42 / 42
005章 ドリタニア世界
5章005ー 結果的に大団円?
しおりを挟む
なんかえらく殊勝な言葉を口にした勇者ライアナは、おずおずとした様子で俺に近づいてきた。
「その……あなたのあの美しいお姿を拝見して以降……なんて言えばいいのだろう……私のこの胸のときめきが押さえられないの……あなたの姿を想像するだけで、胸が高鳴るというかドキドキしちゃうっていうか……」
そう言うと、勇者ライアナは俺の前で片膝をついた。
「もうね、これは運命の出会いだと思うのよ! ね、あなたもそう思わない? そう思うでしょ? ね、もう間違いないわよね?」
「い、いや、俺はそこまでは思わな……」
「だからね、私考えたの……」
……こいつ、人に話を振っておきながら俺の話は聞く気なしかよ……
で、目をキラキラと輝かせながら勇者ライアナは片膝をついたまま俺ににじり寄ってきた。
「まずはお友達から始めていただけませんか?」
「いや、断る」
「そうと決まったら、まずはどこにデートにいきます? あ、私、幼少の頃から勇者の修行に明け暮れてたからそういったことにすっごく疎いの。だからさ、そこはあなたにエスコートしてもらえたら助かるんだけど……」
「だから断ると……」
「やはり、夕食の後は夜景の見えるバルコニーで語らうというやつをしないとダメよね。お互いに語り合いながら、そっと肩を抱かれたりしちゃったりなんかして、そのままお互いの顔が近づいていってそのまま……やだ、もう何をう言わせるのよぉ」
……なんなんだ、この駄勇者は……
魔王の討伐をしないばかりか、いきなり俺相手に盛りのついた犬のようにラブラブオーラを振りまきまくりだして、こっちの話をまったく聞きゃしない……おそらく男性経験がないもんだから恋愛に妙な妄想でも持っているんだろうけど……それを押しつけられたらこっちとしてもたまったもんじゃない。
俺は、胸に手をあてて頬を上気させまくっている勇者ライアナにむかって再度言葉を投げかけようとした。
「ちょっとよろしいでしょうか?」
そんな俺と勇者ライアナの間に、いきなり出現したビナスが割り込んできた。
ビナスは、先ほどまで魔王その1から3を鍛えていた際と同じ格好をしていて、右手にハリセン、左手に鞭を持っている。
で、よく見ると部屋の奥に魔王その1から3とミラッパまでやってきているのがわかった。
「あなた、私の旦那様に対して何を言っていらっしゃるのかしら?」
ビナスはそう言うとニッコリ微笑んだ。
……うん、氷のように冷たい笑顔だ。
そんなビナスの前で、勇者ライアナは
「はい? 何言ってるのかしら、このちびっ子。何、マイラバーのことを勝手に旦那様呼ばわりしてんの?」
ゆらぁって感じで立ち上がると、ビナスの顔に自分の顔を押し当てていった。
そんな感じで、ビナスと勇者ライアナが一触即発の状態になっていると、魔王その1から3の3人が一歩前に歩み出た。
「おいおい勇者ライアナよ、相手が違うだろ、相手が」
「貴様の相手は、魔王ビナス様の特訓によって生まれ変わった俺達魔王三人衆だぜ」
「いいか、俺達を今までの俺達と思うんじゃ……」
そんな台詞を口にしていた3人なんだけど、その台詞の途中で勇者ライアナはギロッっと3人を睨み付けていくと、
「雑魚は黙ってて! 今、あたしはこのちびっ子と話をしてんのよ!」
そう言うが早いか、右手を一閃した。
すると、その腕の軌道に合わせて、すさまじい光の矢が出現し、3魔王を一瞬で一刀両断してしまった。
「ミラッパ危ない!」
俺は、その後方に立っていたミラッパのもとに短距離転移すると、魔法袋から宝剣を取り出した。
『魔法反射(マジックリバース)の宝剣』
大魔王の部下だった暗黒大魔道士ダマリナッセ・ザ・ゾンビアってやつが所有していた宝剣で、すべての魔法を弾き返すことが出来るっていう代物だ。
ただ、その代償として魔力をごっそりもっていかれるのが玉に瑕だが、今は非常事態だ、そんな事はいってられない。
なにしろ勇者ライアナはが放った光の矢って、この城を中心にして半径10キロくらいを巨大な穴ぼこに変えてしまうくらいの破壊力を持っていたんだ。いくらミラッパが魔王の娘で強いといっても、この直撃をくらったら無傷ではすまない。
で、俺が宝剣を構えたのを見たビナスは、俺の意図を察してすでに勇者ライアナの前から瞬間移動で姿を消している。
