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クマの魔法? その1
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僕とシャルロッタの乗った馬車は、街道を進んでいるのですが……
気のせいでしょうか……シャルロッタが、チラチラと僕の方を見つめているような気がするんです。
心なしか、顔も赤くなっているような……
「あの、シャルロッタ?」
「ななな、なんじゃクマ殿!?」
「ひょっとして、体調が悪いですか? 気のせいか顔が赤いような」
「べべべ、別になんともないのじゃ、なんとも……うん」
僕の言葉に、声を裏返らせながら返事を返しているシャルロッタなんですけど……明らかに挙動不審というか、なんといいますか……
ひょっとしたら、体調が悪いのを隠しているのかもしれません。
「あの、シャルロッタ。くれぐれも無理はしないでくださいね。僕、できる限り頑張りますから何でも申しつけてください」
にっこり微笑みながらシャルロッタに話しかけた僕。
そんな僕の眼前で、シャルロッタは、
「う、うむ、た、助かるのじゃ」
再び声を裏返らせながら、そう返事を返してくれたのですけど、
「……じゃからといって……夜、襲ってほし……ごにょごにょ」
「え? 今何か言いました?」
何か、小声でブツブツ呟いたシャルロッタ。
でも、僕が尋ねると、
「ななな、何でもないのじゃ、なんでも……」
って、先ほど以上に声を裏返らせていたシャルロッタ。
……よくわからないけど、とにかくシャルロッタの体調を気にしながら、しっかりサポートをしてあげないと。夜も、シャルロッタが安心して寝られるように気を使ってあげないと、うん。
改めて、そう心に誓った僕でした。
* * *
そんな僕とシャルロッタを乗せた荷馬車は、順調に進んでいます。
もっとも、街道といっても、僕達の住んでいるニアノ村は森の奥深くにありまして、そこから獣道のような道が延びているのですが、どうもそれが唯一の街道みたいでして、その獣道を進んでいます。
舗装も何もされていないので、この道に慣れているシャルロッタが馬を操ってくれていないと確実に道に迷っていると思います。
そんな森の中の道を、ニアノ村の後方にそびえている高い山の裾野に沿うようにして進んで行く僕達。
「この山を越えた向こう側にリットの街があるのじゃ」
「へぇ、そうなんだ。ちなみに、どれくらいかかるんです?」
「そうじゃの……片道3日というところかの。その間に宿場町などもないでの、野宿をしながら進まねばならぬのじゃ」
シャルロッタがそう教えてくれた。
それを受けて、僕とシャルロッタは相談した結果、僕が昼間は荷馬車の中で休むことにしました。
その間、シャルロッタが荷馬車を操馬して進み、夜は荷馬車を止めて僕が寝ずの番を行い、シャルロッタが眠るという分担で進むことにしたんです。
「じゃあ、僕は先に休ませてもらうけど、何かあったら遠慮無く起こしてね」
「うむ、その時はよろしく頼むのじゃクマ殿」
僕は、シャルロッタと言葉を交わすと、荷馬車の中へ入っていき、その中央で横になった。
板場の上
よく揺れる馬車
そんな悪条件のため、寝心地はあまりよくありません。
そのため、僕はあまり深い眠りを得ることが出来ずにいました。
ただ……その間に不思議な出来事が僕の身に起きていたんです。
使用出来たり出来なくなったりしていた、あの超聴覚が、普通に使用出来るようになっていたんです。
うつらうつらしている僕の耳に、森のあちこちから様々な音が入ってきた。
最初は本当に夢なんじゃないかと思っていたのですが……その中に、村に残してきたミリュウの話声が混じったりしたもんだから、
「あ、これは夢じゃないや」
と、自覚出来たんです。
ちなみに、ミリュウは、
『ダーリン~……速く会いたいの~』
と、寂しそうに呟いていた。
ん~……やっぱりちょっと可愛そうだったかな……
