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連載
さわこさんと、お寝坊なみなさん
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今朝も、辺境都市トツノコンベは雪でございます。
私が元いた世界でも、この時期は雪が降ってはいました。
ですが、ここトツノコンベの積雪はその比ではございません。
そうですね……例えますと、北海道あたりの積雪とでも申しましょうか……毎朝、私の身長並に積雪しているのですから、目を丸くしてしまいます。
いつものように、早朝に目を覚ました私は窓の外を見つめながらそんなことを考えていたのですが、
「ふわぁ……おあよ~わさこ……」
ベッドの中からバテアさんが大きく伸びをしながら目を覚まされました。
私のことを「さわこ」ではなく「わさこ」と呼ばれていますので、まだ寝ぼけておいでのようですね。
バテアさんは、役場から依頼されて毎朝この積雪を魔法で溶かして回ってくださっているんです。
朝が苦手なバテアさんが、こうして早起きをしてくださって、この作業に従事してくださっているおかげで早朝から営業しているバテア青空市をはじめとしたトツノコンベの街の朝の活動が開始出来ているのでございます。
「おはようございますバテアさん。何か食べられますか?」
「ん~……今朝は帰ってからでいいわ、まだちょっと胃がねぇ」
「もう、だからもう少し晩酌を控えた方がよろしいのではって申し上げましたのに」
「あはは……それは言いっこなしってことで」
バテアさんは、私と会話を交わしながら服を身につけておいでです。
相変わらず、寝起きはシャネルの5番と申しますか……何も身につけずに寝ておいでのバテアさん。
最初の頃は同性とはいえ、少々どぎまぎしたものですが、最近は私もすっかり慣れてしまいまして……
「では、お戻りになられましたら、何か温かいものをおだしいたしますね」
そう言いながら、一階へと降りていった次第でございます。
すると、
「さわこ、おはよう!」
私が階段に足をかけた瞬間に、ベッドで眠っていたもう一人……エンジェさんが文字通り飛び起きました。
その声に呼応して、リンシンさんもコタツの横に敷いているお布団の中からむくりと体を起こされました。
未だに起きていないのは、ミリーネアさんとベルの2人です。
以前のベルはリンシンさんのお布団の中で、人の姿になって寝ていたのですが……最近のベルは、ミリーネアさんのお布団の中で眠るのが常になっております。
牙猫の姿になりまして、ミリーネアさんのモフモフの髪の毛の中に潜り込むようにして眠っているベル。
その、気持ちよさそうな姿を見ておりますと、私まで、そのモフモフの髪の毛の中に飛び込んで行きたい……そんな衝動にかられてしまいます。
そんな事を私が考えていると、ミリーネアさんもむくりと起き上がりました。
まだ寝ぼけた様子のミリーネアさんは、おトイレなのでしょうか?……ゆっくり起き上がったのですが。
ベルったら、そのモフモフの髪の毛にしがみつくようにして離れようとしていません。
しかもベルってば、ミリーネアさんがおトイレに行き、戻って来てもその体勢をキープしていまして……
「……ベル、すごいね」
「ホントに……」
リンシンさんと私が、思わず苦笑してしまうほどでございます、はい。
◇◇
ベルは、一見すると猫ですが……古代怪獣族という、私の世界で例えますとは虫類に分類されます。
そのため、自分で体温調整がうまく出来ない物ですから、こういった寒い時期は長めに睡眠をとっています。
そうしないと、種の本能として冬眠を開始しかねないんです。
一度冬眠状態になってしまうと、短くて1週間程度、長いと1ヶ月以上目覚めなくなってしまいます。
今のベルは
「さーちゃんやみんなと一緒に楽しくすごしたいニャ」
と、言い続けていますので、そうならないように私達もしっかり配慮してあげないといけません。
そんな中……
私とエンジェさんはだるまストーブを台車にのせてバテア青空市へ。
リンシンさんは、昨日仕掛けた罠の具合を見に。
そして、バテアさんは街の雪を溶かしに。
みんな、それぞれに出かけていきました。
ミリーネアさんとベルは、コタツに足を突っ込んだ状態でもうしばらくお眠です。
◇◇
ほどなくいたしまして……
私とエンジェさんがバテア青空市での業務を終えて戻ってくるのと、時を同じくして、
「あ~……今朝もやっと終わったわぁ」
バテアさんが、大あくびをなさりながら、街道の方から戻ってこられました。
