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004章 インチーズ世界
4章002ー ちょ!?
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「はっはっはっはっはっはっは」
白銀勇者は高笑いを浮かべながら街道を歩いて行く
俺達3人と魔王軍全員
その全ての者達がイラッとして仕方が無い高笑いをあげながら、白銀勇者はゆっくりと魔王軍に向かって進んで行く。
背も高く、体格もガッシリしている。
顔も悪くないんじゃないか?
「……大丈夫、あなたの方が勝ってるわ」
「パ」
3回ほどマジで見比べられた上で太鼓判を押してもらえた俺なんだけど、
これでダメだしされてたら結構辛かったかも……
で、白銀勇者は、相変わらず街道を歩いている。
そんな白銀勇者に、魔王軍の先頭にいる……ありゃ、ドラゴニュートじゃないか?
そいつが一歩前に出て白銀勇者を指さした。
「白銀勇者よ、今日こそ貴様を倒してだな、その耳障りな高笑いを聞き納めにしてくれる!」
後半部分にはすごく同意出来る内容を口にした、そのドラゴニュートは
「者共、かかれ!」
って右手で合図をした。
それを受けて、白銀勇者を待ち構えるようにして立ち止まっていた魔王軍が一斉に動き出し、白銀勇者へ向かって殺到していく。
うわ!?
この数尋常じゃない……マジで100とかいるぞ。
さすがにこれは助っ人に行った方がいいかと俺が思っていると、その眼前で白銀勇者はおもむろにその腰の剣を抜いていく。
「私が魔王へといたる道……貴様らごときに邪魔はさせぬ! は~っはっはっはっはっは」
高笑いさえなければ格好いい台詞を口にしながら、白銀勇者はその場で剣を横薙ぎに一閃していく。
すると、
白銀勇者に殺到していた魔王軍の魔獣達が、一気に上下に真っ二つになっていく。
ちょうど、白銀勇者が剣を横薙ぎにした高さで、だ。
多分だけど、
白銀勇者が使ってる剣って、メガスラッシュ系の宝剣だろう。
魔力を込めてその剣を振るうと、前方にいる敵すべてを切り裂いてしまうっていうすげぇ武器だ。
前方に味方がいると巻き込んじまうこともあるので使いづらいんだが、その威力は数ある宝剣の中でもトップクラスっていわれている。
俺はまだ持ってないけど、この白銀勇者に万が一の事があった時にはありがたく頂戴したいと、結構本気で思っている。
で、
白銀勇者が3回剣を振るうと、あれだけいた魔王軍は、あっと言う間に残り10分の1くらいになっちまってる。
とはいえ、さっきの白銀勇者の斬激を生き残った奴らだけあって、結構やばそうな面々ばかりが顔を揃えている。
で、その1人として生き残ってるドラゴニュートは、悔しそうに歯ぎしりしながら
「くそう、白銀勇者め……またその飛び道具を使いおって、この卑怯者めが」
と、1人に対して100人以上で襲いかかってた自分達のことは棚にあげて、白銀勇者をディスってる。
「だがな、白銀勇者……今日の我々には秘密兵器があるんだ!」
ドラゴニュートは、そう言うと、もう一回後方へ視線を向けると、再度その手を振っていった。
ゴゴゴゴゴゴ……
その手の動きと同時に、なんか地面が激しく揺れ始めた。
「ウインダ、あれ!」
そう言いながらロミネスカスが指さした先を見て、俺は目を丸くした。
ロミネスカスが指さしたのって、ドラゴニュートの後方の山だったんだけど、
なんかね、その山がだんだん立ち上がってるんだよね……
よく見ると、それは山じゃなくて、山と見間違うほどにデカいゴーレムだった。
岩石や鉱石を集めて作られたらしいそいつは、ゆっくり立ち上がると、
ズシ~ン
ズシ~ン
周囲に足音を響かせながら白銀勇者の方へ向かって進み始めた。
いや、しかし……なんだ、このでかさ……
「……こんな大きなゴーレム……作った人はいったいどれほどの魔力をもっているというの?」
俺の横で、ロミネスカスも唖然としている。
ミラッパにいたっては
「ぱぁ……」
って言いながら、口をぽか~んとあけて見上げている始末だ。
