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連載
さわこさんと、こんにちは赤ちゃん その2
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先日、思いがけず保護することになったトルキ族の女の子は、まだ幼いせいもあってか鳥の姿でいる時間が多い感じです。
まだ赤ちゃんに近いってこともあってか1日の大半を寝て過ごしているその女の子は、その間はだいたい鳥の姿をして丸くなってねています。
居酒屋さわこさんの営業時間中は、いつもはベル達おチビさんチームのみんなが面倒を見てくれています。
とはいえ、大半の時間を寝ているトルキ族の女の子が寝ているソファを取り囲みまして
「わはー! とっても可愛いニャ!」
「そうね、私もそう思うわ!」
「……可愛い」
「なんともめんこい赤子じゃのぉ」
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんの4人が笑顔で見つめているだけっていう時間がほとんどなんですけどね。
ちなみに……
冒険者組合と役場に行って、トルキ族の女の子を保護したことを伝えにいったのですが、
「そうですねぇ……こういった場合に、親が見つかる可能性は非常に低いと言わざるを得ないといいますか……一応、尋ね人として張り紙をしておきますけど、あまり期待はしないでくださいね」
そう言われているんです。
帰り道……
「で、どうするのさわこ、そのトルキ族の女の子?」
「……そうですねぇ……」
私は、腕の中へ視線を移しました。
私に抱っこされているトルキ族の女の子は、
「……うみゅう……」
気持ちよさそうな寝息をたてながら、私の服を掴んでいます。
小さな手でしっかりと……
「……そうですねぇ……これも何かのご縁といいますか……あの、バテアさん……」
「はいはい、全部言わなくてもいいわよ。さわこのことだからそう言うだろうって思ってたから」
私の言葉を制したバテアさんは、そう言ってにっこり微笑んでくださいました。
そんなバテアさんに、私は深々と頭を下げました。
「ありがとうございます、バテアさん」
家主であるバテアさんの許可を頂けたことで、トルキ族の女の子を保護することが決まった次第でございます。
◇◇
「ただ……アタシも、薬草や魔法のことなら詳しいけどさぁ……トルキ族のことまでは……」
「そ、そうなんですね……」
と、トルキ族の女の子を今後どうやって育ててあげたらいいのかちんぷんかんぷんだった私とバテアさん。
「……ごめん、私もよくわからない」
「トルキ族は知ってるけど……その赤ちゃんの育て方は……歌でも聴いたことがない」
リンシンさんと、ミリーネアさんも、首をひねるばかりです。
とりあえず、野菜の上澄みスープを喜んで飲んでくれているものの、これだけでいいのかどうかもわかりません。
4人して顔を見合わせていた時でした。
「グッモーニン……あら? それってトルキ族の赤ちゃん? うわぁ、懐かしい」
そこに顔を出したのはエミリアでした。
いつものように、バテア青空市の仕事を終えて居酒屋さわこさんに顔を出してくれたようです。
「あら? 懐かしい……って、エミリアってトルキ族の赤ちゃんを育てたことがあるの?」
「えぇ、あるわよ。私がまだ小さい頃に、アミリア姉さんの農場に迷い込んで来たのよ。保護したものの育て方がわからなかったもんだから、アミリア姉さんと一緒にあちこち駆け回ってトルキ族に関する書物をかき集めてスタディ、勉強したものよ」
その言葉を聞いた私は、反射的にエミリアの肩を掴みました。
「エミリア、お願いがあります……その時の本を貸してもらえませんか?」
「えぇ、ノープロブレムよ」
そう言うと、エミリアは30分もしないうちに書物を取ってきてくれました。
背表紙を見ると……魔女魔法出版という出版社が発行している本のようですね。
……あれ? この出版社って、以前私に料理本の出版を持ちかけてこられたところでは……
今も社員の方がお店に通ってこられているのですが……最近では出版話はそっちのけで
『今日のお勧めは何かな~』
って、私の料理を目当てに通ってくださっている感じなんですよね。
とりあえず、この本のおかげでトルキ族の女の子を育てる目処は立ちました。
「さわこ、このトルキ族の女の子にネームはもう付けたの? ほら、名前がないと何かと不便でしょう?」
「そうですねぇ……」
エミリアに言われて、私はトルキ族の女の子へ視線を向けました。
すると、それまで鳥の姿で寝ていた女の子が人の姿へと変化して、私に向かって両手を伸ばしてきました。
「……みゅう……みゅう……」
こういうときのこの子って、私に抱っこをせがんでいるんですよね。
私は、笑顔で女の子を抱っこしてあげました。
女の子は、私の胸に顔を寄せて嬉しそうに微笑んでいます。
「みゅう……ママ……」
