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002章 テルミネア世界
2章001ーいきなりクライマックスなんですけど?
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俺達の部屋は、中が4つに分かれてて
1つがキッチン併設のリビングで、ここは共用スペース。
あと3部屋は、俺、ロミネスカス、ミラッパの個室ってことになっている。
これとは別に風呂とトイレがあり、ここも共用だ。
で、ここは2階ってのもあって、角部屋にあたるリビングを覆う形で気持ち広めなベランダがあり、ここに洗濯をほすことになっているんだが。
「……ロミネスカス」
「なんですか? ウインダ」
「……ベランダに出られないんだが?」
俺は、さっき風呂場で洗ってきた服を片手に、顔を曇らせていた。
そんな俺の前で、
リビングの椅子に座っているロミネスカスは、手元の本から視線をはずすことなく、俺に気のない返事を返してくる。
……いや、あのだな
改めてベランダを見る俺。
そこには、巨大な植木鉢に根を張ってる、樹木っぽい何かがわさわさと林立してて、ベランダを完全に覆い尽くしている。
おかげで、今まで日当たりのよかったこのリビングの中が日中でも薄暗くなってしまっていて、昼間でも魔法灯を灯すか、自室に引きこもっておくしかない状態になっている。
で、この樹木なんだが……
ロミネスカスによると「プラントの幼木」というらしい。
本来なら地に植えたいそうなのだが、この寮の敷地内は
「それは許可しかねますねぇ、この建物、街中にありますのでねぇ」
と、管理人であるメフィラからだめ出しをくらったため、仕方なく今は巨大な植木鉢に植えているんだとか
「いつか近くに土地を買って、そこで栽培しましょう」
と言うロミネスカスなわけで、そのお金がたまるいつかまで、この木はここに居座る続けることになるらしい……
そもそもこの木がどんな木なのかも、俺にはさっぱりわからないんだが、
「何を言うのです、この木はですね、非常に画期的な……」
とまぁ、ロミネスカスに言うと、小一時間理解不能な言語を羅列されながら熱く語られるので、もう何も言わないことにしている。
んで
そんな中でも、しれっとリビングに出て、煌々と魔法灯をつけて本を読んでいるロミネスカス。
なぜ、わざわざ日当たりの悪いリビングで読むんだ? って話なわけなんだが……これも仕方ないんだ。
この数日の間に、コンビニおもてなし書店とかいう、この世界の魔法書物の専門店を見つけたロミネスカスは、毎日のようにそこに通い詰めていて、毎日のようにすごい量の本を買って帰ってくる。
その結果、わずか数日でロミネスカスの部屋は魔法書で足の踏み場もない状態になっている。
そのため、ロミネスカスは現在、寝起きもこのリビングでしている始末なのだ。
……まぁ、日中ロミネスカスが留守にすることが多くなり、ミラッパがその分ご機嫌なんだけどな……
そんなこの日
「相変わらずすごい部屋ですねぇ」
この寮の管理人であるメフィラが部屋にやってきた。
その小脇には、すごい寮の書類の束が抱えられているんだが……そういえばこの姿、久々に見た気がするんだが
「……ひょっとして、新しい仕事か?」
そう言う俺に、メフィラは
「察しが良いですねぇ、勇者ウインダ」
そう言いながら、メフィラは書類の束をバラバラっとめくると、その中から1枚の紙を差し出して来た。
俺、ロミネスカス、ミラッパの3人は、同時にその紙をのぞき込んでいく。
すると、そこには
『勇者ロステータの後始末』
と表題されており、その横にデカデカと『大至急』の赤い判子が押されている。
「これはですねぇ、この世界の女神から大至急ということで依頼がきたんですねぇ。
準備出来たら即向かって欲しいんですねぇ」
メフィラはそう言いながら俺達を見回していく。
んで
前回の事もあるので、俺達はこの依頼書を手に取りじっくりと読んでいく。
……なんせ前回は、勇者が30年引きこもってるなんて気がつかなかったからなぁ
メフィラも、わざと小さい文字で書いてやがったし。
で、
この依頼書を読んでいくとだな……
この勇者ロステータってのは、勇者の天啓を受けた際、2つの能力を授かったそうだ。
……いいねぇ、俺は1個だったよ
で、その2つというのが
・全能力の底上げ
と
・リセットスキル
なんだとか……
全能力の底上げはまぁ、よくわかる。
どの能力を強化してもらいたいか迷った勇者が最終的にたどりつく選択肢ナンバーワンだからな。
で、リセットスキル……これはあまり聞いたことがないんだが?
