど、ポケットマネーで払えるわ」
そう言って腰を落として握り込んだ右の拳が、空気の壁に向かって唸りをあげた。
「キープ・ザ・チェンジ……スマッシュ!」
撃ち伸ばした右腕が自ら作った空気の壁を穿ち、燃え広がった炎を巻き込んでマグフレアに向かっていく。彼女の拳圧は火炎放射と化してマグフレアを撃ち抜いた。
「うぉっ!」
自ら放った闘技の火炎に身を晒したマグフレアだったが、着衣の袖や裾が少々焦げているだけでダメージはない。しかし、火炎の渦が数十メートルの焼け焦げた道を作った中で彼は驚き顔で立っていた。
「あら? やっぱりネーミングがいまいちだったかしら?」
「確かにいまいちだが驚いたのはそこじゃねぇ」
もちろんマグフレアが驚いた内容は、完璧に防がれたうえに跳ね返されたことだ。
「なんのつもり?」
その剣は彼女の隣りに立っていたエリオに向けて振り下ろされていた。
さきほどの言葉と同様に殺気もなく強い意思もない抜剣に反応できたのは、アルティメットガールと狙われたエリオだけ。彼もさすがの反応で跳び下がっていた。
「止める気なく振り下ろしたわね」
「殺す気もなかったとはいえ、その聖剣を素手で受け止めるのかよ」
ここまでの会話がなされてようやく皆は事態の異常さに気が付き、逃げるように離れた。
「理由がないなら作る。お前が戦わないならヴェルガンと戦おう。発展途上中だが、なかなか骨のある奴のようだからな」
その言葉を聞いてエリオは剣を構えた。
「こちらには利の無い戦いね」
「そいつとの戦いにはあったのか?」
「万全の全力になった彼にわたしが勝てば、諦めてくれるはずだからよ」
「だったら俺を諦めさせてみろ」
「身勝手な人ね」
「よくそうやって褒められるんだ」
アルティメットガールは倒れているカイルの腕を取ってエリオのそばにすーっと移動する。
「彼をお願いします」
そう伝えてエリオに預け、彼女はマグフレアの前に進み出た。
構えを取ったアルティメットガールにマグフレアは笑顔を見せて襲いかかる。
マグフレアの聖剣はグレンよりも少し長く大柄だ。それを軽々と振り回す剣術だけでも手練れだと感じさせ、秘めたる力の大きさを戦いを見守る者に想像させた。
彼女はその剣を避けつつ、攻撃のかわしずらいボディーを狙いマグフレアを後退させる。
「思った通りだ。このレベルに達している奴は久々だぜ」
「このレベルってどのレベル?」
「少し前までの俺のレベルだ!」
嬉しそうに剣を振るマグフレアはさらに力強さを増していく。その力の幅が急激に上がったために、アルティメットガールはガードする腕を弾かれた。
「グランバースト」
上段から振り下ろした聖剣が豪炎を吐き出してアルティメットガールを飲み込んだ。
「どうした、そんな程度か? 手を抜いてると周りの奴らが燃え散るぜ!」
かなり離れている者たちにもその熱波が伝わる炎だが、勢いよく回転しながらケープの裾をひるがえしたアルティメットガールが内側から押し広げて吹き消した。
「安い挑発ね」
そう言って、アルティメットガールはひらりと着地する。
「だったら次はちょっとお高いぜ。支払えるか?」
振りかぶった聖剣が熱量を上げて光球を作りだしていく。
聖剣に生成された爆熱光球を見た彼女は、自分が使う魔法の何倍の威力かと思いながら、回避することを選ばずに左腕を体側に引いた。それは、避ければ後方にいる人たちに被害が及ぶからだ。
「ブラストカノン!」
水平に振られた聖剣の先端から高熱の光球が投げ出されると同時に、アルティメットガールも手のひらを突き出した。
「ファントムウォール!」
爆炎の勇者が撃ち出した爆熱光球に見えない壁がぶち当たり、垂直方向に燃え広がった炎と熱波を押し返していく。
「なかなか奇麗な宝石だったけど、ポケットマネーで払えるわ」
そう言って腰を落として握り込んだ右の拳が、空気の壁に向かって唸りをあげた。
「キープ・ザ・チェンジ……スマッシュ!」
撃ち伸ばした右腕が自ら作った空気の壁を穿ち、燃え広がった炎を巻き込んでマグフレアに向かっていく。彼女の拳圧は火炎放射と化してマグフレアを撃ち抜いた。
「うぉっ!」
自ら放った闘技の火炎に身を晒したマグフレアだったが、着衣の袖や裾が少々焦げているだけでダメージはない。しかし、火炎の渦が数十メートルの焼け焦げた道を作った中で彼は驚き顔で立っていた。
「あら? やっぱりネーミングがいまいちだったかしら?」
「確かにいまいちだが驚いたのはそこじゃねぇ」
もちろんマグフレアが驚いた内容は、完璧に防がれたうえに跳ね返されたことだ。
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