「バテアさん、お疲れさまです」
「バテア、お疲れ!」
私とエンジェさんの言葉に、右手をあげて返事を返してくださったバテアさんは、そのまま二階に1直線。
「ちょっと今日は眠いわ……もう一眠りするね」
そう言うと、寝間着に着替えてベッドに潜り込もうとなさったのですが……
「バーちゃん、おはようニャ!」
そこに、ミリーネアさんの髪の毛の中から起きだしたベルが飛びついていったのでございます。
「ちょっとベル……アタシはもう一眠りしたいのよ……それにアタシはバーちゃんじゃないってなんど言えば……」
顔をしかめながらベッドに入ろうとするバテアさん。
ベルは、
「じゃあ、ベルも一緒にもう一眠りするニャ」
そう言うと、牙猫の姿のままバテアさんの寝間着の中に潜り込みまして……胸の谷間から顔を出してきた次第です。
「ちょっとベル……寝間着が伸びるじゃないの……」
そう言いながらも、バテアさんも眠さが限界だったご様子です。
ベルに潜り込まれたままの状態でベッドに潜り込むと、すぐに寝息を立て始めてしまいました。
なんといいますか……仲睦まじいことこの上ない光景です。
そんな2人がいつ起きてきてもいいように、朝ご飯の準備をしておいてあげようと思います。
もうじき、さわこの森で働いておられます皆様が、居酒屋さわこさんに朝ご飯を食べにこられますので、ちょっと急がないといけません。
たらこを軽く炙り、それを握り飯の具材にいたします。
少し固めの三角握りが私流でございます。
たらこにはビタミンEが豊富に含まれております。
そのおかげで、毛細血管をひろげて血流をよくする作用がありますので、体があったまる効果が期待出来るんですよ。
付け合わせには、具だくさんの豚汁を準備いたします。
先日、白銀狐さん達が届けてくださったお野菜の中にございましたタケノコ風の食材を水煮したものや、キャベツによく似た食感の小振りな玉キャベツに、私の世界で仕入れてきました新タマネギや豚バラ肉を加えてコトコト煮こんでいきます。
さわこの森のみなさんにも味わってもらいたいので、この豚汁は大目に作成しています。
いつかは白銀狐さん達にも味わって頂きたいもです。
まだまだ雪深いトツノコンベですが……その雪の下には、ゆっくりと春の息吹が芽生え始めているんですね。
その事を改めて実感しながら、私はアクを取り除いていた次第でございます。
ーつづく
私が元いた世界でも、この時期は雪が降ってはいました。
ですが、ここトツノコンベの積雪はその比ではございません。
そうですね……例えますと、北海道あたりの積雪とでも申しましょうか……毎朝、私の身長並に積雪しているのですから、目を丸くしてしまいます。
いつものように、早朝に目を覚ました私は窓の外を見つめながらそんなことを考えていたのですが、
「ふわぁ……おあよ~わさこ……」
ベッドの中からバテアさんが大きく伸びをしながら目を覚まされました。
私のことを「さわこ」ではなく「わさこ」と呼ばれていますので、まだ寝ぼけておいでのようですね。
バテアさんは、役場から依頼されて毎朝この積雪を魔法で溶かして回ってくださっているんです。
朝が苦手なバテアさんが、こうして早起きをしてくださって、この作業に従事してくださっているおかげで早朝から営業しているバテア青空市をはじめとしたトツノコンベの街の朝の活動が開始出来ているのでございます。
「おはようございますバテアさん。何か食べられますか?」
「ん~……今朝は帰ってからでいいわ、まだちょっと胃がねぇ」
「もう、だからもう少し晩酌を控えた方がよろしいのではって申し上げましたのに」
「あはは……それは言いっこなしってことで」
バテアさんは、私と会話を交わしながら服を身につけておいでです。
相変わらず、寝起きはシャネルの5番と申しますか……何も身につけずに寝ておいでのバテアさん。
最初の頃は同性とはいえ、少々どぎまぎしたものですが、最近は私もすっかり慣れてしまいまして……
「では、お戻りになられましたら、何か温かいものをおだしいたしますね」
そう言いながら、一階へと降りていった次第でございます。
すると、
「さわこ、おはよう!」
私が階段に足をかけた瞬間に、ベッドで眠っていたもう一人……エンジェさんが文字通り飛び起きました。
その声に呼応して、リンシンさんもコタツの横に敷いているお布団の中からむくりと体を起こされました。
未だに起きていないのは、ミリーネアさんとベルの2人です。
以前のベルはリンシンさんのお布団の中で、人の姿になって寝ていたのですが……最近のベルは、ミリーネアさんのお布団の中で眠るのが常になっております。
