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さわこさんと、コタツ その2
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数日後……
「こんな感じで良いのか?さわこよ」
作業をしてくださった大工のドルーさんが私に確認を求めてこられました。
そんなドルーさんの前、居酒屋さわこさんの壁際に、一段高くなったスペースが出来上がっていました。
その上は板張りになっていますが、その中央部分が四角く掘れています。
しばらく、その板間を手で触っていた私は
「はい、ばっちりです。ドルーさんありがとうございます」
満面の笑顔でそうお答えさせていただきました。
そんなに広くもありませんが、かといって狭すぎるわけでもございません。
「さわこよ、ここにあがって飯を食えるようにするつもりなんじゃろうが……なんでまた中央をへこませたんじゃ?」
ドルーさんは、中央部分を見つめながらしきりに首をひねっておいでです。
「はい、私が以前いた世界の知恵といいますか……」
私がそんな説明をしておりますと、リンシンさんが二階から降りてこられました。
「……さわこ、これでいい?」
「あ、はい、それですそれです。リンシンさんありがとうございます」
私はそんなリンシンさんの元に駆け寄りますと、一緒にその荷物を運んでまいりました。
はい、それはコタツでございます。
以前、居酒屋酒話で使用していたコタツの1つでございます。
かつて、居酒屋酒話ではお座敷が2つございまして、そこに2つのコタツを出しておりました。
それにちなみまして、最初、この居酒屋さわこさんでもお座敷を2つ作成しようと考えたのですが、2つの理由で、今はそれを断念いたしました。
1つ目の理由なのですが……
この世界ではお座敷の上で食事を食べるという習慣がないことでございます。
お座敷に上がっていただくには、靴を脱いで頂かなくてはなりません。
ですが、こちらの世界の方々には、外で靴をぬぐという習慣があまりないそうなのです。
そんな中で、いきなりお座敷2つ分のスペースを作るのは少し危険かなと思いまして、とりあえずまずは1席分のスペースを作成して様子を見てみようと思った次第なのです。
そして、もう1つの理由なのですが……
私は、ここで一度二階に上がっていきました。
階段のすぐ上はバテアさん宅のリビングになっています。
そして、そのリビングのど真ん中にコタツが1つ設置されているのですが……
「ふにゃあ……」
そのコタツ布団の端から顔だけ出しているベルが、その顔に満面の笑顔を浮かべながら目を閉じています。
……そうなんです
ベルがこのコタツを気に入ってしまいまして、その中から出ようとしなくなっているんです。
……実は、ベルだけではありません。
このコタツをリビングに設置したその夜……
「へぇ、これがコタツねぇ……ふぅん、悪くないわね」
「……すごく暖かい……いいね」
さっそくコタツを試されたバテアさんとリンシンさんも、このコタツのことをすっかり気に入ってくださいまして、その夜の晩酌は、早速コタツで行われた次第でございます。
今では、バテアさんもリンシンさんも、コタツでの晩酌がすっかりお気に入りになっておられまして、今ではコタツがリビングの中央にございまして、以前そこにあったテーブルは折りたたまれて部屋の隅に移動させられている始末でございまして……
そういう2つの理由によりまして、居酒屋さわこさんではとりあえずお座敷1つ、コタツ1つを追加して営業してみることにした次第でございます。
「ベル、コタツで寝ると風邪を引きますよ」
私は、ベルの首の辺りをゆすりました。
するとベルは、眠そうに目をこすりながら起き上がりまして、
「うにゅう……もう朝ニャ?」
寝ぼけた声でそう言いました。
その言葉に、私は思わず苦笑してしまいました。
