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序章・デコナ世界→パルマ世界
昨夜はお楽しみでしたね
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「お待たせいたしましたねぇ」
いまだに頭を抱えている俺と
いまだに号泣し続けているロミネスカスの前に、相変わらず書類の束を小脇に抱えたメフィラが笑顔で現れた。
「この世界におけます、貴方方お2人の社員寮といいますか、住む場所の準備が出来ましたので、ご案内しますねぇ」
そういうと、メフィラは右手の人差し指をくるっと回した。
すると
俺、ロミネスカス、そしてメフィラの3人は、石造りの建物の中に移動した。
窓が開いていたので、視線を向けてみると
ここは2階にあたるらしく、階下には街道があって、人が多く往来している。
ただ
周囲には、石の家よりも木の家の方が多く、この家は若干目立ち気味になっている気がしないでもない。
「ここはですねぇ
みなさんが暮らしていた世界とは違う世界でですねぇ、
王都パルマが支配する世界の、ド田舎にあります辺境都市ブラコンベの街中なんですねぇ」
メフィラの言う、ド田舎ってのに、ちょっとひかかったけど
まぁ、俺の仕事ってのは、他の異世界で助けを必要としている別の勇者の手伝いをするってことだし、まぁ、王都のど真ん中に住む場所がなくても問題はないよな。
……それにまぁ、もともと田舎育ちの俺としては、そんな田舎に住める方が、どこかありがたくもある。
そんな俺に向かって、メフィラは新しい書類に目を通しながら、言葉を続けた。
「まずですねぇ、
この建物ですがねぇ、我が勇者派遣会社の社員寮兼事務所になりますねぇ。
石造りの地下1階地上3階ですねぇ……あ、地下は表向きはないことになってますのでご内密にお願いしますねぇ
1階と地下階層が事務所スペースですねぇ
2階と3階が社員寮になりますねぇ。
で、ウインダ様と、ロミネスカスさんには、この部屋を使用していただきますねぇ。
部屋代と光熱水費は無料ですけど、それ以外の食費や衣類費などはご自分でご負担くださいねぇ
あ、ちなみに、私が寮長を兼ねていますので、何かありましたら1階の入口横にあります管理人室をお尋ねくださいねぇ」
って、一気にまくし立てたメフィラ。
その話の途中、
俺は、住むように言われたこの部屋を見回していく。
みたところ部屋は3つ。バストイレ付で……まぁ、豪勢じゃないけど、暮らすには十分だろう。
ベッドやタンスなんかもいくつか事前に準備してくれてるみたいだし、ある意味ありがたいかな。
「それでですねぇ
この世界での皆さんはですねぇ、この街を拠点にしている冒険者ってことになってますので、口裏は会わせてくださいねぇ。
派遣会社の仕事がない時はですねぇ
この世界で好きに過ごしてくださってかまわないですねぇ
働くもよしですねぇ
遊ぶもよしですねぇ
基本自由にしてくださってもいいのですが、
派遣会社の仕事は常に最優先してくださいねぇ。
あわせて、自分が異世界からやってきた、勇者派遣会社の社員であることを公言することは御法度ですからねぇ
この2つを破ったら……」
ここで、メフィラ……なんか、すっごい怖いオーラを背から出して笑ったよ、おい。
やべぇ、あのオーラ……大魔王のより怖かった気がするぞ……
「と、まぁ、そんな感じでよろしくお願いしますねぇ」
そう言うと、メフィラは、普通の笑顔に戻り、ニッコリ笑って部屋を出て行った。
「……ホントにここ、異世界なのね」
メフィラが出て行った後、ロミネスカスは窓の外を見ながら、なんか遠い目をしてる。
そりゃそうだよな
大魔王をやっと倒して
これからやっと結婚して幸せな家庭を……ってのが、一瞬にしてぶち壊れたんだもんな。
「なぁ、ロミネスカス。
荷物の整理がすんだら、ちょっと街に出てみないか?
