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さわこさんと、仕入れと その4
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辺境都市ナカンコンベへ仕入れにやってきた私ですが、今回もおもてなし商会のファラさんのご厚意もありまして希望通りの仕入れが出来た次第です。
……って、こう言うと何故かバテアさんは苦笑なさるんですけど……私、別におかしなことなんてしていないんですけど……
「はいはい、まぁそう言うことにしておいて、次はリンシンの用事を済ませに行きましょうか」
「そうですね……ちょっとひっかかりますけど……」
首をひねる私。
バテアさんは、そんな私の肩に腕を回してこられました。
後方からは、リンシンさんとシロがついてきています。
私達は、ナカンコンベの街道を歩いていきました。
◇◇
ナカンコンベの中央役場前を通り過ぎて少し行った場所。
そこに、リンシンさんの目的の場所がありました。
「……ここ。ここの武具が、とっても具合いい」
にっこり微笑むリンシンさん。
その眼前には大きな建物がそびえていまして、その入り口には、
『ルア工房ナカンコンベ支店』
と掘られた看板が掲げられています。
木ではなく、何か金属のようなものを加工しているようですが……そういった方面に関しては非常に疎いものですから素材まではわかりませんでした。
リンシンさんは、まっすぐにその建物の中へと入っていきました。
「いらっしゃ……あれ、リンシンじゃない、久しぶりだねぇ」
お店に入ったリンシンさんに、笑顔で歩み寄ってこられたのは亜人種族の女性の方でした。
頭に耳の生えている……そうですね、猫人さんな感じでしょうか、青っぽいショートヘアの女性が尻尾をフリフリしながらリンシンさんと握手を交わしておられます。
「……ルア、久しぶり……また武具をお願いしたい」
「えぇ、なんでも言ってよ! 最近、弟子達に仕事をとられまくってて腕がなまっててさぁ、久しぶりに目一杯腕を振るいたいって思ってたところなのよ」
嬉しそうにそう言うと、ルアさんはリンシンさんと一緒にお店の奥にある応接セットへと移動していきました。
そこで、ご自分が愛用なさっている大きなハンマーをテーブルの上に置いて、
「……これの小型のハンマーがほしい……小動物を仕留めるのに……」
「とはいえ、リンシンの場合ある程度重い方がいいわよね……」
お互いに言葉を交わしながらあれこれ武具の相談をしはじめています。
そんなリンシンさんの隣にはシロがちょこんと座っています。
おそらく、武具の話なんて全然わかっていないはずなのですが……楽しそうにルアと武具の話をしているリンシンさんの顔を、嬉しそうに微笑みながら見上げています。
シロ的には、話の内容がどうこうと言うよりも、楽しそうにお話しているリンシンさんを見ていることが楽しいんでしょうね。
そんな2人の話が終わるまでの間、私達は店内を見て回りました。
ここ、ルア工房ナカンコンベ支店は、店主のルアさんとそのお弟子さんが作成した武具や生活用品なんかを販売しているそうなのですが、家や店舗の増改築から新築、はては城壁の修復作業までなんでもござれなお店なんだそうです。
ルアさんのお弟子さんの1人の、蜘蛛人のクーララさんが私達の相手をしてくれながらそんなお話を聞かせてくれました。
「私達ルア工房はですねぃ、コンビニおもてなしってお店に品物を委託販売してもらっているんですねぃ」
「こんびに……ですか?」
コンビニって、私の世界にあるコンビニエンスストアと似たお店があるんでしょうか?
