264 / 343
連載
さわこさんと、温泉 その3
しおりを挟む
タクラ酒というお酒を温泉で堪能した私達。
一方、ベルを中心にしたおチビさんチームは温泉の中を楽しそうに泳ぎ回っていました。
この温泉では、こういう行為が許可されていますので、安心してみていられます。
ただ、おチビさんチームのみんなに万が一ということがあってはいけませんので、大人組はみんなお酒は控えめにしています。
それでも、ほんわか楽しい一時をすごせました。
◇◇
温泉を満喫した私達は、その足で大部屋へと戻りました。
「お部屋が広いニャ!」
「ホントに広いわ!」
「広い~!」
「広いのじゃあ!」
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんの4人は、部屋に入るなり床の上に寝転がっていきました。
この大部屋の床は、私の世界の畳によく似た物が敷き詰められていますので、直接横になっても問題ありません。
その上をゴロゴロ転がっている4人。
「ホントに、おチビさんチームはみんな元気ねぇ」
「そうですね。見ていて元気をもらえると言いますか……」
私とバテアさんは、笑顔でそんな会話を交わしていたのですが……
「……あ、あら? ちょっとまたミリーネアがいないじゃないの!?」
と、ミリーネアさん不在に気がついたバテアさんが、慌てて部屋を飛び出していきました。
ちなみに、この時のミリーネアさんは部屋に戻る途中にあった売店にフラフラっと立ち寄っていた模様です。
吟遊詩人ゆえに、好奇心応戦なミリーネアさんなのですが……時折こうしてフラフラっと姿を消すのだけは、ちょっと勘弁して頂きたいと思うのですが……
「あのね……おもしろい物がいっぱいだった」
バテアさんに横抱きに抱えられて連れ戻されたにもかかわらず、すっごく嬉しそうな笑顔を浮かべているミリーネアさんのお姿を拝見していると、
「もう、ミリーネアさんったら」
苦笑することしか出来なくなってしまう私達なのでした。
◇◇
程なくして、部屋に昼食が運ばれてきました。
お膳にのせられている料理は、
お肉の炒め物
野菜の煮物
山菜の天ぷら
ご飯
お椀
以上の5品。
ご飯は豆ご飯になっていました。
「うわ!? すごいわね、このお肉タテガミライオンじゃない!?」
早速そのお肉を口になさったバテアさんが目を丸くなさっていました。
私も、そのお肉を口にしてみたのですが……間違いありません、この肉感、肉汁の味……タテガミライオンのお肉です。
タテガミライオンのお肉は、私の世界で例えますとA5にランクされるこの世界最高峰のお肉といっても過言ではありません。
……しかし、あれですね……肉汁を使ってステーキソース風にしているのはわかるのですが、隠し味として一品加えられている気がするといいますか……なんでしょう、お醤油のような味がする気がするのですが……おかしいですね、この世界にはお醤油は流通していないはずなのですが……
「さわこ、何、難しい顔してるのよ。せっかくの温泉なんだし、たまには仕事を忘れて満喫なさいって」
「え?わ、私そんなに難しい顔、してましたか?」
「うん、さーちゃんすごく難しい顔してたニャ!」
バテアさんさんに言われてびっくりしていると、横に座っているベルが大きく相づちをうちました。
いけませんね。職業病といいますか、美味しい物を口にするとついついその味を分析しようとする癖が身についてしまっているようです。
せめて、回りのみんなが気を使わない程度にとどめておきませんと……
そんなわけで、私は改めて食事を口に運んでいきました。
今度は、満面の笑顔で。
「そうそう、そうこなくっちゃ」
バテアさんが笑顔で私にお酌してくださいました。
「そうですね、せっかくの上げ膳据え膳なんですし」
私は、笑顔でコップを差し出していきました。
リンシンさんの横に座ってご飯を食べているシロは、
「……美味しいね」
そう言っては、リンシンさんを笑顔で見つめています。
そんなシロに、リンシンさんも、
「……うん、美味しい」
笑顔でそう言いながら、笑顔を返しています。
なんだか、ほっこりした光景で、こちらまで癒やされます。
エンジェさんとロッサさんは、
「まぁ、これも美味しいわね」
「うむ、確かに美味しいのじゃ」
2人して、同じ物を口に運んでは、お互いに感想を述べ合っています。
2人とも小柄なものですからおチビさんチームに分類されていますけれども、実年齢で言えば私の何十倍も年上ですしね、何かと気も合うみたいです。
そんな感じで、楽しそうに食事をしているお2人なのですが……不意に私へと視線を向けると、
「でも、さわこの料理の方が美味しいわ」