というわけで、俺はなんの遠慮もなく勇者ライアナの放った光の矢を剣で切りつけていった。
すさまじい閃光とともに、勇者ライアナが放った光の矢は、一瞬にして進行方向を変え勇者ライアナに向かって突進していった。
「へ?」
一瞬何が起きたのか理解出来なかったらしい勇者ライアナは、その場で目を見開きながら固まっている。
そんな勇者ライアナに、弾き返された光の矢が命中していった。
どっご~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん
そして、すさまじい音響とともに、ドリタニア城が吹っ飛んでいった。
◇◇
「派手にいったなぁ」
俺は、ミラッパをお姫様抱っこした状態でかつて城があったあたりの近くにいた。
城は跡形もなく吹き飛んでいる。
ビナスの転移魔法でこの地に移動した俺達。
ミラッパは俺に抱きかかえられているのが嬉しくて仕方ないらしく、
「やっぱりダーリンは最高っぱ」
そう言いながら俺の首に抱きついて頬に何度もキスをしている。
で、俺はビナスへ視線を向けると
「ありがとなビナス、助かったよ」
そう言い、笑顔を向けた。
そんな俺に、ビナスは笑顔を返し、
「旦那様のお役にたてたのでしたら何よりですわ……」
そう言ったんだけど、その後、
「……しかし、あの魔王三人組……ほんっと魔王の面汚しでしたわね」
ボソッとそんな言葉を口にしていたわけで……どうやら同じ魔王としてちょっと許せない部分があったんだろうな。
で、そんなビナスを苦笑しながら見つめている俺の目の前に
『ミッションコンプリート』
と書かれたウインドウが表示された。
あ、そっか……結果はどうあれ、勇者ライアナが三魔王を倒したってことになるのか、これ。
依頼は勇者を魔王討伐に向かわせろとかそんなやつだったけど、勇者が魔王を全部倒したわけだし、それでオッケーってことなんだろう。
なんか、すっごい棚ぼたな感じがしないでもないんだけど……まぁ、結果良ければすべてよしだ。
「じゃ、帰るかみんな」
「うんっぱ! ダーリン!」
「はい、旦那様」
俺の言葉にミラッパとビナスも頷いた。
そんな俺達の姿が光に包まれていく。
俺達はそんな中で目を閉じた。
ガシっ
……うん? なんだ?
俺は、なんか右足を掴まれたような気がしたんだけど、そこで俺の意識は途切れていった。
◇◇
目を開くと、俺達は出発した社員寮の地下室にいた。
異世界転移用の魔法陣の部屋だ。
そこに俺達はいた……4人で……
俺・ミラッパ・ビナスは、全員揃って俺の右足の先を見つめていた。
そこに勇者ライアナがいた。
勇者ライアナは、俺の右足を掴んだまま気絶している。
……どうやら、元の世界に戻る寸前だった俺に駆け寄ってきて、俺の右足を掴んだ結果なんだろう……
俺達3人が唖然とした表情を浮かべている前で、勇者ライアナはしっかりと俺の右足を掴んだままうつぶせに倒れ込んでいた。
◇◇
それからの話をしておこう。
これはメフィラから聞いたことなのだが、ドリタニア世界は3魔王が消滅し、勇者ライアナがいなくなっても、結果として何も変わっていなかったらしい。
勇者ライアナが魔法の直撃をくらってくれたおかげで、被害はドリタニア城とその周囲にあった3魔王達の魔王城だけにとどまったらしい。
そのため、ドリタニア世界の魔王とその部下達が一瞬にしてすべて滅んだわけだ。
おかげで、世界にようやく平穏が……
っていうか、元々平穏だったわけだけどね。
何しろ勇者ライアナが自己満足にひたりたいがために、わざと魔王達を強くしようとしていたわけで、そんな勇者ライアナを魔王達はなんとかして倒そうとしてたけどまったく歯が立っていなかった……そんなもんだから、城や街を襲う余裕なんてなかったんだ。だからあの世界は、魔王が3人もいたのにずっと平穏だったわけなんだ……ちょっと城と城下街の位置が変わったくらいでね。
そんなわけで、ドリタニア城と魔王城が吹っ飛んで無くなっていることに、ドリタニア世界の人々はいまだに気がついていないそうだ。
……まぁ、ドリタニア世界の女神から依頼されていた内容は無事果たせたわけだし、これでよしとしてもらいたい。