何しろ村の中で、ミリュウと会話出来るのは僕だけですからね。
村人達と、多少ボディランゲージでコミュニケーションがとれるようになり始めてはいるものの、それも全ては僕が一緒の時だけでして、ミリュウが1人でいる際に話しかけてくれる村人はいまだに皆無だったから。
「ミリュウ……早めに帰るからね……」
僕は、夢見心地の中、独り言のようにそう呟いた。
すると
『ダーリン!? ダーリンの声が聞こえたの!? 何々!? 魔法なの!?』
慌てた様子の、それでいてすごく嬉しそうなミリュウの声が改めて耳に聞こえてきた。
「え? ぼ、僕の声が聞こえたの?」
『うん! ダーリンの声聞こえるの、すごいすごい!』
僕が呟く度に、嬉しそうなミリュウの声が聞こえてくる。
そのことを不思議に思っていた僕なんだけど、その時僕の身にさらに不思議なことが起きていることに気が付いたんです。
遠く離れた場所にいるミリュウとの会話が成り立っている間、首にぶら下げているネックレスが光り輝いていたんです。
それは、お守りとしてピリからもらった魔石のネックレスでした。
その、魔石部分が光り輝いていたんです。
その輝きは、ミリュウとの会話を辞めると消え、再度会話を行うと再び光りはじめるといった感じです。
それはまるで、僕が超聴覚を使用し、同時に遠くの人との会話を行う際の補助をしてくれているように見えなくもありません。
……これは、あくまでも仮説なんだけど……
ひょっとしたら、僕のこの超聴覚と、遠方の人と会話出来る能力って、スキルとかそういったものではなくて、魔法なのではないでしょうか?
その魔法なんだけど……僕の体内に魔力が少ないせいで、普段は短時間しか使用出来なかったんじゃないかなと思ったわけです。
魔力がたっぷりこもっている魔石のネックレスをピリからもらって身につけているもんだから、僕はその魔石の魔力を使用して、この魔法を使用出来ているのかもしれない……
あくまでも、これは推測なのですが……とにもかくにも、この能力というか、魔法のおかげでミリュウがすごく嬉しそうにしてくれていたので、とにかくよかったと思うことにしようと思います。
気のせいでしょうか……シャルロッタが、チラチラと僕の方を見つめているような気がするんです。
心なしか、顔も赤くなっているような……
「あの、シャルロッタ?」
「ななな、なんじゃクマ殿!?」
「ひょっとして、体調が悪いですか? 気のせいか顔が赤いような」
「べべべ、別になんともないのじゃ、なんとも……うん」
僕の言葉に、声を裏返らせながら返事を返しているシャルロッタなんですけど……明らかに挙動不審というか、なんといいますか……
ひょっとしたら、体調が悪いのを隠しているのかもしれません。
「あの、シャルロッタ。くれぐれも無理はしないでくださいね。僕、できる限り頑張りますから何でも申しつけてください」
にっこり微笑みながらシャルロッタに話しかけた僕。
そんな僕の眼前で、シャルロッタは、
「う、うむ、た、助かるのじゃ」
再び声を裏返らせながら、そう返事を返してくれたのですけど、
「……じゃからといって……夜、襲ってほし……ごにょごにょ」
「え? 今何か言いました?」
何か、小声でブツブツ呟いたシャルロッタ。
でも、僕が尋ねると、
「ななな、何でもないのじゃ、なんでも……」
って、先ほど以上に声を裏返らせていたシャルロッタ。
……よくわからないけど、とにかくシャルロッタの体調を気にしながら、しっかりサポートをしてあげないと。夜も、シャルロッタが安心して寝られるように気を使ってあげないと、うん。
改めて、そう心に誓った僕でした。
* * *
そんな僕とシャルロッタを乗せた荷馬車は、順調に進んでいます。
もっとも、街道といっても、僕達の住んでいるニアノ村は森の奥深くにありまして、そこから獣道のような道が延びているのですが、どうもそれが唯一の街道みたいでして、その獣道を進んでいます。
舗装も何もされていないので、この道に慣れているシャルロッタが馬を操ってくれていないと確実に道に迷っていると思います。
