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さわこさんと、雪解け祭り その3
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私の元に近寄ってきた、頭の髪の毛の色が薄いピンクの女の子なのですが……その女の子は私から受け取ったウインナーの串焼きを美味しそうに食べています。
その女の子の出現とともに、私の屋台の後方に生えていたブロロッサムの木が消えていまして……
「……なぜでしょう……」
と、首をひねりながら中央公園内にあるブロロッサムの木を見回していた私なのですが……
ポン
ポンポン
……な、なんということでしょう……私の目の前で、ブロロッサムの木が次々に小さな女の子の姿に変化しては、私の前でウインナーの串焼きを食べている女の子の元に殺到してきたではありませんか。
「なんなのじゃそれは?」
「とても美味しそうなのじゃ」
「我も食べたいのじゃ」
見た目も服装も、最初に私の元にやってきた女の子とそっくりな、薄いピンクの髪の毛の女の子達は、ウインナーの串焼きを美味しそうに頬張り続けている女の子取り囲んでいたのですが……
「この女がくれたのじゃ。とても美味しいのじゃ」
と、満面の笑顔で私を指さしました。
すると……その女の子の周囲に集まっていた薄いピンクの髪の毛の女の子達が一斉に私の周囲に集まってきまして……
「美味しそうじゃのう」
「この赤いの、食べてみたいのう」
「ほんに美味そうじゃのう」
「どうにかならんかのぉ」
口々にそんな言葉を、私に向かって発しはじめたのでございます。
「あ……えっと……こ、これは一体……」
その状況に困惑している私。
そんな私にバテアさんが笑顔で歩み寄ってこられました。
「あらあらまぁまぁ……ブロロッサムの木の精霊に好かれるなんて、さすがはさわこね」
「え? ぶ、ブロロッサムの木の精霊!?」
楽しそうに笑っておられるバテアさんなのですが、私にはその言葉の意味が理解出来なくて、わらに困惑してしまいまして……
「このブロロッサムの木はね、長年かけて大きくなるんだけど樹齢が一定の年齢を超えるとこうして精霊になる能力を有するようになるのよ。でもね、この精霊達はすごく気まぐれでね、滅多にこうして人型の精霊の姿を見せることはないんだけど……」
「バテアさんでも、あまり見かけたことがないのですか?」
「あまりどころか、実際に見たのははじめてね。スア使用の旦那さんが、今のさわこと同じようにブロロッサムの木の精霊達に懐かれたことがあるって、お茶会の時に聞いたことがあるくらいかしら」
「まぁ……そうだったのですね……」
バテアさんの言葉を総括すると……今の私は大変貴重な方々に囲まれているという、大変貴重な体験をしている……そういうことみたいですね。
……なら、私に出来ることはひとつです。
「ではブロロッサムの木の精霊のみなさん、すぐにウインナーの串焼きを作りますので並んでお待ちくださいな」
私が笑顔でそう言うと、
「おぉ! まことか!」
「ほんに、ありがたや」
ブロロッサムの木の精霊の皆さんは、口々に嬉しそうな言葉を発しながら、私のお店の前方に回って一列に並んでいきました。
まっすぐ並ぶと、すぐにお向かいのマリーさんの屋台にぶつかってしまいますので、ベルとエンジェさんが、
「こっちに曲がってほしいニャ」
「みんな、こっちに曲がって!」
列を上手に誘導してくれています。
そんな中……
「ほう……お主も精霊なのか」
「はい、エンジェも精霊です」
「ほほう、ブロロッサムの木の同族以外の精霊を見るのははじめてかもしれぬの」
エンジェさんを見ながら、ブロロッサムの木の精霊のみなさんは目を丸くなさっていました。
……そういえば、エンジェさんがこの姿に変化出来るようになったのって昨年末の12月からでしたので、雪のせいもあって、この中央公園に一緒にやってきたのってはじめてかもしれません。
ブロロッサムの木の精霊のみなさんと楽しそうにお話しているエンジェさん。
そのお話の輪に、いつしかベルと、そのお友達の猫系亜人種族のみなさんも加わって、順番待ちの列は楽しげな雰囲気に包まれていました。
そんな列が街道の真ん中に続いています。
それがまるで、街道の真ん中にブロロッサムの木の列が出来たようでして、すっごく綺麗なんです。
それを見た、祭りにやってきた街の皆様も、
「うわぁ……これってブロロッサムの木の精霊達なのか!?」
「はじめて見たよ……」
「こりゃ、縁起が良さそうだ」
口々にそんな言葉を口になさっておいでです。
その顔には、もれなく笑顔が浮かんでいます。
その光景を拝見しながら、私はウインナーの串焼きをどんどん焼いていきました。
焼けたらすぐに、
「はい、熱いですから気をつけてくださいね」
笑顔でそういいながらウインナーの串焼きを、ブロロッサムの木の精霊さんに手渡します。
