とある勇者のアフターライフ ~勇者派遣会社活動記録

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)

文字の大きさ
上 下
9 / 42
001章 イゾルンダ世界

1章005ーその女達、それぞれの事情で

しおりを挟む
 自分のレベルや属性、獲得している称号なんかは、脳内で見ることが出来る。
 見ようと思うと、脳の中に一覧表がバッと広がるイメージだ。
 相手の物も見ようと思えば見れなくもないが、相手が見られたくないと強く意識していたりすると見難かったり、一部が見れなかったりする傾向がある。

 ただしこれは、俺が勇者として保有しているスキルの1つであり
 魔法使いであるロミネスカスは持っていない。

 それに、あくまでもこれは、俺の世界での話だし、この世界ではこのスキルが普通に皆使用出来る物である可能性も無いとは言い切れない。


 とにかくこのミラッパ
 俺がこの能力で確認したところ、

 ……魔王の娘だ


 ……やばいな……
 もし、俺の後方にいる救国の絆の奴らの中に、俺と似た能力を所有している者がいた場合、
 今までの報復だとか言い出して、ミラッパに乱暴を働きかねない。
 先の広場の一戦を経験してなければ、ただの可愛い女の子くらいにしか見えないしな……
 そっち方面での報復をしでかそうとする輩も、出かねない……

 とはいえ、
 ここは慎重に動かないとな……
 
 魔王の娘を手に入れたんだ……
 魔王相手の交渉材料に使えなくもない。
 相手の魔王が、子供のことなどお構いなしの極悪非道者だったらお手上げだが、現時点ではそれなりに扱っておくべきだろう……


「その……ウインダ様、その魔族の娘は一体何者でござるか?」
 俺がミラッパを見つめながら考え込んでいると、ミツルミが怪訝そうな表情で歩み寄ってきた。
 俺は、横目でミツルミへ視線を向けた。

 ……見たところ、ミラッパが魔王の娘と勘づいている様子はないな

「……見た目は娘だが、魔王軍の突撃部隊の隊長クラスの人材らしい。
 何かの交渉に使えるかもしれないから、今のうちは丁重に扱っておいた方がいいだろう」
「……て、丁重にと言われましても……その、あの広場での勢いで暴れられましたら……」
 俺の言葉に、ミツルミが困惑した表情を浮かべた。
 まぁ、そりゃそうだよな……ここで一番強いこいつが、一撃であそこまでやられたんだ……
「そこは心配ないよ。一応俺が隷属魔法をかけて、俺の指揮下に治めている……今のところ、こいつは俺の命令には抗えない」
 俺はそう言ってミラッパの頭に右手をかざした。
 すると、その額に俺の隷属化にあることを示す三角の文様が浮かび上がった。

 それを見たミツルミを始めとした救国の絆の皆は、ようやく安堵の息を漏らしていく。

 ……どうやら、この場はごまかせたようだ。

◇◇

 その後、再度ミツルミ達に協力の要請を受けた俺とロミネスカス。
 とりあえず、しばらく協力するということで話をまとめ、俺とロミネスカスは、この拠点の中でしばらく過ごすことになった。


「狭くて申し訳ござらぬ」
 そう言ってミツルミに案内された部屋は、ワンルームの個室だった。
 ありがたいことにシャワーとトイレも完備されている……まぁ、かなり無理矢理に設置されてるんだがな……
 部屋にはベッドが1つあり、そのベッドで室内の大半が覆われている。
 まぁ、その横のスペースで多少の剣技の訓練くらいは出来そうだ。
「ロミネスカス殿にも同様の部屋を用意したでござる。
 食事は日に3度誰かに持ってこさせるでござる。
 外出をご希望の場合は、お手数ですが拙者に申し出ていただきたい……一応この施設の責任者でもありますゆえ……」

 あとは、部屋の施設の簡単な使用の仕方と
 作戦会議の際には部屋のランプがなるので、さっきの会議室に集まってほしい……
 そんな説明をざっと受け、
「……では、しばしごゆるりと」
 ミツルミが部屋を出て行き、俺はベッドに腰を降ろした。

 おそらく、この部屋がこの施設の中で最高級なんだろうな……
 ってことは、他の奴らは多段ベッドかハンモックでの雑魚寝ってことだろう。

 まぁ、魔王軍の城塞都市の中にこんだけの施設を構築してるってだけでも
 結構頑張ってるっていえなくもないがな……


 程なくして、救国の絆の1人が夕食を持って来てくれた。
 メニューは、保存食の缶詰が1つと、具のないスープ……まぁ、そんなとこだろう。
 
「トレーは表に出しておいてください。後ほど回収にあがりますので。
 それと、何かご用事の際には、枕元のブザーを押してくだされば、私が参ります」
 そう言って、猫耳の娘は頭を下げて部屋を出て行った。