「リセットスキルというのはですねぇ、勇者が願えばすべてをやり直すことが出来る能力なんですねぇ。
たとえば、魔王を討伐に行った際に、「あ、これじゃ勝てない」って思ったらですねぇ、
「魔王討伐前に戻って準備し直したい!」って勇者が願えば、勇者だけそこまで戻れるんですねぇ。
その戻った世界では、基本、その勇者しかリセット前の記憶を持っていないのでねぇ、
魔王が攻撃パターンを変えることもないのでですねぇ、
リセットしながら攻略していけばですねぇ、
非常に効率的に、かつ被害も最小限で魔王を攻略出来るはずだったんですねぇ」
聞けば良いことずくめな気しかしないんだが……メフィラが最後を疑問系にしているのと、この案件が「大至急」で回ってきていることに、俺は胸騒ぎを覚えた。
「で? 勇者ロステータの後始末って、具体的に俺は何をしてくればいいんだ?」
そう聞く俺に、メフィラは小首をかしげると
「そうですねぇ……まぁ、そこは論より証拠といいますかですねぇ」
その場でパチンと指を鳴らした。
すると
俺達は皆、この建物の地下にある転移部屋に移動してて……って、おい!? もう魔法陣が起動してるじゃねぇか!?
「とにかくですねぇ、勇者のいない世界の魔王を片っ端から倒しちゃってくださいねぇ」
そういい、笑顔で手を振るメフィラ。
ちょっとまて!
マジでまだ準備がなんも出来てねぇってば!?
「申し訳ないですねぇ……今回はですねぇ、マジでやばいんで、このままお願いしますねぇ。
そのかわり、向こうのお金を多めにお渡ししておきますねぇ」
「い、いや、そうじゃなくてだな……」
……そこで、俺の意識はフェードアウトしていった。
あぁ、多分、これ
次目覚めたら向こうの世界ってパターンだな。
確か、テルミネア世界だったか……
◇◇
「ちょっと!? 勇者ロステータはどこにいったの!?」
「わ、わからん……急にかき消すように消えちまった……」
なんだ?
目覚めた俺の近くで、なんか切羽詰まった話し声が聞こえるぞ?
俺が周囲を見回すと
俺達が出現した壁の向こうに、女剣士と魔法使いらしき男が立っている。
まぁ、壁といっても、周囲が破壊されまくってるんで、かろうじて姿が見えないってくらいしか残ってないんだが……
んで、その向こうの女剣士と魔法使いなんだが、立っているといっても、2人とももうボロボロだ……
剣士が持ってる剣は折れちまってて使い物にならないのは明白だし……そもそも、体力がほとんど残ってない。
魔法使いもそうだ。
すでに魔力が枯渇状態で、真っ青な顔をしている。
今のこいつは意識を保っているのも辛い状態だろう。
よく見ると、壁際には弓使いらしいエルフの女が倒れている……あれは死んでるな。
そして、
その女剣士と魔法使いの向こうに
魔王が魔獣化して立っていた。
この魔王
なんか、何かを探しているのか、周囲をしきりと見回している。
そんな魔王を見上げながら、
女剣士と魔法使いは、
「勇者ロステータが消えちゃった今……」
「我々に……もう希望はない……か」
そう言い、がっくりと肩を落とした。
魔王は、ひとしきり周囲を見回し、自分の探している何かが発見出来なかったらしく、その視線を女剣士と魔法使いへ向けて行った。
「……どうやら貴様らが最後になったようだな」
魔王は、重低音でそう言うと、その右手を一度振り上げ、
そして、2人に向かって一気に振り下ろした。
っで、そこに俺が登場だ。
「な!?」
いきなりの乱入者に、目を見開く魔王。
だが、すでに振り下ろされている腕は止まらない。
「何者か知らぬが、その者らとともに散るがよい!」
そう言いながら、さらに腕に力を込めていく魔王。
うん、
ありがたいことに魔力はこもってない。
この2人がもう戦えないと悟って、物理的にぶしに来てる。
俺は腰の魔法袋から取り出した宝剣で、魔王の拳を受け止めた。
「っうぉ!? きつっ」
さすがは魔王ってとこか……ミラッパの時よりもかなりきつい……
すると、後方からロミネスカスがすかさず付加魔法を送ってくる。
身体能力超向上
身体鋼鉄化
筋力大増強
ありがてぇ! これで楽に受け止められるぜ!
