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もう世の中の役に立ってもいいじゃないですか
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なんで?
どうしてこんな事になってんの?
すんごく順調にいってたのに。
せっかく邪魔者も追い出して、ウィリアム様とステップアップする寸前まで言ったのに。
確かあの時、
突然何かが爆発したような感じになって……
どうやらそのまま気絶したようね。
でもどうしてアタシってば
こんな牢に閉じ込められてんの?
なんか手錠みたいなのも嵌められてるし。
え?魔法が使えない?なんで?
ここは城の中?
ウィリアム様はどこにいるの?
わけが分からずウロウロしていたその時、
牢の頑強な扉が嫌な音を立てて開いた。
「……!」
そこにいたのはまさに女神!っていうくらい綺麗な人だった。
ドレスも素敵。
絶対高級品だわ。
でもなんで帯剣してるの?
変な人、と思いながら見ていたら、
その人が急に話出した。
「はじめましてご機嫌よう
フェリシアの母でございます。気が付かれましたのね」
フェリシア様のママ!?
嘘、全然似てないじゃない!!
フェリシア様ってパパ似だったのねー。
ウケる。
なんて内心考えながら、
アタシは淑女らしく覚えたてカーテシーをした。
「はじめましてフェリシアママ。癒しの乙女、リリナと申しますぅ」
「カーテシーの膝を曲げる角度がなっちゃいませんわね、落第点ですわ」
ムカッ
「すみませぇぇん、ウィリアム様の癒しのお仕事が忙しくてぇ、なかなかマナーレッスンが受けられなかったんですぅ」
アンタの娘と違って、
アタシはウィリアム様に必要とされているのよ?だからそんな暇はないの。と嫌味を含ませて言ってやった。
「王子にくっついてるだけの簡単なお仕事、ですのにねぇ。マダニでも出来ますわ。ああでも貴女にピッタリね、血の代わりに魔力と金品を吸い上げて。子種を吸い上げられなかったのは残念でしたわね」
完璧な笑顔を浮かべながらフェリママが言った。
何よ、なんなのよこの人。
こんなに優しそうで信じられないくらい綺麗なのに、口から出てくる言葉はえげつないわ。
「……ウィリアム様はどこですか?アタシがこんな目に遭ってるなんて知ったら、きっと激怒するわ」
「王子はもう貴女とは会いません」
「は?何で?もう後任の子が来たの?それでも関係ないわよ、アタシはウィリアム様の特別なんだから!」
「……魅了を掛けたものね。中~途半端にしか掛からなかったけれど」
「!!」
「バレないと思ったの?気付かれないと?貴女、周りをバカにし過ぎですわよ。確かにかなりの実力者だとは思うけれど、貴女より上位の魔術師は五万といるのよ」
……バレた。バレていた。
アタシがウィリアム様に魅了を掛けていたことを。
え、確か王族に魔法を掛けた者って死刑だったわよね?
ウソ、アタシ、死刑になるの!?
教会は……ダメだ、アイツらは自分の事しか考えない。
アタシは段々と自分から血の気が引くのを感じていた。
なんとか……なんとか助かる方法を…!
「ねぇフェリシアママ、助けてよ?アタシ、教会のヤツらの秘密を結構掴んでるのよねー。なんでも話すからさ、その代わりアタシは見逃してよ」
アタシの言葉を聞いて、
フェリママはふっと笑った。
お、かかった?
でもその微笑みはさっきまでみたいな柔らかい感じじゃなくて、
なんというかとっても冷たいものだった。
蔑み?みたいなものも混じっているような……。
「ごめんなさい、そんなものは要らないの。だってもう教会幹部の糞どもは私がぶっ潰したから……アラ失礼、口が悪くて。どうも騎士団時代に覚えたものが不意に口から出てしまうのよねぇ」
え?教会のヤツらを、ぶっ潰した?
それって絶体絶命ってやつ……?
アタシに退路はもうないって事?
ますます顔色を悪くしているであろうアタシを見て、フェリママは言った。
「貴女のその力、正しく使っていれば、どれだけの人の役に立ったのでしょうね」
「アタシの力はアタシだけのものよ!なんで他人のために使わなきゃならないのよ!」
「今からでも遅くはないわ。刑の執行まで時間はあるもの。たっぷり、世の中にご奉仕してゆきましょうね」
これ以上ないくらいに眩しい笑顔でフェリママが言う。
え?ご奉仕?なんのこと?
