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連載
さわこさんと、迷子さん その2
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「ミリーネアさんがいません!?」
「ちょ!? あの子ってば、どこに行ったのよ!?」
ショッピングモールの中で、私とバテアさんは思わず貌を見合わせていました。
みはるのパワーストーンのお店に入るまでは一緒にいたはずです。
あのモフモフな髪の毛の後ろ姿が記憶にありますので……
では……
今、その姿が見えなくなっているミリーネアさんは、今、いったいどこに……
「どうしましょう……と、とりあえず迷子センターに……あ、いえ、それとも警察に……」
私は困惑してしまい、ただただオロオロしていたのですが、そんな私の横で、バテアさんは右手を顔の前に寄せながら詠唱を始められました。
すると……
その手の上に、このショッピングモールが線の状態で出現していきまして……その中に明滅している点がありました。
「いたわ! ここよ!」
「えっと、そこは……」
その場所を見つめながら、私はこのショッピングモールの構造を思い出していました。
みはるのパワーストーンのお店を少し行った先にあるエスカレーターを降りた先に……
「……思い出しました! そこ、中央広場です」
「さわこ、案内して!」
「はい!」
バテアさんの手の上にあるショッピングモールの図面の中。
その光点目指して小走りに進んでいく私とバテアさん。
休日のため、通路を行き交う人々が多いものですから、なかなか思うように進めません。
その時です。
「光点が動いた!?」
「えぇ!?」
バテアさんの言葉をお聞きして、その手の上へ視線を向けますと……確かに、光点が横に向かって移動しているではありませんか。
「や、やっと到着したのに……」
エスカレーターを降りると、そこに中央広場がございました。
今日はそこでヒーローショーが開催されていたらしく、今の子供ずれのお客様でごった返していました。
「しかし、さっきのあの女の子すごかったなぁ」
「だよねぇ、ヒーローの動きに合わせてハープをかき鳴らしはじめてさ」
「でも、それがすごくマッチしてたのよね」
親子連れの皆さんの会話をお聞きしながら、私とバテアさんは思わず顔を見合わせました。
ちょうど近くにいたお母さんが、ママ友さんと先ほど撮影した会場の画像を見せ合いっこなさっていたものですから、それを横から盗み見させていただきましたところ……
そこには……ステージで躍動しているヒーローの横で、ハープを手にしているミリーネアさんの姿がしっかり映っていたのでございます。
「あの子ってば、何やってんのよ、ホントに」
「でも、なんだか楽しそうなお顔をなさっていましたねぇ」
「だからといって、迷子になられたらかなわないっての」
「それはもう、ごもっともです……」
私とバテアさんは、小走りに光点を追いかけていきました。
その後のミリーネアさんは……
着ぐるみショーの、着ぐるみの後を追いかけていた姿が目撃されたかと思いますと、
たこ焼き屋の匂いにつられて、お店の壁にべったり張り付いていた姿が目撃されていたり
風船を配っているお姉さんから風船を受け取ったとの目撃例があったりと……
とにかく、一時も立ち止まることなくショッピングモールの中を動き回り続けていたのでございます。
「ま、まったくあの子は……いったいなんのつもりなのよ!」
動き回りすぎて、さすがのバテアさんも息を切らしておいでです。
かく言う私も、かなり息がきれておりまして……はぁ……
そんな中……この1時間近く、忙しく動き回り続けていた光点がやっと停止したのでございます。
「さ、さわこ! こ、今度こそミリーネアを捕まえるわよ!」
「はい!」
私とバテアさんは、大きく頷き会ってから、改めて小走りに進んでいきました。
「……あれ? この通路って……」
その光点に向かって進みながら、私は違和感を覚えていました。
ミリーネアさんの現在位置を指し示している光点は、その先の過度を曲がった場所で停止しているのですが……
「……確か、その先って……」
私とバテアさんが角を曲がると……そこにあったのは、みはるのパワーストーンのお店だったのです。
よく見ると、その店先にミリーネアさんの姿があるではないですか!?