食事とかも調達しないといけないみたいだしさ。」
「賛成ね。では、準備するから少しまってくれるかしら」
そう言って、ロミネスカスは、奥の部屋へ移動した。
なんとなく、奥の部屋がロミネスカスの部屋で、角のこの部屋が俺の部屋みたいになったな。
ま、不都合があれば、また話し合って変えればいいか。
俺は、ベッドに腰掛けると魔法袋の中身を確認した。
中には、大魔王討伐に際して準備した物が、まだ結構残っている。
とりあえず、平均的な冒険者の服装に着替えた俺は、財布を取り出して。
中には、元いた世界の硬貨しかないんだけど……メフィラに頼んだら両替とかしてもらえるのかな?
あれこれ魔法袋の中身をチェックしていると、
「お待たせ」
そう言いながらロミネスカスが部屋から出てきた。
ロミネスカスも、普通の魔法使い風の出で立ちに着替えている。
先ほど、窓から見下ろした皆も、そんな感じだったし、まぁ、問題無いだろう。
俺達は連れだって1階へ移動した。
1階の入口横を見て見ると、戸に「管理人室」って書かれた札が貼ってあった。
俺がノックすると
「はいですねぇ」
そう言いながら、メフィラが、例によって小脇に書類を抱えて出てきた。
「あのさ、この硬貨なんだけど、この世界の通貨と変えて貰う事って出来ないのかな?」
「あ~。残念ですねぇ、そういうサービスはおこなってないんですねぇ」
げ、マジか!?
となると、俺、この世界で無一文ってことになるんだけど
給料の前借りとか頼めるのか……なんて俺が困惑していると
ロミネスカスが魔法袋から魔石を取り出し
「では、これを買い取って貰う事は可能ですか?」
そうメフィラに声をかけていく。
で
それを見たメフィラ
フンフンと何やら魔石を見回していくと。
「そうですね、これならまぁ、これくらいでよろしければ……」
そう言って、ロミネスカスの耳元でボソボソと……
するとロミネスカスは
「それはあくどくないですか? せめてこれくらいは……」
そう言って、メフィラの耳元でボソボソと……
で
2人して相当回数ささやきあいをした結果
「……仕方ありませんねぇ、
今回だけの大盤振る舞いですからねぇ」
メフィラは、渋々といった感じで、この世界の硬貨の詰まった布袋をロミネスカスに手渡しました。
「えぇ、よく肝に銘じておきますわ」
そんなメフィラに、ロミネスカス、すっごい言い笑顔を返してました。
でもまぁ
これでしばらくは、この世界で飲み食いしたり買い物するのにも困らないな。
俺は、ロミネスカスに向かって手を会わせた。
そんな俺に、ロミネスカスは
「まったく、アナタは私がいないとほんと何も出来ないのですね」
そう言って、ため息をついた。
今日の俺は、それに反論出来る術をもっていないので、おとなしく聞いておくことにした。
-つづく
俺達は社員寮を出て、街道をブラブラと歩いて回った。
このブラコンベ
メフィラがいったように、辺境の田舎町らしく、亜人がやたら多い。
逆に、人種はほとんど見かけないな。
店の数もそんなに多くなく、食事をどうしようかと思っていると、何やら街の外れの方にえらく賑わってる店があった。
コンビニおもてなし2号店?
とりあえず入ってみると、店は小さいけど
弁当やら食べ物やらが割とあれこれ販売している。
鍋や武具、それに魔法薬も扱ってるんだけど
「……ウインダ、この魔法薬、ちょっとすごいわよ」
って、ロミネスカスがびっくりしていた。
なんでも、俺達の世界の上位魔法薬以上の効果を持ってる薬がゴロゴロ並んでいるらしい……え?、まじ?
で、まぁ、そんな薬に感動していると
客が、不思議な動きをしているのに気づいた。
なんか、店の奥にある大きなガラスの箱から飲み物を取り出し、食い物と一緒に支払いを済ませると、そのまま店の屋上へ向かってみんな歩いて行ってる。
で
俺達も、それに習って
他の客達がこぞって購入しているスアビールとかいうのと、弁当を買って店の屋上へ
「あんな巨大な魔法冷蔵庫、初めて見ました……」
なんか、ロミネスカスのような上級魔道士がびっくりしっぱなしってのも、すごいな、と、思いながらも、まぁ、僕とロミネスカスは、店の屋上の一角に腰を落ち着けて
「とりあえず、お疲れ」
「……お疲れ様でした」
と、そのスアビールをあけて乾杯し、まずは一口
ごく……
……ごっごっごっごっごっごっごっごっご……ぷはぁ!?
