とある勇者のアフターライフ ~勇者派遣会社活動記録

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

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005章 ドリタニア世界

5章001ー 相変わらず始まりはこんな感じで

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 元勇者である俺、ウインダが住んでいるのは、俺が所属している勇者派遣会社の社員寮だ。
 パルマ世界ってとこのブラコンベって片田舎の街中にある石造りの2階建ての建物だ。

 俺の部屋は中が4つに分かれていて、1つがキッチン併設のリビングで、ここはこの部屋に住んでいるみんなの共用スペース。
 あと3部屋は、俺、ロミネスカス、ミラッパの個室ってことになっている。
 もう一人の同居人のビナスは俺の部屋の屋根裏に勝手に部屋をこさえて住んでいたりする。
 これとは別に風呂とトイレがあり、ここも4人共用だ。 

 で、元の世界で大魔王討伐に向かっている間に婚約者を親友に寝取られた俺なんだけど……
 そんな俺は、今、ビナスといたしている最中だったりする。

 俺は、まったく意図していなかったのだが……
 俺同様に婚約者を寝取られたロミネスカスに、半ば押し倒されるようにして既成事実を作られ、
 元魔王の娘ミラッパには押しかけ女房同然に既成事実を作られ、
 そして今、俺の上にまたがって嬌声を上げ続けているビナスには、あれよあれよという間に既成事実を作られ……
 気がつくと俺は、3人の女性達と同棲しているという……自分でもよくわからない状態に陥っていたりするわけだ。
 もっとも、この3人は俺のそっちの相手だけをしているわけじゃない。
 ロミネスカスはかなりの魔法の使い手だし、ミラッパは元魔王の娘だけあってすさまじいパワーを有している。そして、ビナスにいたっては現役の魔王だけあって……あとは言わないでもわかるよな。
 というわけで、3人は俺が仕事をこなす上でのパートナーでもあるわけだ。
 で、そのパートナーのご機嫌をとるために、俺はこうして女性陣主導によるローテーションに従って夜のお相手をしているわけで……
「もう、旦那様ったら……私との最中に余所のことをお考えにならないでいただきたいですわ」
「うわ、ちょっとビナス!? いきなりそれはまずいって」
「うふふ……焦った旦那様も可愛いですわぁ」
 そんなこんなで……まぁ、俺、頑張っています。

◇◇

 しっかり5回いたした後、ようやく満足したビナスを腕枕しながら、俺はベッドに横になっていた。
 ビナスは、いい笑顔で俺の腕の中で寝息をたてている。
 まぁ……婚約者がいた頃には、こんな生活なんて考えもしなかったけど……なってみると、これはこれで悪くはないのかもな、と思えてしまうわけだ。
 見た目は幼子に見えなくもないビナスの寝顔を見つめながら、俺もウトウトしていた……まさにその時だった。
「お疲れのところ、ちょっとお邪魔してもよろしいですかねぇ?」
「うわぁ!? メフィラ!? てめぇ、どっから沸いてきやがった!?」
 俺は、俺とビナスの間に顔を割り込ませて来たメフィラにびっくりしながら飛び起きた。
「旦那様……どうかなさったのでございますかぁ?」
 当然、ビナスも目を覚まし、眠たそうに目をこすっている……事後なので、俺同様素っ裸だ。
 そして、
「ダーリン!どうしたっぱ!?」
「ウインダ!何事!?」
 そう言いながらミラッパとロミネスカスがすごい勢いで駆け込んできた。
 っていうか、ネグリジェ姿のロミネスカスはともかく、ミラッパ、お前は素っ裸で寝るのをそろそろ辞めないか、まったく。

