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さわこさんと、ナカンコンベ その2
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右手でベルと、左手でエンジェさんと手をつないでいる私。
「そうしていると、さわこってば2人のお姉さんみたいね」
そんな私へ視線を向けたバテアさんが楽しそうに笑っています。
「さーちゃんお姉ちゃんニャ!」
「さわこと姉妹なんて素敵ね!」
その言葉を聞いたベルとエンジェさんはすごく嬉しそうです。
その笑顔を見ていると、私まで思わず笑顔になってしまいます。
……とりあえず、お母さんと言われなかったので、私もご機嫌です。
そんな私達の後方には、シロを左肩の上に乗せているリンシンさんが続いています。
落ちないようにリンシンさんの頭にしっかりと抱きついているシロなのですが、とても嬉しそうに微笑んでいます。
リンシンさんも、シロが落ちないようにその腰のあたりを右手で押さえながら笑顔を浮かべておいでです。
シロは、私の世界で言うところのコロボックルとでももうしましょうか、どこか民族衣装を思わせるような服を着込んでいます。
その服が、小柄なシロにすごくマッチしているものですから、時折道行く人々がシロへ視線を向けているみたいですね。
◇◇
街道を進んで、役場らしき建物の前を抜けた私達は、
「あったあった、マリーが教えてくれた美味しい食堂って、ここね」
バテアさんがそう言って指さされた先には、
『食堂ピアーグ』
そう書かれた真新しい看板が設置されているお店でした。
とても繁盛しているらしく、出入り口の前には多くの人が列をなしておられます。
「まだお昼前なのに、すごい人気ねぇ」
「ホントですねぇ」
私とバテアさんは思わず顔を見合わせました。
とはいえ、せっかく教えて頂いた美味しいお店ですからね。
私達は列の最後尾へと移動していきました。
「さーちゃん、どこか遊びに行きたいニャ!」
列で待つのが退屈なのか、ベルがそう言ってきたのですが、
「ベル、せっかくですからこのお店で食事をすませてから遊びに行きましょう」
そう言って、なんとか我慢してもらいました。
◇◇
ほどなくいたしまして、先ほどベルが遊びに行きたいと言ったのを我慢してもらったことが正解だったことを、私は身をもって実感いたしました。
……と、いうのがですね……
順番待ちの列に私達が並びますと、
「お、今日はまだ少ないな」
「急いで並ばないと」
そんな声をあげながら、次々に私達の後方に新しく人が並ばれまして、順番待ちの列がぐんぐん伸びていきまして……
今では、その列は街道を曲がって裏通りの方へ伸びていまして、その列がどこまで伸びているのかさっぱり検討が付かない状態だったんです。
「……人気店だって聞いてたけど……まさかここまでとはねぇ……」
「そうですねぇ……」
バテアさんと私は、思わず目を丸くしながら後方に伸びている列を改めてながめていきました。
さっきは待つのが嫌で遊びに行きたいと言っていたベルも、
「遊びに行かなくてよかったニャあ……」
そう言いながら目を丸くしていました。
比較的早めに並んでいたものですから、私達の順番はわりと早くに回って来ました。
「お待たせいたしました、6名様ご案内いたします」
お洒落な制服に身を包んでいる女の子が私達を席へと案内してくれました。
ピアーグの店内は、かなり広い感じです。
厨房の上に中二階が設けられていまして、そこにもお客さんを通せるようになっているのですが、どの席も当然ながら埋まっています。
私達が案内されたのは、その中二階の一番お店寄りの席でした。
横に手すりがあり、店内を見下ろせる席なのですが、
「窓際でなくてよかったかもね」
バテアさんが小声でそうおっしゃいました。
その言葉を受けて、窓際の席を見てみますと……私はその言葉の意味を理解いたしました。
窓際の席のすぐ外には、順番待ちの行列があるんです。
窓から、その列がモロに見えるものですから……はじめてこのお店を訪れた私達があの席に案内されていたら、おそらく落ち着かないことこの上なかったと思います。
……でも、ひょっとしたらそこら辺も配慮してくれたのかも
そんな事を思ったりもした私ですが、本当のところは実際に聞いてみないとわかりません。
だからといって、そんなことをわざわざ聞くのもあれですしね。
比較的、長めのいい席に案内してもらえたことに感謝しながら、私達はメニューを選んでいきました。
メニューはお昼用の物のようでして、お勧めと日替わりの2種類がメインのようでして、
「日替わり2つね」
「お勧めをもらおうか」
そんな声が店内のあちこちから聞こえてきます。
バテアさんも、それを察したご様子でして、
「お勧めはタテガミライオンの肉シチューがメインで、日替わりはデラマウントボアの肉と野菜の炒め物がメインみたいだけど、みんなどっちがいいかしら?」
そう、私達に声をかけてくださいました。
確かに、ベルやエンジェさんにメニューを渡すと、
