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報告会

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「ハルカたちも魔族に!」

  彼らは、ハルカたちが魔族に遭遇していたその驚きによって息を飲み、それでも無事に辿り着いたことの安堵によって息を吐いた。

「……アルティメットガールさ。彼女が助けてくれた……らしい」

  魔族に出会ったショックで卒倒したセミールは、実際に会ってはいないため、『らしい』と言葉を付け足した。

「おかげでわたしは無事でしたが、そのとき、あの片角の魔族も現れたんです」

「なんだって!」

  間髪入れずにエリオたちは身を乗り出して反応する。なぜなら、囮になった自分たちではなく、魔道具を持って逃がしたセミールたちのほうに片角の魔族が現れたのではふた手に分かれた意味がないからだ。

「で、魔道具は? 賢者の石は無事なのか?」

  ザックが聞くと、セミールは背負っているリュックを指さした。

「大丈夫だ。さすがの魔族もアルティメットガールには勝てないからな。なにもせずに帰っていった……らしい」

「もともと戦う気はなかったようです。近くで騒ぎがあったから様子を見にきただけと言って……いたのが聞こえました」

  その後、魔族の国はいくつかの勢力があり、その関係が良好でないことや、記章によってどの国に属しているかがわかること。片角の魔族は国を滅ぼされ、どの国にも属していないことなどの情報の共有がなされた。

「その三国の魔王は賢者の石を狙ってるわけじゃないようだな。ならば気を付けるべきはあの魔族だけじゃん」

  マルクスの単純な頭での理解がこれだった。

「寒烈の勇者がいるでしょうが。イラドン大臣が狙ってるわよ」

「それなら心配いらないだろ? ハークマイン領土に入っちまえばライスーン王国は手出しできねぇ。イラドンに賢者の石を奪われる心配はねぇよ」

「おいおい。声が大きいぞ。誰が聞いているかわからないんだから」

  多くの人で賑わう飲食店。そうと意識しなければ隣りの席の会話もよく聞こえないのだが、安全領土だということと仲間がそろったことでの気のゆるみをエリオが戒めた。

「エリオさんのほうはどうだったんですか? やっぱり魔族と遭遇したんですか?」

  エリオがソルーダウルフェンと魔族の戦いについて説明すると、最初は心配顔だったハルカも最後にはニコニコしながら聞いていた。

「ともかくゆっくり休んで聖域を目指そう」

  エリオたちが堅い話を切りあげ食事を楽しんでいる隣の席で、心拍を上げて冷や汗を流す者がいた。それは、ハークマイン国境警備隊長のサクバーンに尾行の任を与えられた者。

  彼は賢者の石の名を聞いたことで国家を揺るがすとんでもない事態だと大混乱。頭の中を整理するだけで精一杯のため、食事も手に付かない状態だった。

  数十分後、エリオたちが席を立って宿屋に戻っていく。そこでどうにか落ち着きを取り戻した彼は、残った食事を口に放り込んだ。

  エリオたちがハークマイン王国に来た目的はニーヤ村に行くためではない。ライスーンの追手から逃げてきたということに嘘はないが、サクバーンが疑っていたとおりで話していない部分があった。それが世界の秘宝である賢者の石。

  彼は思った。このことを急いで報告しなければならないと。

  本来ならばこのまま王宮に向かうべき重要な案件なのだが、下っ端の彼は事の大きさに混乱して悩んだあげく、直属の上司であるサクバーンに手紙で報告して判断をゆだねてしまった。

  このことがエリオたちに時間の猶予を与えることになる。
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