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ファイナルラウンド
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「戦う前に教えてよ。あなたの真意が知りたいわ」
「真意。なんのことだ?」
「それがわかれば、わたしのモヤモヤした気分も治まって助かるの」
「貴様のモヤモヤなど知ったことか。さっさと始めるぞ」
腰を落として臨戦態勢に入る魔族の心の色味には、これまでにない覚悟があるとアルティメットガールは読み取った。
「なら戦いが終わったら教えてね。エリオさんも気になってるようだから」
魔族と話す彼女の様子が普段と少し違うと、エリオはなんとなく感じていた。
「それと、もうひとつ」
「今度はなんだ!」
戦いたくてうずうずしている魔族は鬱陶しそうに荒々しく返す。
「あなた名前はなんていうの?」
「名前? そんなもん聞いてどうする。どうせこれが最後の戦いだ」
「教えてよ。人に話すときに困るの。前回会ったときにあの魔族の人に聞かれたし」
「そうか……、ならば教えてやる。俺が勝ったとき、貴様の屍にな」
「その条件だと一生教えてもらえないじゃない」
「ぬかせ!」
この言葉を切っ掛けにして戦いは始まった。
魔族の最初の拳撃をアルティメットガールが受けたとき、その衝撃波で一番近くにいたエリオがひっくり返った。
「皆さん、離れてください」
彼女の気遣いの言葉を聞いてエリオたちはその場から大きく距離を取る。それに合わせたようにふたりの戦いは激しさが増して戦闘領域が広がっていく。エリオたちがいた場所はえぐり弾け、あっという間に荒れ地と化した。
エリオに手を引かれて下がるレミ。彼女はエリオ同様アルティメットガールの異変を感じ、その表情を曇らせている。
いつもならば安心感を覚える赤いケープに覆われたその背中も、今日は少し覇気が弱いとふたりは思う。だが、マルクスとザックがそんな心配をせずに応援している様子から、考え過ぎでそんなふうに見えているのかもしれないと思い直した。
「今回はわたしが来るまで待っていられたのね。やればできるじゃない」
「貴様が来なければ奴らを痛めつけて待っていたかもしれんがな」
「そうなったらまた飛び蹴りからの登場になってしまうところだったわ」
いつもと変わらない軽口のアルティメットガールの表情にはやはり余裕がない。そんな言い合いをしながら戦うふたりだが、アルティメットガールの反撃の手が増えた半面、魔族の攻撃は少しずつガードの上を叩くようになっていた。
その戦いは激しさを増し、エリオたちは少しずつあとずさりを繰り返し、さらに大きく距離を取った。それに合わせるように戦いの規模は拡張され、掘り返された土と砂利はそのたびに振動し、ゆるやかに吹いていた風は激しくかき乱される。
(これってやっぱり予想どうりってことかしら)
ここまでの戦いで、彼女とエリオが予想していたことが少しずつ証明されていた。
彼らを囲っていたハークマインの兵士たちはアルティメットガールと魔族の戦いに見入ってしまい、もうエリオたちのことなど頭にない。
「ここが町の中だったらと思うとぞっとするぜ。広大な平原であることが幸いだった」
エリオの後ろから声をかけたのはサクバーンだ。
「ヴェルガン。君はとんでもない奴を呼びやがったな」
エリオが振り返ると、彼は目は真剣ながら口を半開きにして戦いを見ている。
「トーセンさん。あなたのせいですよ」
「あの魔族が来たことが俺のせいだってのか?」
「いえ。彼女を呼ぶハメになったことです」
「はぁ? あの派手な服の女は君が言っていたなんちゃらガールだろ? 何度も魔族を退けたっていうなら逆に良かったじゃないか」
「この策を用いた以上、来てくれたら助かるとは思っていました。でも、望んではいなかった。こんな事態にならないようにしなければならなかったんです」
エリオの言い分にピンとこないサクバーンは戦いから目をそらしてエリオを見た。
「彼女はこの世界の者ではありません。可能ならこの世界のことにかかわりたくはないんです。ましてや戦うことなど望んではいません」
「あれだけの強さなのにか?」
「強いから戦いたいなんてのは傲慢な男が思うことです。彼女は女の子ですよ? 見た目どおりなら俺より年下かもしれません」
そう言われたサクバーンは十歳になったばかりの自分の娘を思い浮かべ、アルティメットガールが女の子だと認識をあらためた。