 それを見送った俺は、簡素な夕食を終えると、トレーを廊下に出し ベッドへと腰掛けた。
 ……しかし、どうしたもんかねぇ、この状況

 ……コンコン

 そんなことを考えていると、部屋の戸がノックされた。
「どうぞ、空いてるよ」
 俺が声を掛けると、
 ドアがあき、ロミネスカスが入って来た。
 ロミネスカスは、俺の部屋に入ると、即座に鍵をかけ、部屋全体に隠蔽魔法をかけていく……相変わらず用心深いなぁ
 ベッドに座っている俺。
 ロミネスカスは、その横に腰を降ろす……とはいえ、部屋のあちこちにむかって検索魔法をかけまくっている……まぁ、その気持ちはわからないでもないけど、もうちょっとあいつらのことを信用してもいいんじゃないか? とも思うんだが……

「……ここは異世界なんです。すべてを疑ってかかるくらいでちょうどいいのです」
 ロミネスカスはそう言いながら、ふぅ、とため息をついた。
 ……どうやら、部屋の検索が終了したようだ。

 で、
 ロミネスカスは俺に視線を向けると
「ウインダ……あの魔族の娘、本当は何者なんですか?」
 そう、俺に聞いてきた。
 ……まぁ、こいつは、俺の言った「魔王軍の突撃部隊の隊長クラスの人材」って説明に納得してないだろうとは思ってたけど
「……魔王の娘らしい」
 俺の言葉に、さすがのロミネスカスも、その顔を引きつらせた。

 おそらくは、魔王の幹部か四天王クラスを思い浮かべてたんだろう……
 まさかの魔王の身内だしな……そりゃ引きつりもするか

 ロミネスカスは、しばらくあれこれ思案を巡らせた後
「……で、あの娘を具体的にはどう使うつもりで?」
 そう聞いてきたんだけど
「俺に思いつくわけがないだろう?」
 俺はそう言いながらベッドに横になった。
「……お前も今、どうすべきかあれこれ考えてみたんだろう?……でも、何もいい手が思い浮かばなかった……だから俺に話を振ってみた……違うか?」
 俺の言葉に、ロミネスカスは苦笑しながらも頷いた。
「……そのとおりよ。
 魔王の娘が手にあるというのは、確かに大きい……交渉の手駒になり得るかも知れない……
 でも、この世界の魔王が、身内を身内とも思わない者であれば、何の意味も持ちませんしね……」
 ロミネスカスも、俺と同じ考えにたどり着いていたようだ……、まぁそりゃそうだよな……


 俺の世界
 大魔王の配下に、デスシャロットって魔王がいた。
 こいつの娘を3人捕縛し、こいつが占拠していた人族の都市を1つ返還する交渉に使用した。
 だが、デスシャロットは、交渉に応じるふりをして現れると、娘3人を殺し、俺達を殺そうとしやがった。
「人族に捕まるヘボい娘なぞ、持ったおぼえはなくってよぉ」
 だったかな……

 俺とロミネスカスは、そんな魔王を経験しているだけに
 どうしても、そういう所にまで思い至ってしまうわけだ……


 「仮に交渉の手駒に使えたとしても……ここまで圧倒的に不利な状況下では、どこまで効果が発揮するか……」
 そう言うと、ロミネスカスは大きな息を吐いて、俺の上にしなだれかかってきた。

 ……ちょっと待て……この状況下でそういう流れに持って行こうってのか?

「……こんな状況下でしょう? 私だって不安で仕方ないのよ……」
 そう言うと、ロミネスカスは、俺に口づけてきた。
 
 ったく
 お前、俺より一回り近く年上なんだから、こういう時はお前の方がだな……

◇◇

 深夜近く
 ロミネスカスは部屋を出て自室へ戻っていった。

 翌朝には、救国の絆の者達が朝食を持ってくるだろうし
 さすがにその時、同室にいたらまずいだろうって配慮なわけで……


 ……はぁ
 なんか、1回関係持って以降、なし崩しというか……アレに関しては完全にロミネスカスに主導権を握られっぱなしだよなぁ……

 ……まぁ、その……悪い気はしないんだがな……


 やれやれと思いながらも、俺は毛布にくるまって眠ろうとした。


 ……コン……コン

 ん?
 なんかまた戸がノックされたが……ロミネスカス、なんか忘れ物でもしたのか?
 俺はベッドから起き上がると、とりあえずズボンだけは掃いて戸へと歩いて行き、鍵を開けた。

 すると
 そこにはミツルミがいた。

「……お、お休みのところ、恐縮でござるが……ちと、拙者にお時間いただけないでござろうか?」
 ミツルミは、努めて明るくそう言いながら、俺に向かって笑顔を向けてくる。

 まぁ、さっきの今であれではあるけど……
 俺は部屋の中にミツルミを招き入れた。
「……お、お休みのところ、本当に申し訳ない……かたじけない……」
 ミツルミは、やたらめったら謝罪しながら部屋に入っていく。

 とりあえず俺は戸を閉め鍵をかけると、戸全体に遮閉魔法をかけた。
 ミツルミを疑いたくはないが……用心するに越したことはない。
 こうしておけば、万が一、誰かが後から部屋に入ってこようとしても、阻害出来る。

「で、何のようだ? 悪いが俺も今日は疲れてるんだが」
 俺がそう言うと、ミツルミは
「そ、そうでござるよね……そりゃ、当然でござる、申し訳ないでござる……」
 と、
 なんかベッドに腰掛けてうつむいたまま、謝罪の言葉を繰り返し続けてやがる