で、だ
そんなデカブツを前にした白銀勇者なんだけど、
「愚かな……その程度で、この私が止まるとでも思ったかぁ!」
そう言うと、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
すさまじい気合いの入った声をあげながら剣を一閃していった。
しばしの間
ドゴ~~~~~~~~~~~~ン
白銀勇者の剣によるスラッシュを食らったゴーレムの胸の辺りですさまじい衝撃音が響いていき、土煙があがっていく。
だが、よくみると、今の一撃はゴーレムの体の表面にちょっとした傷を付けただかだったらしい。
一度立ち止まったゴーレムは、再び全身しようと、その足を上げた。
すると、白銀勇者は
「まだまだまだぁ」
そう言いながら、宝剣を振るいまくり始めた。
右から左へ
左から右へ
交互に絶え間なく宝剣を振るいまくる白銀勇者
その前方では、ゴーレムの胸の辺りが断続的に土煙をあげまくっていく。
とはいえ、やはり一撃で与えられる傷は小さい。
あのゴーレム、相当固く出来てるぞ……
「もしくは、魔法防御を発動しているのかももね」
ロミネスカスも頷いていく。
で、ミラッパはというと
「ぱぁ……」
ポカーンと口をあけたまま、未だにゴーレムを見上げていたわけだ。
◇◇
で、半日後。
俺達の目の前で、ゴーレムが崩れ落ちている。
白銀勇者は、半日あまりの間、その宝剣を一時も休むことなく振り続け、ついにあのゴーレムを破壊することに成功した。
……いや、コケの一念とけいうけど、マジでこれには恐れ入った。
で、俺達もその間結構働いていた。
白銀勇者はひたすらゴーレムへと攻撃を繰り返してたんだが、
「えぇい、かかれ!」
とまぁ、その周囲から襲いかかってきたドラゴニュートをはじめとする魔王軍は完全にスルーした。
「防御魔砲でもはってるのか?」
と、最初は思ったんだけど、
よく見てみると、白銀勇者……結構本気で魔王軍の残存部隊にボコられていた。
みるみる傷だらけになって、顔中血だらけになっていく。
「おいおいおい、なんで先に残存部隊の方を倒さないんだ?」
俺が慌てて駆け寄っていくと、白銀勇者のやつ
「雑魚など、いつでも倒せる!」
って、言いながら、相変わらずゴーレムへ攻撃を向けていた。
で、仕方ないので、俺達がその魔王軍の残存部隊を退治していったわけだ。
それなりに猛者ではあったけど、俺が剣、ミラッパが拳で襲いかかっていき、ロミネスカスが後方から魔法で追撃をしていく。
慌てて逃げだそうとした魔王軍なんだが、その後方では白銀勇者がスラッシュを打ちまくってるもんだから、その効果範囲が気になって下がるに下がれない。
というわけで、ほどなくして俺達は魔王軍の残存部隊を全員片付けた状態で、このゴーレムの崩壊を見つめているわけだ。
「ん?」
その時、俺は地上に転がっているゴーレムの残骸の中で何かが動いたのに気がついた。
その何かは、なんかヨロヨロしながら白銀勇者の方へと近づいてくる。
んで
崩れまくっているゴーレムの砂煙の中から姿を現したのは……
胸と股間だけを覆ってる衣装を身につけた、結構中年なおばさんだった。
相当な厚化粧で、髪はグリングリンな巻パーマ。
露出が高い衣装を着てはいるんだが、ちょっと脇のあたりのお肉が……
「ちょ……あの格好、恥ずかしいっぱ……」
こら、ミラッパ! 指さして笑わない!
で、まぁ、頭にでかい角が2本あるそのおばさんは、白銀勇者の前で立ち止まると、その視線を白銀勇者へと向けていった。
「こ……この魔王ツアッテリアが全ての魔力を注いで作り上げた『でっかいゴーレムくん』をよくぞ破壊した、白銀勇者」
「で、でっかいゴーレムくんって、な、なんてダサい……」
こら、ロミネスカス! 下向いて肩振るわせない!
っていうか、おばさん、魔王だったのかよ!?
で、だ、そのおばさんは、白銀勇者の前にへたり込んだ。
「……ゴーレムを維持するので魔力を使いきっちゃったわ……今のアタシじゃあんたに勝てないわ……」
そう言うと、魔王ツアッテリアは、その場で目を閉じた。
え? 何? もう終わるの?