「な、なにぃ!?」
自分の渾身の一振りを受け止められた魔王は、その場で愕然とした表情を浮かべていく。
だが
悪いな、初対面の魔王よ。
本番はこっからだ!
次の瞬間
魔王の全身に、俺の剣からすさまじい加重圧が襲いかかっていく。
それは、あっという間に魔王の全身を包み込んでいき、、魔獣化している魔王の巨体を宙にはじき飛ばした。
「ぬぐわぁ!?」
一度天井に激突し、そのまま床に倒れ込んでいく魔王。
「な……なんという力なのだ、これは……」
驚愕の声をあげながら、ヨロヨロとその状態を起こしていく魔王。
全反射(フルカウンター)の宝剣
敵から受けた物理的攻撃を、倍にして相手に返す事が出来る宝剣だ
一度相手の攻撃を受けきらないといけないとか
魔法攻撃が付与された場合、魔法部分はノーガードで俺に降り注ぐとか
色々癖のあるこいつだが、はまれば一番効果がある
つまりな、魔王。
お前は強大すぎる自分の力の前にひれ伏したんだ……誇っていいと思うぜ?
「ぬおお……まだだ……まだ終わってない……」
必死に両手を使い立ち上がろうとする魔王。
だが、
その魔王の顔面めがけてミラッパが跳躍した。
「往生際が悪いっぱ!」
そう言いながら、右の拳で魔王の横っ面をぶん殴ったミラッパ。
同時に、
魔王の首はあり得ない角度に曲がっていき、
ブチチチ……
何か、ねじ切れる音と同時に、地面に落下していった。
「……っうわぁ……えぐいな」
俺が、その光景に思わず眉をしかめていると、俺の目の前に
『このステージをクリアしました。
次のステージに向かいますか? はい/いいえ』
って文字が浮かび上がった。
「は? どういうことだ?」
俺は、その文字を見つめながら、その場で立ち尽くした。
-つづく
1つがキッチン併設のリビングで、ここは共用スペース。
あと3部屋は、俺、ロミネスカス、ミラッパの個室ってことになっている。
これとは別に風呂とトイレがあり、ここも共用だ。
で、ここは2階ってのもあって、角部屋にあたるリビングを覆う形で気持ち広めなベランダがあり、ここに洗濯をほすことになっているんだが。
「……ロミネスカス」
「なんですか? ウインダ」
「……ベランダに出られないんだが?」
俺は、さっき風呂場で洗ってきた服を片手に、顔を曇らせていた。
そんな俺の前で、
リビングの椅子に座っているロミネスカスは、手元の本から視線をはずすことなく、俺に気のない返事を返してくる。
……いや、あのだな
改めてベランダを見る俺。
そこには、巨大な植木鉢に根を張ってる、樹木っぽい何かがわさわさと林立してて、ベランダを完全に覆い尽くしている。
おかげで、今まで日当たりのよかったこのリビングの中が日中でも薄暗くなってしまっていて、昼間でも魔法灯を灯すか、自室に引きこもっておくしかない状態になっている。
で、この樹木なんだが……
ロミネスカスによると「プラントの幼木」というらしい。
本来なら地に植えたいそうなのだが、この寮の敷地内は
「それは許可しかねますねぇ、この建物、街中にありますのでねぇ」
と、管理人であるメフィラからだめ出しをくらったため、仕方なく今は巨大な植木鉢に植えているんだとか
「いつか近くに土地を買って、そこで栽培しましょう」
と言うロミネスカスなわけで、そのお金がたまるいつかまで、この木はここに居座る続けることになるらしい……
そもそもこの木がどんな木なのかも、俺にはさっぱりわからないんだが、
「何を言うのです、この木はですね、非常に画期的な……」
とまぁ、ロミネスカスに言うと、小一時間理解不能な言語を羅列されながら熱く語られるので、もう何も言わないことにしている。
んで
そんな中でも、しれっとリビングに出て、煌々と魔法灯をつけて本を読んでいるロミネスカス。
なぜ、わざわざ日当たりの悪いリビングで読むんだ? って話なわけなんだが……これも仕方ないんだ。
この数日の間に、コンビニおもてなし書店とかいう、この世界の魔法書物の専門店を見つけたロミネスカスは、毎日のようにそこに通い詰めていて、毎日のようにすごい量の本を買って帰ってくる。
