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クマさんと、カキクとピリストマッククロー
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その夜、僕はシャルロッタと一緒にピリの食堂へと出向きました。
食堂は、シャルロッタの邸宅のすぐ近くにあります。
木造の平屋で『ピリの台所』という看板が出ていました。
店内はそんなに広くはなくて、4人が座れる丸テーブル席が6つと、最大6人座れる四角いテーブル席が窓際に2つ。
そして厨房に接している壁にカウンター席が設けられていて、ここに5人座れるよう椅子が設置されています。
僕達は、ここへ夕食を食べに来たわけなんだけど……店内はお客さんでいっぱいでした。
いつもなら、夕方の時間帯はお店を閉めて、シャルロッタの邸宅に食事を作りに来てくれているピリなんだけど、
「今日はお客さんが途切れないのよぉ、シャルロッタ様もクマ様も悪いけど食べに来てくれない?」
そんな伝言を受け取った僕とシャルロッタは、こうしてお店にやってきたわけなのですが……確かに、お店はすごくごった返していたんです。
まだ夕食の時間帯には早いにもかかわらず、席はすべて埋まっています。
しかも、店の外には順番待ちの列まで出来ていました。
ピリの台所では、3人の女の子が接客係として働いていたんだけど、その3人が
注文取り
お客さんの誘導
食事運び
会計
席の片付け
これらの仕事をてんてこ舞いしながらこなしている状態です。
よく見ると、この3人は亜人種族のようです。
3人とも頭に小さなケモ耳が突き出していました……うん、あの形状だと、おそらく小動物系……リスかフェレットかな?
「あの者達は人胴猫(ワーボディキャット)族の三姉妹でな、森をさまよっていたのを妾が保護したのじゃが、今はここで働いてもらっておるのじゃ」
席についたシャルロッタが僕にそう教えてくれていると、店内を忙しそうに動き回っている三姉妹が、
「カーラです」
「キャラです」
「クーラです」
わざわざ一度足をとめて僕へ視線を向けると、それぞれ自己紹介しながらぺこりと頭をさげてくれました。
3人とも小柄で、どこかフェレットっぽい顔をしているんだけど……その名前どおりやはり胴が長いらしく少し短めの足を忙しく動かしながら店内を駆け回っていまし。小柄なんだけど、妙に愛くるしい感じです、はい……って、いけないけない、3人につい見惚れていたら、シャルロッタがジト目で僕を見つめていました。
「ごほん……あ、あの者達も流血狼に襲われていったのじゃ。そういう意味で言えば、クマ殿は恩人といえなくもないかもじゃな」
僕に向かってそう言ったシャルロッタ。
そう言ってもらえると嬉しく感じるものの……僕としてはそんなに大したことをしたつもりはないというか、ただ出来ることを超一生懸命やっているだけですし……
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
ちょっと複雑気持ちになりながらも、僕は笑顔で頷いた。
その時……僕は無意識のうちにシャルロッタの顔……というか、その唇へ視線が吸い寄せられていきました。
……確証はありません……
何しろあのときの僕は半分寝ているような状態だったわけだし……
でも……
もし、シャルロッタが寝ている僕にきききキスなんかしてくれていたとしたらですよ?
……ああああの、艶っとしいてプリッとしている唇がですね、ぼぼぼ僕のくくく唇に
……ってか、脳内だってのに慌てすぎだろ僕!?