俺とロミネスカスは、一気にそれを飲み干すと、2人揃って店内に向かって駆け出した。
「な、なんだあのスアビールっての、すっげうまい!」
「ウインダ、私は10本買いますが」
「あ、俺もそんだけ!」
階段を駆け下りた俺達は、それぞれ10本ずつスアビールを購入し、再び店の屋上へ
で、
その10本も、すぐ無くなったので、再度追加を購入しに店に向かったんだけど
「お客様、大変もうしわけないのですが、今日のスアビールの入荷分は終了してしましまして……」
◇◇
結構ショックを受けながら、俺とロミネスカスは部屋に戻っていた。
まぁ、飲み足りなくはあるけれど、それなりには酔っ払っているわけです。
すると、
一度自分の部屋に戻っていたロミネスカスが、その隙間から顔を出し
「……ウインダ、わかっていると思いますが、
私は婚約破棄の痛手で、精神的にとても傷ついています。
右も左もわからない異世界に来て、とても心細く思っています。
そんな中、アルコールが入って、若干正気ではありません。
いいですね?
そんな状態の女を襲いになんて、絶対にこないでくださいね?」
そう言うと、パタンと戸を閉じた。
ったく、信用ないな
そんな弱ってる女のさ、その弱みにつけ込むような真似しないっての。
ロミネスカスが、婚約者に逃げられたように
俺も、結婚約束してた相手を寝取られたわけだし……
今のロミネスカスの気持ち、わからないでもないもんな……
俺は寝間着に着替えると、そのままベッドに横になった。
◇◇
どれだけ時間がたったんだろう。
俺は、息苦しさを覚えて目を覚ました。
ビールのおかげで、心地よく眠れてたんだけど……なんだ、一体?
そう思って目を開けると、
俺の上に、ロミネスカスが馬乗りになっていた。
素っ裸で
は?
なんで?
困惑する俺に、ロミネスカスはいきなりキスしてきたかと思うと、
「あれだけ言ったのに、なんで夜這いにこないのですか?
あまつさえ、先に寝ているなんて、もってのほかでしょう?」
そう言うと、再び俺に口づけてくる。
舌を入れ、俺の舌をすごい勢いで貪っていく。
って、
ちょ、ちょっと待って!?
~以下回想
「……ウインダ、わかっていると思いますが、
私は婚約破棄の痛手で、精神的にとても傷ついています。
右も左もわからない異世界に来て、とても心細く思っています。
そんな中、アルコールが入って、若干正気ではありません。
いいですね?
