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005章 ドリタニア世界
5章003ー ビナス怒
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魔族の集団はあっという間に蹴散らされていった。
で、それを蹴散らした勇者ライアナは空中に浮かんで何やら口を動かしているように見える。
俺は聴力強化魔法を使用してその言葉を聞き取っていったんだけど……
『相変わらず弱いわね! 弱すぎるわ! そんなんじゃ私を楽しませることは出来ないわよ!』
……なんかそんな言葉を口にしている。
随分上からな言葉を発してはいるけど……この勇者ライアナにはこの言葉を口にする資格があるといえた。
遠距離でサーチしただけでも、ライアナの勇者としての能力が相当高いことがわかる。
この世界の3魔王の能力がどれほどのものなのか今の時点でははかりかねるけど、これだけの能力があれば普通の魔王ならあっさり倒せてしまうだろう。
そこまで考えて、俺は首をひねった。
……じゃあなんで勇者ライアナはこの世界の魔王を討伐しないんだ?
少なくとも実力不足で追い詰められているという考えは、本人を遠目に確認したことで消えたわけだ。
他にどんな理由があるんだ?
俺は、思考を巡らせながら改めて前方へ視線を向けた。
すると、俺の目の前……窓のすぐ外に勇者ライアナがいた。
魔法で空に浮いたまま、真正面にいる俺の顔を凝視している。
金髪縦ロールの髪型は、人によったらとんでもなく似合わなくなるもんなんだけど、ライアナの整った顔立ちには見事にマッチしている。
勇者の称号がなければどこかの国のお姫様と間違えられかねないだろう。
スタイルもかなりよく、豊満な胸とお尻に対し、細くくびれた腰がすさまじいインパクトを見る者に与えている。
……っていうか、勇者ライアナってば魔族を相手にして鎧を着ないで戦っていたのか。
で、その勇者ライアナ。
俺の顔をマジマジと見つめながら、
「へぇ……私の会話を魔法で聞き取ろうとしてる人がいるなぁ、って思って来てみたんだけど……あなた、強そうね」
そう言うと、勇者ライアナは剣を抜いた。
「ねぇ? ちょっと私とやり合わない? 命のやりとりでもいいわよ?」
そう言うと、勇者ライアナはその顔に嬉しそうな笑みを浮かべていった。
「久しぶりだわ、こんなに強そうって思える人に出会えたのって。もうねぇ、魔王達には飽き飽きしてたのよ。あいつら弱いったらありゃしないんだもん、てんでお話にならない」
「……へぇ、魔王ってそんなに弱いんです?」
「もう弱いなんてもんじゃないわよ。最初の魔王なんて私のデコピンで瀕死の重傷を負っちゃったんだから」
「……へ、へぇ……デコピンですか」
「でもね、それって美しくないじゃない?」
「美しくありませんか?」
「だってそうでしょう? 女神に選ばれた勇者が魔王を倒すのよ? 吟遊詩人が何年も何十年も何百年も語り継ぐ物語になるわけよ、その物語のラストがデコピンなんて、美しくないでしょう? ね、そう思わない?」
「は、はぁ……まぁ、言われてみれば……そうかも」
「でしょぉ!? だからね、私はあいつらの魔力を増幅してやってさ、新しい魔王を出現させてやったのに、2人でも全然お話にならなかったのよねぇ」
「……え?」
その言葉に、俺は思わず目が点になった。
……なんか、この世界に魔王が3体いる理由が見えてきたぞ……
つまりあれか? この勇者ライアナが圧倒的に強すぎるもんだから、相手の戦力が自分が倒すのにふさわしいものになるのを、支援まで行いながら待っている……そういうことか?
「でねぇ、3人目の魔王まで出現させてあげて、その上でね、さっきその3人の魔王軍と遊んできたんだけど、やっぱりお話にならないのよねぇ」
そう言うと、勇者ライアナは、アハハと声をあげながら笑い始めた。
……ってことは何か?
さっき俺が見たあの黒い渦って、3人の魔王が率いていた3つの魔王軍だったってことか?