「そのコンビニって、24時間休み無く営業しているんですか?」
「それは違いますねぃ、基本的に朝から夕方まで営業していてですねぃ、日曜はお休みしてますねぃ」
「あぁ、そうなんですね」
と、いうことは、私の世界のコンビニとはかなり違うってことみたいですね。
まぁ、似た名前を冠しているお店があるって理解しておけばいいかな、と、思った次第です。
◇◇
クーララさんとあれこれお話をしていると……
「んじゃあ、そういった感じの武具を、次に来る時までに作っとくね」
「……うん、よろしく」
ルアさんとリンシンさんが握手を交わしながら立ちあがりました。
どうやら、ようやく武具の詳細が決まったようですね。
その後、ルアさんとクーララさんに見送られながらルア工房を後にした私達は、その近くにある一軒の食堂へと移動していきました。
「ここなんだけど、最近美味しいって評判のお店なのよね。なんでも魔法草を使った料理を食べさせてくれる健康志向のお店だとか言っててさ」
バテアさんが指さしている、私達の眼前のお店には
『フラブランカ・キッチン』
と書かれた看板が掲げられていました。
こちらの看板もルア工房の看板と作りがよく似ていますので、ルアさんのお店がお作りになったのかもしれませんね。
お店の中には、たくさんの子供達が働いていました。
「いらっしゃいませ」
「さぁ、どうぞこちらの席へ!」
子供達の元気な笑顔と声で案内されて、私達はお店の中の窓際の席へと通されました。
お店の奥、カウンターの奥にこのお店の料理人の方がおられました。
女性ですが……そうですね、バテアさんとよく似た魔法使いの衣装を身にまとっておられますので、あの方も魔法使いなのかもしれません。
「今の時間は日替わりランチだけだけど……いいかい?」
「えぇ、アタシはかまわないけど」
「はい、私も大丈夫です」
「……うん、私も」
店主の女性の声に、みんなも頷いていきます。
店内には、私達の他にもたくさんのお客さんの姿がありました。
よく見ると、お店の壁には棚がありまして、そこに魔法道具が並んでいます。
「へぇ……この店って魔法道具も販売してるみたいねぇ」
「そうなんですね」
バテアさんが興味深そうに壁の魔法道具を見つめておられたのですが……
「……へぇ、さすがは商業都市に店で魔法道具を扱うだけあって、結構いい品揃えしてるじゃない……」
そう言うと、少し悔しそうな表情を浮かべられました。
そこに、
「はい、お待たせしました!」
女の子が食事を持って来てくれました。
ロールキャベツによく似たお野菜が入ったトマト色のスープ
バケット風のパンの間にハムのような物がはさんであるサンドイッチ
野菜サラダ
緑色のドリンク
プレートの上には以上の内容の料理が収まっていました。
「わぁ、美味しそう……では、頂きます」
私が両手を合わせると、みんなも一緒に手を合わせていきました。
早速ロールキャベツを口に運んでみた私……
「……うん、中のお肉はマウントボアですね。とろとろに煮こまれていて、このトルマトのスープにすごくあってます!」
トルマトは、私の世界のトマトによく似た野菜なのですが、酸味が独特なものですから調理されていてもすぐに区別することが出来ます。
「しかもこれ、疲労回復効果のある魔法草や薬草も一緒に煮こんであるわね……うん、いい感じじゃない」
「……うん、美味しい……」
感心しきりといった様子のバテアさん。
満面笑顔のリンシンさん。
みんな美味しそうに食事を口に運んでいます。
私も、料理に魔法草や薬草を混ぜたりしてはいるのですが……ここまで本格的には行っていないといいますか……私の世界にも薬膳料理といった料理もありますし、薬草類をメインにした料理っていうのもいいかもしれませんね。
そんなことを考えたりしたものの……今日のところは一人のお客として料理を満喫させていただきました。
◇◇
その後、バテアさんの転移魔法で辺境都市トツノコンベへと戻った私達。
「あ、そうだ……」
私は、厨房に移動すると、お酒を入れたコップを準備しまして、私の部屋の机の上に置きました。
「さわこ、それは?」