「もう……一緒に朝ご飯も、お昼ご飯も食べたではないですか。もう夕方ですよ」
「ふにゃ!? 大変大変!」
そう言いながら、ベルはこたつから飛び起きました、
そして、私の前に駆け寄りますと、
「さーちゃん、うどんうどん! ベル、うどんを踏むにゃ!」
私の手を引っ張りながらそう言いました。
そんなベルに私は、
「ちょっと待ってくださいね、コタツの部品を持ったら一緒におりましょう」
そう声をかけました。
その後、2階に残っていたコタツの部品を手にした私は、ベルと一緒に一階へ戻っていきました。
そこでベルは、私からうどんのタネを受け取ると、だるまストーブの近くで
「わっせ!わっせ!」
と、元気な声をあげながら、それを踏み始めました。
「ほほう、ベルのおかげで今夜も美味いうどんが食えそうじゃな」
そんなベルの様子を見つめながら、ドルーさんが笑顔で頷いておられます。
そんなドルーさんに、ベルは、
「ニャ! 任せるニャ!」
満面の笑顔でそう答えると、
「わっせ! わっせ! どーちゃんのためにわっせ! わっせ!」
かけ声の中に、ドルーさんの名前を加えながら、うどんをふみふみしはじめました。
それを聞いたドルーさんは
「うんうん、今夜は絶対にうどんを頼むからの」
そう言いながら満面の笑顔を浮かべておられました。
ベルとドルーさんがそんな会話を交わしている中、私とリンシンさんは、座敷の上でコタツを組み立てておりました。
◇◇
その夜の営業から、居酒屋さわこさんの一角にお座敷コーナーがお目見えいたしました。
その中央には、コタツが敷いてあります。
その中が掘れていますので、足を降ろして食事を出来る仕組みになっております。
縦長タイプで、左右に4人座れるようになっております。
「ワオ……なんだか面白い席ね」
そのお座敷席を見たエミリアが感嘆の声をあげました。
「さわこ、ここには複数のお客様をお通しした方がグッドよね?」
「はいそうですね。そうしていただけると助かります。あと、お座敷に上がられる際にはくれぐれも靴を脱いで頂くようにお願いしてくださいね」
「オーケー、わかったわ。他に聞いておくことはあるかしら?」
「そうですね……あ、外套などを身につけておられる方は……」
私は、お客様案内係を主にしてくださっているエミリアと、お座敷席の打ち合わせを行っていきました。
そんなに難しい内容はお話していませんが、靴を脱いでもらうようにお願いしてもらうことを繰り返しておいた次第でございます。
そんな感じで一通り打ち合わせを終えたところで、お店の扉が開きました。
「ジュ? なんだ、あの席は?」
この夜、最初にお店に顔を出してくださったのは、冒険者のジューイさんでした。
その後方には、クニャスさん、シロイルさん、クマタロさん達、居酒屋さわこさんと専属契約を交わしてくださっている冒険者の皆様が続いておられます。
その数、ぴったり4人です。
「ウェルカム。あの席は今日から出来たお座敷なんですけど、利用されますか?」
「ジュ! 面白そうジュ、ぜひ使いたいジュ!」
エミリアの言葉に、ジューイさんは嬉しそうに声をあげながらお座敷席に向かっていかれました。
すると、
「ウェイト! ジューイ、お酒はいいのかしら?」
そう言ってエミリアがジューイさんを呼び止めました。
ジューイさん以外の3人は、エミリアにサービスのお酒を注いでもらっているところです。
すると、それを見たジューイさんは
「ジュ!? 忘れてたジュ! 僕もいるジュ!」
そう言いながら、慌ててユーターンして、エミリアの元へ向かって駆けていかれました。
こうして、お座敷第一号のお客様はジューイさん達に……
「へぇ、これコタツっていうのね、なんかあったかくていいわねぇ」
「え?」
その声にびっくりして、コタツの方へ視線を向けますと……な、なんということでしょう。
コタツに、ツカーサさんが一人、ちょこんと座っておられるではありませんか?