そんな状態の女を襲いになんて、絶対にこないでくださいね?」
~ここまで回想
「そう自分で言ってたよね?」
「そんなの、『襲いに来い』の裏返しに決まっているではないですか! そんなこともわからないのですか!」
「あぁ、そんなのわかるわけが、むぐ……」
ここで、3度目のキスをされ、
そっから俺は……
◇◇
翌朝
俺は自分のベッドで目を覚ました。
その横には、ロミネスカスがいる。
2人とも素っ裸だ……
……なんていうか……やっちまったなぁ、って感情しか浮かんでこないんだけど、
俺の横で、安らかな寝顔をしているロミネスカスを見ていると、
なんていうか、この世界で2人ぼっちなんだし、俺が守ってやらないと……なんて思ってたら
朝の生理現象といいますか、一部が妙に元気になってたんだけど
「あら? 朝から?」
って、なんでそこで目を覚ますかな、ロミネスカス。
慌てて逃げようとする俺を巧みに誘導していき、
気がつけば俺は、朝からロミネスカスに抱きしめられてたわけでして……
どうやら俺は
当分、ロミネスカスの尻に敷かれることになりそうだ……
ーつづく
いまだに頭を抱えている俺と
いまだに号泣し続けているロミネスカスの前に、相変わらず書類の束を小脇に抱えたメフィラが笑顔で現れた。
「この世界におけます、貴方方お2人の社員寮といいますか、住む場所の準備が出来ましたので、ご案内しますねぇ」
そういうと、メフィラは右手の人差し指をくるっと回した。
すると
俺、ロミネスカス、そしてメフィラの3人は、石造りの建物の中に移動した。
窓が開いていたので、視線を向けてみると
ここは2階にあたるらしく、階下には街道があって、人が多く往来している。
ただ
周囲には、石の家よりも木の家の方が多く、この家は若干目立ち気味になっている気がしないでもない。
「ここはですねぇ
みなさんが暮らしていた世界とは違う世界でですねぇ、
王都パルマが支配する世界の、ド田舎にあります辺境都市ブラコンベの街中なんですねぇ」
メフィラの言う、ド田舎ってのに、ちょっとひかかったけど
まぁ、俺の仕事ってのは、他の異世界で助けを必要としている別の勇者の手伝いをするってことだし、まぁ、王都のど真ん中に住む場所がなくても問題はないよな。
……それにまぁ、もともと田舎育ちの俺としては、そんな田舎に住める方が、どこかありがたくもある。
そんな俺に向かって、メフィラは新しい書類に目を通しながら、言葉を続けた。
「まずですねぇ、
この建物ですがねぇ、我が勇者派遣会社の社員寮兼事務所になりますねぇ。
石造りの地下1階地上3階ですねぇ……あ、地下は表向きはないことになってますのでご内密にお願いしますねぇ
1階と地下階層が事務所スペースですねぇ
2階と3階が社員寮になりますねぇ。
で、ウインダ様と、ロミネスカスさんには、この部屋を使用していただきますねぇ。
部屋代と光熱水費は無料ですけど、それ以外の食費や衣類費などはご自分でご負担くださいねぇ
あ、ちなみに、私が寮長を兼ねていますので、何かありましたら1階の入口横にあります管理人室をお尋ねくださいねぇ」
って、一気にまくし立てたメフィラ。
その話の途中、
俺は、住むように言われたこの部屋を見回していく。
みたところ部屋は3つ。バストイレ付で……まぁ、豪勢じゃないけど、暮らすには十分だろう。
ベッドやタンスなんかもいくつか事前に準備してくれてるみたいだし、ある意味ありがたいかな。
「それでですねぇ
この世界での皆さんはですねぇ、この街を拠点にしている冒険者ってことになってますので、口裏は会わせてくださいねぇ。
派遣会社の仕事がない時はですねぇ
この世界で好きに過ごしてくださってかまわないですねぇ
働くもよしですねぇ
遊ぶもよしですねぇ
基本自由にしてくださってもいいのですが、
派遣会社の仕事は常に最優先してくださいねぇ。
あわせて、自分が異世界からやってきた、勇者派遣会社の社員であることを公言することは御法度ですからねぇ
この2つを破ったら……」
ここで、メフィラ……なんか、すっごい怖いオーラを背から出して笑ったよ、おい。
やべぇ、あのオーラ……大魔王のより怖かった気がするぞ……
「と、まぁ、そんな感じでよろしくお願いしますねぇ」
そう言うと、メフィラは、普通の笑顔に戻り、ニッコリ笑って部屋を出て行った。
「……ホントにここ、異世界なのね」
メフィラが出て行った後、ロミネスカスは窓の外を見ながら、なんか遠い目をしてる。
そりゃそうだよな
大魔王をやっと倒して
これからやっと結婚して幸せな家庭を……ってのが、一瞬にしてぶち壊れたんだもんな。
「なぁ、ロミネスカス。
荷物の整理がすんだら、ちょっと街に出てみないか?
