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連載
さわこさんと、バテアさんのはじめての映画鑑賞 その1
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パルマ生誕祭の日に、みんなでパーティをすることが決まりました。
その日には、みんなでプレゼント交換もすることになっております。
こういうのって、わくわくするんです。
何をプレゼントしよう。
買おうかな、手作りしようかな。
そんなことを考えながらわくわくする……その時間が私、たまらなく大好きなんです。
当日までの間にしっかり考えて……そして、準備し終わったら、
喜んでもらえるかな
どんな顔をしてもらえるかな
そんなことを考えながら、さらにわくわくした日々をすごせるわけです。
だから私、クリスマス大好きなんです。
◇◇
「どうしたのさわこ。今日はなんだかご機嫌ね」
バスの中で、バテアさんがそう言って笑ってくださいました。
そうなんです。
今日は、私の世界へ買い出しに来ているんです。
ただいま、私の親友のみはるが経営しているパワーストーンのお店が入店しているショッピングセンターへ、バスで向かっているところなんです。
私の隣に座っているバテアさん。
この寒さの中でも、バニラ最中を口になさっておられます。
そんなバテアさんに私は、
「うふふ、もうしばらく内緒です」
笑顔でそうお伝えしました。
すると、バテアさんは、
「もうしばらくってことは、そのうち教えてもらえるってことだし……そうね、楽しみにしているわ」
そう言って笑ってくださいました。
そうですね……当日、この笑顔をさらに輝かせていただけるような、そんなプレゼントをわくわくしながら考えたいと思います。
◇◇
今日の仕入は私とバテアさんの2人でやってきております。
ベルは
「う~寒い~」
と言って、だるまストーブの側から離れようとしませんでしたので、今日はお留守番をしてもらっています。
お店の中で、だるまストーブをつけっぱなしにしておりますが、お店がつながっているバテアさんの魔法道具のお店にエミリアがいますし、今日は、エミリアと一緒にバテア青空市を手伝ってくれているショコラも一緒に店番をしてくれていますので、だるまストーブの火を気をつけてもらうようにお願いしてある次第です。
いつものようにバスを降り、ショッピングモールへと入った私とバテアさんは、いつものようにエスカレーターで2階に移動し、みはるのお店へ向かって移動していきました。
「さわこにバテアさん、いらっしゃい!」
そんな私達を、みはるが笑顔で出迎えてくれました。
今日が約束の日だからでしょうか、みはるはお店の前に立って私とバテアさんを待っていてくれました。
「みはるしばらくぶり。そんなにお店の前で待ってなくても」
私がそう言いますと、みはるは、
「開店直後はね、全店こうして1人は店先に出て挨拶をするきまりなのよ。そのついでだから気にしないで」
そう言って笑ってくれました。
この後、いつものようにお店の奥にある応接室で、みはるがこのお店でパワーストーンとして販売してくれている魔石の代金を受け取りまして、かわりに新しい魔石を渡しました。
「さわことバテアさんが持って来てくれるパワーストーンはすごく効果があるって大人気なのよ」
みはるは嬉しそうにそう言ってくれました。
……私的には、
『魔力がこもっているので、なにかしらの力を購入した人が感じられるのかな』
くらいにしか思いつかなかったのですが、
「そう言ってもらえるとうれしいわ」
そう、笑顔で答えておきました。
今日のみはるは、ベルがいなくてちょっと寂しそうでした。
「あの子ってさ……なんか猫っぽくて大好きなのよ……あ、本人には内緒にしてね、嫌われたら嫌だからさ」
みはるはそう言って笑いました。
そうでしたそうでした。
みはるってば大の猫スキだったんです。
学生時代から猫が大好きでして、通学途中に猫をみかけたら準備していた煮干しをあげていたんです。
そんなわけで、学生時代のみはるからはつねに煮干しの匂いがしていたものですから男子達からは「魚女」と言われて、よくからかわれていたんですよね……
そのせいか、美人と評判だったみはるなのですが、学生時代結局一度も浮いた話がありませんでした。