「ワオ!? ツカーサ、いつ来たのよ? 気がつかなかったわ……あ、靴は脱いでくれてるかしら?」
「えへへ、さっき来たばっかだけどさ。あ、靴は脱いだよ~」
エミリアの言葉に、ツカーサさんは楽しそうに笑いながら返事を返してくださっています。
そ、そんなわけで、お座敷第一号のお客様は、ツカーサさんになった次第でございます。
あ、もちろんジューイさん達と相席にしてもらいました。
ツカーサさんも快く了承してくださいましたしね。
ーつづく
「こんな感じで良いのか?さわこよ」
作業をしてくださった大工のドルーさんが私に確認を求めてこられました。
そんなドルーさんの前、居酒屋さわこさんの壁際に、一段高くなったスペースが出来上がっていました。
その上は板張りになっていますが、その中央部分が四角く掘れています。
しばらく、その板間を手で触っていた私は
「はい、ばっちりです。ドルーさんありがとうございます」
満面の笑顔でそうお答えさせていただきました。
そんなに広くもありませんが、かといって狭すぎるわけでもございません。
「さわこよ、ここにあがって飯を食えるようにするつもりなんじゃろうが……なんでまた中央をへこませたんじゃ?」
ドルーさんは、中央部分を見つめながらしきりに首をひねっておいでです。
「はい、私が以前いた世界の知恵といいますか……」
私がそんな説明をしておりますと、リンシンさんが二階から降りてこられました。
「……さわこ、これでいい?」
「あ、はい、それですそれです。リンシンさんありがとうございます」
私はそんなリンシンさんの元に駆け寄りますと、一緒にその荷物を運んでまいりました。
はい、それはコタツでございます。
以前、居酒屋酒話で使用していたコタツの1つでございます。
かつて、居酒屋酒話ではお座敷が2つございまして、そこに2つのコタツを出しておりました。
それにちなみまして、最初、この居酒屋さわこさんでもお座敷を2つ作成しようと考えたのですが、2つの理由で、今はそれを断念いたしました。
1つ目の理由なのですが……
この世界ではお座敷の上で食事を食べるという習慣がないことでございます。
お座敷に上がっていただくには、靴を脱いで頂かなくてはなりません。
ですが、こちらの世界の方々には、外で靴をぬぐという習慣があまりないそうなのです。
そんな中で、いきなりお座敷2つ分のスペースを作るのは少し危険かなと思いまして、とりあえずまずは1席分のスペースを作成して様子を見てみようと思った次第なのです。
そして、もう1つの理由なのですが……
私は、ここで一度二階に上がっていきました。
階段のすぐ上はバテアさん宅のリビングになっています。
そして、そのリビングのど真ん中にコタツが1つ設置されているのですが……
「ふにゃあ……」
そのコタツ布団の端から顔だけ出しているベルが、その顔に満面の笑顔を浮かべながら目を閉じています。
……そうなんです
ベルがこのコタツを気に入ってしまいまして、その中から出ようとしなくなっているんです。
……実は、ベルだけではありません。
このコタツをリビングに設置したその夜……
「へぇ、これがコタツねぇ……ふぅん、悪くないわね」
「……すごく暖かい……いいね」
さっそくコタツを試されたバテアさんとリンシンさんも、このコタツのことをすっかり気に入ってくださいまして、その夜の晩酌は、早速コタツで行われた次第でございます。
今では、バテアさんもリンシンさんも、コタツでの晩酌がすっかりお気に入りになっておられまして、今ではコタツがリビングの中央にございまして、以前そこにあったテーブルは折りたたまれて部屋の隅に移動させられている始末でございまして……
そういう2つの理由によりまして、居酒屋さわこさんではとりあえずお座敷1つ、コタツ1つを追加して営業してみることにした次第でございます。
「ベル、コタツで寝ると風邪を引きますよ」
私は、ベルの首の辺りをゆすりました。
するとベルは、眠そうに目をこすりながら起き上がりまして、
「うにゅう……もう朝ニャ?」
寝ぼけた声でそう言いました。
その言葉に、私は思わず苦笑してしまいました。
「もう……一緒に朝ご飯も、お昼ご飯も食べたではないですか。もう夕方ですよ」
「ふにゃ!? 大変大変!」
そう言いながら、ベルはこたつから飛び起きました、
そして、私の前に駆け寄りますと、