「この世界には無駄に魔力を宿してしまったり、悪意をもって魔力を込められてしまった物やイキモノが沢山いるのよ。貴女の癒しの力でその魔力を吸収して昇華しちゃって頂戴♪」
「な、なんでアタシがそんな事しなきゃいけないの!?」
「だってこれも罰の一環ですもの。死刑は倫理的にも一瞬で終わる。私自身の考えとしては、それでは罰になり難いと思っていますの。だからどうせなら、世の中の役に立ちながら、永い時間をかけて償いなさいな。貴女次第で、私は減刑も願い出るつもりよ」
「……そんなこと……!」
楽をしたいから、
自分だけが美味しい汁を吸いたいから、
今までウィリアム様に限らず他にも心に触れる魔法をかけてきた。
世の中なんてどうでもいい。
他人なんてどうでもいい。
それなのになんでこんな事に?
「……最初は強制されてする事も、永い時間をかければかけがえのないライフワークになるかもしれないわよ?」
「何をわけの分からない事をっ」
「ふふ。私、ほんの少しだけそうなる未来を信じてみたいのよ。だから見届けさせてもらいますわね。あ、ちなみに逃げようとしたり、また他人を利用しようとしたら、刑の執行は私が行いますからね」
いやだ寒気が……
フェリママってば笑ってるだけなのに
なんでこんなに冷たい汗が流れてくるの?
「とりあえず、貴女はくっつくのがお好きなようだから、魔力障害の巨大牛の癒し作業をして貰うわね。簡単よ、貴女が以前からしている、四六時中体を密着させて余剰魔力を吸っていればいいのだから。それではよろしくね」
そう言い残して、
フェリママは牢から出て行った。
ちょっ……待って?
巨大牛!?
四六時中!?
「ちょまっ……イヤよイヤ!
かんべんしてよ、誰か助けてーー!」
「ウィリアム様ぁぁ!」
「もう誰でもいいからーー!!」
この日、
アタシの雄叫びは
牢のある拘置所の1キロ先まで響いていたそうだ……。
どうしてこんな事になってんの?
すんごく順調にいってたのに。
せっかく邪魔者も追い出して、ウィリアム様とステップアップする寸前まで言ったのに。
確かあの時、
突然何かが爆発したような感じになって……
どうやらそのまま気絶したようね。
でもどうしてアタシってば
こんな牢に閉じ込められてんの?
なんか手錠みたいなのも嵌められてるし。
え?魔法が使えない?なんで?
ここは城の中?
ウィリアム様はどこにいるの?
わけが分からずウロウロしていたその時、
牢の頑強な扉が嫌な音を立てて開いた。
「……!」
そこにいたのはまさに女神!っていうくらい綺麗な人だった。
ドレスも素敵。
絶対高級品だわ。
でもなんで帯剣してるの?
変な人、と思いながら見ていたら、
その人が急に話出した。
「はじめましてご機嫌よう
フェリシアの母でございます。気が付かれましたのね」
フェリシア様のママ!?
嘘、全然似てないじゃない!!
フェリシア様ってパパ似だったのねー。
ウケる。
なんて内心考えながら、
アタシは淑女らしく覚えたてカーテシーをした。
「はじめましてフェリシアママ。癒しの乙女、リリナと申しますぅ」
「カーテシーの膝を曲げる角度がなっちゃいませんわね、落第点ですわ」
ムカッ
「すみませぇぇん、ウィリアム様の癒しのお仕事が忙しくてぇ、なかなかマナーレッスンが受けられなかったんですぅ」
アンタの娘と違って、
アタシはウィリアム様に必要とされているのよ?だからそんな暇はないの。と嫌味を含ませて言ってやった。
「王子にくっついてるだけの簡単なお仕事、ですのにねぇ。マダニでも出来ますわ。ああでも貴女にピッタリね、血の代わりに魔力と金品を吸い上げて。子種を吸い上げられなかったのは残念でしたわね」
完璧な笑顔を浮かべながらフェリママが言った。
何よ、なんなのよこの人。
こんなに優しそうで信じられないくらい綺麗なのに、口から出てくる言葉はえげつないわ。
「……ウィリアム様はどこですか?アタシがこんな目に遭ってるなんて知ったら、きっと激怒するわ」
「王子はもう貴女とは会いません」
「は?何で?もう後任の子が来たの?それでも関係ないわよ、アタシはウィリアム様の特別なんだから!」
「……魅了を掛けたものね。中~途半端にしか掛からなかったけれど」
「!!」
「バレないと思ったの?気付かれないと?貴女、周りをバカにし過ぎですわよ。確かにかなりの実力者だとは思うけれど、貴女より上位の魔術師は五万といるのよ」
……バレた。バレていた。
アタシがウィリアム様に魅了を掛けていたことを。
え、確か王族に魔法を掛けた者って死刑だったわよね?