もっぱら私や和音、結婚して愛知に引っ越したなちこといったメンバーと仲良くしていたものですから、私達四人には影で「百合四姉妹」なんてあだ名が付いていたそうです。
これって、卒業した後に開かれた同窓会で始めて教えてもらってびっくりしたんですけどね。
ふふ、でもまぁ、仲良し四人組だったのは間違いありませんので、むしろ光栄といってもいいのかもしれませんけど。
あ、もちろん私達は全員健全な女子ですからね。
そんな関係ではございませんので。
◇◇
その後、しばらく雑談をした後、私達はみはるのお店を後にいたしました。
「ではバテアさん。いつものアイスクリームのお店に参りますか?」
私はバテアさんにそうお声をかけました。
この後、私はお店で使用する日本酒やお魚やお餅、豆などの食材を買いに業務用スーパーへ向かうのがいつもなのですが、その前にバテアさんがアイスクリームのチェーン店によるのもいつもなんですよね。
当然、すぐに向かわれると思っていたのですが……今日のバテアさんは意外なことを言われました。
「さわこ、前から気になってたんだけど……あそこは何をしているところなの?」
そう言ってバテアさんが指さされたのは……
はい、映画館でした。
「えっと、あそこは映画館といいまして、映画を上映しているんです」
「エイガ?……なんなのかしらそれは?」
バテアさんはきょとんとなさりながら私を見つめておられます。
ん~……そうですね……こういう時、どうお答えしたら良いのでしょう……
バテアさんの世界には、テレビなどの媒体は存在しておりません。
以前の私はDVDなどを視聴しながら一人晩酌をしたりしていたのですが、あちらの世界には電気がございませんのでテレビもDVDプレーヤーも一度も使用したことがないんです。
……もっとも、今の私は、それがなくても、バテアさんや皆さんといつも楽しくお話しながらすごせていますので、まったく気になっていないんですけどね。
そんな感じで、どうお伝えしたらいいのか悩んでおりますと。
「とりあえず観るものなのね? ちょっと何か観てみましょうよ」
そう言うと、バテアさんは手を取って歩き出され……って、あれ?
「バテアさん、それ、違う人です!?」
そうなんです。
バテアさんってば、無意識に私の隣に立っていた方の手を取って歩き出していたんです。
「え? あらこれは失礼」
私の声で間違いに気がついたバテアさんは、その方ににこやかにほほえみながら謝罪をなさいました。
「あぁ、大丈夫だ。あなたのような美人にいきなり手を引っ張られてびっくりしたのですが、もしよろしかったらこの雪花と……」
「あ、あの、本当に失礼しました」
私はこれ以上ご迷惑をおかけしてはいけないと思いまして、大急ぎでバテアさんを連れて発券機の方へ移動していきました。
気のせいか、その方が少し残念そうなお顔をなさっていたような気がしたのですが……と、とにかく今はこの場を離れないと……
◇◇
「えっと、バテアさん、観たい映画のジャンルはございますか?」
「ジャンル? どういうこと?」
「えっと、そうですね……ヒーローがいっぱい出てくる映画と、怖い映画と、怪獣のアニメ映画と、お笑い芸人さんの映画と……」
そんな感じで私が一生懸命映画の内容を説明させていただきましたところ、
「ヒーローって勇者のことかしら? それがいっぱい出てくる映画ってなんだか楽しそうね」
バテアさんがそう仰いましたので、公開がはじまったばかりのヒーローリーグという映画を観ることになりました。
この映画、私が昔から好きだった映画のヒーローが協力しあって悪に立ち向かう海外の映画なんです。
……実は私、この手の映画が結構好きなものですから、ちょっとわくわくしております。
その後、二人分の券を購入した私は、バテアさんと一緒にポップコーンと飲み物、そしてバニラアイスを販売していたのでそれも購入してから映画館の中へと入っていきました。
「さわこは、このエイガってよく観ていたの?」
「社会人になってからはお店がございましたのであまり観ておりませんでしたけど、学生時代にはよく友人達と行っていました」
DVDで観ていたと説明いたしますと、DVDの仕組みから説明しないといけなくなりますので今回そのお話は割愛させていただきました。
私達は、指定されている上映スクリーンの、指定の席へ座っていきました。
2人席ですので、左右に人はいません。
「何かしら、ちょっとわくわくしてきたわ」
