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さわこさんと、ちょっと一休み その1

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 夏祭り最終日の営業が無事終了しました。
 いつもより少し長めの営業を終えた私達は、居酒屋さわこさんの後片付けを終えると、お風呂で一汗流してからいつものようにリビングに集まっていました。
 ベル達お子様チームの面々は例のぬいぐるみに抱きついて眠っています。

「……しかし、あのぬいぐるみって何をモチーフにしているのでしょう? 顔は確かに私に似ていなくもないと思うのですが、尻尾がついていますので亜人種族の方をモチーフにしているように思うのですが……」
 
 ベルやエンジェさん達が抱きついて眠っている大きなぬいぐるみを見つめながら首をひねる私。
 
「そうねぇ……猫人にしては耳がないし……」
 そう言って首をひねるバテアさん。
「……蟻人……でも、触覚がない……」
 そう言って頭をかいているリンシンさん。
「ん~龍人かなぁ、と思ったけど……微妙に違うような……」
 そう言いながら、手帳をめくっているミリーネアさん。

 その後も、しばらく4人であれこれ話し合った結果。

「まぁ……さわこに良くにた何かってことでいいんじゃない?」
 
 と言った、バテアさんの意見で最終的に皆さん合意に至った次第でして……
 そうですね、今度ユーキさんがお店にいらした際にでも、それとなくお聞きすることにして、それまでは私に似た何かってことにしておきましょう。

◇◇

 その後、リビングに集まった私達は、いつものように晩酌をはじめました。

「では、夏祭りお疲れ様でした」
「「「お疲れ様~!」」」

 私の乾杯の音頭で、皆さん一斉に手のグラスを掲げながら声をあげていきました。
 
「は~! やっぱ、仕事の後の一杯はたまんないわねぇ」

 最初の一杯を一息で飲み干したバテアさんが、笑顔で顔を左右に振っておられます。
 その横では、いつものようにグラスを両手で抱えながら、チビチビとお酒を口に運んでいるリンシンさんの姿があります。

「……おいし……これ、おいし」

 まだ数口しか口にお酒を運んでいないのに、すでにリンシンさんの顔は赤くなりはじめています。
 その向かいでは、ミリーネアさんがグラスの中のお酒をマジマジと見つめています。

「……うん、美味しい……このお酒を歌にするなら……」

 そう言いながら、ブツブツと呟き続けています。
 
 三者三様の様子ですが、これがいつもの晩酌の光景なんですよね。
 最近は朝から屋台を開いていたこともあって、晩酌は1杯だけで終わらせていたのですが、

「さぁ、お祭りも終わったし、明日は休日だし、今夜はとことん飲むわよぉ!」

 早くも、瓶でお酒を飲み始めたバテアさん。
 楽しそうに笑いながら、私の肩に腕を回してこられました。

「そうですねぇ、久しぶりにおもいっきり飲めますね……あ、でも」
「でも?」
「久しぶりのお休みですし、みんなでどこかへ出かけるのもいいかもしれませんね。お祭りの間はベル達の相手をあまりしてあげらませんでしたし、どこかへ遊びにつれていってあげたいなぁ、と……」
「なるほどねぇ……うん、確かにそれもいいかもね」

 私とバテアさんがそんな会話を交わしていると、ミリーネアさんがおもむろに右手を挙げました。

「あの……それでしたら、ティーケー海岸なんてどうかな? 今ならあそこも夏祭りを行っている時期だと思うし」
「あぁ、ティーケー海岸ね。いいかもしれないわね、あそこなら海で遊べるし、お祭りなら屋台も出てるだろうからベル達も喜ぶんじゃない」
「海ですか、なんか楽しそうですねぇ」

 ミリーネアさんの言葉に笑顔で頷くバテアさんと私。
 すると、ミリーネアさんは立ちあがりまして、

「じゃあ、早速行ってみる?」

 そう言ったのです。

「はい?」
「行くって……ちょっとミリーネア、まさか今から?」
「はい、そうです。あそこのお祭りは期間中連日夜通し開催されているから」
「へぇ、そうなんだ……」

 ミリーネアさんの説明に頷くバテアさん。
 すると、おもむろに立ちあがり、右手を前にかざしました。

「ま、ティーケー海岸なら以前行ったことがあるから、アタシの転移魔法ですぐに行けるし、様子見で行ってみようじゃないの」

 そう言いながら、転移ドアを召喚していくバテアさん。
 そんなバテアさんに向かって、今度は私が右手をあげました。

「あの……バテアさん……その前に、着替えませんか? まさかその格好でお祭りに出向かれるおつもりですか?」

 そう言った私の目の前に立っているバテアさんなのですが……下着がスケスケのネグリジェをまとっただけのお姿なんですよね……晩酌の際はいつもこの格好といいますか、晩酌が終わるとこの格好のままベッドですぐに寝てしまうバテアさんですので、寝間着でもあるのですが……それを言うと、私やリンシンさん、ミリーネアさんもみんな寝間着ですし……あ、でも、バテアさんだけですからね、下着が透けて見える寝間着を愛用なさっているのは。

◇◇

 そんなわけで……

 みんな、外出着に着替え……とはいいましても、ラフな感じの普段着ですが、改めてバテアさんの後方へ集合しました。
 バテアさんも、いつものチューブトップに短パン姿に着替えておられます。

「んじゃ、今度こそ行くわよ」

 そう言って、再度右手を伸ばすバテアさん。
 その手の前に魔法陣が展開していき、その中から転移ドアが出現しました。
 その扉をおもむろに開けていくバテアさん。

 すると……

 その向こうには、夜の海が広がっていたんです。
 夜なのですが、砂浜の方が明るいものですから海の様子がしっかりと見えています。

「あれがお祭り会場みたいね……へぇ、結構大規模にやってるじゃない」

 バテアさんが見つめている方角へ視線を向けた私。
 そこには、海岸から少し奥に入った場所にずらっと屋台が建ち並んでいたんです。
 すでに深夜を回っているのに、多くの屋台に灯りが灯っていまして、その前を、かなりの数のお客さんが行き来なさっていたんです。

「わぁ……良い匂いが漂っていますね」

 思わず鼻をならす私。

「……あれ……なんかすごいね」

 リンシンさんが感心したように海の中を指さされたのですが……そこには、海岸近くの海の中から大きな木が生えていたんです。
 その木には大きな木の実がいくつも出来ていまして……

「あの木の実って、窓がついてません?」
「あぁ、あれは樹の家だね。アタシの家と同じ仕組みのヤツだよ。魔法使いが海の中に宿泊用の別荘でも建てたんだろうね」
「あぁ、そうなんですねぇ」

 バテアさんの説明に、感心しながら頷く私。
 その木の実の窓のひとつからは、寄り添いながら海を眺めている、かなりの身長差のある2人の姿が見えている気がします。

「さぁ、それよりもせっかく来たんだし、少し屋台を見て回りましょう」

 樹の家を見ていた私の手を、バテアさんが引っ張りました。
 すでに、リンシンさんとミリーネアさんは、屋台に向かって歩いておられました。

「あ、はい。ではまいりましょう」

 バテアさんに手を引かれながら、私も屋台に向かって歩いていきました。

 深夜のお祭り屋台。
 なんだかワクワクしてしまいます。

ーつづく


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