っていうか、これで白銀勇者が魔王ツアッテリアを殺せば、仕事終了だよね?
うわぁ、なんか今回、楽な仕事だったなぁ
俺がそう思ってる目の前で、白銀勇者は俺の期待通りに魔王ツアッテリアの前に進んでいく。
「どうだ魔王ツアッテリアよ。これで思い知ったであろう?」
白銀勇者は、そう言いながら足元にへたり込んでいる魔王ツアッテリアを見下ろしていた。
だが
魔王ツアッテリアは、白銀勇者の言葉を聞くと、キッと目を見開き、白銀勇者を睨み付けていく。
「何が思い知ったかよ!? そんなにボロボロになっといて良く言うわね!
だいたい、今回負けたのだって、そこの3人の助っ人があったからじゃないの!
そんな助っ人がいるってわかってれば、私だってもっと作戦を練ってきてたわよ!」
白銀勇者を睨み付けながら一気にまくし立てた魔王ツアッテリアなんだが……なんつうか、なんて魔王らしからぬ発言だ? 魔王の威厳がこれっぽっちも感じられないんだが……
まぁ、いい……さ、白銀勇者、ちゃっちゃとその見苦しい魔王斬り殺しちゃってくださいな。
そう思ってる俺の前で、白銀勇者……なんか、うんうんと頷くと
「お前の言うことも一理あるな……わかった。今日は帰っていい。また準備を整えてから攻めてくるがいい」
この時
俺
ロミネスカス
ミラッパ
……俺達がどんな顔をしたか、想像してほしい……
そんな、超ド級に唖然としている俺達の前で、魔王ツアッテリアは立ち上がると
「くそう、また余裕かましちゃって……覚えてなさい! 次こそ倒してやるんだから」
そう言うと、魔王ツアッテリアの上空から羽の生えた魔獣が高速で舞い降りてきた。
魔獣は魔王ツアッテリアを抱きかかえると、そのまま空へと舞い上がっていく。
白銀勇者は腰に手をあてたまま、魔王ツアッテリアが消え去っていった方角をジッと見つめていたんだが……俺達3人は、その場に立ち尽くしたまま超ド級に唖然とし続けていた……
ーつづく
白銀勇者は高笑いを浮かべながら街道を歩いて行く
俺達3人と魔王軍全員
その全ての者達がイラッとして仕方が無い高笑いをあげながら、白銀勇者はゆっくりと魔王軍に向かって進んで行く。
背も高く、体格もガッシリしている。
顔も悪くないんじゃないか?
「……大丈夫、あなたの方が勝ってるわ」
「パ」
3回ほどマジで見比べられた上で太鼓判を押してもらえた俺なんだけど、
これでダメだしされてたら結構辛かったかも……
で、白銀勇者は、相変わらず街道を歩いている。
そんな白銀勇者に、魔王軍の先頭にいる……ありゃ、ドラゴニュートじゃないか?
そいつが一歩前に出て白銀勇者を指さした。
「白銀勇者よ、今日こそ貴様を倒してだな、その耳障りな高笑いを聞き納めにしてくれる!」
後半部分にはすごく同意出来る内容を口にした、そのドラゴニュートは
「者共、かかれ!」
って右手で合図をした。
それを受けて、白銀勇者を待ち構えるようにして立ち止まっていた魔王軍が一斉に動き出し、白銀勇者へ向かって殺到していく。
うわ!?