『さーちゃん、これは何?』
『さわこ、この料理は何かしら?』
と、質問攻めにされかねませんから、バテアさんのこの判断は正解だと思います。
一応みんなに意見を聞いたのですが、
「さーちゃんは何にするニャ?」
「そうですね、私はタテガミライオンのお肉をどんな風に料理しているのか興味があるのでお勧めにしてみよう思います」
「じゃあ、アタシも同じのニャ!」
「さわこ、私もよ!」
ベルとエンジェさんが、私と同じメニューを頼むことにしたのを受けて、
「じゃ、アタシもそうしようかしら」
「……じゃ、私も」
「……シロもリンシンと一緒」
他の皆さんも全員同じ、お勧め定食を注文することになりました。
……待つこと10分
「お待たせしました、お勧め定食6人前です」
先ほど私達を案内してくれた店員さんとは別の店員さんが2人で料理を運んで来てくださいました。
こんなに混んでいる割に、かなり早い気がします。
料理は、陶器製の深皿の中にタテガミライオンのお肉のシチューが入っていまして、野菜サラダとパンがセットになっていました。
「パンとサラダはお代わり自由ですので、遠慮なくお申し付けくださいね」
店員さんの言葉を聞いたベルとエンジェさん、
「ニャ!? パン、いくらでもお代わりしていいニャ!?」
「まぁ! なんて素敵なの!」
2人して目を輝かせていた次第です。
当然のように、2人は早速パンを口に運んでいました。
その横で、私もパンを手にしたのですが……
「あら……このパンってば、すっごく柔らかいわね」
私の横でバテアさんが思わず呟かれたのですが……はい、私もまったく同じ事を思っておりました。
この世界……と、いいますかトツノコンベのお店で扱っているパンって、少しというかかなり固めの物しかないんです。
……ですが
このお店のパンは、すっごくふっくらしてまして、噛めば噛むほど旨みが口の中に広がります。
……まるで、私の世界のパンを食べてるみたい。
私も、感動しておりました。
このパンをシチューにつけて食べますと、これがまたあうんです。
シチューも、この世界独特な、どこか薄味なものではなくて、しっかり濃厚な味に仕上がっているんです。
お肉や野菜も、とろとろに煮こまれていまして、口の中でとろけていきました。
これまた、私の世界のビーフシチューと遜色ない感じです、はい。
「驚いたわね……まるでさわこの世界の料理じゃないの」
「バテアさんもそう思われます?」
「えぇ……かなりびっくりだわ」
私とバテアさんは思わずそんな言葉を交わしながら、料理を食べていました。
そんな私達の前では、ベルとエンジェさんが早くも3回目のパンのお代わりをしていました。
ーつづく
「そうしていると、さわこってば2人のお姉さんみたいね」
そんな私へ視線を向けたバテアさんが楽しそうに笑っています。
「さーちゃんお姉ちゃんニャ!」
「さわこと姉妹なんて素敵ね!」
その言葉を聞いたベルとエンジェさんはすごく嬉しそうです。
その笑顔を見ていると、私まで思わず笑顔になってしまいます。
……とりあえず、お母さんと言われなかったので、私もご機嫌です。
そんな私達の後方には、シロを左肩の上に乗せているリンシンさんが続いています。
落ちないようにリンシンさんの頭にしっかりと抱きついているシロなのですが、とても嬉しそうに微笑んでいます。
リンシンさんも、シロが落ちないようにその腰のあたりを右手で押さえながら笑顔を浮かべておいでです。
シロは、私の世界で言うところのコロボックルとでももうしましょうか、どこか民族衣装を思わせるような服を着込んでいます。
その服が、小柄なシロにすごくマッチしているものですから、時折道行く人々がシロへ視線を向けているみたいですね。
◇◇
街道を進んで、役場らしき建物の前を抜けた私達は、
「あったあった、マリーが教えてくれた美味しい食堂って、ここね」
バテアさんがそう言って指さされた先には、
『食堂ピアーグ』
そう書かれた真新しい看板が設置されているお店でした。
とても繁盛しているらしく、出入り口の前には多くの人が列をなしておられます。
「まだお昼前なのに、すごい人気ねぇ」
「ホントですねぇ」
私とバテアさんは思わず顔を見合わせました。
とはいえ、せっかく教えて頂いた美味しいお店ですからね。
私達は列の最後尾へと移動していきました。
「さーちゃん、どこか遊びに行きたいニャ!」
列で待つのが退屈なのか、ベルがそう言ってきたのですが、
「ベル、せっかくですからこのお店で食事をすませてから遊びに行きましょう」
そう言って、なんとか我慢してもらいました。
◇◇
ほどなくいたしまして、先ほどベルが遊びに行きたいと言ったのを我慢してもらったことが正解だったことを、私は身をもって実感いたしました。
……と、いうのがですね……
順番待ちの列に私達が並びますと、
「お、今日はまだ少ないな」
「急いで並ばないと」
そんな声をあげながら、次々に私達の後方に新しく人が並ばれまして、順番待ちの列がぐんぐん伸びていきまして……
今では、その列は街道を曲がって裏通りの方へ伸びていまして、その列がどこまで伸びているのかさっぱり検討が付かない状態だったんです。