牙猫の姿になりまして、ミリーネアさんのモフモフの髪の毛の中に潜り込むようにして眠っているベル。
その、気持ちよさそうな姿を見ておりますと、私まで、そのモフモフの髪の毛の中に飛び込んで行きたい……そんな衝動にかられてしまいます。
そんな事を私が考えていると、ミリーネアさんもむくりと起き上がりました。
まだ寝ぼけた様子のミリーネアさんは、おトイレなのでしょうか?……ゆっくり起き上がったのですが。
ベルったら、そのモフモフの髪の毛にしがみつくようにして離れようとしていません。
しかもベルってば、ミリーネアさんがおトイレに行き、戻って来てもその体勢をキープしていまして……
「……ベル、すごいね」
「ホントに……」
リンシンさんと私が、思わず苦笑してしまうほどでございます、はい。
◇◇
ベルは、一見すると猫ですが……古代怪獣族という、私の世界で例えますとは虫類に分類されます。
そのため、自分で体温調整がうまく出来ない物ですから、こういった寒い時期は長めに睡眠をとっています。
そうしないと、種の本能として冬眠を開始しかねないんです。
一度冬眠状態になってしまうと、短くて1週間程度、長いと1ヶ月以上目覚めなくなってしまいます。
今のベルは
「さーちゃんやみんなと一緒に楽しくすごしたいニャ」
と、言い続けていますので、そうならないように私達もしっかり配慮してあげないといけません。
そんな中……
私とエンジェさんはだるまストーブを台車にのせてバテア青空市へ。
リンシンさんは、昨日仕掛けた罠の具合を見に。
そして、バテアさんは街の雪を溶かしに。
みんな、それぞれに出かけていきました。
ミリーネアさんとベルは、コタツに足を突っ込んだ状態でもうしばらくお眠です。
◇◇
ほどなくいたしまして……
私とエンジェさんがバテア青空市での業務を終えて戻ってくるのと、時を同じくして、
「あ~……今朝もやっと終わったわぁ」
バテアさんが、大あくびをなさりながら、街道の方から戻ってこられました。
「バテアさん、お疲れさまです」
「バテア、お疲れ!」
私とエンジェさんの言葉に、右手をあげて返事を返してくださったバテアさんは、そのまま二階に1直線。
「ちょっと今日は眠いわ……もう一眠りするね」
そう言うと、寝間着に着替えてベッドに潜り込もうとなさったのですが……
「バーちゃん、おはようニャ!」
そこに、ミリーネアさんの髪の毛の中から起きだしたベルが飛びついていったのでございます。
「ちょっとベル……アタシはもう一眠りしたいのよ……それにアタシはバーちゃんじゃないってなんど言えば……」
顔をしかめながらベッドに入ろうとするバテアさん。
ベルは、
「じゃあ、ベルも一緒にもう一眠りするニャ」
そう言うと、牙猫の姿のままバテアさんの寝間着の中に潜り込みまして……胸の谷間から顔を出してきた次第です。
「ちょっとベル……寝間着が伸びるじゃないの……」
そう言いながらも、バテアさんも眠さが限界だったご様子です。
ベルに潜り込まれたままの状態でベッドに潜り込むと、すぐに寝息を立て始めてしまいました。
なんといいますか……仲睦まじいことこの上ない光景です。
そんな2人がいつ起きてきてもいいように、朝ご飯の準備をしておいてあげようと思います。
もうじき、さわこの森で働いておられます皆様が、居酒屋さわこさんに朝ご飯を食べにこられますので、ちょっと急がないといけません。
たらこを軽く炙り、それを握り飯の具材にいたします。
少し固めの三角握りが私流でございます。
たらこにはビタミンEが豊富に含まれております。
そのおかげで、毛細血管をひろげて血流をよくする作用がありますので、体があったまる効果が期待出来るんですよ。
付け合わせには、具だくさんの豚汁を準備いたします。
先日、白銀狐さん達が届けてくださったお野菜の中にございましたタケノコ風の食材を水煮したものや、キャベツによく似た食感の小振りな玉キャベツに、私の世界で仕入れてきました新タマネギや豚バラ肉を加えてコトコト煮こんでいきます。
さわこの森のみなさんにも味わってもらいたいので、この豚汁は大目に作成しています。
いつかは白銀狐さん達にも味わって頂きたいもです。
まだまだ雪深いトツノコンベですが……その雪の下には、ゆっくりと春の息吹が芽生え始めているんですね。
その事を改めて実感しながら、私はアクを取り除いていた次第でございます。
ーつづく
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