ドリタニア世界の女神には、魔王の力量にあった、若しくはちゃんと魔王を倒そうとする人物を勇者にするよう、勇者の人選をしっかり行うように進言したい。
「……ま、こんなとこかな」
自室で今回の仕事の報告書を書き上げた俺は、椅子に座ったまま大きく伸びをしていった。
「ウインダ、お疲れ様」
そんな部屋の中に、ナイスタイミングでロミネスカスがお茶を持って来てくれた。
「ロミネスカス、ありがと」
俺はロミネスカスからお茶のはいったカップを受け取った。
「今回の仕事は随分簡単だったみたいね?」
「いや、まぁ結果だけ見ればそうだけど……結構難儀したよ」
そう言いながら俺は窓の外に視線を向けていった。
そこには、ロミネスカスがやっているベランダ菜園がある。
ロミネスカスが薬草なんかを試験的に育てているんだけど、その一角に妙な小屋が出来上がっている。
人一人がはいるのがやっとのスペースなんだけど、その中は魔法で空間が広げてあるらしくて、結構広いらしい。
で、その中に勇者ライアナが住み着いている。
俺の足に根性でしがみついて、この世界にまでついてきた勇者ライアナ。
俺は即座にドリタニア世界へ送り返すようにメフィラにお願いしたんだけど
「あ~、もう無理ですねぇ。もうゲートが閉じちゃってますからねぇ」
そう言って、肩をすくめながら首を左右に振っていった。
と、言うわけで、元の世界に戻れなくなった勇者ライアナは、そこに居着いたわけなんだが……
なんというか、異常なまでに恋愛に妙な妄想を持ってるライアナは、俺の相手をするローテーションに入ること拒否し
「そ、そんな破廉恥な!? ま、まずはですねデートを重ねていってですね……」
とまぁ、理想のデート論を延々語っていったわけです、はい。
で、ロミネスカス・ミラッパ・ビナスの3人は自分達の回数が減らないとわかったもんだから、勇者ライアナを受け入れる事に賛同したわけだ。
その代償として、俺は俺の部屋の窓のすぐ横に住み着いた勇者ライアナに、部屋の中からずっと監視されている……こうしてお茶を飲んでいる今も、勇者ライアナはあの部屋の隙間から俺の姿を見ているんだろうなぁ。息をはぁはぁさせながら……
新しい頭痛の種が増えたことに、俺は大きなため息をつくことしかできなかった。
「その……あなたのあの美しいお姿を拝見して以降……なんて言えばいいのだろう……私のこの胸のときめきが押さえられないの……あなたの姿を想像するだけで、胸が高鳴るというかドキドキしちゃうっていうか……」
そう言うと、勇者ライアナは俺の前で片膝をついた。
「もうね、これは運命の出会いだと思うのよ! ね、あなたもそう思わない? そう思うでしょ? ね、もう間違いないわよね?」
「い、いや、俺はそこまでは思わな……」
「だからね、私考えたの……」
……こいつ、人に話を振っておきながら俺の話は聞く気なしかよ……
で、目をキラキラと輝かせながら勇者ライアナは片膝をついたまま俺ににじり寄ってきた。
「まずはお友達から始めていただけませんか?」
「いや、断る」
「そうと決まったら、まずはどこにデートにいきます? あ、私、幼少の頃から勇者の修行に明け暮れてたからそういったことにすっごく疎いの。だからさ、そこはあなたにエスコートしてもらえたら助かるんだけど……」
「だから断ると……」
「やはり、夕食の後は夜景の見えるバルコニーで語らうというやつをしないとダメよね。お互いに語り合いながら、そっと肩を抱かれたりしちゃったりなんかして、そのままお互いの顔が近づいていってそのまま……やだ、もう何をう言わせるのよぉ」
……なんなんだ、この駄勇者は……
魔王の討伐をしないばかりか、いきなり俺相手に盛りのついた犬のようにラブラブオーラを振りまきまくりだして、こっちの話をまったく聞きゃしない……おそらく男性経験がないもんだから恋愛に妙な妄想でも持っているんだろうけど……それを押しつけられたらこっちとしてもたまったもんじゃない。
俺は、胸に手をあてて頬を上気させまくっている勇者ライアナにむかって再度言葉を投げかけようとした。
「ちょっとよろしいでしょうか?」
そんな俺と勇者ライアナの間に、いきなり出現したビナスが割り込んできた。
ビナスは、先ほどまで魔王その1から3を鍛えていた際と同じ格好をしていて、右手にハリセン、左手に鞭を持っている。