「……人気店だって聞いてたけど……まさかここまでとはねぇ……」
「そうですねぇ……」
バテアさんと私は、思わず目を丸くしながら後方に伸びている列を改めてながめていきました。
さっきは待つのが嫌で遊びに行きたいと言っていたベルも、
「遊びに行かなくてよかったニャあ……」
そう言いながら目を丸くしていました。
比較的早めに並んでいたものですから、私達の順番はわりと早くに回って来ました。
「お待たせいたしました、6名様ご案内いたします」
お洒落な制服に身を包んでいる女の子が私達を席へと案内してくれました。
ピアーグの店内は、かなり広い感じです。
厨房の上に中二階が設けられていまして、そこにもお客さんを通せるようになっているのですが、どの席も当然ながら埋まっています。
私達が案内されたのは、その中二階の一番お店寄りの席でした。
横に手すりがあり、店内を見下ろせる席なのですが、
「窓際でなくてよかったかもね」
バテアさんが小声でそうおっしゃいました。
その言葉を受けて、窓際の席を見てみますと……私はその言葉の意味を理解いたしました。
窓際の席のすぐ外には、順番待ちの行列があるんです。
窓から、その列がモロに見えるものですから……はじめてこのお店を訪れた私達があの席に案内されていたら、おそらく落ち着かないことこの上なかったと思います。
……でも、ひょっとしたらそこら辺も配慮してくれたのかも
そんな事を思ったりもした私ですが、本当のところは実際に聞いてみないとわかりません。
だからといって、そんなことをわざわざ聞くのもあれですしね。
比較的、長めのいい席に案内してもらえたことに感謝しながら、私達はメニューを選んでいきました。
メニューはお昼用の物のようでして、お勧めと日替わりの2種類がメインのようでして、
「日替わり2つね」
「お勧めをもらおうか」
そんな声が店内のあちこちから聞こえてきます。
バテアさんも、それを察したご様子でして、
「お勧めはタテガミライオンの肉シチューがメインで、日替わりはデラマウントボアの肉と野菜の炒め物がメインみたいだけど、みんなどっちがいいかしら?」
そう、私達に声をかけてくださいました。
確かに、ベルやエンジェさんにメニューを渡すと、
『さーちゃん、これは何?』
『さわこ、この料理は何かしら?』
と、質問攻めにされかねませんから、バテアさんのこの判断は正解だと思います。
一応みんなに意見を聞いたのですが、
「さーちゃんは何にするニャ?」
「そうですね、私はタテガミライオンのお肉をどんな風に料理しているのか興味があるのでお勧めにしてみよう思います」
「じゃあ、アタシも同じのニャ!」
「さわこ、私もよ!」
ベルとエンジェさんが、私と同じメニューを頼むことにしたのを受けて、
「じゃ、アタシもそうしようかしら」
「……じゃ、私も」
「……シロもリンシンと一緒」
他の皆さんも全員同じ、お勧め定食を注文することになりました。
……待つこと10分
「お待たせしました、お勧め定食6人前です」
先ほど私達を案内してくれた店員さんとは別の店員さんが2人で料理を運んで来てくださいました。
こんなに混んでいる割に、かなり早い気がします。
料理は、陶器製の深皿の中にタテガミライオンのお肉のシチューが入っていまして、野菜サラダとパンがセットになっていました。
「パンとサラダはお代わり自由ですので、遠慮なくお申し付けくださいね」
店員さんの言葉を聞いたベルとエンジェさん、
「ニャ!? パン、いくらでもお代わりしていいニャ!?」
「まぁ! なんて素敵なの!」
2人して目を輝かせていた次第です。
当然のように、2人は早速パンを口に運んでいました。
その横で、私もパンを手にしたのですが……
「あら……このパンってば、すっごく柔らかいわね」
私の横でバテアさんが思わず呟かれたのですが……はい、私もまったく同じ事を思っておりました。
この世界……と、いいますかトツノコンベのお店で扱っているパンって、少しというかかなり固めの物しかないんです。
……ですが
このお店のパンは、すっごくふっくらしてまして、噛めば噛むほど旨みが口の中に広がります。
……まるで、私の世界のパンを食べてるみたい。
私も、感動しておりました。
このパンをシチューにつけて食べますと、これがまたあうんです。
シチューも、この世界独特な、どこか薄味なものではなくて、しっかり濃厚な味に仕上がっているんです。
お肉や野菜も、とろとろに煮こまれていまして、口の中でとろけていきました。
これまた、私の世界のビーフシチューと遜色ない感じです、はい。
「驚いたわね……まるでさわこの世界の料理じゃないの」
「バテアさんもそう思われます?」
「えぇ……かなりびっくりだわ」
私とバテアさんは思わずそんな言葉を交わしながら、料理を食べていました。
そんな私達の前では、ベルとエンジェさんが早くも3回目のパンのお代わりをしていました。
ーつづく
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