ミリーネアさんは、私達の姿に気がつくと、
「2人ともどこにいってた? 心配した……」
そう言ったのでございます。
その言葉に、私とバテアさんは思わずカクンとなってしまった次第でございます。
◇◇
その後、ミリーネアさんから事情をお聞きしたのですが……
みはるのパワーストーンのお店へ移動していた際にですね、ヒーローショーの音楽が聞こえてきたもんですから、それに興味を持ってしまったミリーネアさんは、
「ちょっと見てくる」
そう言って、駆け出していったそうなんです。
歌を歌っている姿からは想像がつかないほど、普段は小声でお話をするミリーネアさんですからね、ただでさえ人混みでごった返しているショッピングモールの中で、その小さな声に気が付けと言う方が……ねぇ?
「ミリーネア、一人で勝手に離れないようにって、言ったでしょう?」
バテアさんがそう言うと、ミリーネアさんはにっこりと微笑みました。
「あのね……とっても楽しかった」
この様子だと……今もミリーネアさんは、自分が迷子になっていたという感覚はないんでしょうね・
ただ、この広いショッピングモールの中をあちこち動き回っておきながら、みはるのパワーストーンのお店の位置をしっかりと把握していたのですから……さすが、旅慣れている吟遊詩人のミリーネアさんって、思ってしまった次第でした。
その後……
今度こそ、ミリーネアさんと一緒にバスに乗って帰路についた私達なのですが……その間、一度もミリーネアさんの手を離さなかったのは、言うまでもございません。
ちなみに……歩き回って疲れてしまったのか、帰路のバスの中でミリーネアさんはずっと眠ったままでした。
その寝顔に釣られるようにして、私もバスの中で少しうとうとしていたのですが、バテアさんが起きていてくださったものですから、降りるべきバス停を行き過ぎてしまうという最悪の事態にはならなかった次第でございます。
◇◇
翌日……
居酒屋さわこさんの店内の片隅で、ミリーネアさんがハープをかき鳴らしながら歌を歌っておいででした。
♪ラララ、無数のライトに身を委ね
♪集まる人々の歓声が集まっていく
♪ラララ、香ばしい匂いについつられ……
その歌をお聴きしていますと……ヒーローショーの話題がでたかと思うと、たこ焼きやの体験談が出て来たりと、いろんな意味でバラエティに富んだ内容になっていた次第です。
その歌を、楽しそうに歌っている姿を拝見していると、なんだか私まであの日のショッピングモールの事が思い出されてしまう私でした。
ーつづく
「ちょ!? あの子ってば、どこに行ったのよ!?」
ショッピングモールの中で、私とバテアさんは思わず貌を見合わせていました。
みはるのパワーストーンのお店に入るまでは一緒にいたはずです。
あのモフモフな髪の毛の後ろ姿が記憶にありますので……
では……
今、その姿が見えなくなっているミリーネアさんは、今、いったいどこに……
「どうしましょう……と、とりあえず迷子センターに……あ、いえ、それとも警察に……」
私は困惑してしまい、ただただオロオロしていたのですが、そんな私の横で、バテアさんは右手を顔の前に寄せながら詠唱を始められました。
すると……
その手の上に、このショッピングモールが線の状態で出現していきまして……その中に明滅している点がありました。
「いたわ! ここよ!」
「えっと、そこは……」
その場所を見つめながら、私はこのショッピングモールの構造を思い出していました。
みはるのパワーストーンのお店を少し行った先にあるエスカレーターを降りた先に……
「……思い出しました! そこ、中央広場です」
「さわこ、案内して!」
「はい!」
バテアさんの手の上にあるショッピングモールの図面の中。
その光点目指して小走りに進んでいく私とバテアさん。
休日のため、通路を行き交う人々が多いものですから、なかなか思うように進めません。
その時です。
「光点が動いた!?」
「えぇ!?」
バテアさんの言葉をお聞きして、その手の上へ視線を向けますと……確かに、光点が横に向かって移動しているではありませんか。
「や、やっと到着したのに……」
エスカレーターを降りると、そこに中央広場がございました。
今日はそこでヒーローショーが開催されていたらしく、今の子供ずれのお客様でごった返していました。
「しかし、さっきのあの女の子すごかったなぁ」
「だよねぇ、ヒーローの動きに合わせてハープをかき鳴らしはじめてさ」
「でも、それがすごくマッチしてたのよね」
親子連れの皆さんの会話をお聞きしながら、私とバテアさんは思わず顔を見合わせました。