食事とかも調達しないといけないみたいだしさ。」
「賛成ね。では、準備するから少しまってくれるかしら」
そう言って、ロミネスカスは、奥の部屋へ移動した。
なんとなく、奥の部屋がロミネスカスの部屋で、角のこの部屋が俺の部屋みたいになったな。
ま、不都合があれば、また話し合って変えればいいか。
俺は、ベッドに腰掛けると魔法袋の中身を確認した。
中には、大魔王討伐に際して準備した物が、まだ結構残っている。
とりあえず、平均的な冒険者の服装に着替えた俺は、財布を取り出して。
中には、元いた世界の硬貨しかないんだけど……メフィラに頼んだら両替とかしてもらえるのかな?
あれこれ魔法袋の中身をチェックしていると、
「お待たせ」
そう言いながらロミネスカスが部屋から出てきた。
ロミネスカスも、普通の魔法使い風の出で立ちに着替えている。
先ほど、窓から見下ろした皆も、そんな感じだったし、まぁ、問題無いだろう。
俺達は連れだって1階へ移動した。
1階の入口横を見て見ると、戸に「管理人室」って書かれた札が貼ってあった。
俺がノックすると
「はいですねぇ」
そう言いながら、メフィラが、例によって小脇に書類を抱えて出てきた。
「あのさ、この硬貨なんだけど、この世界の通貨と変えて貰う事って出来ないのかな?」
「あ~。残念ですねぇ、そういうサービスはおこなってないんですねぇ」
げ、マジか!?
となると、俺、この世界で無一文ってことになるんだけど
給料の前借りとか頼めるのか……なんて俺が困惑していると
ロミネスカスが魔法袋から魔石を取り出し
「では、これを買い取って貰う事は可能ですか?」
そうメフィラに声をかけていく。
で
それを見たメフィラ
フンフンと何やら魔石を見回していくと。
「そうですね、これならまぁ、これくらいでよろしければ……」
そう言って、ロミネスカスの耳元でボソボソと……
するとロミネスカスは
「それはあくどくないですか? せめてこれくらいは……」
そう言って、メフィラの耳元でボソボソと……
で
2人して相当回数ささやきあいをした結果
「……仕方ありませんねぇ、
今回だけの大盤振る舞いですからねぇ」
メフィラは、渋々といった感じで、この世界の硬貨の詰まった布袋をロミネスカスに手渡しました。
「えぇ、よく肝に銘じておきますわ」
そんなメフィラに、ロミネスカス、すっごい言い笑顔を返してました。
でもまぁ
これでしばらくは、この世界で飲み食いしたり買い物するのにも困らないな。
俺は、ロミネスカスに向かって手を会わせた。
そんな俺に、ロミネスカスは
「まったく、アナタは私がいないとほんと何も出来ないのですね」
そう言って、ため息をついた。
今日の俺は、それに反論出来る術をもっていないので、おとなしく聞いておくことにした。
-つづく
俺達は社員寮を出て、街道をブラブラと歩いて回った。
このブラコンベ
メフィラがいったように、辺境の田舎町らしく、亜人がやたら多い。
逆に、人種はほとんど見かけないな。
店の数もそんなに多くなく、食事をどうしようかと思っていると、何やら街の外れの方にえらく賑わってる店があった。
コンビニおもてなし2号店?
とりあえず入ってみると、店は小さいけど
弁当やら食べ物やらが割とあれこれ販売している。
鍋や武具、それに魔法薬も扱ってるんだけど
「……ウインダ、この魔法薬、ちょっとすごいわよ」
って、ロミネスカスがびっくりしていた。
なんでも、俺達の世界の上位魔法薬以上の効果を持ってる薬がゴロゴロ並んでいるらしい……え?、まじ?
で、まぁ、そんな薬に感動していると
客が、不思議な動きをしているのに気づいた。
なんか、店の奥にある大きなガラスの箱から飲み物を取り出し、食い物と一緒に支払いを済ませると、そのまま店の屋上へ向かってみんな歩いて行ってる。
で
俺達も、それに習って
他の客達がこぞって購入しているスアビールとかいうのと、弁当を買って店の屋上へ
「あんな巨大な魔法冷蔵庫、初めて見ました……」
なんか、ロミネスカスのような上級魔道士がびっくりしっぱなしってのも、すごいな、と、思いながらも、まぁ、僕とロミネスカスは、店の屋上の一角に腰を落ち着けて
「とりあえず、お疲れ」
「……お疲れ様でした」
と、そのスアビールをあけて乾杯し、まずは一口
ごく……
……ごっごっごっごっごっごっごっごっご……ぷはぁ!?