ウソ、アタシ、死刑になるの!?
教会は……ダメだ、アイツらは自分の事しか考えない。
アタシは段々と自分から血の気が引くのを感じていた。
なんとか……なんとか助かる方法を…!
「ねぇフェリシアママ、助けてよ?アタシ、教会のヤツらの秘密を結構掴んでるのよねー。なんでも話すからさ、その代わりアタシは見逃してよ」
アタシの言葉を聞いて、
フェリママはふっと笑った。
お、かかった?
でもその微笑みはさっきまでみたいな柔らかい感じじゃなくて、
なんというかとっても冷たいものだった。
蔑み?みたいなものも混じっているような……。
「ごめんなさい、そんなものは要らないの。だってもう教会幹部の糞どもは私がぶっ潰したから……アラ失礼、口が悪くて。どうも騎士団時代に覚えたものが不意に口から出てしまうのよねぇ」
え?教会のヤツらを、ぶっ潰した?
それって絶体絶命ってやつ……?
アタシに退路はもうないって事?
ますます顔色を悪くしているであろうアタシを見て、フェリママは言った。
「貴女のその力、正しく使っていれば、どれだけの人の役に立ったのでしょうね」
「アタシの力はアタシだけのものよ!なんで他人のために使わなきゃならないのよ!」
「今からでも遅くはないわ。刑の執行まで時間はあるもの。たっぷり、世の中にご奉仕してゆきましょうね」
これ以上ないくらいに眩しい笑顔でフェリママが言う。
え?ご奉仕?なんのこと?
「この世界には無駄に魔力を宿してしまったり、悪意をもって魔力を込められてしまった物やイキモノが沢山いるのよ。貴女の癒しの力でその魔力を吸収して昇華しちゃって頂戴♪」
「な、なんでアタシがそんな事しなきゃいけないの!?」
「だってこれも罰の一環ですもの。死刑は倫理的にも一瞬で終わる。私自身の考えとしては、それでは罰になり難いと思っていますの。だからどうせなら、世の中の役に立ちながら、永い時間をかけて償いなさいな。貴女次第で、私は減刑も願い出るつもりよ」
「……そんなこと……!」
楽をしたいから、
自分だけが美味しい汁を吸いたいから、
今までウィリアム様に限らず他にも心に触れる魔法をかけてきた。
世の中なんてどうでもいい。
他人なんてどうでもいい。
それなのになんでこんな事に?
「……最初は強制されてする事も、永い時間をかければかけがえのないライフワークになるかもしれないわよ?」
「何をわけの分からない事をっ」
「ふふ。私、ほんの少しだけそうなる未来を信じてみたいのよ。だから見届けさせてもらいますわね。あ、ちなみに逃げようとしたり、また他人を利用しようとしたら、刑の執行は私が行いますからね」
いやだ寒気が……
フェリママってば笑ってるだけなのに
なんでこんなに冷たい汗が流れてくるの?
「とりあえず、貴女はくっつくのがお好きなようだから、魔力障害の巨大牛の癒し作業をして貰うわね。簡単よ、貴女が以前からしている、四六時中体を密着させて余剰魔力を吸っていればいいのだから。それではよろしくね」
そう言い残して、
フェリママは牢から出て行った。
ちょっ……待って?
巨大牛!?
四六時中!?
「ちょまっ……イヤよイヤ!
かんべんしてよ、誰か助けてーー!」
「ウィリアム様ぁぁ!」
「もう誰でもいいからーー!!」
この日、
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