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さわこさんと、シロ その2
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「さぁ、みなさん、しっかり食べてくださいね」
私は、出来上がったばかりのおでん雑炊を大皿によそっては地面に置いていきます。
すると、そこに白銀狐さん達が群がっていきます。
以前、一度食べて頂いておりますので、その時のことを覚えてくださっているのでしょうね。
みんな、嬉しそうに尻尾を振りながら、お皿に顔を突っ込んでいます。
1つのお皿に群がる人がいっぱいになると、他の白銀狐さん達は、大人しくお座りして私が次のお皿を置くのを待ってくださっています。
なんでしょう、すごくお行儀がいいんですよね。
「まぁ、この子達には山菜でお世話になっているんだしね」
騒ぎを聞いて駆けつけて来てくださったバテアさん。
私が、白銀狐さん達におでん雑炊を配膳しているのを、最初は苦笑しながら眺めているだけだったのですが、程なくして配膳も手伝ってくださるようになりました。
いつしか、
大皿におでん雑炊をよそう私。
それを配膳してくださるバテアさんとリンシンさん、それにシロ
そんな構図が出来上がっていた次第でございます。
今、その白銀さん達はバテア青空市の敷地の中に入っています。
「まぁ、朝まで誰も使わないんだし……それに、アンタ達なら悪さはしないだろうしね」
そう言って、バテアさんは白銀狐さん達のことを、バテア青空市を覆っている防壁魔法の対象外に設定してくださったんです。
これで白銀狐さん達は、夜、バテア青空市の中に入って休むことが出来るようになったわけでございます。
「よかったですね、シロ。これでみんなも夜、安心して寝ることが出来るわね」
私の言葉に、シロは嬉しそうに微笑みながら何度も頷いていました。
私に向かって何度も頭を下げると、今度はバテアさんに向かって何度も頭をさげていくシロ。
「別にいいのよ、お礼なんて……アタシの知り合いに、いっつも人のためにばっかり頑張って、自分のことなんて二の次三の次にするヤツがいてね、それに感化されたのかもね」
そう言いながら、クスクス笑っておいでなのですが……同時に、私の事を見つめておいでなのですが……ひょっとしてバテアさんは、私のことを言われているのでしょうか?
もしそうなのでしたら、とても光栄なお言葉ですね。
「せっかくですから、一杯いかがですか?」
そう言って、私がバテアさんにお勧めしたのは、『宙狐 かすみ純米酒』でございます。
酒袋で搾った際の薄濁りを再現したお酒でして、少し濁りが混ざっているのですが、その濁りがほのかにお米の旨みを感じさせてくれるお酒でございます。
それをバテアさんにお注ぎしていると……白銀狐さん達の中の数匹が、私の元へ歩みよって来たかと思いますと、そこでお座りしたのでございます。
「……ひょっとして、白銀狐さん達もこのお酒を飲みたいのですか?」
私がそう言って一升瓶を少し掲げますと、白銀狐さん達は一斉に頷きました。
「何よ、日本酒の味がわかるの、あんた達?」
クスクス笑うバテアさん。
白銀狐さん達には、温めたミルクも準備させて頂いておりまして、そちらのお皿にも多くの白銀狐さん達が集まっていらっしゃるのですが……私の元に集まったみなさんは、お酒が飲みたいみたいですね。
せっかく、狐の一文字を持っているお酒ですし……
私は、そのお酒をコップに注ぐと、私の元に集まって来た白銀狐さん達の前にそれをひとつずつ置いていきました。
すると……
白銀狐さん達は、その姿を人型に変化させまして、そしてグラスを手に取るとそれを口に運んでいったんです。
「まぁ……みなさんも人型になれたのです……ね?」
私が、思わずそう言ったのですが……最後の一言だけは疑問形になってしまいました。