その結果、わずか数日でロミネスカスの部屋は魔法書で足の踏み場もない状態になっている。
そのため、ロミネスカスは現在、寝起きもこのリビングでしている始末なのだ。
……まぁ、日中ロミネスカスが留守にすることが多くなり、ミラッパがその分ご機嫌なんだけどな……
そんなこの日
「相変わらずすごい部屋ですねぇ」
この寮の管理人であるメフィラが部屋にやってきた。
その小脇には、すごい寮の書類の束が抱えられているんだが……そういえばこの姿、久々に見た気がするんだが
「……ひょっとして、新しい仕事か?」
そう言う俺に、メフィラは
「察しが良いですねぇ、勇者ウインダ」
そう言いながら、メフィラは書類の束をバラバラっとめくると、その中から1枚の紙を差し出して来た。
俺、ロミネスカス、ミラッパの3人は、同時にその紙をのぞき込んでいく。
すると、そこには
『勇者ロステータの後始末』
と表題されており、その横にデカデカと『大至急』の赤い判子が押されている。
「これはですねぇ、この世界の女神から大至急ということで依頼がきたんですねぇ。
準備出来たら即向かって欲しいんですねぇ」
メフィラはそう言いながら俺達を見回していく。
んで
前回の事もあるので、俺達はこの依頼書を手に取りじっくりと読んでいく。
……なんせ前回は、勇者が30年引きこもってるなんて気がつかなかったからなぁ
メフィラも、わざと小さい文字で書いてやがったし。
で、
この依頼書を読んでいくとだな……
この勇者ロステータってのは、勇者の天啓を受けた際、2つの能力を授かったそうだ。
……いいねぇ、俺は1個だったよ
で、その2つというのが
・全能力の底上げ
と
・リセットスキル
なんだとか……
全能力の底上げはまぁ、よくわかる。
どの能力を強化してもらいたいか迷った勇者が最終的にたどりつく選択肢ナンバーワンだからな。
で、リセットスキル……これはあまり聞いたことがないんだが?
「リセットスキルというのはですねぇ、勇者が願えばすべてをやり直すことが出来る能力なんですねぇ。
たとえば、魔王を討伐に行った際に、「あ、これじゃ勝てない」って思ったらですねぇ、
「魔王討伐前に戻って準備し直したい!」って勇者が願えば、勇者だけそこまで戻れるんですねぇ。
その戻った世界では、基本、その勇者しかリセット前の記憶を持っていないのでねぇ、
魔王が攻撃パターンを変えることもないのでですねぇ、
リセットしながら攻略していけばですねぇ、
非常に効率的に、かつ被害も最小限で魔王を攻略出来るはずだったんですねぇ」
聞けば良いことずくめな気しかしないんだが……メフィラが最後を疑問系にしているのと、この案件が「大至急」で回ってきていることに、俺は胸騒ぎを覚えた。
「で? 勇者ロステータの後始末って、具体的に俺は何をしてくればいいんだ?」
そう聞く俺に、メフィラは小首をかしげると
「そうですねぇ……まぁ、そこは論より証拠といいますかですねぇ」
その場でパチンと指を鳴らした。
すると
俺達は皆、この建物の地下にある転移部屋に移動してて……って、おい!? もう魔法陣が起動してるじゃねぇか!?
「とにかくですねぇ、勇者のいない世界の魔王を片っ端から倒しちゃってくださいねぇ」
そういい、笑顔で手を振るメフィラ。
ちょっとまて!
マジでまだ準備がなんも出来てねぇってば!?
「申し訳ないですねぇ……今回はですねぇ、マジでやばいんで、このままお願いしますねぇ。
そのかわり、向こうのお金を多めにお渡ししておきますねぇ」
「い、いや、そうじゃなくてだな……」
……そこで、俺の意識はフェードアウトしていった。
あぁ、多分、これ
次目覚めたら向こうの世界ってパターンだな。
確か、テルミネア世界だったか……
◇◇
「ちょっと!? 勇者ロステータはどこにいったの!?」
「わ、わからん……急にかき消すように消えちまった……」
なんだ?
目覚めた俺の近くで、なんか切羽詰まった話し声が聞こえるぞ?
俺が周囲を見回すと
俺達が出現した壁の向こうに、女剣士と魔法使いらしき男が立っている。
まぁ、壁といっても、周囲が破壊されまくってるんで、かろうじて姿が見えないってくらいしか残ってないんだが……
んで、その向こうの女剣士と魔法使いなんだが、立っているといっても、2人とももうボロボロだ……
剣士が持ってる剣は折れちまってて使い物にならないのは明白だし……そもそも、体力がほとんど残ってない。
魔法使いもそうだ。
すでに魔力が枯渇状態で、真っ青な顔をしている。
今のこいつは意識を保っているのも辛い状態だろう。
よく見ると、壁際には弓使いらしいエルフの女が倒れている……あれは死んでるな。
そして、
その女剣士と魔法使いの向こうに
魔王が魔獣化して立っていた。
この魔王
なんか、何かを探しているのか、周囲をしきりと見回している。
そんな魔王を見上げながら、
女剣士と魔法使いは、
「勇者ロステータが消えちゃった今……」
「我々に……もう希望はない……か」
そう言い、がっくりと肩を落とした。
魔王は、ひとしきり周囲を見回し、自分の探している何かが発見出来なかったらしく、その視線を女剣士と魔法使いへ向けて行った。
「……どうやら貴様らが最後になったようだな」
魔王は、重低音でそう言うと、その右手を一度振り上げ、
そして、2人に向かって一気に振り下ろした。
っで、そこに俺が登場だ。
「な!?」
いきなりの乱入者に、目を見開く魔王。
だが、すでに振り下ろされている腕は止まらない。
「何者か知らぬが、その者らとともに散るがよい!」
そう言いながら、さらに腕に力を込めていく魔王。
うん、
ありがたいことに魔力はこもってない。
この2人がもう戦えないと悟って、物理的にぶしに来てる。
俺は腰の魔法袋から取り出した宝剣で、魔王の拳を受け止めた。
「っうぉ!? きつっ」
さすがは魔王ってとこか……ミラッパの時よりもかなりきつい……
すると、後方からロミネスカスがすかさず付加魔法を送ってくる。
身体能力超向上
身体鋼鉄化
筋力大増強
ありがてぇ! これで楽に受け止められるぜ!
「な、なにぃ!?」
自分の渾身の一振りを受け止められた魔王は、その場で愕然とした表情を浮かべていく。
だが
悪いな、初対面の魔王よ。
本番はこっからだ!
次の瞬間
魔王の全身に、俺の剣からすさまじい加重圧が襲いかかっていく。
それは、あっという間に魔王の全身を包み込んでいき、、魔獣化している魔王の巨体を宙にはじき飛ばした。
「ぬぐわぁ!?」
一度天井に激突し、そのまま床に倒れ込んでいく魔王。
「な……なんという力なのだ、これは……」
驚愕の声をあげながら、ヨロヨロとその状態を起こしていく魔王。
全反射(フルカウンター)の宝剣
敵から受けた物理的攻撃を、倍にして相手に返す事が出来る宝剣だ
一度相手の攻撃を受けきらないといけないとか
魔法攻撃が付与された場合、魔法部分はノーガードで俺に降り注ぐとか
色々癖のあるこいつだが、はまれば一番効果がある
つまりな、魔王。
お前は強大すぎる自分の力の前にひれ伏したんだ……誇っていいと思うぜ?
「ぬおお……まだだ……まだ終わってない……」
必死に両手を使い立ち上がろうとする魔王。
だが、
その魔王の顔面めがけてミラッパが跳躍した。
「往生際が悪いっぱ!」
そう言いながら、右の拳で魔王の横っ面をぶん殴ったミラッパ。
同時に、
魔王の首はあり得ない角度に曲がっていき、
ブチチチ……
何か、ねじ切れる音と同時に、地面に落下していった。
「……っうわぁ……えぐいな」
俺が、その光景に思わず眉をしかめていると、俺の目の前に
『このステージをクリアしました。
次のステージに向かいますか? はい/いいえ』
って文字が浮かび上がった。
「は? どういうことだ?」
俺は、その文字を見つめながら、その場で立ち尽くした。
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