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仲間のお迎え

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  町の者が歓喜の声をあげる中。飛んでいく彼女を見送ったエリオたちは、ハルカを迎えに森に向かっていった。

「エリオ。その体で無理するな。そんなに急ぐことないだろ」

  重装備のザックが最後尾から叫ぶのだが、満身創痍のエリオのペースは落ちない。

「あの変な格好の女が助けたっていってたじゃないか」

  彼のあとに続くマルクスが血をしたたらせるエリオを心配しながら言うと、

「助けられたとはいえ空を舞うほど打ち飛ばされたんだ。無事とは限らない」

  まだ朝日の昇りきらない薄明かりの時間では、森の中は夜と変わらない。この闇が彼らを不安にさせる。

「ハルカァァァァァァァ」

  ハルカを呼ぶ仲間たちの声が暗い森の中で反響する。今は闇を照らす松明や魔道具がないため、五感を凝らしてハルカのいる木を探すしかなかった。

  森に入って十分ほどの探索時間もエリオたちには長く感じていた。皆が焦りを感じたとき、エリオは森の奥からの小さな音と気配に気付く。

「ハルカ!」

  戦いで傷ついた体の痛みを忘れて走るエリオとそれに続く三人の仲間。目視で確認はできないが、エリオはそれがハルカだと確信した。ゆっくりと歩いてくるハルカに駆け寄ったエリオは、彼女を抱きあげ振り回す。

「良かった、無事だったんだな!」

  エリオのその声にザックたちも安堵して走る足の力をゆるめた。

(エ、エリオさん?! うそぉぉぉ)

  エリオに抱きしめられるというハプニングにハルカは歓喜と混乱に見舞われてしまった。

「ちょっとエリオ。ハルカは怪我をしているんじゃないの?」

  レミのその言葉を聞いたエリオはあわててハルカを地面に下ろした。

(レミさん余計なこと言わないでっ!)

  下ろされたハルカがガックリと心で肩を落とすと、怪我が痛むのかと勘違いしたエリオが彼女を気遣った。

「ごめん! どこが痛いんだ?」

  暗闇で確認しづらい中、エリオはハルカの体を見回す。

「大丈夫です。エリオさんにかばってもらいましたし、森に落ちたときにアルティメットガールに助けてもらったので。どこにも怪我はありません」

「アルティメットガール……。そう名乗っていたな」

  手に負えない強大な敵から自分たちを守ってくれたその行動は、彼女が自らの口で言っていたことだ。

『世界の平和を望み、常人には手に負えないあらゆる脅威から人々を救う女の子よ』

  その言葉通りに彼女は脅威を排除してくれたのだった。

  エリオはそのことを思い出していたが、ガクリと膝を折って座りこむ。

「エリオさん?!」

「大丈夫か?」

「いや、もうさすがに疲れたよ。体もあちこち痛いし」

  立ち上がるそぶりも見せずにそう言ったエリオは、そのまま地面に大の字になった。

「わ、わたしが治療します!」

  ハルカはエリオの横に座って白魔術を使った。

  その頃、アルティメットガールに倒された大蛇マサカーサーペントはトドメを刺され、解体して素材とするために町に運ばれようとしていた。そんな中、大蛇のある部分の異常を発見した衛兵のひとりが仲間を呼び止める。

「どうした?」

  彼が指をさした場所はマサカーサーペントの尻尾とも言うべき場所の鱗だった。

「なんだよこれ? 手形か?」

「手形……に、見えるよな?」

  その鱗には、人の手形のような痕がクッキリと刻まれていた。
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