いや、正確には、ズタボロにされて壊滅寸前だった魔王軍なんだろう。
いくら魔王が惰弱だからといって、あそこまで貧相な軍勢しか持っていない魔王はまずいないし、それに3人の魔王がいたんだから、あの数は少なすぎる。
そこまで言うと、勇者ライアナは空に浮かんだまま部屋の中に入ってこようとした。
で、そこで勇者ライアナは思わず停止した。
「……ちょ、ちょっと、やだぁ」
そう言うと、勇者ライアナは自分の顔を両手で覆っていく。
ん? どうかしたのか?
そう思いながら俺は勇者ライアナの視線の先~俺の体の方へ視線を向けたんだけど……あぁ、そうか、今の俺、全裸だった。
ミラッパとビナスの2人と明け方近くまでいたした後、そのまま寝入っていたわけだし、さもありなんだよな。
で、勇者ライアナはそんな俺のあられもない姿を見たせいか両手で目の辺りを覆ってはいるんだけど、チラチラとその指の隙間から俺の股間のあたりを凝視している。
「あ、あなた、なんて破廉恥な格好してるのよ!? 馬鹿! 信じられない!
そう一方的にまくし立てると、勇者ライアナは
「また来るから! その時はちゃんと服を着て待ってなさい!」
捨て台詞を残し、ドリタニア城へ向かって飛び去っていった。
すると、そんな俺の横にビナスが歩み寄って来た。
俺同様素っ裸だ。
「ビナス、起きてたのか?」
「はい、勇者の波動を感じましたので、旦那様の後方で様子をうかがっておりました」
「で、まぁ、そういうことらしい。勇者ライアナご本人のおかげで、この世界がなんでこんな状態に陥っているっていうのかがわかってきたわけだ」
「そうですわねぇ……確かにあの勇者ライアナ様はそれなりにお強い方でございますからねぇ」
そう言うと、ビナスは俺に視線を向けると
「旦那様、少し私の思うように行動させていただいてもよろしいでしょうか?」
そう言ってきた。
「そりゃ構わないけど……どうかしたのかい?」
「いえ、大したことではないのですが……ちょっと腹に据えかねたことがございまして……」
そう言ってビナスはニッコリと微笑んだんだけど……その笑顔の奥に狂気じみた怒りの感情を感じたのは気のせいだろうか……
◇◇
数刻後……
俺・ビナス・ミラッパの3人は3つある魔王城のうち、ドリタニア城の北にある魔王城の中にいた。
その玉座の間には、今、ビナスが正座して座っている。
この城に到着するなり、この城の主である魔王その1を小指デコピン一発でぶっ飛ばしたビナス。
で、ビナスはそのまま玉座に座ると、
「私はこの世界とは違う別世界で魔王をしておりましたビナスと申します。この世界の魔王様方にお話いたしたき事がございますので、大至急他のお二方をこの魔王城へ呼び寄せてくださいな」
そう言った。
で、その結果、他の魔王城から魔王その2とその3が慌てて駆けつけてきて、魔王その1と一緒になって玉座の上に正座している魔王モードのビナスにひれ伏しているわけだ。
……とはいえ、なんだこれ。
3人の魔王なんだけど、こいつらマジで弱いです。
普通のボスモンスターに比べればそれなりに強いんだけど、今まで見てきた魔王の中では最弱レベルだといって構わないだろう。
インチーズ世界で瞬殺した魔王でも、こいつら相手ならあっさり勝っちまいかねないほどだ。
で、ビナスは氷の微笑をその顔に浮かべながら、
「あなた方、あんな小娘勇者にいいように弄ばれて悔しくないのでございますか?」
そう切り出した。
すると、魔王その1がおずおずと右手を上げた。
「あの……魔王ビナス様……そりゃ悔しいとも。出来ることなら復讐したい。だが……ヤツの強さは本物なのだ……」
魔王その1がそう言うと、今度は魔王その2が顔をあげた。
「俺達3人がかりでかかっても倒せねぇんだぜ? しかも明らかに手抜きされた上でな……」
魔王その2の言葉に、魔王その3も思わずため息をもらしていく。
で、そんな3人の魔王を、ビナスは改めて見回していった。
ーつづく
で、それを蹴散らした勇者ライアナは空中に浮かんで何やら口を動かしているように見える。
俺は聴力強化魔法を使用してその言葉を聞き取っていったんだけど……
『相変わらず弱いわね! 弱すぎるわ! そんなんじゃ私を楽しませることは出来ないわよ!』
……なんかそんな言葉を口にしている。
随分上からな言葉を発してはいるけど……この勇者ライアナにはこの言葉を口にする資格があるといえた。
遠距離でサーチしただけでも、ライアナの勇者としての能力が相当高いことがわかる。
この世界の3魔王の能力がどれほどのものなのか今の時点でははかりかねるけど、これだけの能力があれば普通の魔王ならあっさり倒せてしまうだろう。
そこまで考えて、俺は首をひねった。
……じゃあなんで勇者ライアナはこの世界の魔王を討伐しないんだ?