で、よく見ると部屋の奥に魔王その1から3とミラッパまでやってきているのがわかった。
「あなた、私の旦那様に対して何を言っていらっしゃるのかしら?」
ビナスはそう言うとニッコリ微笑んだ。
……うん、氷のように冷たい笑顔だ。
そんなビナスの前で、勇者ライアナは
「はい? 何言ってるのかしら、このちびっ子。何、マイラバーのことを勝手に旦那様呼ばわりしてんの?」
ゆらぁって感じで立ち上がると、ビナスの顔に自分の顔を押し当てていった。
そんな感じで、ビナスと勇者ライアナが一触即発の状態になっていると、魔王その1から3の3人が一歩前に歩み出た。
「おいおい勇者ライアナよ、相手が違うだろ、相手が」
「貴様の相手は、魔王ビナス様の特訓によって生まれ変わった俺達魔王三人衆だぜ」
「いいか、俺達を今までの俺達と思うんじゃ……」
そんな台詞を口にしていた3人なんだけど、その台詞の途中で勇者ライアナはギロッっと3人を睨み付けていくと、
「雑魚は黙ってて! 今、あたしはこのちびっ子と話をしてんのよ!」
そう言うが早いか、右手を一閃した。
すると、その腕の軌道に合わせて、すさまじい光の矢が出現し、3魔王を一瞬で一刀両断してしまった。
「ミラッパ危ない!」
俺は、その後方に立っていたミラッパのもとに短距離転移すると、魔法袋から宝剣を取り出した。
『魔法反射(マジックリバース)の宝剣』
大魔王の部下だった暗黒大魔道士ダマリナッセ・ザ・ゾンビアってやつが所有していた宝剣で、すべての魔法を弾き返すことが出来るっていう代物だ。
ただ、その代償として魔力をごっそりもっていかれるのが玉に瑕だが、今は非常事態だ、そんな事はいってられない。
なにしろ勇者ライアナはが放った光の矢って、この城を中心にして半径10キロくらいを巨大な穴ぼこに変えてしまうくらいの破壊力を持っていたんだ。いくらミラッパが魔王の娘で強いといっても、この直撃をくらったら無傷ではすまない。
で、俺が宝剣を構えたのを見たビナスは、俺の意図を察してすでに勇者ライアナの前から瞬間移動で姿を消している。
というわけで、俺はなんの遠慮もなく勇者ライアナの放った光の矢を剣で切りつけていった。
すさまじい閃光とともに、勇者ライアナが放った光の矢は、一瞬にして進行方向を変え勇者ライアナに向かって突進していった。
「へ?」
一瞬何が起きたのか理解出来なかったらしい勇者ライアナは、その場で目を見開きながら固まっている。
そんな勇者ライアナに、弾き返された光の矢が命中していった。
どっご~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん
そして、すさまじい音響とともに、ドリタニア城が吹っ飛んでいった。
◇◇
「派手にいったなぁ」
俺は、ミラッパをお姫様抱っこした状態でかつて城があったあたりの近くにいた。
城は跡形もなく吹き飛んでいる。
ビナスの転移魔法でこの地に移動した俺達。
ミラッパは俺に抱きかかえられているのが嬉しくて仕方ないらしく、
「やっぱりダーリンは最高っぱ」
そう言いながら俺の首に抱きついて頬に何度もキスをしている。
で、俺はビナスへ視線を向けると
「ありがとなビナス、助かったよ」
そう言い、笑顔を向けた。
そんな俺に、ビナスは笑顔を返し、
「旦那様のお役にたてたのでしたら何よりですわ……」
そう言ったんだけど、その後、
「……しかし、あの魔王三人組……ほんっと魔王の面汚しでしたわね」
ボソッとそんな言葉を口にしていたわけで……どうやら同じ魔王としてちょっと許せない部分があったんだろうな。
で、そんなビナスを苦笑しながら見つめている俺の目の前に
『ミッションコンプリート』
と書かれたウインドウが表示された。
あ、そっか……結果はどうあれ、勇者ライアナが三魔王を倒したってことになるのか、これ。
依頼は勇者を魔王討伐に向かわせろとかそんなやつだったけど、勇者が魔王を全部倒したわけだし、それでオッケーってことなんだろう。
なんか、すっごい棚ぼたな感じがしないでもないんだけど……まぁ、結果良ければすべてよしだ。
「じゃ、帰るかみんな」
「うんっぱ! ダーリン!」
「はい、旦那様」
俺の言葉にミラッパとビナスも頷いた。
そんな俺達の姿が光に包まれていく。
俺達はそんな中で目を閉じた。
ガシっ
……うん? なんだ?