◇◇

 で、皆が一応服を着て再度集まったところで、俺は改めてメフィラへ声をかけた。
「で? こんな夜中に何勝手に人の部屋に忍びこんでんだ?」
「まぁ、そう怒らないでほしいのですねぇ。ちょっと急ぎの仕事が舞い込んだのですねぇ」
 そう言いながら、メフィラは俺の前に一枚の紙を差し出して来た。
 それを、ビナス・ロミネスカス・ミラッパも、俺の後方から覗き込んでいる。
 で、その紙には、
『勇者を魔王討伐に向かわせてほしい』
 と書かれていて、その横に『大至急』の判子が押されている。
 だが、よく見ると……その横に『極秘』の判子も押されていた。
「極秘って……なんなのでしょうねぇ?」
 ビナスが首をかしげている。
 その言葉に、皆も頷きながら首をかしげている。
 で、そんな俺達に、メフィラはニッコリ微笑むと、
「まぁ、極秘は置いとくとしてですねぇ……このドリタニア世界なんですけどねぇ、魔王が3人も出現していてとんでもないことになっているんですねぇ」
 しれっとそう言った。
 その言葉に、俺は思わず目を丸くした。
「はぁ? 何でまたそんなことになってんだ?」 
 俺がびっくりするのも無理はないと思うぞ。
 普通、魔王が1人出現すると、その魔王を討伐するためにその世界の女神が勇者を召喚する。
 で、だいたい勇者が魔王を討伐するわけだ。
 もし勇者が魔王討伐に手こずるようなら、俺達のような勇者のサポートを専門にしている会社の社員がその世界の女神に雇われて派遣されることになる。
 そうして、新しい魔王が出現するほど魔力が高まる前に1人目の魔王は退治されているはずなんだ。

 そんなことを思いながら、俺は後方を振り向いたんだが……

 そこには、元魔王の娘ミラッパと、現役魔王のビナス……さらに隣室には元魔王のテリアもいるわけで……あれ? 3人くらい普通なのか? と、思ったりもしてしまうわけだ……

 で、困惑しきりな俺達を、メフィラは例によって無理矢理地下の転移室へと連れて行った。
「で、今回は誰と誰を連れていかれるんですかねぇ?」
 メフィラはそう言いながら俺達を見回してきた。
 ……そうなんだ……勇者のサポートに行くのには人数制限があって、一度に2人までしか従者として同行させることが出来ないんだ。
 すると、ビナスがいきなり右手をあげた。
「旦那様! 今回は私、同行させていただきますわ」
 あ~……そうだよな、ビナスは前回お留守番だったもんな。
「あ、でも仕事は大丈夫なのかい?」
「はい、さきほど店長さんに思念波でお休みを頂く旨ご連絡いたしましてご了承いただきましたですわ」
 そう言い、ニッコリ笑うビナス。
 まぁ、そうなるとビナスが行くのは決定として……
 で、俺が横を向くと、そこでは真正面から向き合ったまま火花を散らし合っているロミネスカスとミラッパの姿があった。
「ロミネスカスは本を読んでていいっぱよ」
「あなたこそ、好きなだけ魔獣を狩っていらしてはいかがかしら?」
 ……どうやら互いに譲る気はなさそうだ。
 俺は、一度ため息をつくと、紐を二本取り出し、その一本の先を赤く塗った。
 で、その紐を握ると、俺はその拳を2人に向かって差し出した。
「じゃ、くじ引きだ。赤い印の入っている紐を引いた方を連れて行く。あ、言っとくけど、魔法でサーチしたら反則負けだからな」
 俺がそう言うと、2人は雁首揃えて、俺の拳からはみ出している紐を凝視していき……

 2人同時に、紐を一本ずつ引いた。

 ガッツポーズのミラッパ。
 崩れ落ちるロミネスカス。

「あ~……じゃ、ロミネスカス、ちょっと別室で……」
 俺は、外れたロミネスカスを慰めるべく別室に連れて行こうとしたわけです。
 まぁ、することはアレなわけですけど……
 しかし、そんな俺達の前でメフィラは
「あ~、そういうのは帰ってからにしてしてくださいねぇ。今回マジ急いでいますんでねぇ」
 そう言うが早いか指をパチンとならした。
 すると、部屋の中の巨大な魔法陣が回転し始め、そして俺・ミラッパ・ビナスの3人はドリタニア世界へ向かって送り込まれていった。

 ……なんか、消え去る前にメフィラの首を締め上げてるロミネスカスの姿が見えた気がしたけど、まぁメフィラの自業自得だし、見なかったことにしておこう、うん。

ーつづく

 
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