と、いいますのも……
白銀狐さん達は、お酒を飲み干すなり、すぐにその姿を白銀狐さんのそれに戻してしまわれたからなんです。
「シロのように、ずっとは人型になれないのかもね。魔獣が亜人になれるっていうのは、そもそもすっごく希なんだしさ」
「あぁ、それでお酒を飲み時だけ……」
私とバテアさんがそんな会話を交わしていると、白銀狐さん達は私達の会話を肯定するかのように頭を上下に不振っていました。
白銀狐さん達なりに、お酒に対して礼を尽くしてくれた……そういうことなのかもしれませんね。
バテア青空市の中には、遅れてやってこられたミリーネアさんが歌を披露してくださっていました。
その歌声が、白銀狐さん達の間をすり抜けています。
そんな白銀狐さん達の中には、その歌声を聞きながら眠りにつき始めている方々もお見受け出来ました。
おそらく、流血狼の襲撃に備えて、白銀狐さん達は連日交代で見張りをしながら気の抜けない夜をすごしていたのではないかと思います。
それに、連日のこの雪で、餌も満足にはとれていなかったのではないかと思われます。
それが、久しぶりに安心して眠ることが出来る、雪を凌げる場所にいることが出来て、お腹いっぱい飲み食いも出来たものですから、安堵から蓄積していたお疲れがどっとでたのかもしれませんね。
シロも、いつのまにかリンシンさんにおんぶされて眠っていました。
こうして……
いつもはバテアさんの部屋の2階にありますリビングで行われている晩酌が、今夜はここ、バテア青空市にて開催されていった次第でございます。
◇◇
翌朝……
今朝は、白銀狐さん達にはジャッケの雑炊を振る舞わせて頂きました。
それをみなさんは、美味しそうに食べてくださった次第です。
そして、
「……じゃあ、行ってくる」
白銀狐さん達と一緒に、リンシンさんを中心にした、居酒屋さわこさんと契約してくださっている冒険者のみなさんが森の中へ向かって出発していかれたのでございます。
白銀狐さん達に案内してもらって、流血狼の群れを狩りに向かわれたのでございます。
流血狼は賢い魔獣だそうでして、冒険者達が狩りにやってくると、それを察知して寝床を変えたり、気配をひそめたりしてしまうそうなんです。
そのため、なかなか狩るのが難しいとされているのですが……白銀狐さん達が、その案内係を務めてくださると言うわけなのでございます。
確かに……白銀狐さん達にとっても、流血狼は天敵と言える存在でございますものね。
この日、そんな白銀狐さん達に先導されたリンシンさん達は、流血狼の群れを2つ壊滅させたのだそうです。
そのお肉は、居酒屋さわこさんの料理の材料として提供頂けた次第です。
さばいている最中に、少し焼いてみたのですが……
「うん。すごく美味しいですね、このお肉!?」
それを口にした私は、思わず感嘆の声をあげてしまいました。
こちらの世界で最高のお肉とされております、タテガミライオンのお肉に勝るとも劣らない……と言ったら、少し言いすぎかもしれませんが、人によってはこちらのお肉の方を好まれる方もいらっしゃるはず……そう確信出来るお味なんですよ。
その味に感動していると……
「さわこ、私の分はまだ?」
そう言って、カウンター席から手を延ばしてこられたのは……他ならぬツカーサさんだったのでございます。
なんといいますか……居酒屋さわこさんで新商品の試食をしていると、かなりの高確率でお店にひょっこり現れるツカーサさん。
「いやぁ、何か美味しそうな匂いがしたもんだからさ……えへ」
そう言って、舌を出しておいでです。
「はいはい、まってくださいね、すぐに準備しますから」
そう言うと、私は流血狼のお肉を少し大きめにカットいたしまして、それを焼き始めました。
すると、今度は
「さーちゃん、何、この美味しそうな匂い?」
「さわこ、とても美味しそうな匂いね」
2階からベルとエンジェさんまで降りてきたのでございます。
