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もう彼女でいいじゃないですか
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「もう彼女でいいじゃないですか」
わたしは目の前の婚約者にそう告げた。
わたしの婚約者はこの国の第二王子。
将来は実兄である王太子殿下を支えながら共に国政に携わってゆくのだと日々邁進している18歳のキラキラ王子。
キラキラというのは別に揶揄ではない。
艶めくプラチナブロンドに
深いグリーンアイズ。
傾国の美女もドレスの裾を掴んで逃げ出す程の美形だ。
色白で如何にも王子然としているのにもかかわらず弱々しく見えないのは、
彼が長身で均整の取れた筋肉を纏う恵まれた体躯だからだろう。
魔力保有量も凄まじく、何から何までハイスペックなまさにキラキラ王子の申し子のような方だ。
まぁ…ただちょっと、いやかなり?
執着心が強めの粘着質な性格をしているのが玉にキズだけど……。
対してわたしは平凡な侯爵家の平凡な容姿の平凡な末娘。
平凡なブラウンの髪と平凡な青い瞳。
まぁ強いて言えば趣味の魔道具(魔力を動力源に起動する道具)の発明が人よりちょっと上手いくらいかな?
そんな平凡の申し子のようなわたしと
キラキラ王子の婚約が結ばれたのは互いがまだ10歳の時だった。
王妃様主催のお茶会に母と出席したわたしに、キラキラ王子が一世一代の一目惚れをしたのだとか。
その日から昼夜問わず、
わたしに猛攻撃をしてくるキラキラ王子に互いの親が根負けして婚約を結ぶ運びとなった。
まぁ我が家は侯爵家で王家との家格の釣り合いも取れるし、
イトコ同士だけど年齢的にも丁度良いと思ったのだろう。
婚約してからもキラキラ王子のわたしへの執着心は凄まじく、
妃教育で王城に通っているうちにいつの間にか部屋が用意され、いつの間にか城暮らしとなっていた。
婚姻前なのに………いいのか?
毎日キラキラ王子に愛を呟かれ、愛を語られ、愛を叫ばれる。
8年経った今でも変わらずその日々は
続いていた。
……キラキラ王子が四六時中、
「癒しの乙女」を左腕にくっつけさせるようになる迄は……。
「キラキラ王子…じゃない、ウィリアム殿下。もはや婚約者はわたしじゃなくてもいいでしょう?
もう彼女でいいじゃないですか。どうかわたしとの婚約は解消して、彼女と婚約を結び直してくださいませ」
わたしがそう言うと、
殿下は持っていた花束を盛大に落とし、わなわなと震え出した。
「な、な、なっ……何をいきなり!?え、何!?どうしたのフェリシア!」
「どうしたもこうしたも、そしていきなりではありません。ずっと思案しておりました」
「ずっと?え、いつから?ずっと!?」
殿下は癒しの乙女がくっついていない方の手を額に当てながら狼狽えている。
「はい、新たな癒しの乙女様が殿下の左腕に装着されてからずーーーっと」
「なんか長くなってない!?」
「だってずーーーーーーっとですもの」
「更に長くなった!」
「だからその花束もわたしはもう受け取れません。今まで毎日戴いておりましたが、これからはその左腕の乙女様に差し上げてください」
「これは婚約者に贈る花束だ!」
「だから彼女を婚約者に据えて、彼女に花束を贈ってください」
「嫌だ!僕の婚約者はシア、キミだけだ!婚約解消なんて絶対にしない!」
左腕に他の女をぶら下げて何言ってんのコイツ。
淑女らしからぬ言葉で脳内にて毒吐く。
「わたしはもう決めたのです。今夜、陛下に婚約解消の申し出をします」
「ダメだ!絶対にダメ!!今夜父上は酷い腹痛になるからね!」
なんて不吉な予言(?)をするんだ。
夕食時に下剤でも盛るつもりなのか。
「ではどうしても解消したくないのなら癒しの乙女を別の方に交代してください」
「酷いフェリシア様!フェリシア様がアタシが嫌いなのは知ってましたけど酷過ぎます!アタシ……精一杯お勤めを果たしてますのにぃ……ウィリアム様ぁ…」
今までドヤ顔で殿下の腕に纏わり付いていた癒しの乙女ことリリナ様がいきなりメソメソモードに突入した。
わたしの発言のせいだとしても変わり身の早さに辟易とする。
いつの間にか名前呼びになってるし。