この数尋常じゃない……マジで100とかいるぞ。
さすがにこれは助っ人に行った方がいいかと俺が思っていると、その眼前で白銀勇者はおもむろにその腰の剣を抜いていく。
「私が魔王へといたる道……貴様らごときに邪魔はさせぬ! は~っはっはっはっはっは」
高笑いさえなければ格好いい台詞を口にしながら、白銀勇者はその場で剣を横薙ぎに一閃していく。
すると、
白銀勇者に殺到していた魔王軍の魔獣達が、一気に上下に真っ二つになっていく。
ちょうど、白銀勇者が剣を横薙ぎにした高さで、だ。
多分だけど、
白銀勇者が使ってる剣って、メガスラッシュ系の宝剣だろう。
魔力を込めてその剣を振るうと、前方にいる敵すべてを切り裂いてしまうっていうすげぇ武器だ。
前方に味方がいると巻き込んじまうこともあるので使いづらいんだが、その威力は数ある宝剣の中でもトップクラスっていわれている。
俺はまだ持ってないけど、この白銀勇者に万が一の事があった時にはありがたく頂戴したいと、結構本気で思っている。
で、
白銀勇者が3回剣を振るうと、あれだけいた魔王軍は、あっと言う間に残り10分の1くらいになっちまってる。
とはいえ、さっきの白銀勇者の斬激を生き残った奴らだけあって、結構やばそうな面々ばかりが顔を揃えている。
で、その1人として生き残ってるドラゴニュートは、悔しそうに歯ぎしりしながら
「くそう、白銀勇者め……またその飛び道具を使いおって、この卑怯者めが」
と、1人に対して100人以上で襲いかかってた自分達のことは棚にあげて、白銀勇者をディスってる。
「だがな、白銀勇者……今日の我々には秘密兵器があるんだ!」
ドラゴニュートは、そう言うと、もう一回後方へ視線を向けると、再度その手を振っていった。
ゴゴゴゴゴゴ……
その手の動きと同時に、なんか地面が激しく揺れ始めた。
「ウインダ、あれ!」
そう言いながらロミネスカスが指さした先を見て、俺は目を丸くした。
ロミネスカスが指さしたのって、ドラゴニュートの後方の山だったんだけど、
なんかね、その山がだんだん立ち上がってるんだよね……
よく見ると、それは山じゃなくて、山と見間違うほどにデカいゴーレムだった。
岩石や鉱石を集めて作られたらしいそいつは、ゆっくり立ち上がると、
ズシ~ン
ズシ~ン
周囲に足音を響かせながら白銀勇者の方へ向かって進み始めた。
いや、しかし……なんだ、このでかさ……
「……こんな大きなゴーレム……作った人はいったいどれほどの魔力をもっているというの?」
俺の横で、ロミネスカスも唖然としている。
ミラッパにいたっては
「ぱぁ……」
って言いながら、口をぽか~んとあけて見上げている始末だ。
で、だ
そんなデカブツを前にした白銀勇者なんだけど、
「愚かな……その程度で、この私が止まるとでも思ったかぁ!」
そう言うと、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
すさまじい気合いの入った声をあげながら剣を一閃していった。
しばしの間
ドゴ~~~~~~~~~~~~ン
白銀勇者の剣によるスラッシュを食らったゴーレムの胸の辺りですさまじい衝撃音が響いていき、土煙があがっていく。
だが、よくみると、今の一撃はゴーレムの体の表面にちょっとした傷を付けただかだったらしい。
一度立ち止まったゴーレムは、再び全身しようと、その足を上げた。
すると、白銀勇者は
「まだまだまだぁ」
そう言いながら、宝剣を振るいまくり始めた。
右から左へ
左から右へ
交互に絶え間なく宝剣を振るいまくる白銀勇者
その前方では、ゴーレムの胸の辺りが断続的に土煙をあげまくっていく。
とはいえ、やはり一撃で与えられる傷は小さい。
あのゴーレム、相当固く出来てるぞ……
「もしくは、魔法防御を発動しているのかももね」
ロミネスカスも頷いていく。
で、ミラッパはというと
「ぱぁ……」
ポカーンと口をあけたまま、未だにゴーレムを見上げていたわけだ。
◇◇
で、半日後。
俺達の目の前で、ゴーレムが崩れ落ちている。
白銀勇者は、半日あまりの間、その宝剣を一時も休むことなく振り続け、ついにあのゴーレムを破壊することに成功した。
……いや、コケの一念とけいうけど、マジでこれには恐れ入った。
で、俺達もその間結構働いていた。
白銀勇者はひたすらゴーレムへと攻撃を繰り返してたんだが、
「えぇい、かかれ!」
