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連載
さわこさんと、芋煮会 その3
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大量にあったサルトイモをベル達が綺麗に洗ってくれていたものですから、私はそれの皮剥きをしていきました。
里芋の皮剥きは元いた世界でもよくしておりましたのでお手の物です。
次々に皮を剥いては半分に切り、それをボウルへ入れていきます。
「は~……さーちゃんすごく早いニャ、まるで魔法みたいニャ」
「ホントね、さわこすごいわ」
「さわこの料理の腕前はほんにすごいのぉ」
ベル・エンジェさん・ロッサさんの3人が、カウンター席から身を乗り出して私の手元を見つめながら感嘆の声をあげています。
そんなみんなの声につい応えたくなって、さらにスピードをあげかけた私なのですが……いけませんいけません、ここで調子にのったらだいたいろくなことがありません。実体験としてよ~っく知っております。
作業に集中して、綺麗に……手早く……
サルトイモの下準備が終わる頃には、私の周囲はサルトイモが山盛りになっているボウルで埋め尽くされていました。
と、とりあえず、このボウルは一度魔法袋に保存しておきまして……っと。
次に、ゴボウ・長ネギ・ニンジン・こんにゃくの下準備をしていきます。
ゴボウと長ネギは輪切り、にんじんはいちょう切り、こんにゃくは食べやすい大きさにちぎっていきます。
あ、ゴボウ・長ネギ・にんじんは、こちらの世界で、ゴルボウ・ナルガネギ・ニルンジーンって呼ばれているお野菜を使用しております。
こんにゃくだけは、私の世界で仕入れて来たものでございます。
そろそろおでんもいいかな、って思ってちょうど大量に仕入れてきたばかりだったんです。
あとは、イエロさんから分けて頂いたビッグブルタンのお肉を食べやすい大きさに切り分ければ、材料の準備は完成です。
「さて、と……」
量が量ですので、今回は寸胴で調理を行います。
豚汁や、あら汁を作る時なども、寸胴を使用しておりますのでまぁ手慣れたものでございます。
水を張った寸胴を魔石コンロにかけまして、中に里芋とゴボウを入れて煮こんでいきます。
その間に別のお鍋を準備して、その中でこんにゃくを一度下茹でしていきます。
塩を少々加えたお湯で下茹ですることでこんにゃく特有の臭みがとれるんです。
量が量ですので、茹でても茹でても無くなりません。
そうこうしていると、寸胴がぐつぐつ音をたてはじめました。
同時に3つの寸胴で作業を行っていますので、魔石コンロの上は寸胴とこんにゃくの下茹で用の鍋でいっぱいになっています。
立ち上る湯気、魔石コンロの熱気、熱せられた寸胴の熱、それらが厨房の中で調理を行っている私を包み混んでいるものですから……いつしか私の額には汗が光っておりました。
「外はずいぶん涼しくなったのですが……」
……でも、こうして頑張って美味しい物をつくっているという実感が伝わってきて、なんだか楽しくなってしまいます。
頃合いになりましたら、ニルンジーン・ナルガネギ・こんにゃく・お肉を加え、調味料で味を調えていきます。
調理酒・作り置きしておいた鰹出汁・水飴・醤油を加えながら、味を確認していく私。
砂糖の代わりに、水飴を使用するのが居酒屋さわこさん流と申しますか、砂糖を使用するより味がふっくらまろやかになるんです。
アクを取りながら煮こむことしばし。
いつしか、居酒屋さわこさんの店内には、芋煮の美味しそうな匂いが充満していました。
おたまで、何度目かの味見。
……ず
「……うん、いい感じ」
私は、顔をあげるとカウンターに座ってソワソワしながら私を見つめ続けているベル達へ笑いかけました。
「さぁ、出来ましたよ。芋煮です」
そう言うと、準備しておいたお椀に寸胴の中の芋煮をよそっていきます。
すると、ベル達が一斉に立ちあがりまして、私に向かって手を伸ばしてきました。
「さーちゃん! 芋煮食べたいにゃ!」
「さわこ、私にもちょうだい!」
「さわこや、妾にも頼むのじゃ!」
「さわこさ~ん、アタシにもお願~い!」
……ん?