その女の子が魔族と戦っている。よく見れば表情に余裕はないとサクバーンは気付いた。
「真意。なんのことだ?」
「それがわかれば、わたしのモヤモヤした気分も治まって助かるの」
「貴様のモヤモヤなど知ったことか。さっさと始めるぞ」
腰を落として臨戦態勢に入る魔族の心の色味には、これまでにない覚悟があるとアルティメットガールは読み取った。
「なら戦いが終わったら教えてね。エリオさんも気になってるようだから」
魔族と話す彼女の様子が普段と少し違うと、エリオはなんとなく感じていた。
「それと、もうひとつ」
「今度はなんだ!」
戦いたくてうずうずしている魔族は鬱陶しそうに荒々しく返す。
「あなた名前はなんていうの?」
「名前? そんなもん聞いてどうする。どうせこれが最後の戦いだ」
「教えてよ。人に話すときに困るの。前回会ったときにあの魔族の人に聞かれたし」
「そうか……、ならば教えてやる。俺が勝ったとき、貴様の屍にな」
「その条件だと一生教えてもらえないじゃない」
「ぬかせ!」
この言葉を切っ掛けにして戦いは始まった。
魔族の最初の拳撃をアルティメットガールが受けたとき、その衝撃波で一番近くにいたエリオがひっくり返った。
「皆さん、離れてください」
彼女の気遣いの言葉を聞いてエリオたちはその場から大きく距離を取る。それに合わせたようにふたりの戦いは激しさが増して戦闘領域が広がっていく。エリオたちがいた場所はえぐり弾け、あっという間に荒れ地と化した。
エリオに手を引かれて下がるレミ。彼女はエリオ同様アルティメットガールの異変を感じ、その表情を曇らせている。
いつもならば安心感を覚える赤いケープに覆われたその背中も、今日は少し覇気が弱いとふたりは思う。だが、マルクスとザックがそんな心配をせずに応援している様子から、考え過ぎでそんなふうに見えているのかもしれないと思い直した。
「今回はわたしが来るまで待っていられたのね。やればできるじゃない」
「貴様が来なければ奴らを痛めつけて待っていたかもしれんがな」
「そうなったらまた飛び蹴りからの登場になってしまうところだったわ」
いつもと変わらない軽口のアルティメットガールの表情にはやはり余裕がない。そんな言い合いをしながら戦うふたりだが、アルティメットガールの反撃の手が増えた半面、魔族の攻撃は少しずつガードの上を叩くようになっていた。
その戦いは激しさを増し、エリオたちは少しずつあとずさりを繰り返し、さらに大きく距離を取った。それに合わせるように戦いの規模は拡張され、掘り返された土と砂利はそのたびに振動し、ゆるやかに吹いていた風は激しくかき乱される。
(これってやっぱり予想どうりってことかしら)
ここまでの戦いで、彼女とエリオが予想していたことが少しずつ証明されていた。
彼らを囲っていたハークマインの兵士たちはアルティメットガールと魔族の戦いに見入ってしまい、もうエリオたちのことなど頭にない。
「ここが町の中だったらと思うとぞっとするぜ。広大な平原であることが幸いだった」
エリオの後ろから声をかけたのはサクバーンだ。
「ヴェルガン。君はとんでもない奴を呼びやがったな」
エリオが振り返ると、彼は目は真剣ながら口を半開きにして戦いを見ている。
「トーセンさん。あなたのせいですよ」
「あの魔族が来たことが俺のせいだってのか?」
「いえ。彼女を呼ぶハメになったことです」
「はぁ? あの派手な服の女は君が言っていたなんちゃらガールだろ? 何度も魔族を退けたっていうなら逆に良かったじゃないか」
「この策を用いた以上、来てくれたら助かるとは思っていました。でも、望んではいなかった。こんな事態にならないようにしなければならなかったんです」
エリオの言い分にピンとこないサクバーンは戦いから目をそらしてエリオを見た。
「彼女はこの世界の者ではありません。可能ならこの世界のことにかかわりたくはないんです。ましてや戦うことなど望んではいません」
「あれだけの強さなのにか?」
「強いから戦いたいなんてのは傲慢な男が思うことです。彼女は女の子ですよ? 見た目どおりなら俺より年下かもしれません」
そう言われたサクバーンは十歳になったばかりの自分の娘を思い浮かべ、アルティメットガールが女の子だと認識をあらためた。
その女の子が魔族と戦っている。よく見れば表情に余裕はないとサクバーンは気付いた。
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