 ……しかしアレだな
 よく見て見ると、ミツルミのやつ、
 さっきまでの剣士然とした出で立ちじゃ無くて、和装の寝間着みたいなのに着替えているせいもあってか、ちょっと艶っぽい感じだ。

 とはいえ
 やっぱ年端もいってないんだろう……全体的には幼い印象がぬぐえない……胸もぺったんこだしな

 そんな、
 女性というか、女の子相手にちょっと失礼な考えを巡らせていると
 ミツルミは、ようやく意を決したかのように俺に顔を向け、そして言った。

「ウインダ殿……ど、どうか私に子種をいただけないだろうか?」

 ……は?
 ミツルミ、今、なんて言った?

 ポカンとする俺の前で
 ミツルミはその顔を真っ赤にしたまま
「そ、その、だな……わ、我ら救国の絆の女はだな、強き者の子を成すことも使命とされておる……き、貴殿なれば、我も異存ないのだが……お、お願い出来ないだろうか……」
 そう言うと、ミツルミは自分の着衣を脱ぎ去った。
 下着は着けてない……そのため、ミツルミは、すでに素っ裸だ……

 ……こうして見ると、
 ミツルミは、確かに胸はないんだが、スタイルは悪くない
 それに、顔も、いわゆる美少女顔だ……
 腰もくびれているし……胸はないんだが……

 って、ちょっと待て、俺
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ、ミツルミ」
 俺は、ミツルミの肩を掴むと、後方へ押し返していく。
「気持ちはわからんでもないが……今日あったばっかの男に、いきなり子種をとか、そりゃいくらなんでも……」
 そこまで言ったところで、
 ミツルミは俺の両手をふりほどくと、
「いいや、間違いはござらぬ……貴殿の子なら、絶対に強き者となる……拙者はそう確信しておる」
 そう言いながら、俺の胸に飛び込んできた。

 だ、だからそうじゃ無くてだな……

「その……よろしく頼む……」
 
 だ、だからそうじゃ無くてだな……

◇◇

 数刻後
 
 俺の腕枕の中で、ミツルミは眠っていた……
 いや、気絶してるっていった方がいいか……

 しかし……よりによって初めてだったとは……
 俺は、ちょっとした罪悪感を感じつつも、そんな相手に、5回もいたした自分を思い返し、改めてため息をついていった……


 ただ、まぁ
 俺に抱かれてた時にミツルミは、ホントただの女の子だった。
 こんな子が、先頭にたって戦わなきゃならないのが、この世界なんだな……

 俺は、ピクリともしないミツルミの頭を優しく撫でていった。

 本当なら、起こして部屋に返してやった方がいいんだろうけど
 ……まぁ、初めてだったんだし、今日くらいはいいだろう
 こんなご時世なんだし、少しは夢見れる時間があったって、罰はあたんないだろ……

 俺は
 とりあえずミツルミの下半身に回復魔法をかけ……ほら、初めてだったしさ
 そのまま、ミツルミを抱き枕代わりして眠りについた。

◇◇

 翌朝
 かなり早くに目を覚ましたミツルミは
「さ、さ、昨夜は、その……お情けをいただき、恐悦至極にございました……」
 ベッドに土下座し、感涙を流しながら、何度も何度も頭を下げた。

 その後、服を着直し、部屋を自室へと戻っていったミツルミなんだが

 その後ろ姿も、普通の女の子なんだよなぁ……

 俺は部屋に戻ると、ベッドに横になった。
 あぁ、もう……あれこれ感情がグチャグチャだけど……とりあえず寝よう。

 俺はゆっくり目を閉じ


……コンコン
「ウインダ様、朝食をお持ちしました」

 って、もうそんな時間だったのか……

「空いてるよ、どうぞ」
 俺がそういうと、昨夜の猫耳の女の子が食事のトレーを持って来てくれた。

 メニューは、昨日と同じ保存食の缶詰と……なんだ、この赤いご飯は?
 きょとんとする俺に、猫耳の女の子は
「昨夜は、ミツルミ様がおめでたい日になりましたので……」
 そう言い、嬉しそうに微笑んだ。

 ミツルミがめでたい……?

 ってか、猫耳のお嬢さん……なんでそこで、俺の顔を凝視しながらニコニコ微笑んでんだ?
 ってか……まさか、知ってんの!?

 俺が愕然とする中、
 猫耳の女の子は、ニコニコしながら部屋を出て行った。

 ……まぁ、なんだ
 もし仮に、昨夜の俺とミツルミの事が祝いってんで、この赤い飯が出てるんならだな
 あんな事でも、こうして救国の絆の奴らを笑顔に出来てるんだし、まぁいっか……

 って、思ったんだが

……ドンドンドンドンドンドン
「ウインダ、話があります、すぐにこの戸を開けなさい」
 その直後、俺の部屋の戸が早鐘のように乱打され、ロミネスカスの大声が聞こえてきた。

 ……うわ
 1人笑顔になれない人がいたよ……


-つづく


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...