殿下はその涙に胸が痛んだのか悲しそうな顔で彼女を慰めた。
「泣かないでリリナ。わかってるよ、キミはよくやってくれている」
「ウィリアム様ぁぁ……」
目の前で繰り広げられる茶番を見ていられなくなったわたしは盛大にため息を吐いて踵を返した。
「待ってシア!どこに行くの!?」
気付いた殿下がわたしを引き止める。
「もう部屋に下がらせていただきます。わたしは本気で婚約解消に向けて動きますから殿下もそのおつもりで」
そう言い残し、わたしはさっさと歩き出す。
「嫌だよシア!ちゃんと話し合おう!シア!」
殿下の泣きの入った声が後ろから追いかけてきたが、わたしは振り返る事なくその場を去った。
わかっているのだ、
仕方のない事だと。
わかっているのだ、
殿下は悪くない事を。
でもわたしは殿下が好きだから。
幼い頃に結ばれた婚約だとしても
共に支え合いながら成長していくうちに殿下はいつしかわたしにとってかけがえのない人になっていた。
だからこそ耐えられないのだ。
唯一無二の存在である彼に
わたし以外にもかけがえのない存在がいる事に。
殿下は幼い頃から保有する膨大な自らの魔力によって体内から蝕まれ、何度か命の危険に晒された。
その度に国内に何名か存在する、
他人の魔力を吸収し体内で無力化して昇華する特別な力をもった「癒しの乙女」という能力者に命を救われてきた。
今までは何年かに一度、蓄積された魔力が暴れ出す前に癒しの乙女に魔力を吸収して貰うだけでよかった。
それがここ数年殿下の成長と共にそれだけでは足りなくなり、遂には四六時中癒しの乙女に魔力の余剰分を吸収して貰わなくてはならなくなったのだ。
そうしなければ自らの魔力によって殿下は歩く事すら困難な状態に陥ってしまう。
故あって殿下は常に癒しの乙女と行動を共にするようになった。
食事中も執務中も。
それこそ入浴中と就寝中以外はいつも癒しの乙女と一緒にいる。
そんななんとも言えない状況、
もちろんわたしは最初から複雑な気持ちで眺めていた。
自分の婚約者が四六時中、別の女と居るのだから。
それでも我慢できたのは前任の癒しの乙女が壮年の女性だったから。
癒しの乙女は「処女」でなければ力を失ってしまうらしい。
だから「処女」でさえいれば、
幾つになっても癒しの乙女として役目が果たせるのだ。
親子以上に年の離れた二人だったからまぁ耐えられた。
でも去年、
更に保有量が増した殿下の魔力に、前任者の癒しの乙女の体が耐えられなくなってしまった。
これ以上は体が保たないと前任者が役目を辞し、
そして教会の推薦で送られてきた新たな癒しの乙女がリリナ様だ。
ピンクブロンドのふわふわの髪に
鮮やかなレモンイエローの瞳が印象的な美少女。
年は15歳と若く、癒しの力に溢れている。
無尽蔵な殿下の魔力も余す事なく吸収し、常に彼の体調を万全に癒している。
その事には感謝している。
殿下を救ってくれているのだから。
自分の小さな悋気など瑣末な事だ。
でも彼女は、リリナ様はいつからか己が殿下の婚約者かのように振る舞うようになった。
殿下の役に立つ自分こそが相応しいと、教会関係者に話ているらしい。
そしてそれを間に受けた教会側が生家の侯爵家に圧力をかけ始めた。
家族にまで迷惑をかけ、わたしの心は限界だった。
それでも殿下が好きだから、側に居たくて心を殺してなんとか耐えてきた。
でもある時ふと気付いてしまったのだ。
殿下の魔力量がコントロール出来ない限り、一生癒しの乙女という付属品付きの殿下と暮らしてゆかねばならないという事に。
結婚式も、新婚旅行も、連綿と続く結婚生活も、常に妻より他の女と共にいる夫と生きてゆかねばならない事に。
あコレは無理だな、とわたしは思った。
わたしには耐えられないし、耐える必要もないと思い至ってしまったのだ。
これは殿下のせいではないし、殿下は悪くない。
常に一緒に居なければならないリリナ様と良好な関係を築こうとするのは当然の事だ。
でも、
それじゃあ、
もう彼女でいいじゃないですか
切っても切れない癒しの乙女と妻との板挟みで苦しむ未来しか見えないのなら、
最初から癒しの乙女を妻にすれば良いのだ。
まぁ癒しの乙女は処女でないとダメらしいから?
夜の夫婦生活は営めないだろうけど?
そこは愛妾でも囲えばよいのではないでしょうか、みたいな?