「うむ、さわこの料理の方が好みなのじゃ」
2人はそう言うと、にっこり微笑んでくれました。
すると、
「そんなの当然じゃない」
「……うん、さわこの料理、最高」
「……私も、さわこの料理、好き。いくらでも歌えそう」
「さーちゃんの料理が一番にゃ!」
「うん、シロもそう思う」
と、他のみんなも口々に私へ言葉をかけてくれたんです。
「あ、ありがとうございます」
皆さんにお礼を述べた私なのですが……なんだか嬉しいような恥ずかしいような……思わず頬を赤らめてしまった次第です、はい。
こうして、私達は温泉での昼食を心ゆくまで満喫いたしました。
◇◇
その後……
一休みしてから再度温泉を満喫した私達は、夕方には宿を後にいたしました。
バテアさんの転移魔法で、辺境都市トツノコンベにあるバテアさんの巨木の家へと戻った私達。
「さわこ、なんだったら晩ご飯も食べて帰ればよかったのに」
バテアさんがそう言ってくださったのですが、
「いえいえ、私に作らせてくださいな。今日は無性に作らせて頂きたい気持ちなんです」
私は、笑顔でそうお応えいたしました。
みんなに、
『さわこの料理が一番』
そう言ってもらえて、とても嬉しかったものですから、今夜はぜひとも私の食事を食べてもらいたい……心のそこからそう思った次第なんです。
私は、バテアさんに返事を返すと、その足で居酒屋さわこさんの厨房へと移動していきました。
その後を、ベル達が追いかけてきます。
「さーちゃん、お手伝いするニャ!」
「さわこ、私も手伝うわ!」
「シロもお手伝いする!」
「うむ、妾も手伝うのじゃ!」
みんな笑顔でそう言ってくれています。
そんなみんなを振り返りながら、私も思わず笑顔になっていました。
「じゃあ、みんなで晩ご飯をつくりましょうか」
「「「「うん!」」」」
私は、おチビさんチームの面々と手をつなぎながら厨房へと移動していきました。
ポロロン♪
そんな居酒屋さわこさんの店内に、ミリーネアさんのハープの音色が優しく響いています。
今日の出来事を早速歌になさっているようですね。
バテアさんとリンシンさんは、早くも酒盛りをはじめておいでです。
今日は定休日の居酒屋さわこさんですが、その店内には楽しげな声が響き続けていました。
ーつづく
一方、ベルを中心にしたおチビさんチームは温泉の中を楽しそうに泳ぎ回っていました。
この温泉では、こういう行為が許可されていますので、安心してみていられます。
ただ、おチビさんチームのみんなに万が一ということがあってはいけませんので、大人組はみんなお酒は控えめにしています。
それでも、ほんわか楽しい一時をすごせました。
◇◇
温泉を満喫した私達は、その足で大部屋へと戻りました。
「お部屋が広いニャ!」
「ホントに広いわ!」
「広い~!」
「広いのじゃあ!」
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんの4人は、部屋に入るなり床の上に寝転がっていきました。
この大部屋の床は、私の世界の畳によく似た物が敷き詰められていますので、直接横になっても問題ありません。
その上をゴロゴロ転がっている4人。
「ホントに、おチビさんチームはみんな元気ねぇ」
「そうですね。見ていて元気をもらえると言いますか……」
私とバテアさんは、笑顔でそんな会話を交わしていたのですが……
「……あ、あら? ちょっとまたミリーネアがいないじゃないの!?」
と、ミリーネアさん不在に気がついたバテアさんが、慌てて部屋を飛び出していきました。
ちなみに、この時のミリーネアさんは部屋に戻る途中にあった売店にフラフラっと立ち寄っていた模様です。
吟遊詩人ゆえに、好奇心応戦なミリーネアさんなのですが……時折こうしてフラフラっと姿を消すのだけは、ちょっと勘弁して頂きたいと思うのですが……
「あのね……おもしろい物がいっぱいだった」
バテアさんに横抱きに抱えられて連れ戻されたにもかかわらず、すっごく嬉しそうな笑顔を浮かべているミリーネアさんのお姿を拝見していると、
「もう、ミリーネアさんったら」
苦笑することしか出来なくなってしまう私達なのでした。
◇◇
程なくして、部屋に昼食が運ばれてきました。
お膳にのせられている料理は、
お肉の炒め物
野菜の煮物
山菜の天ぷら
ご飯
お椀
以上の5品。
ご飯は豆ご飯になっていました。
「うわ!? すごいわね、このお肉タテガミライオンじゃない!?」
早速そのお肉を口になさったバテアさんが目を丸くなさっていました。
私も、そのお肉を口にしてみたのですが……間違いありません、この肉感、肉汁の味……タテガミライオンのお肉です。