すると、ブロロッサムの木の精霊さんは、
「ありがとうなのじゃ」
「すごく美味しそうなのじゃ」
「とっても嬉しいのじゃ」
笑顔でお礼を言いながら、ウインナーの串焼きを口に運んでいきまして、
「うむ、これはホンに美味いのじゃ」
「こんなに美味い物、いつ以来かのぉ」
嬉しそうにそんな言葉を口になさっておられます。
すると、その光景を周囲で見つめていた方々が釣られるようにして、
「ホントに美味しそうだな……」
「どれ、ブロロッサムの木の精霊達がお気に入りの串焼きを、俺も食べて見るか」
「俺もだ」
そう言いながら、ブロロッサムの木の精霊さん達の後ろに並び始めたのでございます。
こうして、居酒屋さわこさんの屋台の前にはすっごく長い行列が出来ていきました。
その列からは、楽しそうな笑顔と、楽しげな笑い声が絶えることがありませんでした。
◇◇
その後……1時間近くかけてブロロッサムの木の精霊さん達のお代わりの要望にもお応えいたしまして、どうにか皆さん満足してくださったみたいです。
「とっても美味しかったのじゃ」
「さわこには感謝なのじゃ」
ブロロッサムの木の精霊のみなさんは、私の周囲に集まってきて口々にお礼を言ってくださっています。
「いえいえ、喜んでいただけで何よりですわ」
そんな皆さんに、私は笑顔を返していきました。
すると、そんな私の前でブロロッサムの木の皆さんは、
「では、我達からお礼なのじゃ」
そう言うと、皆さん一斉に元の位置に戻っていかれまして、そこでブロロッサムの木の姿に戻っていかれたのですが、そのブロロッサムの木からすごい量の桜の花びらが舞い始めまして、中央公園の中を舞いはじめたのでございます。
それは、まるで桜の花びらたちが舞い踊っているかのようでした。
「……綺麗……」
私は、思わずその光景にみとれてしまいました。
中央公園に集まっておられる皆さんも同様のご様子でして、
「うわぁ……こりゃすごいや……」
「こんな光景はじめて見たよ」
といった具合に、感嘆の声をあげておられます。
「うわぁ、すっごく綺麗ニャ!」
「はい!すごく素敵です!」
ベルとエンジェさんも、桜の花びらの舞いを見つめながら一緒に踊っているようです。
気のせいか、エンジェさんの周囲に、よりたくさんの花びらが集まっている気がいたします。
きっと、同じ精霊ということで、ブロロッサムの木の精霊の皆さんも、エンジェさんの事を気に入ってくださったのかもしれませんね。
こうして……
今年の雪解け祭りは、こうしてブロロッサムの花びらが舞い踊る中で開催されたのでございます。
ーつづく
その女の子の出現とともに、私の屋台の後方に生えていたブロロッサムの木が消えていまして……
「……なぜでしょう……」
と、首をひねりながら中央公園内にあるブロロッサムの木を見回していた私なのですが……
ポン
ポンポン
……な、なんということでしょう……私の目の前で、ブロロッサムの木が次々に小さな女の子の姿に変化しては、私の前でウインナーの串焼きを食べている女の子の元に殺到してきたではありませんか。
「なんなのじゃそれは?」
「とても美味しそうなのじゃ」
「我も食べたいのじゃ」
見た目も服装も、最初に私の元にやってきた女の子とそっくりな、薄いピンクの髪の毛の女の子達は、ウインナーの串焼きを美味しそうに頬張り続けている女の子取り囲んでいたのですが……
「この女がくれたのじゃ。とても美味しいのじゃ」
と、満面の笑顔で私を指さしました。
すると……その女の子の周囲に集まっていた薄いピンクの髪の毛の女の子達が一斉に私の周囲に集まってきまして……
「美味しそうじゃのう」
「この赤いの、食べてみたいのう」
「ほんに美味そうじゃのう」
「どうにかならんかのぉ」
口々にそんな言葉を、私に向かって発しはじめたのでございます。
「あ……えっと……こ、これは一体……」
その状況に困惑している私。
そんな私にバテアさんが笑顔で歩み寄ってこられました。
「あらあらまぁまぁ……ブロロッサムの木の精霊に好かれるなんて、さすがはさわこね」
「え? ぶ、ブロロッサムの木の精霊!?」
楽しそうに笑っておられるバテアさんなのですが、私にはその言葉の意味が理解出来なくて、わらに困惑してしまいまして……
「このブロロッサムの木はね、長年かけて大きくなるんだけど樹齢が一定の年齢を超えるとこうして精霊になる能力を有するようになるのよ。でもね、この精霊達はすごく気まぐれでね、滅多にこうして人型の精霊の姿を見せることはないんだけど……」
「バテアさんでも、あまり見かけたことがないのですか?」
「あまりどころか、実際に見たのははじめてね。スア使用の旦那さんが、今のさわこと同じようにブロロッサムの木の精霊達に懐かれたことがあるって、お茶会の時に聞いたことがあるくらいかしら」
「まぁ……そうだったのですね……」
