17 / 22
本筋に大いに関係ある挿話 あの日のフェリシティ
しおりを挟む
フェリシアとの婚約が解消となったと聞いて、ウィリアム王子は突然倒れた。
いきなり、私の目の前で意識がブラックアウトする感じでしたわ。
哀れな……もちろん自業自得という気持ちが大幅に占めているけれど、
幼い頃から知っている甥のこういう姿は出来れば見たくなかったわね。
ウィリアム王子が自室に運ばれると、
私は王太子アルバートに申し出ましたの。
「さて、王太子殿下はこの娘をどうなさるおつもり?」
そう言いながら、
私は小娘の後ろ襟を掴んで引き上げました。
「どうなさるも何も、牢に入れて裁判にかけます」
「魅了魔法を用いるような危険人物よ」
「もちろん、魔力封じの手錠をかけますよ。あれをすると手錠が魔力を吸い取り、魔法が使えなくなる」
「……ねぇ、お願いがございますの」
「なんですか?……怖いですね」
「この小娘、私に預からせて貰えないかしら?」
「なんですって?何故そんな事を?」
「可愛い娘とアホでも可愛い甥がお世話になったのですもの。お預かりして、丁重におもてなしがしたいわ」
「………で?本当のところは?」
「可愛くないわね、裁判の手続きを待つ間、裁判中、判決後の刑の執行までの日々、遊ばせておくには勿体ないわよね」
「法に触れるような事は許可出来ません」
「いやね、そんな事するはずありませんわ。私の立場をわかってらっしゃる?王妹であり、侯爵夫人ですのよ。小娘が持ってる力を、正しく世の為に活かすだけですわ」
「……………………。」
「熟考ね」
「……わかりました。いいでしょう」
「ありがとう、それからもう一つ」
「まだあるのですか?」
「いいじゃないの、お国のために働いたのだから、このくらい我儘聞いてもらってもバチは当たりませんわ」
「内容によります」
「……王太子殿下、貴方はそう遠くない将来、この国の王となる覚悟はありますか?」
「!……そう遠くない将来とはどの位ですか?」
「少なくとも2年以内には」
「…………。」
「現国王には退位していただきます。もうこれ以上、政治に無関心な王を頂きに据え続けるわけにはいきません。以前までなら『時期尚早』とかなんとか言って教会が横槍を入れてきたと思うのだけど、もうそれも無くなった。アルバート、あなたにこの国の全てを背負ってゆく覚悟はありますか?我が身が八つ裂きになろうとも、国民のために血の涙を流し続ける覚悟はありますか?」
「無論のこと」
「わかりました。では私はお兄様のお見舞いにでも行きましょう。ふふ、久しぶりに兄妹水入らずで楽しい時間を過ごして参りますわね」
「………お手柔らかに」
「ふふふ」
「本当にですよ?」
「ふふふふふ」
「叔母上?」
こうして私は
お兄様を見舞うために国王の自室へと向かいましたの。
お兄様が即位されて早いもので20年。
音楽や芸術など
文化面にばかり力を注ぎ、
難しい政には無関心であったお兄様。
何度お諌めしても
聞いてはくださらなかった。
今や内政も外交も全て王太子任せ。
その後継者も育った今、
いつまでも玉座に座らせておくわけには参りませんわ。
まぁきっと、
もう楽が出来ると喜んで玉座を引き渡すでしょうけれど。
教会関係者と癒着していた分は、しっかりお仕置きをせねばなりませんわね。
さぁお兄様、お覚悟を。
それから数日後、
現国王が退位し、
王太子アルバートが新国王に就く事が
正式に発表された。
いきなり、私の目の前で意識がブラックアウトする感じでしたわ。
哀れな……もちろん自業自得という気持ちが大幅に占めているけれど、
幼い頃から知っている甥のこういう姿は出来れば見たくなかったわね。
ウィリアム王子が自室に運ばれると、
私は王太子アルバートに申し出ましたの。
「さて、王太子殿下はこの娘をどうなさるおつもり?」
そう言いながら、
私は小娘の後ろ襟を掴んで引き上げました。
「どうなさるも何も、牢に入れて裁判にかけます」
「魅了魔法を用いるような危険人物よ」
「もちろん、魔力封じの手錠をかけますよ。あれをすると手錠が魔力を吸い取り、魔法が使えなくなる」
「……ねぇ、お願いがございますの」
「なんですか?……怖いですね」
「この小娘、私に預からせて貰えないかしら?」
「なんですって?何故そんな事を?」
「可愛い娘とアホでも可愛い甥がお世話になったのですもの。お預かりして、丁重におもてなしがしたいわ」
「………で?本当のところは?」
「可愛くないわね、裁判の手続きを待つ間、裁判中、判決後の刑の執行までの日々、遊ばせておくには勿体ないわよね」
「法に触れるような事は許可出来ません」
「いやね、そんな事するはずありませんわ。私の立場をわかってらっしゃる?王妹であり、侯爵夫人ですのよ。小娘が持ってる力を、正しく世の為に活かすだけですわ」
「……………………。」
「熟考ね」
「……わかりました。いいでしょう」
「ありがとう、それからもう一つ」
「まだあるのですか?」
「いいじゃないの、お国のために働いたのだから、このくらい我儘聞いてもらってもバチは当たりませんわ」
「内容によります」
「……王太子殿下、貴方はそう遠くない将来、この国の王となる覚悟はありますか?」
「!……そう遠くない将来とはどの位ですか?」
「少なくとも2年以内には」
「…………。」
「現国王には退位していただきます。もうこれ以上、政治に無関心な王を頂きに据え続けるわけにはいきません。以前までなら『時期尚早』とかなんとか言って教会が横槍を入れてきたと思うのだけど、もうそれも無くなった。アルバート、あなたにこの国の全てを背負ってゆく覚悟はありますか?我が身が八つ裂きになろうとも、国民のために血の涙を流し続ける覚悟はありますか?」
「無論のこと」
「わかりました。では私はお兄様のお見舞いにでも行きましょう。ふふ、久しぶりに兄妹水入らずで楽しい時間を過ごして参りますわね」
「………お手柔らかに」
「ふふふ」
「本当にですよ?」
「ふふふふふ」
「叔母上?」
こうして私は
お兄様を見舞うために国王の自室へと向かいましたの。
お兄様が即位されて早いもので20年。
音楽や芸術など
文化面にばかり力を注ぎ、
難しい政には無関心であったお兄様。
何度お諌めしても
聞いてはくださらなかった。
今や内政も外交も全て王太子任せ。
その後継者も育った今、
いつまでも玉座に座らせておくわけには参りませんわ。
まぁきっと、
もう楽が出来ると喜んで玉座を引き渡すでしょうけれど。
教会関係者と癒着していた分は、しっかりお仕置きをせねばなりませんわね。
さぁお兄様、お覚悟を。
それから数日後、
現国王が退位し、
王太子アルバートが新国王に就く事が
正式に発表された。
313
お気に入りに追加
6,392
あなたにおすすめの小説

私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

二度目の恋
豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。
王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。
満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。
※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

愛される日は来ないので
豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。
──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。



竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

彼女は彼の運命の人
豆狸
恋愛
「デホタに謝ってくれ、エマ」
「なにをでしょう?」
「この数ヶ月、デホタに嫌がらせをしていたことだ」
「謝ってくだされば、アタシは恨んだりしません」
「デホタは優しいな」
「私がデホタ様に嫌がらせをしてたんですって。あなた、知っていた?」
「存じませんでしたが、それは不可能でしょう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる