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さわこさんと、温泉 その2
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本日はこの世界の週末で休日です。
それに合わせて、居酒屋さわこさんもお休みしております。
それにあわせて、今日の私達は少しお出かけしております。
私達が住んでいる辺境都市トツノコンベより西方にございます、オザリーナ村という村へやってきているんです。
「ここはオザリーナ温泉郷って言われてるのよね」
街中を歩きながら、バテアさんが説明してくださっています。
出来たのは最近なのだそうですが、結構多くのお客様は街道を行き来なさっています。
そんな街道の右寄りを私達は歩いていました。
このオザリーナ村には、近くの辺境都市から定期駅馬車が出ていたり、定期魔道船という、空を飛ぶ船が周航しているそうなんです。
残念ながら、今のところ見えていないのですが、帰るまでに一度くらいは見てみたいものです。
そんな事を考えている私の右手をベルが握っています。
左手はエンジェさん。
シロはリンシンさんに肩車してもらってとっても嬉しそうです。
ロッサさんは、エンジェさんの後ろを歩いていまして、時折楽しそうに会話を交わしています。
おチビさんチームに咥えて、大人チームは、私、バテアさん、リンシンさん、ミリーネアさんの4名が同伴しているのですが……
「あ、あら? またミリーネアさんが……」
「まったく、あの吟遊詩人だけはぁ」
そんな感じで……少し目を離すとすぐにミリーネアさんがどこかへ行ってしまうんです。
吟遊詩人のミリーネアさんは、珍しいものがあるとそれを見に行ってしまうんです。
それを調べて歌の題材になさろうとしているわけでして、一種の職業病のような物なのでしょうけれども……同行している私達的にはちょっとかなわないと言いますか……
「まぁ、ミリーネアも、今まで一人であちこちの都市を旅してたわけだし、危険回避の術は身につけているとは思うんだけど……こっちに心配かけるのはたいがいにしてほしいわね」
バテアさんは、苦笑しながら右手を前にかざしておられます。
おそらく、何か魔法を使用してミリーネアさんを探しておられるのでしょう。
……なんといいますか、ミリーネアさんもすっかり家族の一員ですものね。
◇◇
バテアさんの魔法で発見出来たミリーネアさんは、踊り子酒場にいました。
この踊り子酒場は、踊り子のシャラさんと吟遊詩人のレイレイさんという二人の女性が中心になって経営している酒場なのだそうです。
青い肌で、少々露出が大目の衣装を身につけているレイレイさんと色々話し込んでいたミリーネアさん。
そこは同じ吟遊詩人ってことで、情報交換などをなさっていたようです。
いつものように、私達がその姿を発見すると、
「……どうしたの? ……そんなに慌てて」
と、きょとんとなさった様子のミリーネアさん。
ご自分が迷子になったという自覚はまったくないご様子です。
「まったくもう……ミリーネアってば」
「まぁでも、ミリーネアさんらしいといえばらしいわけですし」
私とバテアさんは、そんな会話を交わしながら苦笑していた次第です。
◇◇
ミリーネアさんと合流した私達は、その足で温泉宿へと出向きました。
と、言いましても、この踊り子酒場のすぐ向かいが温泉宿でしたので、そんなに移動する必要はありませんでした。
「よかったら、アタシ達の踊りも見ていってねぇ」
シャラさんとレイレイさんをはじめとした踊り子酒場の皆さんに見送られながら、私達は温泉宿へと入っていきました。
宿はこじんまりとした作りですが、このオザリーナ村の中では間違いなく一番大きな建物です。
5階建ての石造りのこの建物ですが、ルア工房という会社が建てたようですね。
受付の横に、そんなプレートが貼られていました。
その後、予約していた大部屋へと移動して、そこで荷物を置いた私達は早速大浴場へと移動していきました。
「温泉ニャ!」
「温泉ね!」
「温泉~!」
「温泉なのじゃ!」
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんが嬉しそうに廊下を駆けていきます。
「4人とも、走ったら危ないですよ、他のお客様の迷惑になりますから」
私がそう言うと、4人は、
「「「「はーい!」」」」」
と、元気に返事をしながら私の周囲に集まってくれました。
「ふふ……まるでさわこがお母さんみたいね」
そんな私達を見つめながら、バテアさんが笑っておられます。
そんなバテアさんに、私は
「あの……せめてお姉さんってわけにはいかないのでしょうか?」
苦笑しながらそうお返事を返しました。
大浴場は、温泉宿の最上階にありました。
壁面の多くが大きな窓ガラスになっていまして、周囲の景色を展望することが出来る仕組みになっています。
