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もうわたしが心配しなくてもいいじゃないですか
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たくさん泣いて互いにスッキリしたわたしと王妃様は引き続きお茶会を楽しんでいた。
優雅な仕草でお茶を飲みながら
王妃様が言った。
「それにしてもあのリリナという娘、やたらと鼻につくのよねぇ。せめて野心家でなければ良かったのに……。ウィリアムは何を考えているのかしら」
「よほど魔力の相性が良いのでしょう。だって近頃の殿下、本当に調子が良さそうですから。まるで昔に戻ったみたいに」
そう、だからこそ殿下は彼女を必要としているのだ。
リリナ様とベタベタするのも
彼にしてみれば医療行為となんら変わらないのかもしれない。
リリナ様とわたしの感情はそうではないけれど。
でももういいのだ。
だからお別れするのだ。
殿下の体調が良いのなら、
無理にリリナ様と引き離す事はしなくていい。
わたしが去ればいいだけの事。
胸が抉られるように痛いけど、きっと時間が癒してくれる。
そう信じてる。
「ところでフェリシアちゃん、私に黙って見ていればいいと言っていたけれど、貴女は何をするつもりなの?」
「何も」
「え、何も?」
「はい、何もです。
わたしはわたしの事以外、何もしません」
わたしがティーカップをソーサーに戻しながら言うと、
王妃様は「あぁ、なるほど」とだけ言った。
やはり王妃様は凄い。
今の言葉だけでわたしの今後の行動を理解されたようだ。
この素晴らしい方が殿下の次の婚約者を選んでくださるなら、
きっと殿下は大丈夫。
万全な体調と内助の功で、ますますご活躍されるに違いない。
もうわたしが心配する必要はない。
わたしは深く安堵した。
なんだかお節介おばさんみたいだなと心の中でわたしは笑った。
優雅な仕草でお茶を飲みながら
王妃様が言った。
「それにしてもあのリリナという娘、やたらと鼻につくのよねぇ。せめて野心家でなければ良かったのに……。ウィリアムは何を考えているのかしら」
「よほど魔力の相性が良いのでしょう。だって近頃の殿下、本当に調子が良さそうですから。まるで昔に戻ったみたいに」
そう、だからこそ殿下は彼女を必要としているのだ。
リリナ様とベタベタするのも
彼にしてみれば医療行為となんら変わらないのかもしれない。
リリナ様とわたしの感情はそうではないけれど。
でももういいのだ。
だからお別れするのだ。
殿下の体調が良いのなら、
無理にリリナ様と引き離す事はしなくていい。
わたしが去ればいいだけの事。
胸が抉られるように痛いけど、きっと時間が癒してくれる。
そう信じてる。
「ところでフェリシアちゃん、私に黙って見ていればいいと言っていたけれど、貴女は何をするつもりなの?」
「何も」
「え、何も?」
「はい、何もです。
わたしはわたしの事以外、何もしません」
わたしがティーカップをソーサーに戻しながら言うと、
王妃様は「あぁ、なるほど」とだけ言った。
やはり王妃様は凄い。
今の言葉だけでわたしの今後の行動を理解されたようだ。
この素晴らしい方が殿下の次の婚約者を選んでくださるなら、
きっと殿下は大丈夫。
万全な体調と内助の功で、ますますご活躍されるに違いない。
もうわたしが心配する必要はない。
わたしは深く安堵した。
なんだかお節介おばさんみたいだなと心の中でわたしは笑った。
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