そんな事を考えつつも、信じていた殿下との未来が閉ざされた胸の痛みがどうしようもなく辛い。
でもそれが一番、殿下の安寧な暮らしに繋がると思うのだ。
わたしが身を引けば。
わたしが居なくなれば殿下は楽になれる。
そう心を決めた途端、わたしの心は羽のように軽くなった。
確かに胸の痛みはあるけれど、もともとドライな性格なのでいつまでもウジウジ悩むのはバカらしいと思ってしまう。
行動あるのみ。
まずは殿下のお父上であり、わたしの母の兄で伯父でもある国王陛下に婚約解消の許しを貰わないと。
それと一応、
試作中で頓挫している魔道具の開発も進めておこう。
そしてわたしの少ない魔力でギリギリ発動できる転移魔法の練習も。
やる事が沢山あるのは有り難い事だ。
忙しさのあまり悩んでる暇もないし、
殿下とリリナ様がイチャイチャしてるのも見なくて済む。
わたしはわたしに出来る事をやっていこう。
頑張れわたし、
負けるなわたし!
わたしは目の前の婚約者にそう告げた。
わたしの婚約者はこの国の第二王子。
将来は実兄である王太子殿下を支えながら共に国政に携わってゆくのだと日々邁進している18歳のキラキラ王子。
キラキラというのは別に揶揄ではない。
艶めくプラチナブロンドに
深いグリーンアイズ。
傾国の美女もドレスの裾を掴んで逃げ出す程の美形だ。
色白で如何にも王子然としているのにもかかわらず弱々しく見えないのは、
彼が長身で均整の取れた筋肉を纏う恵まれた体躯だからだろう。
魔力保有量も凄まじく、何から何までハイスペックなまさにキラキラ王子の申し子のような方だ。
まぁ…ただちょっと、いやかなり?
執着心が強めの粘着質な性格をしているのが玉にキズだけど……。
対してわたしは平凡な侯爵家の平凡な容姿の平凡な末娘。
平凡なブラウンの髪と平凡な青い瞳。
まぁ強いて言えば趣味の魔道具(魔力を動力源に起動する道具)の発明が人よりちょっと上手いくらいかな?
そんな平凡の申し子のようなわたしと
キラキラ王子の婚約が結ばれたのは互いがまだ10歳の時だった。
王妃様主催のお茶会に母と出席したわたしに、キラキラ王子が一世一代の一目惚れをしたのだとか。
その日から昼夜問わず、
わたしに猛攻撃をしてくるキラキラ王子に互いの親が根負けして婚約を結ぶ運びとなった。
まぁ我が家は侯爵家で王家との家格の釣り合いも取れるし、
イトコ同士だけど年齢的にも丁度良いと思ったのだろう。
婚約してからもキラキラ王子のわたしへの執着心は凄まじく、
妃教育で王城に通っているうちにいつの間にか部屋が用意され、いつの間にか城暮らしとなっていた。
婚姻前なのに………いいのか?
毎日キラキラ王子に愛を呟かれ、愛を語られ、愛を叫ばれる。
8年経った今でも変わらずその日々は
続いていた。
……キラキラ王子が四六時中、
「癒しの乙女」を左腕にくっつけさせるようになる迄は……。
「キラキラ王子…じゃない、ウィリアム殿下。もはや婚約者はわたしじゃなくてもいいでしょう?
もう彼女でいいじゃないですか。どうかわたしとの婚約は解消して、彼女と婚約を結び直してくださいませ」
わたしがそう言うと、
殿下は持っていた花束を盛大に落とし、わなわなと震え出した。
「な、な、なっ……何をいきなり!?え、何!?どうしたのフェリシア!」
「どうしたもこうしたも、そしていきなりではありません。ずっと思案しておりました」
「ずっと?え、いつから?ずっと!?」
殿下は癒しの乙女がくっついていない方の手を額に当てながら狼狽えている。
「はい、新たな癒しの乙女様が殿下の左腕に装着されてからずーーーっと」
「なんか長くなってない!?」
「だってずーーーーーーっとですもの」
「更に長くなった!」
「だからその花束もわたしはもう受け取れません。今まで毎日戴いておりましたが、これからはその左腕の乙女様に差し上げてください」
「これは婚約者に贈る花束だ!」
「だから彼女を婚約者に据えて、彼女に花束を贈ってください」
「嫌だ!僕の婚約者はシア、キミだけだ!婚約解消なんて絶対にしない!」
左腕に他の女をぶら下げて何言ってんのコイツ。
淑女らしからぬ言葉で脳内にて毒吐く。
「わたしはもう決めたのです。今夜、陛下に婚約解消の申し出をします」
「ダメだ!絶対にダメ!!今夜父上は酷い腹痛になるからね!」
なんて不吉な予言(?)をするんだ。
夕食時に下剤でも盛るつもりなのか。
