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連載
さわこさんと、ベルのはじめて その3
しおりを挟むイラスト:NOGI先生
みはるのお店を後にした私達は、いつものようにアイスクリームの量販店へ出向きました。
大型ショッピングモール内の一階に出店しているお店ですが、幸いこのお店は退店などはしていないようですね。
いつもここでアイスクリームを購入するのを楽しみにしているバテアさん……ではあるのですが、先ほどみはるのお店で結構な数のアイスクリームを食べていたように思うのですが……
私がそんなことを考えながらバテアさんを見つめていると、
「あぁ、大丈夫よ。このお店のアイスは別腹なのよね」
そう言いながら私に向かって微笑まれました。
そんなバテアさんに、私は苦笑しながら
「そ、そうなんですね」
そう返事を返すのがやっとでございました。
このアイスクリーム店は、左右に長いディスプレイがあり、その中にアイスクリームの入っている容器がどさっと置かれています。
私達は、それを見ながら注文するのでございます。
私は抹茶アイスのシングルを、
バテアさんはバニラのトリプルを、
それぞれ頼んだのですが、そんな私達の間で、ベルがショーウインドウにべたっと張り付きまして、その向こうにありますアイスの数々を凝視していたのでした。
「にゃはぁ……どれも美味しそうにゃあ」
そう言いながら、生唾を飲み込んでいるベル。
そんなベルを、私とバテアさんは苦笑しながら見つめていたのでした。
散々悩んだ末、ベルは
「アレとアレ……アレも食べたいにゃ」
そう言いながら、イチゴミルクとバニラとチョコの3つを指さしました。
そこで、その3つのトリプルにして頼んであげた次第です。
「お待たせいたしました!」
店員の女性から笑顔でコーンのアイスを浮けとったベルは、
「ありがとにゃ」
満面の笑みを浮かべながら、それを受け取っていました。
近くにあった休憩所の椅子に座った私達は、そこでアイスを食べることにいたしました。
手慣れております私とバテアさんは問題なくアイスを口に運んでおりました。
ベルも、私達の食べている様子を横目で見つめながらアイスにむしゃぶりついていたのですが、
「おいしいにゃ。甘くて冷たいにゃ」
そう言っているその口元がアイスでベトベトになっていたのでした。
「もう、ベルったら。ちょっと動かないで」
私はそう言うと、ポケットから取り出しましたハンカチで、ベルの口元を綺麗にしてあげました。
すると、ベルは
「さーちゃんありがとにゃ」
そう言いながら満面の笑顔で私を見上げたのでした。
「どういたしまして。気をつけて食べてくださいね」
私がそう言いますと、ベルは
「わかったにゃ」
笑顔で頷いていたのですが……その口でアイスに再びむしゃぶりつきますと、その口元があっという間にアイスでベトベトになっていたのでした。
その後、すっかりアイスが気に入ったベルは、バテアさんと一緒に3度アイスを購入していきました。
3度ともトリプルを頼んだベルは、
「とっても美味しかったにゃ。満腹にゃ」
そう言いながら満足そうな笑顔を浮かべていました。
「ふふ、ベルもアイスがすっかりお気に入りみたいね」
そんなベルを笑顔で見つめていたバテアさんなのですが、その手には今もバニラアイスが握られていたのでございます……なんといいますか、気が付けばバニラアイスを口に運ばれているバテアさんなのですが、全く太る気配がございません。
バテアさんの半分も食べていない私が、最近の蓄積のせいでしょうか、少々お腹周りが気になり始めているのとは対象的なのでございます……
納得いかない次第でございます。
◇◇
アイスですっかりお腹が満たされてしまった私達は、食事を取りやめましてそのままショッピングモールを後にしていきました。
移動しながら店内を見回しておりますと……ショッピングモールのあちこちに、白い化粧板で覆われている箇所がございました。
おそらくですが、みはるが入店したお店のように、ここで契約が切れたのを機に退店したお店があるのでしょうね。その数は結構多かったように思います。