バテアさんも、すごく楽しそうに笑っていられます。
こうして、バテアさんの始めての映画鑑賞がはじまりました。
ーつづく
その日には、みんなでプレゼント交換もすることになっております。
こういうのって、わくわくするんです。
何をプレゼントしよう。
買おうかな、手作りしようかな。
そんなことを考えながらわくわくする……その時間が私、たまらなく大好きなんです。
当日までの間にしっかり考えて……そして、準備し終わったら、
喜んでもらえるかな
どんな顔をしてもらえるかな
そんなことを考えながら、さらにわくわくした日々をすごせるわけです。
だから私、クリスマス大好きなんです。
◇◇
「どうしたのさわこ。今日はなんだかご機嫌ね」
バスの中で、バテアさんがそう言って笑ってくださいました。
そうなんです。
今日は、私の世界へ買い出しに来ているんです。
ただいま、私の親友のみはるが経営しているパワーストーンのお店が入店しているショッピングセンターへ、バスで向かっているところなんです。
私の隣に座っているバテアさん。
この寒さの中でも、バニラ最中を口になさっておられます。
そんなバテアさんに私は、
「うふふ、もうしばらく内緒です」
笑顔でそうお伝えしました。
すると、バテアさんは、
「もうしばらくってことは、そのうち教えてもらえるってことだし……そうね、楽しみにしているわ」
そう言って笑ってくださいました。
そうですね……当日、この笑顔をさらに輝かせていただけるような、そんなプレゼントをわくわくしながら考えたいと思います。
◇◇
今日の仕入は私とバテアさんの2人でやってきております。
ベルは
「う~寒い~」
と言って、だるまストーブの側から離れようとしませんでしたので、今日はお留守番をしてもらっています。
お店の中で、だるまストーブをつけっぱなしにしておりますが、お店がつながっているバテアさんの魔法道具のお店にエミリアがいますし、今日は、エミリアと一緒にバテア青空市を手伝ってくれているショコラも一緒に店番をしてくれていますので、だるまストーブの火を気をつけてもらうようにお願いしてある次第です。
いつものようにバスを降り、ショッピングモールへと入った私とバテアさんは、いつものようにエスカレーターで2階に移動し、みはるのお店へ向かって移動していきました。
「さわこにバテアさん、いらっしゃい!」
そんな私達を、みはるが笑顔で出迎えてくれました。
今日が約束の日だからでしょうか、みはるはお店の前に立って私とバテアさんを待っていてくれました。
「みはるしばらくぶり。そんなにお店の前で待ってなくても」
私がそう言いますと、みはるは、
「開店直後はね、全店こうして1人は店先に出て挨拶をするきまりなのよ。そのついでだから気にしないで」
そう言って笑ってくれました。
この後、いつものようにお店の奥にある応接室で、みはるがこのお店でパワーストーンとして販売してくれている魔石の代金を受け取りまして、かわりに新しい魔石を渡しました。
「さわことバテアさんが持って来てくれるパワーストーンはすごく効果があるって大人気なのよ」
みはるは嬉しそうにそう言ってくれました。
……私的には、
『魔力がこもっているので、なにかしらの力を購入した人が感じられるのかな』
くらいにしか思いつかなかったのですが、
「そう言ってもらえるとうれしいわ」
そう、笑顔で答えておきました。
今日のみはるは、ベルがいなくてちょっと寂しそうでした。
「あの子ってさ……なんか猫っぽくて大好きなのよ……あ、本人には内緒にしてね、嫌われたら嫌だからさ」
みはるはそう言って笑いました。
そうでしたそうでした。
みはるってば大の猫スキだったんです。
学生時代から猫が大好きでして、通学途中に猫をみかけたら準備していた煮干しをあげていたんです。
そんなわけで、学生時代のみはるからはつねに煮干しの匂いがしていたものですから男子達からは「魚女」と言われて、よくからかわれていたんですよね……
そのせいか、美人と評判だったみはるなのですが、学生時代結局一度も浮いた話がありませんでした。
もっぱら私や和音、結婚して愛知に引っ越したなちこといったメンバーと仲良くしていたものですから、私達四人には影で「百合四姉妹」なんてあだ名が付いていたそうです。
これって、卒業した後に開かれた同窓会で始めて教えてもらってびっくりしたんですけどね。