一見すると、向こうからも丸見えなんじゃ……と、思えてしまうのですが、
「これ、魔法ガラスね。向こうから中の様子は見えないようになっているから安心していいわ」
そう言うと、バテアさんは窓際に腰掛けて、足だけ湯船につけていかれました。
その体をまったく隠そうとしていないバテアさんですけど……それもそうですよね、あれだけナイスバディでしたら隠す必要もありません……
まぁ……私の場合は隠す必要があるバディですので、タオルで前面をしっかり隠しているのですが……
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんの4人は、嬉しそうに温泉に入って、湯船の中を歩き回っています。
この大浴場にはいくつかお風呂がありまして、一番大きなお風呂は、真ん中当たりが深めになっているんです。
おチビさんチームは、足が付かない深い部分を泳いで渡っているのですが
「ニャはは! たのし~い!」
「これは……なかなか面白いわ!」
「うわ……泳ぐの苦手……」
「ほれシロ、こうするのじゃ」
みんなして楽しそうに泳いでいます。
この一番大きなお風呂は、小さい子供のみ泳ぐことが許可されていますので、私はみんなが溺れないように見ている感じです。
……しかし、あれですね……子供と銘打たれているわけですけど、厳密に言うと私よりも年上のエンジェさんとロッサさんが加わっているのは如何な物かと、少し悩んでしまうのですが……
「って……いつの間にか、ミリーネアさんまでみんなと一緒に泳いで……」
そうなんです……体格的にはおチビさんチームのみんなより少し大きめなものの、体型的にはおチビさんチームと遜色ないミリーネアさんだけに、違和感がまったくないのですが……
「まぁ、いいじゃないさわこ。体格的に問題ないって」
「そ、そうですかね……」
「それよりも、さ、こっちに来て一杯やりなさいな」
バテアさんは、いつの間にかお酒を片手に酒盛りをはじめておいでです。
リンシンさんも、すぐ横でお酒を飲まれています。
「そうですね……集まって泳いでいますので、あまり周囲に迷惑はかけていないようですし……」
バテアさんの隣に移動した私は、お酒の入ったコップを受け取りました。
「この温泉宿の売店で売ってたお酒なんだけどさ、結構いけるのよ」
バテアさんがそう言われていたのですが……
「……ホントですね、美味しいです」
そのお酒は、純米酒のような味わいがしていました。
そのお酒を味わいながら、私達は時に窓の外の景色を、時に楽しそうにしているおチビさんチームの様子を見つめていました。
それに合わせて、居酒屋さわこさんもお休みしております。
それにあわせて、今日の私達は少しお出かけしております。
私達が住んでいる辺境都市トツノコンベより西方にございます、オザリーナ村という村へやってきているんです。
「ここはオザリーナ温泉郷って言われてるのよね」
街中を歩きながら、バテアさんが説明してくださっています。
出来たのは最近なのだそうですが、結構多くのお客様は街道を行き来なさっています。
そんな街道の右寄りを私達は歩いていました。
このオザリーナ村には、近くの辺境都市から定期駅馬車が出ていたり、定期魔道船という、空を飛ぶ船が周航しているそうなんです。
残念ながら、今のところ見えていないのですが、帰るまでに一度くらいは見てみたいものです。
そんな事を考えている私の右手をベルが握っています。
左手はエンジェさん。
シロはリンシンさんに肩車してもらってとっても嬉しそうです。
ロッサさんは、エンジェさんの後ろを歩いていまして、時折楽しそうに会話を交わしています。
おチビさんチームに咥えて、大人チームは、私、バテアさん、リンシンさん、ミリーネアさんの4名が同伴しているのですが……
「あ、あら? またミリーネアさんが……」
「まったく、あの吟遊詩人だけはぁ」
そんな感じで……少し目を離すとすぐにミリーネアさんがどこかへ行ってしまうんです。
吟遊詩人のミリーネアさんは、珍しいものがあるとそれを見に行ってしまうんです。
それを調べて歌の題材になさろうとしているわけでして、一種の職業病のような物なのでしょうけれども……同行している私達的にはちょっとかなわないと言いますか……
「まぁ、ミリーネアも、今まで一人であちこちの都市を旅してたわけだし、危険回避の術は身につけているとは思うんだけど……こっちに心配かけるのはたいがいにしてほしいわね」
バテアさんは、苦笑しながら右手を前にかざしておられます。
おそらく、何か魔法を使用してミリーネアさんを探しておられるのでしょう。
……なんといいますか、ミリーネアさんもすっかり家族の一員ですものね。
◇◇
バテアさんの魔法で発見出来たミリーネアさんは、踊り子酒場にいました。
この踊り子酒場は、踊り子のシャラさんと吟遊詩人のレイレイさんという二人の女性が中心になって経営している酒場なのだそうです。