俺は、なんか右足を掴まれたような気がしたんだけど、そこで俺の意識は途切れていった。
◇◇
目を開くと、俺達は出発した社員寮の地下室にいた。
異世界転移用の魔法陣の部屋だ。
そこに俺達はいた……4人で……
俺・ミラッパ・ビナスは、全員揃って俺の右足の先を見つめていた。
そこに勇者ライアナがいた。
勇者ライアナは、俺の右足を掴んだまま気絶している。
……どうやら、元の世界に戻る寸前だった俺に駆け寄ってきて、俺の右足を掴んだ結果なんだろう……
俺達3人が唖然とした表情を浮かべている前で、勇者ライアナはしっかりと俺の右足を掴んだままうつぶせに倒れ込んでいた。
◇◇
それからの話をしておこう。
これはメフィラから聞いたことなのだが、ドリタニア世界は3魔王が消滅し、勇者ライアナがいなくなっても、結果として何も変わっていなかったらしい。
勇者ライアナが魔法の直撃をくらってくれたおかげで、被害はドリタニア城とその周囲にあった3魔王達の魔王城だけにとどまったらしい。
そのため、ドリタニア世界の魔王とその部下達が一瞬にしてすべて滅んだわけだ。
おかげで、世界にようやく平穏が……
っていうか、元々平穏だったわけだけどね。
何しろ勇者ライアナが自己満足にひたりたいがために、わざと魔王達を強くしようとしていたわけで、そんな勇者ライアナを魔王達はなんとかして倒そうとしてたけどまったく歯が立っていなかった……そんなもんだから、城や街を襲う余裕なんてなかったんだ。だからあの世界は、魔王が3人もいたのにずっと平穏だったわけなんだ……ちょっと城と城下街の位置が変わったくらいでね。
そんなわけで、ドリタニア城と魔王城が吹っ飛んで無くなっていることに、ドリタニア世界の人々はいまだに気がついていないそうだ。
……まぁ、ドリタニア世界の女神から依頼されていた内容は無事果たせたわけだし、これでよしとしてもらいたい。
ドリタニア世界の女神には、魔王の力量にあった、若しくはちゃんと魔王を倒そうとする人物を勇者にするよう、勇者の人選をしっかり行うように進言したい。
「……ま、こんなとこかな」
自室で今回の仕事の報告書を書き上げた俺は、椅子に座ったまま大きく伸びをしていった。
「ウインダ、お疲れ様」
そんな部屋の中に、ナイスタイミングでロミネスカスがお茶を持って来てくれた。
「ロミネスカス、ありがと」
俺はロミネスカスからお茶のはいったカップを受け取った。
「今回の仕事は随分簡単だったみたいね?」
「いや、まぁ結果だけ見ればそうだけど……結構難儀したよ」
そう言いながら俺は窓の外に視線を向けていった。
そこには、ロミネスカスがやっているベランダ菜園がある。
ロミネスカスが薬草なんかを試験的に育てているんだけど、その一角に妙な小屋が出来上がっている。
人一人がはいるのがやっとのスペースなんだけど、その中は魔法で空間が広げてあるらしくて、結構広いらしい。
で、その中に勇者ライアナが住み着いている。
俺の足に根性でしがみついて、この世界にまでついてきた勇者ライアナ。
俺は即座にドリタニア世界へ送り返すようにメフィラにお願いしたんだけど
「あ~、もう無理ですねぇ。もうゲートが閉じちゃってますからねぇ」
そう言って、肩をすくめながら首を左右に振っていった。
と、言うわけで、元の世界に戻れなくなった勇者ライアナは、そこに居着いたわけなんだが……
なんというか、異常なまでに恋愛に妙な妄想を持ってるライアナは、俺の相手をするローテーションに入ること拒否し
「そ、そんな破廉恥な!? ま、まずはですねデートを重ねていってですね……」
とまぁ、理想のデート論を延々語っていったわけです、はい。
で、ロミネスカス・ミラッパ・ビナスの3人は自分達の回数が減らないとわかったもんだから、勇者ライアナを受け入れる事に賛同したわけだ。
その代償として、俺は俺の部屋の窓のすぐ横に住み着いた勇者ライアナに、部屋の中からずっと監視されている……こうしてお茶を飲んでいる今も、勇者ライアナはあの部屋の隙間から俺の姿を見ているんだろうなぁ。息をはぁはぁさせながら……
新しい頭痛の種が増えたことに、俺は大きなため息をつくことしかできなかった。
0
お気に入りに追加
152
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説


冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
勇者派遣と女子プロレスの更新再開を楽しみにしてる自分です
執筆お疲れ様です♪
異世界コンビニでの客演ではビナスさん無双状態ですね。
この作品の更新も楽しみにしてます。