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さわこさんと、お祭の前に その2
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私達の前に現れた上級酒場組合の酒場の方々なのですが……どう見ても敵意といいますか、そういった負の感情を持ち合わせておられるようには見えません。
「……あ、あの……確かに私達は上級酒場組合に所属している酒場を経営していますが……そのことで折り入ってご相談がありまして……」
おずおずといった感じで話をしてこられる上級酒場組合の方。
「あのさぁ……あんた達上級酒場組合のやつらが、うちのさわこに何をしたかわかって言ってんのかい?」
鋭い視線を上級酒場組合の方々に向けるバテアさん。
その視線を受けて、上級酒場組合の方々は少しビクッとなさっています。
……確かに、バテアさんのおっしゃるとおり、上級酒場組合の方々……すでに逮捕されてはいるのですが、その方々によって私はちょっと大変な目にあってしまっていたのですが……なんでしょう、今、私の目の前におられる方々からは、悪意のような物はまったく感じないといいますか……
「バテアさん、とりあえずお話だけでもお聞きしてはいかがでしょうか?」
「さわこ……だって、こいつらは……」
「はい、そこは重々わかっています。ですが、この方々かたは悪意のようなものは感じませんし……」
「上のヤツらに言われて、使いっ走りにされてるだけかもしれないじゃない?」
「そうならそうで、どこかそういった作為的な物を感じると思うのですが……この方々からはそういったものも感じませんし……」
バテアさんの言葉に、反論する私。
それをしばらく聞いていたバテアさんは、少し間を置くと、大きなため息をつきました。
「……まったく……ホントにさわこはお人好しなんだからねぇ……」
「はい、よく言われます」
肩をすくめるバテアさん。
そんなバテアさんに、私は頭を下げました。
◇◇
その後、開店前の居酒屋さわこさんの店内に移動した私達。
上級酒場組合の酒場の方々4人には、テーブル席に座っていただいたのですが、その周囲を
バテアさん
リンシンさん
ミリーネアさん
ベル
エンジェさん
シロ
ロッサさん
家のみんながずらりと取り囲んでいます。
いつもは大人しいミリーネアさんまでもが、大きな金槌のようなものを手に持っておられる姿を前にして……こういうことを思っては不謹慎なのは重々承知なのですが、皆さんが私のことを本当に心配してくださっているのが伝わって来て……とてもありがたくて、胸が熱くなっておりました。
そんな中……
「……あ、あの……こんなお話、信じてもらえるかどうかあれなんですが……」
「実は、私達……上級酒場組合を抜けたいと思っているんです」
「上級酒場組合を……ですか?」
私の言葉に、こくりと頷く4人の方々。
「……実はですね……中級酒場組合の酒場の料理の味や扱っているお酒の味がよくなったせいで、上級酒場組合の酒場は軒並み売り上げが下がっているんです」
「そりゃ、中級酒場組合のみんなが頑張ったからに決まってるじゃない。企業努力ってやつよ。それに……アンタ達、元々中級酒場組合に加盟してたくせに、上級酒場組合の誘いに応じて向こうに寝返ったヤツらばかりよね?」
バテアさんの言葉に、再びこくりと頷く4人の方々。
「……あの時は、チャンスだと思ったんです……自分達のキャリアアップといいますか、お店をさらに発展させることが出来るチャンスだって……」
「でも……理想とは違っていました……上級酒場組合に加盟していたら、確かにそのネームバリューでお金持ちのお客様がお見えになられるようになってお店の売り上げも右肩あがりでした……」
「でも……それに応じて、上級酒場組合に納める会費もドンドン高くなっていって……そのせいで、いくら売り上げがあがっても、その分詐取されてしまって……」
「しかも最近は、お客さんが中級酒場組合の酒場に流れているせいで、売り上げは右肩下がり……でも、一度あがった会費は下がらないもんですから……多くのお店がお客さんをつなぎ止めるために……その……店員の衣装の露出度を高めたり、お客さんの隣に女の子を着きっきりにさせたり……私達がやりたかった酒場は、こんなのじゃないんです……」
4人の方々は、代わる代わる言葉を口になさっています。
その言葉には悔しさと言いますか、後悔といいますか……そういったお気持ちがすごく伝わってきます。
「事情はだいたいわかりましたけれども……それで、皆様はなぜ私を訪ねてこられたのですか? 私は中級酒場組合にも上級酒場組合にも加盟していませんけど……」
「あの……だからこし、さわこさんに仲介をお願い出来ないかと思って……」
「仲介を、ですか?」