青い肌で、少々露出が大目の衣装を身につけているレイレイさんと色々話し込んでいたミリーネアさん。
そこは同じ吟遊詩人ってことで、情報交換などをなさっていたようです。
いつものように、私達がその姿を発見すると、
「……どうしたの? ……そんなに慌てて」
と、きょとんとなさった様子のミリーネアさん。
ご自分が迷子になったという自覚はまったくないご様子です。
「まったくもう……ミリーネアってば」
「まぁでも、ミリーネアさんらしいといえばらしいわけですし」
私とバテアさんは、そんな会話を交わしながら苦笑していた次第です。
◇◇
ミリーネアさんと合流した私達は、その足で温泉宿へと出向きました。
と、言いましても、この踊り子酒場のすぐ向かいが温泉宿でしたので、そんなに移動する必要はありませんでした。
「よかったら、アタシ達の踊りも見ていってねぇ」
シャラさんとレイレイさんをはじめとした踊り子酒場の皆さんに見送られながら、私達は温泉宿へと入っていきました。
宿はこじんまりとした作りですが、このオザリーナ村の中では間違いなく一番大きな建物です。
5階建ての石造りのこの建物ですが、ルア工房という会社が建てたようですね。
受付の横に、そんなプレートが貼られていました。
その後、予約していた大部屋へと移動して、そこで荷物を置いた私達は早速大浴場へと移動していきました。
「温泉ニャ!」
「温泉ね!」
「温泉~!」
「温泉なのじゃ!」
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんが嬉しそうに廊下を駆けていきます。
「4人とも、走ったら危ないですよ、他のお客様の迷惑になりますから」
私がそう言うと、4人は、
「「「「はーい!」」」」」
と、元気に返事をしながら私の周囲に集まってくれました。
「ふふ……まるでさわこがお母さんみたいね」
そんな私達を見つめながら、バテアさんが笑っておられます。
そんなバテアさんに、私は
「あの……せめてお姉さんってわけにはいかないのでしょうか?」
苦笑しながらそうお返事を返しました。
大浴場は、温泉宿の最上階にありました。
壁面の多くが大きな窓ガラスになっていまして、周囲の景色を展望することが出来る仕組みになっています。
一見すると、向こうからも丸見えなんじゃ……と、思えてしまうのですが、
「これ、魔法ガラスね。向こうから中の様子は見えないようになっているから安心していいわ」
そう言うと、バテアさんは窓際に腰掛けて、足だけ湯船につけていかれました。
その体をまったく隠そうとしていないバテアさんですけど……それもそうですよね、あれだけナイスバディでしたら隠す必要もありません……
まぁ……私の場合は隠す必要があるバディですので、タオルで前面をしっかり隠しているのですが……
ベル・エンジェさん・シロ・ロッサさんの4人は、嬉しそうに温泉に入って、湯船の中を歩き回っています。
この大浴場にはいくつかお風呂がありまして、一番大きなお風呂は、真ん中当たりが深めになっているんです。
おチビさんチームは、足が付かない深い部分を泳いで渡っているのですが
「ニャはは! たのし~い!」
「これは……なかなか面白いわ!」
「うわ……泳ぐの苦手……」
「ほれシロ、こうするのじゃ」
みんなして楽しそうに泳いでいます。
この一番大きなお風呂は、小さい子供のみ泳ぐことが許可されていますので、私はみんなが溺れないように見ている感じです。
……しかし、あれですね……子供と銘打たれているわけですけど、厳密に言うと私よりも年上のエンジェさんとロッサさんが加わっているのは如何な物かと、少し悩んでしまうのですが……
「って……いつの間にか、ミリーネアさんまでみんなと一緒に泳いで……」
そうなんです……体格的にはおチビさんチームのみんなより少し大きめなものの、体型的にはおチビさんチームと遜色ないミリーネアさんだけに、違和感がまったくないのですが……
「まぁ、いいじゃないさわこ。体格的に問題ないって」
「そ、そうですかね……」
「それよりも、さ、こっちに来て一杯やりなさいな」
バテアさんは、いつの間にかお酒を片手に酒盛りをはじめておいでです。
リンシンさんも、すぐ横でお酒を飲まれています。
「そうですね……集まって泳いでいますので、あまり周囲に迷惑はかけていないようですし……」
バテアさんの隣に移動した私は、お酒の入ったコップを受け取りました。
「この温泉宿の売店で売ってたお酒なんだけどさ、結構いけるのよ」
バテアさんがそう言われていたのですが……
「……ホントですね、美味しいです」
そのお酒は、純米酒のような味わいがしていました。
そのお酒を味わいながら、私達は時に窓の外の景色を、時に楽しそうにしているおチビさんチームの様子を見つめていました。
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