「さーちゃん、うどんうどん! ベル、うどんを踏むにゃ!」
私の手を引っ張りながらそう言いました。
そんなベルに私は、
「ちょっと待ってくださいね、コタツの部品を持ったら一緒におりましょう」
そう声をかけました。
その後、2階に残っていたコタツの部品を手にした私は、ベルと一緒に一階へ戻っていきました。
そこでベルは、私からうどんのタネを受け取ると、だるまストーブの近くで
「わっせ!わっせ!」
と、元気な声をあげながら、それを踏み始めました。
「ほほう、ベルのおかげで今夜も美味いうどんが食えそうじゃな」
そんなベルの様子を見つめながら、ドルーさんが笑顔で頷いておられます。
そんなドルーさんに、ベルは、
「ニャ! 任せるニャ!」
満面の笑顔でそう答えると、
「わっせ! わっせ! どーちゃんのためにわっせ! わっせ!」
かけ声の中に、ドルーさんの名前を加えながら、うどんをふみふみしはじめました。
それを聞いたドルーさんは
「うんうん、今夜は絶対にうどんを頼むからの」
そう言いながら満面の笑顔を浮かべておられました。
ベルとドルーさんがそんな会話を交わしている中、私とリンシンさんは、座敷の上でコタツを組み立てておりました。
◇◇
その夜の営業から、居酒屋さわこさんの一角にお座敷コーナーがお目見えいたしました。
その中央には、コタツが敷いてあります。
その中が掘れていますので、足を降ろして食事を出来る仕組みになっております。
縦長タイプで、左右に4人座れるようになっております。
「ワオ……なんだか面白い席ね」
そのお座敷席を見たエミリアが感嘆の声をあげました。
「さわこ、ここには複数のお客様をお通しした方がグッドよね?」
「はいそうですね。そうしていただけると助かります。あと、お座敷に上がられる際にはくれぐれも靴を脱いで頂くようにお願いしてくださいね」
「オーケー、わかったわ。他に聞いておくことはあるかしら?」
「そうですね……あ、外套などを身につけておられる方は……」
私は、お客様案内係を主にしてくださっているエミリアと、お座敷席の打ち合わせを行っていきました。
そんなに難しい内容はお話していませんが、靴を脱いでもらうようにお願いしてもらうことを繰り返しておいた次第でございます。
そんな感じで一通り打ち合わせを終えたところで、お店の扉が開きました。
「ジュ? なんだ、あの席は?」
この夜、最初にお店に顔を出してくださったのは、冒険者のジューイさんでした。
その後方には、クニャスさん、シロイルさん、クマタロさん達、居酒屋さわこさんと専属契約を交わしてくださっている冒険者の皆様が続いておられます。
その数、ぴったり4人です。
「ウェルカム。あの席は今日から出来たお座敷なんですけど、利用されますか?」
「ジュ! 面白そうジュ、ぜひ使いたいジュ!」
エミリアの言葉に、ジューイさんは嬉しそうに声をあげながらお座敷席に向かっていかれました。
すると、
「ウェイト! ジューイ、お酒はいいのかしら?」
そう言ってエミリアがジューイさんを呼び止めました。
ジューイさん以外の3人は、エミリアにサービスのお酒を注いでもらっているところです。
すると、それを見たジューイさんは
「ジュ!? 忘れてたジュ! 僕もいるジュ!」
そう言いながら、慌ててユーターンして、エミリアの元へ向かって駆けていかれました。
こうして、お座敷第一号のお客様はジューイさん達に……
「へぇ、これコタツっていうのね、なんかあったかくていいわねぇ」
「え?」
その声にびっくりして、コタツの方へ視線を向けますと……な、なんということでしょう。
コタツに、ツカーサさんが一人、ちょこんと座っておられるではありませんか?
「ワオ!? ツカーサ、いつ来たのよ? 気がつかなかったわ……あ、靴は脱いでくれてるかしら?」
「えへへ、さっき来たばっかだけどさ。あ、靴は脱いだよ~」
エミリアの言葉に、ツカーサさんは楽しそうに笑いながら返事を返してくださっています。
そ、そんなわけで、お座敷第一号のお客様は、ツカーサさんになった次第でございます。
あ、もちろんジューイさん達と相席にしてもらいました。
ツカーサさんも快く了承してくださいましたしね。
ーつづく
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