「はい……中級酒場組合に戻ろうにも、すでにかつての仲間達からは、私達は裏切り者と思われて……」
「そりゃそうでしょう? だって、実際に裏切ったんじゃない? 違う?」
「……はい、あの……ば、バテアさんのおっしゃるとおりです……」
バテアさんの言葉に、少しうなだれる4人の方々。
「それで何? 裏切っておきながら、そこに戻りたくなったからって、無関係なさわこに仲介を頼みたいって? あんた達ねぇ、そんな虫のいい話……」
そこまで言ったところで、バテアさんは大きなため息をつきました。
そして私へ視線を向けてこられました。
「……で、そんな虫のいい話、受ける気なの、さわこ?」
「あ、はい……とりあえずお話の場を設けさせて頂こうと思っています」
「……自分達の意思で裏切ったヤツらと、中級酒場組合の組合長のジュチと?」
「はい」
「……話合いの場を?」
「はい」
「……それを、無関係のさわこが?」
「はい」
そこまでお話したところで、バテアさんは先ほどよりも大きなため息をつかれました。
「……そうなのよねぇ……さわこってば、こういう性格だから……」
「ご理解頂けていて恐縮です」
「……褒めてはないからね」
苦笑すると、バテアさんは再度、上級酒場組合の方々へ視線を向けられました。
「まぁ、話合いの場は設けてあげるけど……その前に1つ確認してもいい?」
「あ、はい」
「上級酒場組合を抜けるって言ってるけど、上級酒場組合を辞める時って結構な額の脱会金が必要なんじゃなかったかしら? そこはクリアになってるの?」
「あ、はい……それはどうにか……」
「みんな、お店を一度処分することになりそうですけど……」
「でも、それでやりたかった酒場を、もう一度出来るチャンスがもらえるのなら……」
「悔いはありません」
バテアさんの言葉に、一斉に頷く4人の方々。
「……バテアさん。お店を手放してでも中級酒場組合に戻りたいって言われているのですから……そのお気持ちは……」
「わかってるわよ……ったく、で、何、ジュチを呼んでくればいいわけ? ここに?」
バテアさんがそう言ってくださった、まさにその時でした。
「話は全部聞かせてもらったわよ!」
そう言って、居酒屋さわこさんの中に入って来たのは……ジュチさん、その人でした。
「さわこが、上級酒場組合のヤツらに話しかけられてたって聞いて、さっきから扉の外で待機させてもらってたんだけどね」
そう言うと、上級酒場組合の方々を見回していくジュチさん。
その横で、バテアさんは苦笑なさっておられます。
……どうやら、ジュチさんがお店の外で聞き耳身をたてていたのに気がついておられたようですね。
ーつづく
「……あ、あの……確かに私達は上級酒場組合に所属している酒場を経営していますが……そのことで折り入ってご相談がありまして……」
おずおずといった感じで話をしてこられる上級酒場組合の方。
「あのさぁ……あんた達上級酒場組合のやつらが、うちのさわこに何をしたかわかって言ってんのかい?」
鋭い視線を上級酒場組合の方々に向けるバテアさん。
その視線を受けて、上級酒場組合の方々は少しビクッとなさっています。
……確かに、バテアさんのおっしゃるとおり、上級酒場組合の方々……すでに逮捕されてはいるのですが、その方々によって私はちょっと大変な目にあってしまっていたのですが……なんでしょう、今、私の目の前におられる方々からは、悪意のような物はまったく感じないといいますか……
「バテアさん、とりあえずお話だけでもお聞きしてはいかがでしょうか?」
「さわこ……だって、こいつらは……」
「はい、そこは重々わかっています。ですが、この方々かたは悪意のようなものは感じませんし……」
「上のヤツらに言われて、使いっ走りにされてるだけかもしれないじゃない?」
「そうならそうで、どこかそういった作為的な物を感じると思うのですが……この方々からはそういったものも感じませんし……」
バテアさんの言葉に、反論する私。
それをしばらく聞いていたバテアさんは、少し間を置くと、大きなため息をつきました。
「……まったく……ホントにさわこはお人好しなんだからねぇ……」
「はい、よく言われます」
肩をすくめるバテアさん。
そんなバテアさんに、私は頭を下げました。
◇◇
その後、開店前の居酒屋さわこさんの店内に移動した私達。
上級酒場組合の酒場の方々4人には、テーブル席に座っていただいたのですが、その周囲を
バテアさん
リンシンさん
ミリーネアさん
ベル
エンジェさん
シロ
ロッサさん
家のみんながずらりと取り囲んでいます。
いつもは大人しいミリーネアさんまでもが、大きな金槌のようなものを手に持っておられる姿を前にして……こういうことを思っては不謹慎なのは重々承知なのですが、皆さんが私のことを本当に心配してくださっているのが伝わって来て……とてもありがたくて、胸が熱くなっておりました。
そんな中……