「あ、はい……今日は、大切な日でして……大切なお友達とさよならした日なんです」
そう言うと、私は窓際においたコップに向かって両手を合わせました。
「ふぅん……そうなんだ……」
そう言うと、バテアさんも私と一緒に手を合わせてくださいました。
親友だった彼女ですが……不慮の事故で……
でも、きっとどこかで見守ってくれている……そう思っています。
手を合わせ終えると、私はバテアさんへと向き直りました。
「バテアさん、早速ですけど食べられる魔法草や薬草を教えてくださいますか? 料理に使用させて頂いている以外の物がありましたら……」
「そうねぇ……じゃあ、ちょっと魔法道具のお店に行ってみる?」
「はい、よろしくお願いします」
私は、バテアさんとそんな話をしながら部屋を後にしていきました。
窓際には、お酒の入ったコップは置かれていました。
ーつづく
……って、こう言うと何故かバテアさんは苦笑なさるんですけど……私、別におかしなことなんてしていないんですけど……
「はいはい、まぁそう言うことにしておいて、次はリンシンの用事を済ませに行きましょうか」
「そうですね……ちょっとひっかかりますけど……」
首をひねる私。
バテアさんは、そんな私の肩に腕を回してこられました。
後方からは、リンシンさんとシロがついてきています。
私達は、ナカンコンベの街道を歩いていきました。
◇◇
ナカンコンベの中央役場前を通り過ぎて少し行った場所。
そこに、リンシンさんの目的の場所がありました。
「……ここ。ここの武具が、とっても具合いい」
にっこり微笑むリンシンさん。
その眼前には大きな建物がそびえていまして、その入り口には、
『ルア工房ナカンコンベ支店』
と掘られた看板が掲げられています。
木ではなく、何か金属のようなものを加工しているようですが……そういった方面に関しては非常に疎いものですから素材まではわかりませんでした。
リンシンさんは、まっすぐにその建物の中へと入っていきました。
「いらっしゃ……あれ、リンシンじゃない、久しぶりだねぇ」
お店に入ったリンシンさんに、笑顔で歩み寄ってこられたのは亜人種族の女性の方でした。
頭に耳の生えている……そうですね、猫人さんな感じでしょうか、青っぽいショートヘアの女性が尻尾をフリフリしながらリンシンさんと握手を交わしておられます。
「……ルア、久しぶり……また武具をお願いしたい」
「えぇ、なんでも言ってよ! 最近、弟子達に仕事をとられまくってて腕がなまっててさぁ、久しぶりに目一杯腕を振るいたいって思ってたところなのよ」
嬉しそうにそう言うと、ルアさんはリンシンさんと一緒にお店の奥にある応接セットへと移動していきました。
そこで、ご自分が愛用なさっている大きなハンマーをテーブルの上に置いて、
「……これの小型のハンマーがほしい……小動物を仕留めるのに……」
「とはいえ、リンシンの場合ある程度重い方がいいわよね……」
お互いに言葉を交わしながらあれこれ武具の相談をしはじめています。
そんなリンシンさんの隣にはシロがちょこんと座っています。
おそらく、武具の話なんて全然わかっていないはずなのですが……楽しそうにルアと武具の話をしているリンシンさんの顔を、嬉しそうに微笑みながら見上げています。
シロ的には、話の内容がどうこうと言うよりも、楽しそうにお話しているリンシンさんを見ていることが楽しいんでしょうね。
そんな2人の話が終わるまでの間、私達は店内を見て回りました。
ここ、ルア工房ナカンコンベ支店は、店主のルアさんとそのお弟子さんが作成した武具や生活用品なんかを販売しているそうなのですが、家や店舗の増改築から新築、はては城壁の修復作業までなんでもござれなお店なんだそうです。
ルアさんのお弟子さんの1人の、蜘蛛人のクーララさんが私達の相手をしてくれながらそんなお話を聞かせてくれました。
「私達ルア工房はですねぃ、コンビニおもてなしってお店に品物を委託販売してもらっているんですねぃ」
「こんびに……ですか?」
コンビニって、私の世界にあるコンビニエンスストアと似たお店があるんでしょうか?