おかしいですね……カウンターには、ベル・エンジェさん・ロッサさんの3人しか座っていなかったはずなのですが……今、カウンターからは4人分の声が聞こえて来た気がします。
改めてカウンターへ視線を向けた私。
すると、カウンター席の端に、お隣のツカーサさんの姿があるではありませんか。
「つ、ツカーサさん……」
「え、えへへ……ベランダで洗濯してたらさ、なんか美味しそうな匂いがしたもんだから、つい……あ、もちろん代金は支払わせてもらうからさ! お願い、食べさせて~!」
私を拝みながら何度も頭を下げてくるツカーサさん。
「では味見ってことで一杯どうぞ」
そんなツカーサさんの様子に苦笑しながら、私はよそったばかりの芋煮のお椀をお渡ししていきました。
「わ~、ありがと~さわこさん! すっごく嬉しい!」
私からお椀を受け取ったツカーサさんは、一緒にお渡ししたスプーンを手にとると、すさかず芋煮を口に運ぼうとなさったのですが……そんなツカーサさんの隣では、ベル・エンジェさん・ロッサさんの3人が、一度芋煮の入ったお椀をテーブルの上において、手を合わせました。
「いただきますにゃ」
「いただきますわ」
「いただきますなのじゃ」
いつも私がしている、食事の時の挨拶を真似しているベル達。
この挨拶がすっかり身についているんですよね。
そんな3人の様子を見ていたツカーサさん……慌てた様子で、一度お椀をテーブルの上に置くと、
「い、いただきます!」
ベル達の真似をして両手を合わせました。
ベル・エンジェさん・ロッサさんに、ツカーサさんを加えた四人はしばらく手を合わせてから、芋煮を口に運んでいきました。
「んん! さーちゃん、これすっごく美味しいにゃ!」
「サルトイモがとっても美味しいわ」
「このこんにゃくという物が、またあうのぉ」
「肉! この肉最高! もうたまんない!」
四人は、思い思いに声をあげながら芋煮を口に運んでいます。
そんな四人の様子に、思わず笑顔になる私。
「さ、バテアさんも」
「えぇ、いただくわ」
芋煮が入ったお椀をバテアさんにお渡しした私は、一升瓶をそっと手に取りました。
「……まだお昼ですけど」
そう言って、バテアさんにお勧めしたのは東北銘醸の初孫・魔斬です。
芋煮のメッカ、山形を代表するお酒のひとつでして、お米本来の甘みと切れ味を楽しめる辛口のお酒です。
芋煮を口にしたバテアさんは、コップに注いだお酒をくいっと飲み干していきます。
「はぁ……いいわねぇ……最高にあうわ、これ」
「でしょう」
極上の笑顔を浮かべているバテアさん。
その笑顔を見つめながら、私もにっこり微笑みました。
「今夜ご来店くださったお客様には、この芋煮を一杯サービスしちゃいましょう。私の世界の秋の味覚をお裾分けですね」
そうと決まれば、さらに追加を準備しませんと。
そう思いながら厨房へ戻っていくと、
「さーちゃんお代わり!」
「さわこ、私もよ!」
「妾もお願いするのじゃ。芋多めでの!」
「アタシもアタシも! アタシはお肉多めでお願い!」
カウンターに座っているベル・エンジェさん・ロッサさん・ツカーサさんの四人が一斉に、空になったお椀を私に差し出してきました。
「はい、喜んで」
そんなみんなに笑顔を返しながら、お椀を受け取っていく私。
まずは、カウンターのみんなに満足してもらいませんと、ね。
ーつづく
里芋の皮剥きは元いた世界でもよくしておりましたのでお手の物です。
次々に皮を剥いては半分に切り、それをボウルへ入れていきます。
「は~……さーちゃんすごく早いニャ、まるで魔法みたいニャ」
「ホントね、さわこすごいわ」
「さわこの料理の腕前はほんにすごいのぉ」
ベル・エンジェさん・ロッサさんの3人が、カウンター席から身を乗り出して私の手元を見つめながら感嘆の声をあげています。
そんなみんなの声につい応えたくなって、さらにスピードをあげかけた私なのですが……いけませんいけません、ここで調子にのったらだいたいろくなことがありません。実体験としてよ~っく知っております。
作業に集中して、綺麗に……手早く……
サルトイモの下準備が終わる頃には、私の周囲はサルトイモが山盛りになっているボウルで埋め尽くされていました。
と、とりあえず、このボウルは一度魔法袋に保存しておきまして……っと。
次に、ゴボウ・長ネギ・ニンジン・こんにゃくの下準備をしていきます。
ゴボウと長ネギは輪切り、にんじんはいちょう切り、こんにゃくは食べやすい大きさにちぎっていきます。
あ、ゴボウ・長ネギ・にんじんは、こちらの世界で、ゴルボウ・ナルガネギ・ニルンジーンって呼ばれているお野菜を使用しております。
こんにゃくだけは、私の世界で仕入れて来たものでございます。
そろそろおでんもいいかな、って思ってちょうど大量に仕入れてきたばかりだったんです。
あとは、イエロさんから分けて頂いたビッグブルタンのお肉を食べやすい大きさに切り分ければ、材料の準備は完成です。
「さて、と……」
量が量ですので、今回は寸胴で調理を行います。
豚汁や、あら汁を作る時なども、寸胴を使用しておりますのでまぁ手慣れたものでございます。
水を張った寸胴を魔石コンロにかけまして、中に里芋とゴボウを入れて煮こんでいきます。
その間に別のお鍋を準備して、その中でこんにゃくを一度下茹でしていきます。