気恥ずかしくなった僕は、思わず自分の頬を張りました。
「? どうしたのじゃクマ殿?」
そんな僕に、シャルロッタが怪訝そうな表情を向けてきました。
しばらく僕の顔を覗き込んでいたシャルロッタなのですが、
「……あの、クマ殿? ……へへへ変な事をお聞きするじゃが……へへへ部屋にお戻りになられてからはすぐに寝られておった……の、じゃよな?」
急にその頬を赤くしながら、なおかつどもり気味になりながら僕にそんなことを聞いてきました。
……なんというか、その様子から判断するに……やはりあの出来事は本当にあったと思えなくもないといいますか……
とはいえ、それをそのまま伝えるわけにも行かないというか、そのまま伝えてしまったりなんかしてしまったら、シャルロッタとの関係がギクシャクしてしまうのは間違いないわけなので、
「ううううん、ももももちろんぐっすり眠っていたよ」
そう、返事を返したわけなんですけど……駄目だ……なんでこういう時にごくごく自然に返事が出来ないだろう……ここまでどもりまくるなんて……
それでも、そんな僕の言葉を受けたシャルロッタは、
「そ、そうか、なななならよいのじゃ、うん」
そう言うと、こちらもまたどもりまくりながら、かつ、その顔にぎこちない笑顔をうかべていました。
それを受けて、僕も笑顔を返したんだけど……そんな僕の笑顔も相当ひきつっていたように思うわけで……
そんなこんなで、どこか気まずい雰囲気が漂っていた僕達のテーブル。
「おまたせしました! お食事です!」
ナイスタイミングで人胴猫さんが料理を運んで来てくれました。
「あ、ありがとうキャラ」
安堵のため息を漏らしながら笑顔でその人胴猫さんに声をかけた。
すると、その人胴猫キャラは目を丸くした。
「クマ様は、私達三姉妹の区別がつくのですか?」
「うん、だってさっき自己紹介してくれたじゃないか……君がキャラで、今カウンターのところにいるのがカーラ、向こうのテーブルに向かっているのがクーラだろ?」
僕がそう言うと、今度はカーラとクーラまで目を丸くしながら僕へと視線を向けてきたんです。
……え?……何?……僕、なんか変な事を言った?
そんな3人に見つめられながら、思わず目を丸くしてしまう僕。
「この3人はな、三つ子だけあって見た目がそっくりなのじゃ。妾でも時折間違えてしまうというのに……クマ殿は一回挨拶されただけで区別がつくのじゃのぅ……」
そんな僕を見つめながら、シャルロッタまで驚いた様子で僕を見つめていました。
「そ、そうなんだ……い、一応間違ってはなかったよね?」
少し心配になって、改めてそう確認した僕。
そんな僕に、3人は
「「「はい、その通りですクマ様」」」
同時に返事を返してくれました。
シャルロッタの話からして、3人はよく名前を間違えられるんだろうな。
だからこそ、僕がすぐに3人を間違うことなく言い分けたもんだから、喜んでくれたんだろう。
それからの3人は、店内に料理を運ぶ際にわざわざ僕の側を通ってからテーブルに向かっていくようになった……気がしないでもない。
なんか、すごく遠回りしながらも、僕に向かって小さく頭を下げてから目的のテーブルへと向かっているような感じなんですよね。
そんな3人に、その度に挨拶をかえしていく僕。
その合間に食事を口に運んでいったんだけど……
今夜のメニューは、ステーキとパン、サラダとスープ。
ステーキは、もちろん流血狼の肉でした。
このお肉は今までビーフシチューでしか食べたことがなかくて、こうしてステーキとして食べるのは始めてだったんだけど、ちょっとこれは感動体験でした。
前世で肉好きだった僕は、よく肉を食べていて……と、いってもそんなに裕福ではなかったのでもっぱら焼き肉食べ放題ばかりだったわけなんだけど、今までに口にしてきたどのお肉よりも美味しかったんだ。
分厚い肉から肉汁があふれ出していて、それを一口頬張ると、じゅわっとさらに肉汁があふれ出してくる。焼き加減が絶品なもんだから、肉の旨みが最高に引き出されている気がします。
そんな肉にかけられているソースがこれまた絶品でした。
多分、野菜を多く使っているんだと思うけど、さっぱりしていながら肉と絡むと肉汁と巧みに絡み合って口の中に広がっていって……
「もふもふもふもふ……」
この味のせいで野生に押し戻されてしまったかのように、僕は一心不乱に肉をかき込み続けていました。
……しかしなんだろうな
僕が元の世界で読んでいたスローライフ系異世界転生作品では、だいたいの場合
異世界の料理マズー
日本の料理サイコー
そんな流ればっかりだった気がするんだけど……異世界にもこんなに美味しい物があるじゃないか!
いや、むしろこっちの方が美味しいじゃないか!