どうやら、もう少し多めにお肉を焼かないといけなくなったみたいですね。
ーつづく
私は、出来上がったばかりのおでん雑炊を大皿によそっては地面に置いていきます。
すると、そこに白銀狐さん達が群がっていきます。
以前、一度食べて頂いておりますので、その時のことを覚えてくださっているのでしょうね。
みんな、嬉しそうに尻尾を振りながら、お皿に顔を突っ込んでいます。
1つのお皿に群がる人がいっぱいになると、他の白銀狐さん達は、大人しくお座りして私が次のお皿を置くのを待ってくださっています。
なんでしょう、すごくお行儀がいいんですよね。
「まぁ、この子達には山菜でお世話になっているんだしね」
騒ぎを聞いて駆けつけて来てくださったバテアさん。
私が、白銀狐さん達におでん雑炊を配膳しているのを、最初は苦笑しながら眺めているだけだったのですが、程なくして配膳も手伝ってくださるようになりました。
いつしか、
大皿におでん雑炊をよそう私。
それを配膳してくださるバテアさんとリンシンさん、それにシロ
そんな構図が出来上がっていた次第でございます。
今、その白銀さん達はバテア青空市の敷地の中に入っています。
「まぁ、朝まで誰も使わないんだし……それに、アンタ達なら悪さはしないだろうしね」
そう言って、バテアさんは白銀狐さん達のことを、バテア青空市を覆っている防壁魔法の対象外に設定してくださったんです。
これで白銀狐さん達は、夜、バテア青空市の中に入って休むことが出来るようになったわけでございます。
「よかったですね、シロ。これでみんなも夜、安心して寝ることが出来るわね」
私の言葉に、シロは嬉しそうに微笑みながら何度も頷いていました。
私に向かって何度も頭を下げると、今度はバテアさんに向かって何度も頭をさげていくシロ。
「別にいいのよ、お礼なんて……アタシの知り合いに、いっつも人のためにばっかり頑張って、自分のことなんて二の次三の次にするヤツがいてね、それに感化されたのかもね」
そう言いながら、クスクス笑っておいでなのですが……同時に、私の事を見つめておいでなのですが……ひょっとしてバテアさんは、私のことを言われているのでしょうか?
もしそうなのでしたら、とても光栄なお言葉ですね。
「せっかくですから、一杯いかがですか?」
そう言って、私がバテアさんにお勧めしたのは、『宙狐 かすみ純米酒』でございます。
酒袋で搾った際の薄濁りを再現したお酒でして、少し濁りが混ざっているのですが、その濁りがほのかにお米の旨みを感じさせてくれるお酒でございます。
それをバテアさんにお注ぎしていると……白銀狐さん達の中の数匹が、私の元へ歩みよって来たかと思いますと、そこでお座りしたのでございます。
「……ひょっとして、白銀狐さん達もこのお酒を飲みたいのですか?」
私がそう言って一升瓶を少し掲げますと、白銀狐さん達は一斉に頷きました。
「何よ、日本酒の味がわかるの、あんた達?」
クスクス笑うバテアさん。
白銀狐さん達には、温めたミルクも準備させて頂いておりまして、そちらのお皿にも多くの白銀狐さん達が集まっていらっしゃるのですが……私の元に集まったみなさんは、お酒が飲みたいみたいですね。
せっかく、狐の一文字を持っているお酒ですし……
私は、そのお酒をコップに注ぐと、私の元に集まって来た白銀狐さん達の前にそれをひとつずつ置いていきました。
すると……
白銀狐さん達は、その姿を人型に変化させまして、そしてグラスを手に取るとそれを口に運んでいったんです。
「まぁ……みなさんも人型になれたのです……ね?」
私が、思わずそう言ったのですが……最後の一言だけは疑問形になってしまいました。
と、いいますのも……
白銀狐さん達は、お酒を飲み干すなり、すぐにその姿を白銀狐さんのそれに戻してしまわれたからなんです。
「シロのように、ずっとは人型になれないのかもね。魔獣が亜人になれるっていうのは、そもそもすっごく希なんだしさ」