……えっと……ここでママって言われると、少々複雑な気持ちになってしまう微妙なお年頃なのですが……
「そうですね……ミュウ……で、いいかな、って思うんですけど……」
「みゅう?」
私の言葉を聞いたトルキ族の女の子は、不思議そうな表情を浮かべたのですが……すぐに満面の笑顔になりまして、私の胸に再び顔を埋めてきました。
「その子の口癖からとったわけね……いいんじゃないかしら、可愛いと思うわよ」
「……うん、いいね」
「なんだか一曲出来そう」
バテアさん達も、笑顔を浮かべながら頷いてくださっています。
「ミュウ、あなたの名前ですよ」
「みゅう? みゅう~♪」
私の言葉が理解出来たのかどうかはいまいち判断つきかねるのですが……とりあえず嬉しそうなので、よしってことにしようと思います。
◇◇
早速エミリアが貸してくれた本を読んで見ますと……
「トルキ族の赤ちゃんは、人型に変化出来るようになったら固形物を与えてもいいみたいですね……人種族が食べる甘い物なんかが、栄養価も高くていいみたい……油なんかも大丈夫なんだ……」
しばらく考えを巡らせた私は、居酒屋さわこさんの厨房に移動しまして調理を開始しました。
準備した材料は、きな粉・黒蜜……そして、豆乳です。
豆乳を小麦粉・ベーキングパウダーと一緒に混ぜ合わせまして形を整え、それを油であげていきます。
カラッと揚がったそれを、余分な油をきって少し冷ましてからお皿に盛り付け、きな粉と黒蜜をかけまして……
「さぁ、豆乳ドーナツですよ」
私はお皿をミュウの前に置きました。
ミュウは、嬉しそうに顔を輝かせると、ドーナツに向かって手を伸ばしていきます。
ですが、私はその手を一度止めました。
「みゅう?」
「いいですか? ミュウ。食べ物を食べる前にはこうして一度手を合わせてから、『いただきます』……そう言うんですよ」
私が実際にして見せながら言葉をかけると、ミュウは私の真似をして手を合わせまして。
「あーしゅ」
そう言いながら頭を下げました。
その仕草に、思わず笑顔になってしまう私。
バテアさん達も、同じように笑顔を……
「や~可愛いねぇ、ミュウちゃんってば」
……で、なぜそこにツカーサさんまでいるのでしょう?……あ、そうか……新しく作った豆乳ドーナツに釣られて……
その事に思い当たった私は、思わず苦笑してしまいまして。
でも、今日のツカーサさんは、豆乳ドーナツに引かれてやってきたものの、今はミュウがあむあむと豆乳ドーナツを頬張っている仕草に夢中のようです。
……そろそろベル達も帰ってくるでしょうから、みんなの分も作りましょうか
私は、厨房の中で作業を再開していきました。
ーつづく
まだ赤ちゃんに近いってこともあってか1日の大半を寝て過ごしているその女の子は、その間はだいたい鳥の姿をして丸くなってねています。
居酒屋さわこさんの営業時間中は、いつもはベル達おチビさんチームのみんなが面倒を見てくれています。
とはいえ、大半の時間を寝ているトルキ族の女の子が寝ているソファを取り囲みまして
「わはー! とっても可愛いニャ!」
「そうね、私もそう思うわ!」
「……可愛い」
「なんともめんこい赤子じゃのぉ」
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんの4人が笑顔で見つめているだけっていう時間がほとんどなんですけどね。
ちなみに……
冒険者組合と役場に行って、トルキ族の女の子を保護したことを伝えにいったのですが、
「そうですねぇ……こういった場合に、親が見つかる可能性は非常に低いと言わざるを得ないといいますか……一応、尋ね人として張り紙をしておきますけど、あまり期待はしないでくださいね」
そう言われているんです。
帰り道……
「で、どうするのさわこ、そのトルキ族の女の子?」
「……そうですねぇ……」
私は、腕の中へ視線を移しました。
私に抱っこされているトルキ族の女の子は、
「……うみゅう……」
気持ちよさそうな寝息をたてながら、私の服を掴んでいます。
小さな手でしっかりと……
「……そうですねぇ……これも何かのご縁といいますか……あの、バテアさん……」
「はいはい、全部言わなくてもいいわよ。さわこのことだからそう言うだろうって思ってたから」
私の言葉を制したバテアさんは、そう言ってにっこり微笑んでくださいました。
そんなバテアさんに、私は深々と頭を下げました。
「ありがとうございます、バテアさん」
家主であるバテアさんの許可を頂けたことで、トルキ族の女の子を保護することが決まった次第でございます。
◇◇
「ただ……アタシも、薬草や魔法のことなら詳しいけどさぁ……トルキ族のことまでは……」
「そ、そうなんですね……」
と、トルキ族の女の子を今後どうやって育ててあげたらいいのかちんぷんかんぷんだった私とバテアさん。
「……ごめん、私もよくわからない」
「トルキ族は知ってるけど……その赤ちゃんの育て方は……歌でも聴いたことがない」
