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さわこさんと、厄災と その2
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厄災の魔獣が出現しそうになっていたところを、ぜんざいを食べにいらしたゾフィナさんが退治してくださったおかげで事なきを得たわけですが……一応このことはお店のみんなの間だけの内緒話にしておきました。
別に、ゾフィナさんに口止めをされたわけではないのですが、この事が皆さんの間に広がってしまうとゾフィナさんの元に何かと厄介ごとを持ち込み方々が出て来かねませんからね。
そんなことを考えながらも、今日のぜんざいのお代はサービスにさせていただこう……としたのですが、
「あの程度のことでサービスにされてしまってはこっちが恐縮してしまう。むしろ美味しくぜんざいを頂くためにも規定の料金を支払わせてもらうからな」
私の申し出を聞いたゾフィナさんは、笑いながら代金を支払ってくださいました。
◇◇
その夜……
お店が閉店した後、私達はいつものように晩酌をしていました。
「しっかしあれよねぇ……こう頻繁に次元の狭間が生じちゃったら、かなわないのよねぇ」
お酒を飲みながら眉をしかめるバテアさん。
「その次元の狭間? と、いうのは、なんで出来るのですか?」
「あぁ、あの……北にそびえている山脈の中に1つだけ妙に尖った山があるでしょう? あの山がスピアナ山って言うんだけど、あの山の中腹に門の遺跡があるのよ」
「門の遺跡?」
「そう、昔ね、この世界と平行して存在する魔法界って異世界は6つの門で通じていて、お互いに行き来することが出来ていたの。そのうちの1つがあのスピアナ山にあったってわけ」
「あった……って、過去系なのは、今はないということですか?」
「正確に言うとそういうことねぇ。アタシも詳しくは知らないんだけど……」
バテアさんがそう言うと、横でお酒を飲んでいたミリーネアさんが席の上に立ちあがりました。
♪異世界に通じし6つの門~♪
♪その役目を終えし時、勇者マックスの手で5つが破壊され~♪
♪門の守護者達の思念体がそれを守り継いで~ラララ~♪
お店のように、歌を歌っていくミリーネアさん。
どうやらスピアナ山にあるっていう門のことに関する歌のようですね。
「まぁ、そんなわけでね、その門があった影響で門の遺跡の周辺って今でも次元が不安定なのよ。そのせいで次元の狭間が生じてそこから厄災の魔獣なんていうクソめんどくさい奴がこっちの世界にやってこようとしたりするんだけどね……それを監視するために門の番人がいるはずなんだけどねぇ……」
「番人というと、町の衛兵の方々が交代で見張りをなさっているとか?」
「いやいや、門の番は普通の人間には無理なんだ。今回のように門の遺跡の周辺に次元の狭間が生じたりしたら即座に閉鎖して、この世界に害獣が侵入してくるのを阻止するのが役目だからねぇ……しかし、確かにここ数年はちょっと頻度が多い気がするわねぇ……」
「……うん、ちょっと多い」
バテアさんの言葉に、リンシンさんも頷いています。
……とはいえ、いつものようにお酒のグラスを両手で抱えてチマチマ飲みながらなもんですから、どこか可愛い印象なのですが。