「あぁ、それでお酒を飲み時だけ……」
私とバテアさんがそんな会話を交わしていると、白銀狐さん達は私達の会話を肯定するかのように頭を上下に不振っていました。
白銀狐さん達なりに、お酒に対して礼を尽くしてくれた……そういうことなのかもしれませんね。
バテア青空市の中には、遅れてやってこられたミリーネアさんが歌を披露してくださっていました。
その歌声が、白銀狐さん達の間をすり抜けています。
そんな白銀狐さん達の中には、その歌声を聞きながら眠りにつき始めている方々もお見受け出来ました。
おそらく、流血狼の襲撃に備えて、白銀狐さん達は連日交代で見張りをしながら気の抜けない夜をすごしていたのではないかと思います。
それに、連日のこの雪で、餌も満足にはとれていなかったのではないかと思われます。
それが、久しぶりに安心して眠ることが出来る、雪を凌げる場所にいることが出来て、お腹いっぱい飲み食いも出来たものですから、安堵から蓄積していたお疲れがどっとでたのかもしれませんね。
シロも、いつのまにかリンシンさんにおんぶされて眠っていました。
こうして……
いつもはバテアさんの部屋の2階にありますリビングで行われている晩酌が、今夜はここ、バテア青空市にて開催されていった次第でございます。
◇◇
翌朝……
今朝は、白銀狐さん達にはジャッケの雑炊を振る舞わせて頂きました。
それをみなさんは、美味しそうに食べてくださった次第です。
そして、
「……じゃあ、行ってくる」
白銀狐さん達と一緒に、リンシンさんを中心にした、居酒屋さわこさんと契約してくださっている冒険者のみなさんが森の中へ向かって出発していかれたのでございます。
白銀狐さん達に案内してもらって、流血狼の群れを狩りに向かわれたのでございます。
流血狼は賢い魔獣だそうでして、冒険者達が狩りにやってくると、それを察知して寝床を変えたり、気配をひそめたりしてしまうそうなんです。
そのため、なかなか狩るのが難しいとされているのですが……白銀狐さん達が、その案内係を務めてくださると言うわけなのでございます。
確かに……白銀狐さん達にとっても、流血狼は天敵と言える存在でございますものね。
この日、そんな白銀狐さん達に先導されたリンシンさん達は、流血狼の群れを2つ壊滅させたのだそうです。
そのお肉は、居酒屋さわこさんの料理の材料として提供頂けた次第です。
さばいている最中に、少し焼いてみたのですが……
「うん。すごく美味しいですね、このお肉!?」
それを口にした私は、思わず感嘆の声をあげてしまいました。
こちらの世界で最高のお肉とされております、タテガミライオンのお肉に勝るとも劣らない……と言ったら、少し言いすぎかもしれませんが、人によってはこちらのお肉の方を好まれる方もいらっしゃるはず……そう確信出来るお味なんですよ。
その味に感動していると……
「さわこ、私の分はまだ?」
そう言って、カウンター席から手を延ばしてこられたのは……他ならぬツカーサさんだったのでございます。
なんといいますか……居酒屋さわこさんで新商品の試食をしていると、かなりの高確率でお店にひょっこり現れるツカーサさん。
「いやぁ、何か美味しそうな匂いがしたもんだからさ……えへ」
そう言って、舌を出しておいでです。
「はいはい、まってくださいね、すぐに準備しますから」
そう言うと、私は流血狼のお肉を少し大きめにカットいたしまして、それを焼き始めました。
すると、今度は
「さーちゃん、何、この美味しそうな匂い?」
「さわこ、とても美味しそうな匂いね」
2階からベルとエンジェさんまで降りてきたのでございます。
どうやら、もう少し多めにお肉を焼かないといけなくなったみたいですね。
ーつづく
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