リンシンさんと、ミリーネアさんも、首をひねるばかりです。
とりあえず、野菜の上澄みスープを喜んで飲んでくれているものの、これだけでいいのかどうかもわかりません。
4人して顔を見合わせていた時でした。
「グッモーニン……あら? それってトルキ族の赤ちゃん? うわぁ、懐かしい」
そこに顔を出したのはエミリアでした。
いつものように、バテア青空市の仕事を終えて居酒屋さわこさんに顔を出してくれたようです。
「あら? 懐かしい……って、エミリアってトルキ族の赤ちゃんを育てたことがあるの?」
「えぇ、あるわよ。私がまだ小さい頃に、アミリア姉さんの農場に迷い込んで来たのよ。保護したものの育て方がわからなかったもんだから、アミリア姉さんと一緒にあちこち駆け回ってトルキ族に関する書物をかき集めてスタディ、勉強したものよ」
その言葉を聞いた私は、反射的にエミリアの肩を掴みました。
「エミリア、お願いがあります……その時の本を貸してもらえませんか?」
「えぇ、ノープロブレムよ」
そう言うと、エミリアは30分もしないうちに書物を取ってきてくれました。
背表紙を見ると……魔女魔法出版という出版社が発行している本のようですね。
……あれ? この出版社って、以前私に料理本の出版を持ちかけてこられたところでは……
今も社員の方がお店に通ってこられているのですが……最近では出版話はそっちのけで
『今日のお勧めは何かな~』
って、私の料理を目当てに通ってくださっている感じなんですよね。
とりあえず、この本のおかげでトルキ族の女の子を育てる目処は立ちました。
「さわこ、このトルキ族の女の子にネームはもう付けたの? ほら、名前がないと何かと不便でしょう?」
「そうですねぇ……」
エミリアに言われて、私はトルキ族の女の子へ視線を向けました。
すると、それまで鳥の姿で寝ていた女の子が人の姿へと変化して、私に向かって両手を伸ばしてきました。
「……みゅう……みゅう……」
こういうときのこの子って、私に抱っこをせがんでいるんですよね。
私は、笑顔で女の子を抱っこしてあげました。
女の子は、私の胸に顔を寄せて嬉しそうに微笑んでいます。
「みゅう……ママ……」
……えっと……ここでママって言われると、少々複雑な気持ちになってしまう微妙なお年頃なのですが……
「そうですね……ミュウ……で、いいかな、って思うんですけど……」
「みゅう?」
私の言葉を聞いたトルキ族の女の子は、不思議そうな表情を浮かべたのですが……すぐに満面の笑顔になりまして、私の胸に再び顔を埋めてきました。
「その子の口癖からとったわけね……いいんじゃないかしら、可愛いと思うわよ」
「……うん、いいね」
「なんだか一曲出来そう」
バテアさん達も、笑顔を浮かべながら頷いてくださっています。
「ミュウ、あなたの名前ですよ」
「みゅう? みゅう~♪」
私の言葉が理解出来たのかどうかはいまいち判断つきかねるのですが……とりあえず嬉しそうなので、よしってことにしようと思います。
◇◇
早速エミリアが貸してくれた本を読んで見ますと……
「トルキ族の赤ちゃんは、人型に変化出来るようになったら固形物を与えてもいいみたいですね……人種族が食べる甘い物なんかが、栄養価も高くていいみたい……油なんかも大丈夫なんだ……」
しばらく考えを巡らせた私は、居酒屋さわこさんの厨房に移動しまして調理を開始しました。
準備した材料は、きな粉・黒蜜……そして、豆乳です。
豆乳を小麦粉・ベーキングパウダーと一緒に混ぜ合わせまして形を整え、それを油であげていきます。
カラッと揚がったそれを、余分な油をきって少し冷ましてからお皿に盛り付け、きな粉と黒蜜をかけまして……
「さぁ、豆乳ドーナツですよ」
私はお皿をミュウの前に置きました。
ミュウは、嬉しそうに顔を輝かせると、ドーナツに向かって手を伸ばしていきます。
ですが、私はその手を一度止めました。
「みゅう?」
「いいですか? ミュウ。食べ物を食べる前にはこうして一度手を合わせてから、『いただきます』……そう言うんですよ」
私が実際にして見せながら言葉をかけると、ミュウは私の真似をして手を合わせまして。
「あーしゅ」
そう言いながら頭を下げました。
その仕草に、思わず笑顔になってしまう私。
バテアさん達も、同じように笑顔を……
「や~可愛いねぇ、ミュウちゃんってば」
……で、なぜそこにツカーサさんまでいるのでしょう?……あ、そうか……新しく作った豆乳ドーナツに釣られて……
その事に思い当たった私は、思わず苦笑してしまいまして。
でも、今日のツカーサさんは、豆乳ドーナツに引かれてやってきたものの、今はミュウがあむあむと豆乳ドーナツを頬張っている仕草に夢中のようです。
……そろそろベル達も帰ってくるでしょうから、みんなの分も作りましょうか
私は、厨房の中で作業を再開していきました。
ーつづく
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