「……そうねぇ……一度様子を見に行ってみようかしら。一応、トツノコンベ付きの魔法使いってことになってるわけだしねぇ」
そう言うと、バテアさんは苦笑しながらコップのお酒を飲み干されました。
この「トツノコンベ付きの魔法使い」というものなのですが、後でバテアさんにお聞きしたところ、
『魔法使いってね、すべての都市に住んでいるわけじゃないのよ。でもね、いれば薬草を作ったり怪我人や病人を治療したり、時には襲ってきた魔獣を魔法で撃退したりと……まぁ、魔法使いによって得手不得手はあるんだけど、辺境にある都市にとってはなんとしても確保しておきたい人材なわけなのよ。そんなわけで、数年前に気まぐれにこの都市にやってきたアタシは、当時役場の新人だったヒイロに拝み倒されて、この都市付きの魔法使いとして、この都市に住みながら都市の依頼であれこれ仕事をしてるってわけ』
そう、教えてくださったんです。
確かに、バテアさんは魔法薬をつくって販売したり、怪我や病気のことで相談にこられた方の治療をしたりしていますし、冬場には都市の街道に降り積もった雪を毎朝溶かしてまわったりなさっていたのです。
おそらく、そういうのが「都市付きの魔法使い」のお仕事ということなのでしょうね。
◇◇
そんなわけで……週末の休日、私達はバテアさんを先頭にしてスピアナ山へと向かうことになりました。
「まぁ、時空の狭間が閉鎖したばかりだし、当分は安全だから」
というバテアさんの言葉を受けて、同居しているおチビさんチームも一緒に出かけることになりました。
ベル
エンジェさん
ロッサさん
シロ
お話を聞いた4人は、
「ニャ! 山に遊びに行けるニャ!」
「ハイキングね! 楽しみだわさわこ」
「エンジェよ、そのハイキングとはなんぞ? 肺の王様のことかの?」
「肺?……息をいっぱい吸うの?」
そんな会話を交わしながら、ワイワイ楽しそうに準備をしています。
そんなみんなの様子を見つめながら、私は厨房でお弁当を作成していました。
バテアさんの転移魔法でスピアナ山の麓まで移動して、そこから徒歩で山を登っていく予定です。
『あの山、時空がちょっと歪んでるから、転移魔法が誤作動して予定していた場所と違う場所につながることがあるからねぇ』
とのことでして、そのため時空のゆがみが少ない麓からは歩くんだそうです。
「山を登るとなると、お腹が空きますからね」
おにぎりを作りながら、私は笑顔です。
門の遺跡は山の中腹にあるそうですから、きっと良い眺めのはずです。
そこで、みんなで景色を楽しみながらお弁当を食べるとなると、美味しくないはずがありません。
お豆のおにぎり
砕いた梅をまぶしたおにぎり
ごま塩のおにぎり
きゃらぶきのおにぎり
1つ1つ趣向を凝らして握っていきます。
やっぱり、ハイキングのお弁当と言えばおにぎりですからね。
今日はしっかりたっぷり作っていかないと。
「みゅう!みゅ!」
私の頭の上にのっかっているミュウも、嬉しそうに鳴き声をあげています。
まだまだ赤ちゃん鳥のミュウも、お出かけ出来るのが楽しみで仕方ないみたいですね。
まぁ、私の世界に行った時のように、あちこち飛び回られたら困りますけど……こちらの世界でしたらバテアさんが魔法を遠慮することなく使用出来ますので多分大丈夫だと思います。
「おはようさわこ!」
そんなリビングに、いきなり元気な声が響きました!