ショッピングモールを出た私達は、バスを利用しましていつもの業務用スーパーへと出向きました。
そこで、居酒屋さわこさんで使用いたします食材や日本酒を購入いたします。
大型ショッピングモールで購入するよりも、大袋で、かつ、お買い得な商品が多いものですから大変重宝しております。
店内は、通路の左右に高い棚が並んでおりまして、その棚の中に商品が詰め込まれております。
その通路を、大型のカートを押しながら歩いていく私達。
ベルは、私の腕に抱きつくようにしながら一緒に歩いております。
「色々な物がいっぱいにゃ」
「そうよ。ここはそう言うお店なのですよ」
キョロキョロ周囲を見回しているベルに、私は笑顔でそう教えてあげました。
以前はこのお店でお野菜やお米を大量に購入していたのですが、最近はアミリアさんの農場からアミリア米と多数のお野菜が毎日のように届けられておりますので、無理に買い足す必要はございません。
お店の入り口近くにございます『種苗コーナー』へ行きまして、向こうの世界に存在していない野菜の種や苗を購入して帰るのが最近の常となっております。
これをアミリアさんにお渡しいたしますと、アミリアさんはこれを研究・栽培なさいまして種を採取し増産なさるのでございます。
通常ですと、種や苗を植えてそれが成長して種が採取出来るようになるまでには結構な時間がかかるものですが、バテアさんが成長促進魔法でその時間を短縮してくださっておりますので、アミリアさんのこの研究は非常にはかどっている次第でございます。
苗のコーナーには、イチゴの苗が多数並んでおりました。
実が成るのは来年の春なのですが、もう来春の苗が出回る季節になっているのですね。
せっかくですので、その苗を多めに購入いたしました。
他にも、日本酒、調味料などをかなり多めに購入いたします。
以前は、こちらの世界で閉店いたしました居酒屋の店舗を売り払ったことで得た貯金で購入していたのですが、
最近はみはるのお店で魔石を販売してもらった代金を受け取っておりますので、貯金を切り崩すことなくこちらの世界の商品を購入出来ている次第でございます。
なお、あれこれ購入した後……
「バーちゃん、このアイスも美味しそうにゃ」
「そうね、確かにそれもいけてるけど……ちょっとベル、そのバーちゃんは辞めなさい。なんだか急に年をとってしまったみたいじゃない」
「わかったにゃ、バーちゃん」
「わかってない!」
そんな会話を交わしながら、アイスの保冷庫を覗き込んでいるバテアさんとベル。
端から見ておりますと、まるでお母さんとその娘といった感じでございます。
ホント、微笑ましい光景でございます。
その後、例によって大量にアイスを買い込んだ私達は、それを退店した後、駐車場の一角で魔法袋の中へと詰め込んでいきました。
以前はあくせくしていたのですが、最近はもうすっかり手慣れたものでございます。
その後、商店街にございます善治郎さんのお店に顔を出した私達は、そこでしばらく雑談をした後、果物の苗木などを購入させて頂きました。
程なくして、かつて私の居酒屋があった場所の近くへと戻って来た私達は、路地の奥に魔法で見えなくしてります転移ドアを使用して、バテアさんの世界へと戻った次第でございます。
「さわこ、日本酒ならべちゃうね」
「あ、はい、よろしくお願いいたします」
私の返事を確認したバテアさんは、厨房側の壁にございます日本酒の陳列棚に購入してきたばかりの日本酒の瓶を並べ始めてくださいました。
そんなバテアさんにお返事した私もあた、購入してきた商品を魔石冷蔵庫や棚の中へと詰め込んでおります。
そんな中……
ベルは、猫の姿へと変化すると、カウンターの脇に置かれています座布団の上で丸くなっていた次第です。
向こうの世界では終始はしゃぎまくっていたベル。
まだまだ子供ですからね。それで疲れてしまったのでしょう。すでに寝息を立て始めていた次第です。
そんなベルの寝姿に癒やされながら、私とバテアさんは購入してきた品物を片付けていたのでございます。
ーつづく
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