少なくとも実力不足で追い詰められているという考えは、本人を遠目に確認したことで消えたわけだ。
他にどんな理由があるんだ?
俺は、思考を巡らせながら改めて前方へ視線を向けた。
すると、俺の目の前……窓のすぐ外に勇者ライアナがいた。
魔法で空に浮いたまま、真正面にいる俺の顔を凝視している。
金髪縦ロールの髪型は、人によったらとんでもなく似合わなくなるもんなんだけど、ライアナの整った顔立ちには見事にマッチしている。
勇者の称号がなければどこかの国のお姫様と間違えられかねないだろう。
スタイルもかなりよく、豊満な胸とお尻に対し、細くくびれた腰がすさまじいインパクトを見る者に与えている。
……っていうか、勇者ライアナってば魔族を相手にして鎧を着ないで戦っていたのか。
で、その勇者ライアナ。
俺の顔をマジマジと見つめながら、
「へぇ……私の会話を魔法で聞き取ろうとしてる人がいるなぁ、って思って来てみたんだけど……あなた、強そうね」
そう言うと、勇者ライアナは剣を抜いた。
「ねぇ? ちょっと私とやり合わない? 命のやりとりでもいいわよ?」
そう言うと、勇者ライアナはその顔に嬉しそうな笑みを浮かべていった。
「久しぶりだわ、こんなに強そうって思える人に出会えたのって。もうねぇ、魔王達には飽き飽きしてたのよ。あいつら弱いったらありゃしないんだもん、てんでお話にならない」
「……へぇ、魔王ってそんなに弱いんです?」
「もう弱いなんてもんじゃないわよ。最初の魔王なんて私のデコピンで瀕死の重傷を負っちゃったんだから」
「……へ、へぇ……デコピンですか」
「でもね、それって美しくないじゃない?」
「美しくありませんか?」
「だってそうでしょう? 女神に選ばれた勇者が魔王を倒すのよ? 吟遊詩人が何年も何十年も何百年も語り継ぐ物語になるわけよ、その物語のラストがデコピンなんて、美しくないでしょう? ね、そう思わない?」
「は、はぁ……まぁ、言われてみれば……そうかも」
「でしょぉ!? だからね、私はあいつらの魔力を増幅してやってさ、新しい魔王を出現させてやったのに、2人でも全然お話にならなかったのよねぇ」
「……え?」
その言葉に、俺は思わず目が点になった。
……なんか、この世界に魔王が3体いる理由が見えてきたぞ……
つまりあれか? この勇者ライアナが圧倒的に強すぎるもんだから、相手の戦力が自分が倒すのにふさわしいものになるのを、支援まで行いながら待っている……そういうことか?
「でねぇ、3人目の魔王まで出現させてあげて、その上でね、さっきその3人の魔王軍と遊んできたんだけど、やっぱりお話にならないのよねぇ」
そう言うと、勇者ライアナは、アハハと声をあげながら笑い始めた。
……ってことは何か?
さっき俺が見たあの黒い渦って、3人の魔王が率いていた3つの魔王軍だったってことか?