とまぁ、その周囲から襲いかかってきたドラゴニュートをはじめとする魔王軍は完全にスルーした。
「防御魔砲でもはってるのか?」
と、最初は思ったんだけど、
よく見てみると、白銀勇者……結構本気で魔王軍の残存部隊にボコられていた。
みるみる傷だらけになって、顔中血だらけになっていく。
「おいおいおい、なんで先に残存部隊の方を倒さないんだ?」
俺が慌てて駆け寄っていくと、白銀勇者のやつ
「雑魚など、いつでも倒せる!」
って、言いながら、相変わらずゴーレムへ攻撃を向けていた。
で、仕方ないので、俺達がその魔王軍の残存部隊を退治していったわけだ。
それなりに猛者ではあったけど、俺が剣、ミラッパが拳で襲いかかっていき、ロミネスカスが後方から魔法で追撃をしていく。
慌てて逃げだそうとした魔王軍なんだが、その後方では白銀勇者がスラッシュを打ちまくってるもんだから、その効果範囲が気になって下がるに下がれない。
というわけで、ほどなくして俺達は魔王軍の残存部隊を全員片付けた状態で、このゴーレムの崩壊を見つめているわけだ。
「ん?」
その時、俺は地上に転がっているゴーレムの残骸の中で何かが動いたのに気がついた。
その何かは、なんかヨロヨロしながら白銀勇者の方へと近づいてくる。
んで
崩れまくっているゴーレムの砂煙の中から姿を現したのは……
胸と股間だけを覆ってる衣装を身につけた、結構中年なおばさんだった。
相当な厚化粧で、髪はグリングリンな巻パーマ。
露出が高い衣装を着てはいるんだが、ちょっと脇のあたりのお肉が……
「ちょ……あの格好、恥ずかしいっぱ……」
こら、ミラッパ! 指さして笑わない!
で、まぁ、頭にでかい角が2本あるそのおばさんは、白銀勇者の前で立ち止まると、その視線を白銀勇者へと向けていった。
「こ……この魔王ツアッテリアが全ての魔力を注いで作り上げた『でっかいゴーレムくん』をよくぞ破壊した、白銀勇者」
「で、でっかいゴーレムくんって、な、なんてダサい……」
こら、ロミネスカス! 下向いて肩振るわせない!
っていうか、おばさん、魔王だったのかよ!?
で、だ、そのおばさんは、白銀勇者の前にへたり込んだ。
「……ゴーレムを維持するので魔力を使いきっちゃったわ……今のアタシじゃあんたに勝てないわ……」
そう言うと、魔王ツアッテリアは、その場で目を閉じた。
え? 何? もう終わるの?
っていうか、これで白銀勇者が魔王ツアッテリアを殺せば、仕事終了だよね?
うわぁ、なんか今回、楽な仕事だったなぁ
俺がそう思ってる目の前で、白銀勇者は俺の期待通りに魔王ツアッテリアの前に進んでいく。
「どうだ魔王ツアッテリアよ。これで思い知ったであろう?」
白銀勇者は、そう言いながら足元にへたり込んでいる魔王ツアッテリアを見下ろしていた。
だが
魔王ツアッテリアは、白銀勇者の言葉を聞くと、キッと目を見開き、白銀勇者を睨み付けていく。
「何が思い知ったかよ!? そんなにボロボロになっといて良く言うわね!
だいたい、今回負けたのだって、そこの3人の助っ人があったからじゃないの!
そんな助っ人がいるってわかってれば、私だってもっと作戦を練ってきてたわよ!」
白銀勇者を睨み付けながら一気にまくし立てた魔王ツアッテリアなんだが……なんつうか、なんて魔王らしからぬ発言だ? 魔王の威厳がこれっぽっちも感じられないんだが……
まぁ、いい……さ、白銀勇者、ちゃっちゃとその見苦しい魔王斬り殺しちゃってくださいな。
そう思ってる俺の前で、白銀勇者……なんか、うんうんと頷くと
「お前の言うことも一理あるな……わかった。今日は帰っていい。また準備を整えてから攻めてくるがいい」
この時
俺
ロミネスカス
ミラッパ
……俺達がどんな顔をしたか、想像してほしい……
そんな、超ド級に唖然としている俺達の前で、魔王ツアッテリアは立ち上がると
「くそう、また余裕かましちゃって……覚えてなさい! 次こそ倒してやるんだから」
そう言うと、魔王ツアッテリアの上空から羽の生えた魔獣が高速で舞い降りてきた。
魔獣は魔王ツアッテリアを抱きかかえると、そのまま空へと舞い上がっていく。
白銀勇者は腰に手をあてたまま、魔王ツアッテリアが消え去っていった方角をジッと見つめていたんだが……俺達3人は、その場に立ち尽くしたまま超ド級に唖然とし続けていた……
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