塩を少々加えたお湯で下茹ですることでこんにゃく特有の臭みがとれるんです。
量が量ですので、茹でても茹でても無くなりません。
そうこうしていると、寸胴がぐつぐつ音をたてはじめました。
同時に3つの寸胴で作業を行っていますので、魔石コンロの上は寸胴とこんにゃくの下茹で用の鍋でいっぱいになっています。
立ち上る湯気、魔石コンロの熱気、熱せられた寸胴の熱、それらが厨房の中で調理を行っている私を包み混んでいるものですから……いつしか私の額には汗が光っておりました。
「外はずいぶん涼しくなったのですが……」
……でも、こうして頑張って美味しい物をつくっているという実感が伝わってきて、なんだか楽しくなってしまいます。
頃合いになりましたら、ニルンジーン・ナルガネギ・こんにゃく・お肉を加え、調味料で味を調えていきます。
調理酒・作り置きしておいた鰹出汁・水飴・醤油を加えながら、味を確認していく私。
砂糖の代わりに、水飴を使用するのが居酒屋さわこさん流と申しますか、砂糖を使用するより味がふっくらまろやかになるんです。
アクを取りながら煮こむことしばし。
いつしか、居酒屋さわこさんの店内には、芋煮の美味しそうな匂いが充満していました。
おたまで、何度目かの味見。
……ず
「……うん、いい感じ」
私は、顔をあげるとカウンターに座ってソワソワしながら私を見つめ続けているベル達へ笑いかけました。
「さぁ、出来ましたよ。芋煮です」
そう言うと、準備しておいたお椀に寸胴の中の芋煮をよそっていきます。
すると、ベル達が一斉に立ちあがりまして、私に向かって手を伸ばしてきました。
「さーちゃん! 芋煮食べたいにゃ!」
「さわこ、私にもちょうだい!」
「さわこや、妾にも頼むのじゃ!」
「さわこさ~ん、アタシにもお願~い!」
……ん?
おかしいですね……カウンターには、ベル・エンジェさん・ロッサさんの3人しか座っていなかったはずなのですが……今、カウンターからは4人分の声が聞こえて来た気がします。
改めてカウンターへ視線を向けた私。
すると、カウンター席の端に、お隣のツカーサさんの姿があるではありませんか。
「つ、ツカーサさん……」
「え、えへへ……ベランダで洗濯してたらさ、なんか美味しそうな匂いがしたもんだから、つい……あ、もちろん代金は支払わせてもらうからさ! お願い、食べさせて~!」
私を拝みながら何度も頭を下げてくるツカーサさん。
「では味見ってことで一杯どうぞ」
そんなツカーサさんの様子に苦笑しながら、私はよそったばかりの芋煮のお椀をお渡ししていきました。
「わ~、ありがと~さわこさん! すっごく嬉しい!」
私からお椀を受け取ったツカーサさんは、一緒にお渡ししたスプーンを手にとると、すさかず芋煮を口に運ぼうとなさったのですが……そんなツカーサさんの隣では、ベル・エンジェさん・ロッサさんの3人が、一度芋煮の入ったお椀をテーブルの上において、手を合わせました。
「いただきますにゃ」
「いただきますわ」
「いただきますなのじゃ」
いつも私がしている、食事の時の挨拶を真似しているベル達。
この挨拶がすっかり身についているんですよね。
そんな3人の様子を見ていたツカーサさん……慌てた様子で、一度お椀をテーブルの上に置くと、
「い、いただきます!」
ベル達の真似をして両手を合わせました。
ベル・エンジェさん・ロッサさんに、ツカーサさんを加えた四人はしばらく手を合わせてから、芋煮を口に運んでいきました。
「んん! さーちゃん、これすっごく美味しいにゃ!」
「サルトイモがとっても美味しいわ」
「このこんにゃくという物が、またあうのぉ」
「肉! この肉最高! もうたまんない!」
四人は、思い思いに声をあげながら芋煮を口に運んでいます。
そんな四人の様子に、思わず笑顔になる私。
「さ、バテアさんも」
「えぇ、いただくわ」
芋煮が入ったお椀をバテアさんにお渡しした私は、一升瓶をそっと手に取りました。
「……まだお昼ですけど」
そう言って、バテアさんにお勧めしたのは東北銘醸の初孫・魔斬です。
芋煮のメッカ、山形を代表するお酒のひとつでして、お米本来の甘みと切れ味を楽しめる辛口のお酒です。
芋煮を口にしたバテアさんは、コップに注いだお酒をくいっと飲み干していきます。
「はぁ……いいわねぇ……最高にあうわ、これ」
「でしょう」
極上の笑顔を浮かべているバテアさん。
その笑顔を見つめながら、私もにっこり微笑みました。
「今夜ご来店くださったお客様には、この芋煮を一杯サービスしちゃいましょう。私の世界の秋の味覚をお裾分けですね」
そうと決まれば、さらに追加を準備しませんと。
そう思いながら厨房へ戻っていくと、
「さーちゃんお代わり!」
「さわこ、私もよ!」
「妾もお願いするのじゃ。芋多めでの!」
「アタシもアタシも! アタシはお肉多めでお願い!」
カウンターに座っているベル・エンジェさん・ロッサさん・ツカーサさんの四人が一斉に、空になったお椀を私に差し出してきました。
「はい、喜んで」
そんなみんなに笑顔を返しながら、お椀を受け取っていく私。
まずは、カウンターのみんなに満足してもらいませんと、ね。
ーつづく
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