バテアさんの言葉を総括すると……今の私は大変貴重な方々に囲まれているという、大変貴重な体験をしている……そういうことみたいですね。
……なら、私に出来ることはひとつです。
「ではブロロッサムの木の精霊のみなさん、すぐにウインナーの串焼きを作りますので並んでお待ちくださいな」
私が笑顔でそう言うと、
「おぉ! まことか!」
「ほんに、ありがたや」
ブロロッサムの木の精霊の皆さんは、口々に嬉しそうな言葉を発しながら、私のお店の前方に回って一列に並んでいきました。
まっすぐ並ぶと、すぐにお向かいのマリーさんの屋台にぶつかってしまいますので、ベルとエンジェさんが、
「こっちに曲がってほしいニャ」
「みんな、こっちに曲がって!」
列を上手に誘導してくれています。
そんな中……
「ほう……お主も精霊なのか」
「はい、エンジェも精霊です」
「ほほう、ブロロッサムの木の同族以外の精霊を見るのははじめてかもしれぬの」
エンジェさんを見ながら、ブロロッサムの木の精霊のみなさんは目を丸くなさっていました。
……そういえば、エンジェさんがこの姿に変化出来るようになったのって昨年末の12月からでしたので、雪のせいもあって、この中央公園に一緒にやってきたのってはじめてかもしれません。
ブロロッサムの木の精霊のみなさんと楽しそうにお話しているエンジェさん。
そのお話の輪に、いつしかベルと、そのお友達の猫系亜人種族のみなさんも加わって、順番待ちの列は楽しげな雰囲気に包まれていました。
そんな列が街道の真ん中に続いています。
それがまるで、街道の真ん中にブロロッサムの木の列が出来たようでして、すっごく綺麗なんです。
それを見た、祭りにやってきた街の皆様も、
「うわぁ……これってブロロッサムの木の精霊達なのか!?」
「はじめて見たよ……」
「こりゃ、縁起が良さそうだ」
口々にそんな言葉を口になさっておいでです。
その顔には、もれなく笑顔が浮かんでいます。
その光景を拝見しながら、私はウインナーの串焼きをどんどん焼いていきました。
焼けたらすぐに、
「はい、熱いですから気をつけてくださいね」
笑顔でそういいながらウインナーの串焼きを、ブロロッサムの木の精霊さんに手渡します。
すると、ブロロッサムの木の精霊さんは、
「ありがとうなのじゃ」
「すごく美味しそうなのじゃ」
「とっても嬉しいのじゃ」
笑顔でお礼を言いながら、ウインナーの串焼きを口に運んでいきまして、
「うむ、これはホンに美味いのじゃ」
「こんなに美味い物、いつ以来かのぉ」
嬉しそうにそんな言葉を口になさっておられます。
すると、その光景を周囲で見つめていた方々が釣られるようにして、
「ホントに美味しそうだな……」
「どれ、ブロロッサムの木の精霊達がお気に入りの串焼きを、俺も食べて見るか」
「俺もだ」
そう言いながら、ブロロッサムの木の精霊さん達の後ろに並び始めたのでございます。
こうして、居酒屋さわこさんの屋台の前にはすっごく長い行列が出来ていきました。
その列からは、楽しそうな笑顔と、楽しげな笑い声が絶えることがありませんでした。
◇◇
その後……1時間近くかけてブロロッサムの木の精霊さん達のお代わりの要望にもお応えいたしまして、どうにか皆さん満足してくださったみたいです。
「とっても美味しかったのじゃ」
「さわこには感謝なのじゃ」
ブロロッサムの木の精霊のみなさんは、私の周囲に集まってきて口々にお礼を言ってくださっています。
「いえいえ、喜んでいただけで何よりですわ」
そんな皆さんに、私は笑顔を返していきました。
すると、そんな私の前でブロロッサムの木の皆さんは、
「では、我達からお礼なのじゃ」
そう言うと、皆さん一斉に元の位置に戻っていかれまして、そこでブロロッサムの木の姿に戻っていかれたのですが、そのブロロッサムの木からすごい量の桜の花びらが舞い始めまして、中央公園の中を舞いはじめたのでございます。
それは、まるで桜の花びらたちが舞い踊っているかのようでした。
「……綺麗……」
私は、思わずその光景にみとれてしまいました。
中央公園に集まっておられる皆さんも同様のご様子でして、
「うわぁ……こりゃすごいや……」
「こんな光景はじめて見たよ」
といった具合に、感嘆の声をあげておられます。
「うわぁ、すっごく綺麗ニャ!」
「はい!すごく素敵です!」
ベルとエンジェさんも、桜の花びらの舞いを見つめながら一緒に踊っているようです。
気のせいか、エンジェさんの周囲に、よりたくさんの花びらが集まっている気がいたします。
きっと、同じ精霊ということで、ブロロッサムの木の精霊の皆さんも、エンジェさんの事を気に入ってくださったのかもしれませんね。
こうして……
今年の雪解け祭りは、こうしてブロロッサムの花びらが舞い踊る中で開催されたのでございます。
ーつづく
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