僕は頭の片隅でそんな事を考えながら、どんどん肉を食べ続けていました。
そんな僕の様子を、厨房のピリがなんかすごく嬉しそうな表情で見つめていた気がするんだけど……この時の僕は食事を口に運び続けるのに夢中だったもんだから、そこにまで気を回す余裕なんてありませんでした。
なんかもう、ピリにおもいっきり胃袋を鷲掴みされたといいますか……
食堂は、シャルロッタの邸宅のすぐ近くにあります。
木造の平屋で『ピリの台所』という看板が出ていました。
店内はそんなに広くはなくて、4人が座れる丸テーブル席が6つと、最大6人座れる四角いテーブル席が窓際に2つ。
そして厨房に接している壁にカウンター席が設けられていて、ここに5人座れるよう椅子が設置されています。
僕達は、ここへ夕食を食べに来たわけなんだけど……店内はお客さんでいっぱいでした。
いつもなら、夕方の時間帯はお店を閉めて、シャルロッタの邸宅に食事を作りに来てくれているピリなんだけど、
「今日はお客さんが途切れないのよぉ、シャルロッタ様もクマ様も悪いけど食べに来てくれない?」
そんな伝言を受け取った僕とシャルロッタは、こうしてお店にやってきたわけなのですが……確かに、お店はすごくごった返していたんです。
まだ夕食の時間帯には早いにもかかわらず、席はすべて埋まっています。
しかも、店の外には順番待ちの列まで出来ていました。
ピリの台所では、3人の女の子が接客係として働いていたんだけど、その3人が
注文取り
お客さんの誘導
食事運び
会計
席の片付け
これらの仕事をてんてこ舞いしながらこなしている状態です。
よく見ると、この3人は亜人種族のようです。
3人とも頭に小さなケモ耳が突き出していました……うん、あの形状だと、おそらく小動物系……リスかフェレットかな?
「あの者達は人胴猫(ワーボディキャット)族の三姉妹でな、森をさまよっていたのを妾が保護したのじゃが、今はここで働いてもらっておるのじゃ」
席についたシャルロッタが僕にそう教えてくれていると、店内を忙しそうに動き回っている三姉妹が、
「カーラです」
「キャラです」
「クーラです」
わざわざ一度足をとめて僕へ視線を向けると、それぞれ自己紹介しながらぺこりと頭をさげてくれました。
3人とも小柄で、どこかフェレットっぽい顔をしているんだけど……その名前どおりやはり胴が長いらしく少し短めの足を忙しく動かしながら店内を駆け回っていまし。小柄なんだけど、妙に愛くるしい感じです、はい……って、いけないけない、3人につい見惚れていたら、シャルロッタがジト目で僕を見つめていました。
「ごほん……あ、あの者達も流血狼に襲われていったのじゃ。そういう意味で言えば、クマ殿は恩人といえなくもないかもじゃな」
僕に向かってそう言ったシャルロッタ。
そう言ってもらえると嬉しく感じるものの……僕としてはそんなに大したことをしたつもりはないというか、ただ出来ることを超一生懸命やっているだけですし……
「そう言ってもらえると、嬉しいです」
ちょっと複雑気持ちになりながらも、僕は笑顔で頷いた。
その時……僕は無意識のうちにシャルロッタの顔……というか、その唇へ視線が吸い寄せられていきました。
……確証はありません……
何しろあのときの僕は半分寝ているような状態だったわけだし……
でも……
もし、シャルロッタが寝ている僕にきききキスなんかしてくれていたとしたらですよ?
……ああああの、艶っとしいてプリッとしている唇がですね、ぼぼぼ僕のくくく唇に
……ってか、脳内だってのに慌てすぎだろ僕!?