私が振り向くと、そこにいたのはお隣のツカーサさんではありませんか。
「いやぁ、ほら。なんか山に遊びに行くって聞いてさ」
そう言うと、ツカーサさんは両手で抱えていた入れ物を机の上に置いたのですが。その中にはおかずが山盛りでつまっていたのです。
「ほら、いつも試食とかさせてもらってるからさ。たまには私もお役に立たせてもらわないと、と思って」
にっこり笑顔のツカーサさん。
ツカーサさんお手製のおかずの山に、ベル達が群がっていきます。
「ニャ! ツーちゃん、これ美味しそうニャ!」
「ホントね、とっても美味しそうだわ」
「うん……うん……」
「ほほう、新作料理の時だけやってくるただの食いしん坊ではなかったのじゃな」
「あ、ロッサさんひど~い」
そんな会話を交わしていくベル達とツカーサさん。
「そろそろ準備は出来たぁ?」
そこに、バテアさんの声が聞こえてきました。
「あ、はい! もう少しです」
私は、笑顔でおにぎりをお重につめていきました。
今日は、いつもより楽しいハイキングになりそうです。
ーつづく
別に、ゾフィナさんに口止めをされたわけではないのですが、この事が皆さんの間に広がってしまうとゾフィナさんの元に何かと厄介ごとを持ち込み方々が出て来かねませんからね。
そんなことを考えながらも、今日のぜんざいのお代はサービスにさせていただこう……としたのですが、
「あの程度のことでサービスにされてしまってはこっちが恐縮してしまう。むしろ美味しくぜんざいを頂くためにも規定の料金を支払わせてもらうからな」
私の申し出を聞いたゾフィナさんは、笑いながら代金を支払ってくださいました。
◇◇
その夜……
お店が閉店した後、私達はいつものように晩酌をしていました。
「しっかしあれよねぇ……こう頻繁に次元の狭間が生じちゃったら、かなわないのよねぇ」
お酒を飲みながら眉をしかめるバテアさん。
「その次元の狭間? と、いうのは、なんで出来るのですか?」
「あぁ、あの……北にそびえている山脈の中に1つだけ妙に尖った山があるでしょう? あの山がスピアナ山って言うんだけど、あの山の中腹に門の遺跡があるのよ」
「門の遺跡?」
「そう、昔ね、この世界と平行して存在する魔法界って異世界は6つの門で通じていて、お互いに行き来することが出来ていたの。そのうちの1つがあのスピアナ山にあったってわけ」
「あった……って、過去系なのは、今はないということですか?」
「正確に言うとそういうことねぇ。アタシも詳しくは知らないんだけど……」
バテアさんがそう言うと、横でお酒を飲んでいたミリーネアさんが席の上に立ちあがりました。
♪異世界に通じし6つの門~♪
♪その役目を終えし時、勇者マックスの手で5つが破壊され~♪
♪門の守護者達の思念体がそれを守り継いで~ラララ~♪
お店のように、歌を歌っていくミリーネアさん。
どうやらスピアナ山にあるっていう門のことに関する歌のようですね。
「まぁ、そんなわけでね、その門があった影響で門の遺跡の周辺って今でも次元が不安定なのよ。そのせいで次元の狭間が生じてそこから厄災の魔獣なんていうクソめんどくさい奴がこっちの世界にやってこようとしたりするんだけどね……それを監視するために門の番人がいるはずなんだけどねぇ……」
「番人というと、町の衛兵の方々が交代で見張りをなさっているとか?」
「いやいや、門の番は普通の人間には無理なんだ。今回のように門の遺跡の周辺に次元の狭間が生じたりしたら即座に閉鎖して、この世界に害獣が侵入してくるのを阻止するのが役目だからねぇ……しかし、確かにここ数年はちょっと頻度が多い気がするわねぇ……」
「……うん、ちょっと多い」
バテアさんの言葉に、リンシンさんも頷いています。
……とはいえ、いつものようにお酒のグラスを両手で抱えてチマチマ飲みながらなもんですから、どこか可愛い印象なのですが。
「……そうねぇ……一度様子を見に行ってみようかしら。一応、トツノコンベ付きの魔法使いってことになってるわけだしねぇ」
そう言うと、バテアさんは苦笑しながらコップのお酒を飲み干されました。
この「トツノコンベ付きの魔法使い」というものなのですが、後でバテアさんにお聞きしたところ、