いや、正確には、ズタボロにされて壊滅寸前だった魔王軍なんだろう。
いくら魔王が惰弱だからといって、あそこまで貧相な軍勢しか持っていない魔王はまずいないし、それに3人の魔王がいたんだから、あの数は少なすぎる。
そこまで言うと、勇者ライアナは空に浮かんだまま部屋の中に入ってこようとした。
で、そこで勇者ライアナは思わず停止した。
「……ちょ、ちょっと、やだぁ」
そう言うと、勇者ライアナは自分の顔を両手で覆っていく。
ん? どうかしたのか?
そう思いながら俺は勇者ライアナの視線の先~俺の体の方へ視線を向けたんだけど……あぁ、そうか、今の俺、全裸だった。
ミラッパとビナスの2人と明け方近くまでいたした後、そのまま寝入っていたわけだし、さもありなんだよな。
で、勇者ライアナはそんな俺のあられもない姿を見たせいか両手で目の辺りを覆ってはいるんだけど、チラチラとその指の隙間から俺の股間のあたりを凝視している。
「あ、あなた、なんて破廉恥な格好してるのよ!? 馬鹿! 信じられない!
そう一方的にまくし立てると、勇者ライアナは
「また来るから! その時はちゃんと服を着て待ってなさい!」
捨て台詞を残し、ドリタニア城へ向かって飛び去っていった。
すると、そんな俺の横にビナスが歩み寄って来た。
俺同様素っ裸だ。
「ビナス、起きてたのか?」
「はい、勇者の波動を感じましたので、旦那様の後方で様子をうかがっておりました」
「で、まぁ、そういうことらしい。勇者ライアナご本人のおかげで、この世界がなんでこんな状態に陥っているっていうのかがわかってきたわけだ」
「そうですわねぇ……確かにあの勇者ライアナ様はそれなりにお強い方でございますからねぇ」
そう言うと、ビナスは俺に視線を向けると
「旦那様、少し私の思うように行動させていただいてもよろしいでしょうか?」
そう言ってきた。
「そりゃ構わないけど……どうかしたのかい?」
「いえ、大したことではないのですが……ちょっと腹に据えかねたことがございまして……」
そう言ってビナスはニッコリと微笑んだんだけど……その笑顔の奥に狂気じみた怒りの感情を感じたのは気のせいだろうか……
◇◇
数刻後……
俺・ビナス・ミラッパの3人は3つある魔王城のうち、ドリタニア城の北にある魔王城の中にいた。
その玉座の間には、今、ビナスが正座して座っている。
この城に到着するなり、この城の主である魔王その1を小指デコピン一発でぶっ飛ばしたビナス。
で、ビナスはそのまま玉座に座ると、
「私はこの世界とは違う別世界で魔王をしておりましたビナスと申します。この世界の魔王様方にお話いたしたき事がございますので、大至急他のお二方をこの魔王城へ呼び寄せてくださいな」
そう言った。
で、その結果、他の魔王城から魔王その2とその3が慌てて駆けつけてきて、魔王その1と一緒になって玉座の上に正座している魔王モードのビナスにひれ伏しているわけだ。
……とはいえ、なんだこれ。
3人の魔王なんだけど、こいつらマジで弱いです。
普通のボスモンスターに比べればそれなりに強いんだけど、今まで見てきた魔王の中では最弱レベルだといって構わないだろう。
インチーズ世界で瞬殺した魔王でも、こいつら相手ならあっさり勝っちまいかねないほどだ。
で、ビナスは氷の微笑をその顔に浮かべながら、
「あなた方、あんな小娘勇者にいいように弄ばれて悔しくないのでございますか?」
そう切り出した。
すると、魔王その1がおずおずと右手を上げた。
「あの……魔王ビナス様……そりゃ悔しいとも。出来ることなら復讐したい。だが……ヤツの強さは本物なのだ……」
魔王その1がそう言うと、今度は魔王その2が顔をあげた。
「俺達3人がかりでかかっても倒せねぇんだぜ? しかも明らかに手抜きされた上でな……」
魔王その2の言葉に、魔王その3も思わずため息をもらしていく。
で、そんな3人の魔王を、ビナスは改めて見回していった。
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