気恥ずかしくなった僕は、思わず自分の頬を張りました。
「? どうしたのじゃクマ殿?」
そんな僕に、シャルロッタが怪訝そうな表情を向けてきました。
しばらく僕の顔を覗き込んでいたシャルロッタなのですが、
「……あの、クマ殿? ……へへへ変な事をお聞きするじゃが……へへへ部屋にお戻りになられてからはすぐに寝られておった……の、じゃよな?」
急にその頬を赤くしながら、なおかつどもり気味になりながら僕にそんなことを聞いてきました。
……なんというか、その様子から判断するに……やはりあの出来事は本当にあったと思えなくもないといいますか……
とはいえ、それをそのまま伝えるわけにも行かないというか、そのまま伝えてしまったりなんかしてしまったら、シャルロッタとの関係がギクシャクしてしまうのは間違いないわけなので、
「ううううん、ももももちろんぐっすり眠っていたよ」
そう、返事を返したわけなんですけど……駄目だ……なんでこういう時にごくごく自然に返事が出来ないだろう……ここまでどもりまくるなんて……
それでも、そんな僕の言葉を受けたシャルロッタは、
「そ、そうか、なななならよいのじゃ、うん」
そう言うと、こちらもまたどもりまくりながら、かつ、その顔にぎこちない笑顔をうかべていました。
それを受けて、僕も笑顔を返したんだけど……そんな僕の笑顔も相当ひきつっていたように思うわけで……
そんなこんなで、どこか気まずい雰囲気が漂っていた僕達のテーブル。
「おまたせしました! お食事です!」
ナイスタイミングで人胴猫さんが料理を運んで来てくれました。
「あ、ありがとうキャラ」
安堵のため息を漏らしながら笑顔でその人胴猫さんに声をかけた。
すると、その人胴猫キャラは目を丸くした。
「クマ様は、私達三姉妹の区別がつくのですか?」
「うん、だってさっき自己紹介してくれたじゃないか……君がキャラで、今カウンターのところにいるのがカーラ、向こうのテーブルに向かっているのがクーラだろ?」
僕がそう言うと、今度はカーラとクーラまで目を丸くしながら僕へと視線を向けてきたんです。
……え?……何?……僕、なんか変な事を言った?
そんな3人に見つめられながら、思わず目を丸くしてしまう僕。
「この3人はな、三つ子だけあって見た目がそっくりなのじゃ。妾でも時折間違えてしまうというのに……クマ殿は一回挨拶されただけで区別がつくのじゃのぅ……」
そんな僕を見つめながら、シャルロッタまで驚いた様子で僕を見つめていました。
「そ、そうなんだ……い、一応間違ってはなかったよね?」
少し心配になって、改めてそう確認した僕。
そんな僕に、3人は
「「「はい、その通りですクマ様」」」
同時に返事を返してくれました。
シャルロッタの話からして、3人はよく名前を間違えられるんだろうな。
だからこそ、僕がすぐに3人を間違うことなく言い分けたもんだから、喜んでくれたんだろう。
それからの3人は、店内に料理を運ぶ際にわざわざ僕の側を通ってからテーブルに向かっていくようになった……気がしないでもない。
なんか、すごく遠回りしながらも、僕に向かって小さく頭を下げてから目的のテーブルへと向かっているような感じなんですよね。
そんな3人に、その度に挨拶をかえしていく僕。
その合間に食事を口に運んでいったんだけど……
今夜のメニューは、ステーキとパン、サラダとスープ。
ステーキは、もちろん流血狼の肉でした。
このお肉は今までビーフシチューでしか食べたことがなかくて、こうしてステーキとして食べるのは始めてだったんだけど、ちょっとこれは感動体験でした。
前世で肉好きだった僕は、よく肉を食べていて……と、いってもそんなに裕福ではなかったのでもっぱら焼き肉食べ放題ばかりだったわけなんだけど、今までに口にしてきたどのお肉よりも美味しかったんだ。
分厚い肉から肉汁があふれ出していて、それを一口頬張ると、じゅわっとさらに肉汁があふれ出してくる。焼き加減が絶品なもんだから、肉の旨みが最高に引き出されている気がします。
そんな肉にかけられているソースがこれまた絶品でした。
多分、野菜を多く使っているんだと思うけど、さっぱりしていながら肉と絡むと肉汁と巧みに絡み合って口の中に広がっていって……
「もふもふもふもふ……」
この味のせいで野生に押し戻されてしまったかのように、僕は一心不乱に肉をかき込み続けていました。
……しかしなんだろうな
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そんな流ればっかりだった気がするんだけど……異世界にもこんなに美味しい物があるじゃないか!
いや、むしろこっちの方が美味しいじゃないか!
僕は頭の片隅でそんな事を考えながら、どんどん肉を食べ続けていました。
そんな僕の様子を、厨房のピリがなんかすごく嬉しそうな表情で見つめていた気がするんだけど……この時の僕は食事を口に運び続けるのに夢中だったもんだから、そこにまで気を回す余裕なんてありませんでした。
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