タテガミライオンのお肉は、私の世界で例えますとA5にランクされるこの世界最高峰のお肉といっても過言ではありません。
……しかし、あれですね……肉汁を使ってステーキソース風にしているのはわかるのですが、隠し味として一品加えられている気がするといいますか……なんでしょう、お醤油のような味がする気がするのですが……おかしいですね、この世界にはお醤油は流通していないはずなのですが……
「さわこ、何、難しい顔してるのよ。せっかくの温泉なんだし、たまには仕事を忘れて満喫なさいって」
「え?わ、私そんなに難しい顔、してましたか?」
「うん、さーちゃんすごく難しい顔してたニャ!」
バテアさんさんに言われてびっくりしていると、横に座っているベルが大きく相づちをうちました。
いけませんね。職業病といいますか、美味しい物を口にするとついついその味を分析しようとする癖が身についてしまっているようです。
せめて、回りのみんなが気を使わない程度にとどめておきませんと……
そんなわけで、私は改めて食事を口に運んでいきました。
今度は、満面の笑顔で。
「そうそう、そうこなくっちゃ」
バテアさんが笑顔で私にお酌してくださいました。
「そうですね、せっかくの上げ膳据え膳なんですし」
私は、笑顔でコップを差し出していきました。
リンシンさんの横に座ってご飯を食べているシロは、
「……美味しいね」
そう言っては、リンシンさんを笑顔で見つめています。
そんなシロに、リンシンさんも、
「……うん、美味しい」
笑顔でそう言いながら、笑顔を返しています。
なんだか、ほっこりした光景で、こちらまで癒やされます。
エンジェさんとロッサさんは、
「まぁ、これも美味しいわね」
「うむ、確かに美味しいのじゃ」
2人して、同じ物を口に運んでは、お互いに感想を述べ合っています。
2人とも小柄なものですからおチビさんチームに分類されていますけれども、実年齢で言えば私の何十倍も年上ですしね、何かと気も合うみたいです。
そんな感じで、楽しそうに食事をしているお2人なのですが……不意に私へと視線を向けると、
「でも、さわこの料理の方が美味しいわ」
「うむ、さわこの料理の方が好みなのじゃ」
2人はそう言うと、にっこり微笑んでくれました。
すると、
「そんなの当然じゃない」
「……うん、さわこの料理、最高」
「……私も、さわこの料理、好き。いくらでも歌えそう」
「さーちゃんの料理が一番にゃ!」
「うん、シロもそう思う」
と、他のみんなも口々に私へ言葉をかけてくれたんです。
「あ、ありがとうございます」
皆さんにお礼を述べた私なのですが……なんだか嬉しいような恥ずかしいような……思わず頬を赤らめてしまった次第です、はい。
こうして、私達は温泉での昼食を心ゆくまで満喫いたしました。
◇◇
その後……
一休みしてから再度温泉を満喫した私達は、夕方には宿を後にいたしました。
バテアさんの転移魔法で、辺境都市トツノコンベにあるバテアさんの巨木の家へと戻った私達。
「さわこ、なんだったら晩ご飯も食べて帰ればよかったのに」
バテアさんがそう言ってくださったのですが、
「いえいえ、私に作らせてくださいな。今日は無性に作らせて頂きたい気持ちなんです」
私は、笑顔でそうお応えいたしました。
みんなに、
『さわこの料理が一番』
そう言ってもらえて、とても嬉しかったものですから、今夜はぜひとも私の食事を食べてもらいたい……心のそこからそう思った次第なんです。
私は、バテアさんに返事を返すと、その足で居酒屋さわこさんの厨房へと移動していきました。
その後を、ベル達が追いかけてきます。
「さーちゃん、お手伝いするニャ!」
「さわこ、私も手伝うわ!」
「シロもお手伝いする!」
「うむ、妾も手伝うのじゃ!」
みんな笑顔でそう言ってくれています。
そんなみんなを振り返りながら、私も思わず笑顔になっていました。
「じゃあ、みんなで晩ご飯をつくりましょうか」
「「「「うん!」」」」
私は、おチビさんチームの面々と手をつなぎながら厨房へと移動していきました。
ポロロン♪
そんな居酒屋さわこさんの店内に、ミリーネアさんのハープの音色が優しく響いています。
今日の出来事を早速歌になさっているようですね。
バテアさんとリンシンさんは、早くも酒盛りをはじめておいでです。
今日は定休日の居酒屋さわこさんですが、その店内には楽しげな声が響き続けていました。
ーつづく
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,675
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。