「そのコンビニって、24時間休み無く営業しているんですか?」
「それは違いますねぃ、基本的に朝から夕方まで営業していてですねぃ、日曜はお休みしてますねぃ」
「あぁ、そうなんですね」
と、いうことは、私の世界のコンビニとはかなり違うってことみたいですね。
まぁ、似た名前を冠しているお店があるって理解しておけばいいかな、と、思った次第です。
◇◇
クーララさんとあれこれお話をしていると……
「んじゃあ、そういった感じの武具を、次に来る時までに作っとくね」
「……うん、よろしく」
ルアさんとリンシンさんが握手を交わしながら立ちあがりました。
どうやら、ようやく武具の詳細が決まったようですね。
その後、ルアさんとクーララさんに見送られながらルア工房を後にした私達は、その近くにある一軒の食堂へと移動していきました。
「ここなんだけど、最近美味しいって評判のお店なのよね。なんでも魔法草を使った料理を食べさせてくれる健康志向のお店だとか言っててさ」
バテアさんが指さしている、私達の眼前のお店には
『フラブランカ・キッチン』
と書かれた看板が掲げられていました。
こちらの看板もルア工房の看板と作りがよく似ていますので、ルアさんのお店がお作りになったのかもしれませんね。
お店の中には、たくさんの子供達が働いていました。
「いらっしゃいませ」
「さぁ、どうぞこちらの席へ!」
子供達の元気な笑顔と声で案内されて、私達はお店の中の窓際の席へと通されました。
お店の奥、カウンターの奥にこのお店の料理人の方がおられました。
女性ですが……そうですね、バテアさんとよく似た魔法使いの衣装を身にまとっておられますので、あの方も魔法使いなのかもしれません。
「今の時間は日替わりランチだけだけど……いいかい?」
「えぇ、アタシはかまわないけど」
「はい、私も大丈夫です」
「……うん、私も」
店主の女性の声に、みんなも頷いていきます。
店内には、私達の他にもたくさんのお客さんの姿がありました。
よく見ると、お店の壁には棚がありまして、そこに魔法道具が並んでいます。
「へぇ……この店って魔法道具も販売してるみたいねぇ」
「そうなんですね」
バテアさんが興味深そうに壁の魔法道具を見つめておられたのですが……
「……へぇ、さすがは商業都市に店で魔法道具を扱うだけあって、結構いい品揃えしてるじゃない……」
そう言うと、少し悔しそうな表情を浮かべられました。
そこに、
「はい、お待たせしました!」
女の子が食事を持って来てくれました。
ロールキャベツによく似たお野菜が入ったトマト色のスープ
バケット風のパンの間にハムのような物がはさんであるサンドイッチ
野菜サラダ
緑色のドリンク
プレートの上には以上の内容の料理が収まっていました。
「わぁ、美味しそう……では、頂きます」
私が両手を合わせると、みんなも一緒に手を合わせていきました。
早速ロールキャベツを口に運んでみた私……
「……うん、中のお肉はマウントボアですね。とろとろに煮こまれていて、このトルマトのスープにすごくあってます!」
トルマトは、私の世界のトマトによく似た野菜なのですが、酸味が独特なものですから調理されていてもすぐに区別することが出来ます。
「しかもこれ、疲労回復効果のある魔法草や薬草も一緒に煮こんであるわね……うん、いい感じじゃない」
「……うん、美味しい……」
感心しきりといった様子のバテアさん。
満面笑顔のリンシンさん。
みんな美味しそうに食事を口に運んでいます。
私も、料理に魔法草や薬草を混ぜたりしてはいるのですが……ここまで本格的には行っていないといいますか……私の世界にも薬膳料理といった料理もありますし、薬草類をメインにした料理っていうのもいいかもしれませんね。
そんなことを考えたりしたものの……今日のところは一人のお客として料理を満喫させていただきました。
◇◇
その後、バテアさんの転移魔法で辺境都市トツノコンベへと戻った私達。
「あ、そうだ……」
私は、厨房に移動すると、お酒を入れたコップを準備しまして、私の部屋の机の上に置きました。
「さわこ、それは?」
「あ、はい……今日は、大切な日でして……大切なお友達とさよならした日なんです」
そう言うと、私は窓際においたコップに向かって両手を合わせました。
「ふぅん……そうなんだ……」
そう言うと、バテアさんも私と一緒に手を合わせてくださいました。
親友だった彼女ですが……不慮の事故で……
でも、きっとどこかで見守ってくれている……そう思っています。
手を合わせ終えると、私はバテアさんへと向き直りました。
「バテアさん、早速ですけど食べられる魔法草や薬草を教えてくださいますか? 料理に使用させて頂いている以外の物がありましたら……」
「そうねぇ……じゃあ、ちょっと魔法道具のお店に行ってみる?」
「はい、よろしくお願いします」
私は、バテアさんとそんな話をしながら部屋を後にしていきました。
窓際には、お酒の入ったコップは置かれていました。
ーつづく
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