ふふ、でもまぁ、仲良し四人組だったのは間違いありませんので、むしろ光栄といってもいいのかもしれませんけど。
あ、もちろん私達は全員健全な女子ですからね。
そんな関係ではございませんので。
◇◇
その後、しばらく雑談をした後、私達はみはるのお店を後にいたしました。
「ではバテアさん。いつものアイスクリームのお店に参りますか?」
私はバテアさんにそうお声をかけました。
この後、私はお店で使用する日本酒やお魚やお餅、豆などの食材を買いに業務用スーパーへ向かうのがいつもなのですが、その前にバテアさんがアイスクリームのチェーン店によるのもいつもなんですよね。
当然、すぐに向かわれると思っていたのですが……今日のバテアさんは意外なことを言われました。
「さわこ、前から気になってたんだけど……あそこは何をしているところなの?」
そう言ってバテアさんが指さされたのは……
はい、映画館でした。
「えっと、あそこは映画館といいまして、映画を上映しているんです」
「エイガ?……なんなのかしらそれは?」
バテアさんはきょとんとなさりながら私を見つめておられます。
ん~……そうですね……こういう時、どうお答えしたら良いのでしょう……
バテアさんの世界には、テレビなどの媒体は存在しておりません。
以前の私はDVDなどを視聴しながら一人晩酌をしたりしていたのですが、あちらの世界には電気がございませんのでテレビもDVDプレーヤーも一度も使用したことがないんです。
……もっとも、今の私は、それがなくても、バテアさんや皆さんといつも楽しくお話しながらすごせていますので、まったく気になっていないんですけどね。
そんな感じで、どうお伝えしたらいいのか悩んでおりますと。
「とりあえず観るものなのね? ちょっと何か観てみましょうよ」
そう言うと、バテアさんは手を取って歩き出され……って、あれ?
「バテアさん、それ、違う人です!?」
そうなんです。
バテアさんってば、無意識に私の隣に立っていた方の手を取って歩き出していたんです。
「え? あらこれは失礼」
私の声で間違いに気がついたバテアさんは、その方ににこやかにほほえみながら謝罪をなさいました。
「あぁ、大丈夫だ。あなたのような美人にいきなり手を引っ張られてびっくりしたのですが、もしよろしかったらこの雪花と……」
「あ、あの、本当に失礼しました」
私はこれ以上ご迷惑をおかけしてはいけないと思いまして、大急ぎでバテアさんを連れて発券機の方へ移動していきました。
気のせいか、その方が少し残念そうなお顔をなさっていたような気がしたのですが……と、とにかく今はこの場を離れないと……
◇◇
「えっと、バテアさん、観たい映画のジャンルはございますか?」
「ジャンル? どういうこと?」
「えっと、そうですね……ヒーローがいっぱい出てくる映画と、怖い映画と、怪獣のアニメ映画と、お笑い芸人さんの映画と……」
そんな感じで私が一生懸命映画の内容を説明させていただきましたところ、
「ヒーローって勇者のことかしら? それがいっぱい出てくる映画ってなんだか楽しそうね」
バテアさんがそう仰いましたので、公開がはじまったばかりのヒーローリーグという映画を観ることになりました。
この映画、私が昔から好きだった映画のヒーローが協力しあって悪に立ち向かう海外の映画なんです。
……実は私、この手の映画が結構好きなものですから、ちょっとわくわくしております。
その後、二人分の券を購入した私は、バテアさんと一緒にポップコーンと飲み物、そしてバニラアイスを販売していたのでそれも購入してから映画館の中へと入っていきました。
「さわこは、このエイガってよく観ていたの?」
「社会人になってからはお店がございましたのであまり観ておりませんでしたけど、学生時代にはよく友人達と行っていました」
DVDで観ていたと説明いたしますと、DVDの仕組みから説明しないといけなくなりますので今回そのお話は割愛させていただきました。
私達は、指定されている上映スクリーンの、指定の席へ座っていきました。
2人席ですので、左右に人はいません。
「何かしら、ちょっとわくわくしてきたわ」
バテアさんも、すごく楽しそうに笑っていられます。
こうして、バテアさんの始めての映画鑑賞がはじまりました。
ーつづく
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