俺とロミネスカスは、一気にそれを飲み干すと、2人揃って店内に向かって駆け出した。
「な、なんだあのスアビールっての、すっげうまい!」
「ウインダ、私は10本買いますが」
「あ、俺もそんだけ!」
階段を駆け下りた俺達は、それぞれ10本ずつスアビールを購入し、再び店の屋上へ
で、
その10本も、すぐ無くなったので、再度追加を購入しに店に向かったんだけど
「お客様、大変もうしわけないのですが、今日のスアビールの入荷分は終了してしましまして……」
◇◇
結構ショックを受けながら、俺とロミネスカスは部屋に戻っていた。
まぁ、飲み足りなくはあるけれど、それなりには酔っ払っているわけです。
すると、
一度自分の部屋に戻っていたロミネスカスが、その隙間から顔を出し
「……ウインダ、わかっていると思いますが、
私は婚約破棄の痛手で、精神的にとても傷ついています。
右も左もわからない異世界に来て、とても心細く思っています。
そんな中、アルコールが入って、若干正気ではありません。
いいですね?
そんな状態の女を襲いになんて、絶対にこないでくださいね?」
そう言うと、パタンと戸を閉じた。
ったく、信用ないな
そんな弱ってる女のさ、その弱みにつけ込むような真似しないっての。
ロミネスカスが、婚約者に逃げられたように
俺も、結婚約束してた相手を寝取られたわけだし……
今のロミネスカスの気持ち、わからないでもないもんな……
俺は寝間着に着替えると、そのままベッドに横になった。
◇◇
どれだけ時間がたったんだろう。
俺は、息苦しさを覚えて目を覚ました。
ビールのおかげで、心地よく眠れてたんだけど……なんだ、一体?
そう思って目を開けると、
俺の上に、ロミネスカスが馬乗りになっていた。
素っ裸で
は?
なんで?
困惑する俺に、ロミネスカスはいきなりキスしてきたかと思うと、
「あれだけ言ったのに、なんで夜這いにこないのですか?
あまつさえ、先に寝ているなんて、もってのほかでしょう?」
そう言うと、再び俺に口づけてくる。
舌を入れ、俺の舌をすごい勢いで貪っていく。
って、
ちょ、ちょっと待って!?
~以下回想
「……ウインダ、わかっていると思いますが、
私は婚約破棄の痛手で、精神的にとても傷ついています。
右も左もわからない異世界に来て、とても心細く思っています。
そんな中、アルコールが入って、若干正気ではありません。
いいですね?
そんな状態の女を襲いになんて、絶対にこないでくださいね?」
~ここまで回想
「そう自分で言ってたよね?」
「そんなの、『襲いに来い』の裏返しに決まっているではないですか! そんなこともわからないのですか!」
「あぁ、そんなのわかるわけが、むぐ……」
ここで、3度目のキスをされ、
そっから俺は……
◇◇
翌朝
俺は自分のベッドで目を覚ました。
その横には、ロミネスカスがいる。
2人とも素っ裸だ……
……なんていうか……やっちまったなぁ、って感情しか浮かんでこないんだけど、
俺の横で、安らかな寝顔をしているロミネスカスを見ていると、
なんていうか、この世界で2人ぼっちなんだし、俺が守ってやらないと……なんて思ってたら
朝の生理現象といいますか、一部が妙に元気になってたんだけど
「あら? 朝から?」
って、なんでそこで目を覚ますかな、ロミネスカス。
慌てて逃げようとする俺を巧みに誘導していき、
気がつけば俺は、朝からロミネスカスに抱きしめられてたわけでして……
どうやら俺は
当分、ロミネスカスの尻に敷かれることになりそうだ……
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