そんな森の中の道を、ニアノ村の後方にそびえている高い山の裾野に沿うようにして進んで行く僕達。
「この山を越えた向こう側にリットの街があるのじゃ」
「へぇ、そうなんだ。ちなみに、どれくらいかかるんです?」
「そうじゃの……片道3日というところかの。その間に宿場町などもないでの、野宿をしながら進まねばならぬのじゃ」
シャルロッタがそう教えてくれた。
それを受けて、僕とシャルロッタは相談した結果、僕が昼間は荷馬車の中で休むことにしました。
その間、シャルロッタが荷馬車を操馬して進み、夜は荷馬車を止めて僕が寝ずの番を行い、シャルロッタが眠るという分担で進むことにしたんです。
「じゃあ、僕は先に休ませてもらうけど、何かあったら遠慮無く起こしてね」
「うむ、その時はよろしく頼むのじゃクマ殿」
僕は、シャルロッタと言葉を交わすと、荷馬車の中へ入っていき、その中央で横になった。
板場の上
よく揺れる馬車
そんな悪条件のため、寝心地はあまりよくありません。
そのため、僕はあまり深い眠りを得ることが出来ずにいました。
ただ……その間に不思議な出来事が僕の身に起きていたんです。
使用出来たり出来なくなったりしていた、あの超聴覚が、普通に使用出来るようになっていたんです。
うつらうつらしている僕の耳に、森のあちこちから様々な音が入ってきた。
最初は本当に夢なんじゃないかと思っていたのですが……その中に、村に残してきたミリュウの話声が混じったりしたもんだから、
「あ、これは夢じゃないや」
と、自覚出来たんです。
ちなみに、ミリュウは、
『ダーリン~……速く会いたいの~』
と、寂しそうに呟いていた。
ん~……やっぱりちょっと可愛そうだったかな……
何しろ村の中で、ミリュウと会話出来るのは僕だけですからね。
村人達と、多少ボディランゲージでコミュニケーションがとれるようになり始めてはいるものの、それも全ては僕が一緒の時だけでして、ミリュウが1人でいる際に話しかけてくれる村人はいまだに皆無だったから。
「ミリュウ……早めに帰るからね……」
僕は、夢見心地の中、独り言のようにそう呟いた。
すると
『ダーリン!? ダーリンの声が聞こえたの!? 何々!? 魔法なの!?』
慌てた様子の、それでいてすごく嬉しそうなミリュウの声が改めて耳に聞こえてきた。
「え? ぼ、僕の声が聞こえたの?」
『うん! ダーリンの声聞こえるの、すごいすごい!』
僕が呟く度に、嬉しそうなミリュウの声が聞こえてくる。
そのことを不思議に思っていた僕なんだけど、その時僕の身にさらに不思議なことが起きていることに気が付いたんです。
遠く離れた場所にいるミリュウとの会話が成り立っている間、首にぶら下げているネックレスが光り輝いていたんです。
それは、お守りとしてピリからもらった魔石のネックレスでした。
その、魔石部分が光り輝いていたんです。
その輝きは、ミリュウとの会話を辞めると消え、再度会話を行うと再び光りはじめるといった感じです。
それはまるで、僕が超聴覚を使用し、同時に遠くの人との会話を行う際の補助をしてくれているように見えなくもありません。
……これは、あくまでも仮説なんだけど……
ひょっとしたら、僕のこの超聴覚と、遠方の人と会話出来る能力って、スキルとかそういったものではなくて、魔法なのではないでしょうか?
その魔法なんだけど……僕の体内に魔力が少ないせいで、普段は短時間しか使用出来なかったんじゃないかなと思ったわけです。
魔力がたっぷりこもっている魔石のネックレスをピリからもらって身につけているもんだから、僕はその魔石の魔力を使用して、この魔法を使用出来ているのかもしれない……
あくまでも、これは推測なのですが……とにもかくにも、この能力というか、魔法のおかげでミリュウがすごく嬉しそうにしてくれていたので、とにかくよかったと思うことにしようと思います。
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