『魔法使いってね、すべての都市に住んでいるわけじゃないのよ。でもね、いれば薬草を作ったり怪我人や病人を治療したり、時には襲ってきた魔獣を魔法で撃退したりと……まぁ、魔法使いによって得手不得手はあるんだけど、辺境にある都市にとってはなんとしても確保しておきたい人材なわけなのよ。そんなわけで、数年前に気まぐれにこの都市にやってきたアタシは、当時役場の新人だったヒイロに拝み倒されて、この都市付きの魔法使いとして、この都市に住みながら都市の依頼であれこれ仕事をしてるってわけ』
そう、教えてくださったんです。
確かに、バテアさんは魔法薬をつくって販売したり、怪我や病気のことで相談にこられた方の治療をしたりしていますし、冬場には都市の街道に降り積もった雪を毎朝溶かしてまわったりなさっていたのです。
おそらく、そういうのが「都市付きの魔法使い」のお仕事ということなのでしょうね。
◇◇
そんなわけで……週末の休日、私達はバテアさんを先頭にしてスピアナ山へと向かうことになりました。
「まぁ、時空の狭間が閉鎖したばかりだし、当分は安全だから」
というバテアさんの言葉を受けて、同居しているおチビさんチームも一緒に出かけることになりました。
ベル
エンジェさん
ロッサさん
シロ
お話を聞いた4人は、
「ニャ! 山に遊びに行けるニャ!」
「ハイキングね! 楽しみだわさわこ」
「エンジェよ、そのハイキングとはなんぞ? 肺の王様のことかの?」
「肺?……息をいっぱい吸うの?」
そんな会話を交わしながら、ワイワイ楽しそうに準備をしています。
そんなみんなの様子を見つめながら、私は厨房でお弁当を作成していました。
バテアさんの転移魔法でスピアナ山の麓まで移動して、そこから徒歩で山を登っていく予定です。
『あの山、時空がちょっと歪んでるから、転移魔法が誤作動して予定していた場所と違う場所につながることがあるからねぇ』
とのことでして、そのため時空のゆがみが少ない麓からは歩くんだそうです。
「山を登るとなると、お腹が空きますからね」
おにぎりを作りながら、私は笑顔です。
門の遺跡は山の中腹にあるそうですから、きっと良い眺めのはずです。
そこで、みんなで景色を楽しみながらお弁当を食べるとなると、美味しくないはずがありません。
お豆のおにぎり
砕いた梅をまぶしたおにぎり
ごま塩のおにぎり
きゃらぶきのおにぎり
1つ1つ趣向を凝らして握っていきます。
やっぱり、ハイキングのお弁当と言えばおにぎりですからね。
今日はしっかりたっぷり作っていかないと。
「みゅう!みゅ!」
私の頭の上にのっかっているミュウも、嬉しそうに鳴き声をあげています。
まだまだ赤ちゃん鳥のミュウも、お出かけ出来るのが楽しみで仕方ないみたいですね。
まぁ、私の世界に行った時のように、あちこち飛び回られたら困りますけど……こちらの世界でしたらバテアさんが魔法を遠慮することなく使用出来ますので多分大丈夫だと思います。
「おはようさわこ!」
そんなリビングに、いきなり元気な声が響きました!
私が振り向くと、そこにいたのはお隣のツカーサさんではありませんか。
「いやぁ、ほら。なんか山に遊びに行くって聞いてさ」
そう言うと、ツカーサさんは両手で抱えていた入れ物を机の上に置いたのですが。その中にはおかずが山盛りでつまっていたのです。
「ほら、いつも試食とかさせてもらってるからさ。たまには私もお役に立たせてもらわないと、と思って」
にっこり笑顔のツカーサさん。
ツカーサさんお手製のおかずの山に、ベル達が群がっていきます。
「ニャ! ツーちゃん、これ美味しそうニャ!」
「ホントね、とっても美味しそうだわ」
「うん……うん……」
「ほほう、新作料理の時だけやってくるただの食いしん坊ではなかったのじゃな」
「あ、ロッサさんひど~い」
そんな会話を交わしていくベル達とツカーサさん。
「そろそろ準備は出来たぁ?」
そこに、バテアさんの声が聞こえてきました。
「あ、はい! もう少しです」
私は、笑顔でおにぎりをお重につめていきました。
今日は、いつもより楽しいハイキングになりそうです。
ーつづく
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