「……あ、あの……こんなお話、信じてもらえるかどうかあれなんですが……」
「実は、私達……上級酒場組合を抜けたいと思っているんです」
「上級酒場組合を……ですか?」
私の言葉に、こくりと頷く4人の方々。
「……実はですね……中級酒場組合の酒場の料理の味や扱っているお酒の味がよくなったせいで、上級酒場組合の酒場は軒並み売り上げが下がっているんです」
「そりゃ、中級酒場組合のみんなが頑張ったからに決まってるじゃない。企業努力ってやつよ。それに……アンタ達、元々中級酒場組合に加盟してたくせに、上級酒場組合の誘いに応じて向こうに寝返ったヤツらばかりよね?」
バテアさんの言葉に、再びこくりと頷く4人の方々。
「……あの時は、チャンスだと思ったんです……自分達のキャリアアップといいますか、お店をさらに発展させることが出来るチャンスだって……」
「でも……理想とは違っていました……上級酒場組合に加盟していたら、確かにそのネームバリューでお金持ちのお客様がお見えになられるようになってお店の売り上げも右肩あがりでした……」
「でも……それに応じて、上級酒場組合に納める会費もドンドン高くなっていって……そのせいで、いくら売り上げがあがっても、その分詐取されてしまって……」
「しかも最近は、お客さんが中級酒場組合の酒場に流れているせいで、売り上げは右肩下がり……でも、一度あがった会費は下がらないもんですから……多くのお店がお客さんをつなぎ止めるために……その……店員の衣装の露出度を高めたり、お客さんの隣に女の子を着きっきりにさせたり……私達がやりたかった酒場は、こんなのじゃないんです……」
4人の方々は、代わる代わる言葉を口になさっています。
その言葉には悔しさと言いますか、後悔といいますか……そういったお気持ちがすごく伝わってきます。
「事情はだいたいわかりましたけれども……それで、皆様はなぜ私を訪ねてこられたのですか? 私は中級酒場組合にも上級酒場組合にも加盟していませんけど……」
「あの……だからこし、さわこさんに仲介をお願い出来ないかと思って……」
「仲介を、ですか?」
「はい……中級酒場組合に戻ろうにも、すでにかつての仲間達からは、私達は裏切り者と思われて……」
「そりゃそうでしょう? だって、実際に裏切ったんじゃない? 違う?」
「……はい、あの……ば、バテアさんのおっしゃるとおりです……」
バテアさんの言葉に、少しうなだれる4人の方々。
「それで何? 裏切っておきながら、そこに戻りたくなったからって、無関係なさわこに仲介を頼みたいって? あんた達ねぇ、そんな虫のいい話……」
そこまで言ったところで、バテアさんは大きなため息をつきました。
そして私へ視線を向けてこられました。
「……で、そんな虫のいい話、受ける気なの、さわこ?」
「あ、はい……とりあえずお話の場を設けさせて頂こうと思っています」
「……自分達の意思で裏切ったヤツらと、中級酒場組合の組合長のジュチと?」
「はい」
「……話合いの場を?」
「はい」
「……それを、無関係のさわこが?」
「はい」
そこまでお話したところで、バテアさんは先ほどよりも大きなため息をつかれました。
「……そうなのよねぇ……さわこってば、こういう性格だから……」
「ご理解頂けていて恐縮です」
「……褒めてはないからね」
苦笑すると、バテアさんは再度、上級酒場組合の方々へ視線を向けられました。
「まぁ、話合いの場は設けてあげるけど……その前に1つ確認してもいい?」
「あ、はい」
「上級酒場組合を抜けるって言ってるけど、上級酒場組合を辞める時って結構な額の脱会金が必要なんじゃなかったかしら? そこはクリアになってるの?」
「あ、はい……それはどうにか……」
「みんな、お店を一度処分することになりそうですけど……」
「でも、それでやりたかった酒場を、もう一度出来るチャンスがもらえるのなら……」
「悔いはありません」
バテアさんの言葉に、一斉に頷く4人の方々。
「……バテアさん。お店を手放してでも中級酒場組合に戻りたいって言われているのですから……そのお気持ちは……」
「わかってるわよ……ったく、で、何、ジュチを呼んでくればいいわけ? ここに?」
バテアさんがそう言ってくださった、まさにその時でした。
「話は全部聞かせてもらったわよ!」
そう言って、居酒屋さわこさんの中に入って来たのは……ジュチさん、その人でした。
「さわこが、上級酒場組合のヤツらに話しかけられてたって聞いて、さっきから扉の外で待機させてもらってたんだけどね」
そう言うと、上級酒場組合の方々を見回していくジュチさん。
その横で、バテアさんは苦笑なさっておられます。
……どうやら、ジュチさんがお店の外で聞き耳身をたてていたのに気がついておられたようですね。
ーつづく
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