ちょうど近くにいたお母さんが、ママ友さんと先ほど撮影した会場の画像を見せ合いっこなさっていたものですから、それを横から盗み見させていただきましたところ……
そこには……ステージで躍動しているヒーローの横で、ハープを手にしているミリーネアさんの姿がしっかり映っていたのでございます。
「あの子ってば、何やってんのよ、ホントに」
「でも、なんだか楽しそうなお顔をなさっていましたねぇ」
「だからといって、迷子になられたらかなわないっての」
「それはもう、ごもっともです……」
私とバテアさんは、小走りに光点を追いかけていきました。
その後のミリーネアさんは……
着ぐるみショーの、着ぐるみの後を追いかけていた姿が目撃されたかと思いますと、
たこ焼き屋の匂いにつられて、お店の壁にべったり張り付いていた姿が目撃されていたり
風船を配っているお姉さんから風船を受け取ったとの目撃例があったりと……
とにかく、一時も立ち止まることなくショッピングモールの中を動き回り続けていたのでございます。
「ま、まったくあの子は……いったいなんのつもりなのよ!」
動き回りすぎて、さすがのバテアさんも息を切らしておいでです。
かく言う私も、かなり息がきれておりまして……はぁ……
そんな中……この1時間近く、忙しく動き回り続けていた光点がやっと停止したのでございます。
「さ、さわこ! こ、今度こそミリーネアを捕まえるわよ!」
「はい!」
私とバテアさんは、大きく頷き会ってから、改めて小走りに進んでいきました。
「……あれ? この通路って……」
その光点に向かって進みながら、私は違和感を覚えていました。
ミリーネアさんの現在位置を指し示している光点は、その先の過度を曲がった場所で停止しているのですが……
「……確か、その先って……」
私とバテアさんが角を曲がると……そこにあったのは、みはるのパワーストーンのお店だったのです。
よく見ると、その店先にミリーネアさんの姿があるではないですか!?
ミリーネアさんは、私達の姿に気がつくと、
「2人ともどこにいってた? 心配した……」
そう言ったのでございます。
その言葉に、私とバテアさんは思わずカクンとなってしまった次第でございます。
◇◇
その後、ミリーネアさんから事情をお聞きしたのですが……
みはるのパワーストーンのお店へ移動していた際にですね、ヒーローショーの音楽が聞こえてきたもんですから、それに興味を持ってしまったミリーネアさんは、
「ちょっと見てくる」
そう言って、駆け出していったそうなんです。
歌を歌っている姿からは想像がつかないほど、普段は小声でお話をするミリーネアさんですからね、ただでさえ人混みでごった返しているショッピングモールの中で、その小さな声に気が付けと言う方が……ねぇ?
「ミリーネア、一人で勝手に離れないようにって、言ったでしょう?」
バテアさんがそう言うと、ミリーネアさんはにっこりと微笑みました。
「あのね……とっても楽しかった」
この様子だと……今もミリーネアさんは、自分が迷子になっていたという感覚はないんでしょうね・
ただ、この広いショッピングモールの中をあちこち動き回っておきながら、みはるのパワーストーンのお店の位置をしっかりと把握していたのですから……さすが、旅慣れている吟遊詩人のミリーネアさんって、思ってしまった次第でした。
その後……
今度こそ、ミリーネアさんと一緒にバスに乗って帰路についた私達なのですが……その間、一度もミリーネアさんの手を離さなかったのは、言うまでもございません。
ちなみに……歩き回って疲れてしまったのか、帰路のバスの中でミリーネアさんはずっと眠ったままでした。
その寝顔に釣られるようにして、私もバスの中で少しうとうとしていたのですが、バテアさんが起きていてくださったものですから、降りるべきバス停を行き過ぎてしまうという最悪の事態にはならなかった次第でございます。
◇◇
翌日……
居酒屋さわこさんの店内の片隅で、ミリーネアさんがハープをかき鳴らしながら歌を歌っておいででした。
♪ラララ、無数のライトに身を委ね
♪集まる人々の歓声が集まっていく
♪ラララ、香ばしい匂いについつられ……
その歌をお聴きしていますと……ヒーローショーの話題がでたかと思うと、たこ焼きやの体験談が出て来たりと、いろんな意味でバラエティに富んだ内容になっていた次第です。
その歌を、楽しそうに歌っている姿を拝見していると、なんだか私まであの日のショッピングモールの事が思い出されてしまう私でした。
ーつづく
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