「ではどうしても解消したくないのなら癒しの乙女を別の方に交代してください」
「酷いフェリシア様!フェリシア様がアタシが嫌いなのは知ってましたけど酷過ぎます!アタシ……精一杯お勤めを果たしてますのにぃ……ウィリアム様ぁ…」
今までドヤ顔で殿下の腕に纏わり付いていた癒しの乙女ことリリナ様がいきなりメソメソモードに突入した。
わたしの発言のせいだとしても変わり身の早さに辟易とする。
いつの間にか名前呼びになってるし。
殿下はその涙に胸が痛んだのか悲しそうな顔で彼女を慰めた。
「泣かないでリリナ。わかってるよ、キミはよくやってくれている」
「ウィリアム様ぁぁ……」
目の前で繰り広げられる茶番を見ていられなくなったわたしは盛大にため息を吐いて踵を返した。
「待ってシア!どこに行くの!?」
気付いた殿下がわたしを引き止める。
「もう部屋に下がらせていただきます。わたしは本気で婚約解消に向けて動きますから殿下もそのおつもりで」
そう言い残し、わたしはさっさと歩き出す。
「嫌だよシア!ちゃんと話し合おう!シア!」
殿下の泣きの入った声が後ろから追いかけてきたが、わたしは振り返る事なくその場を去った。
わかっているのだ、
仕方のない事だと。
わかっているのだ、
殿下は悪くない事を。
でもわたしは殿下が好きだから。
幼い頃に結ばれた婚約だとしても
共に支え合いながら成長していくうちに殿下はいつしかわたしにとってかけがえのない人になっていた。
だからこそ耐えられないのだ。
唯一無二の存在である彼に
わたし以外にもかけがえのない存在がいる事に。
殿下は幼い頃から保有する膨大な自らの魔力によって体内から蝕まれ、何度か命の危険に晒された。
その度に国内に何名か存在する、
他人の魔力を吸収し体内で無力化して昇華する特別な力をもった「癒しの乙女」という能力者に命を救われてきた。
今までは何年かに一度、蓄積された魔力が暴れ出す前に癒しの乙女に魔力を吸収して貰うだけでよかった。
それがここ数年殿下の成長と共にそれだけでは足りなくなり、遂には四六時中癒しの乙女に魔力の余剰分を吸収して貰わなくてはならなくなったのだ。
そうしなければ自らの魔力によって殿下は歩く事すら困難な状態に陥ってしまう。
故あって殿下は常に癒しの乙女と行動を共にするようになった。
食事中も執務中も。
それこそ入浴中と就寝中以外はいつも癒しの乙女と一緒にいる。
そんななんとも言えない状況、
もちろんわたしは最初から複雑な気持ちで眺めていた。
自分の婚約者が四六時中、別の女と居るのだから。
それでも我慢できたのは前任の癒しの乙女が壮年の女性だったから。
癒しの乙女は「処女」でなければ力を失ってしまうらしい。
だから「処女」でさえいれば、
幾つになっても癒しの乙女として役目が果たせるのだ。
親子以上に年の離れた二人だったからまぁ耐えられた。
でも去年、
更に保有量が増した殿下の魔力に、前任者の癒しの乙女の体が耐えられなくなってしまった。
これ以上は体が保たないと前任者が役目を辞し、
そして教会の推薦で送られてきた新たな癒しの乙女がリリナ様だ。
ピンクブロンドのふわふわの髪に
鮮やかなレモンイエローの瞳が印象的な美少女。
年は15歳と若く、癒しの力に溢れている。
無尽蔵な殿下の魔力も余す事なく吸収し、常に彼の体調を万全に癒している。
その事には感謝している。
殿下を救ってくれているのだから。
自分の小さな悋気など瑣末な事だ。
でも彼女は、リリナ様はいつからか己が殿下の婚約者かのように振る舞うようになった。
殿下の役に立つ自分こそが相応しいと、教会関係者に話ているらしい。
そしてそれを間に受けた教会側が生家の侯爵家に圧力をかけ始めた。
家族にまで迷惑をかけ、わたしの心は限界だった。
それでも殿下が好きだから、側に居たくて心を殺してなんとか耐えてきた。
でもある時ふと気付いてしまったのだ。
殿下の魔力量がコントロール出来ない限り、一生癒しの乙女という付属品付きの殿下と暮らしてゆかねばならないという事に。
結婚式も、新婚旅行も、連綿と続く結婚生活も、常に妻より他の女と共にいる夫と生きてゆかねばならない事に。
あコレは無理だな、とわたしは思った。
わたしには耐えられないし、耐える必要もないと思い至ってしまったのだ。
これは殿下のせいではないし、殿下は悪くない。
常に一緒に居なければならないリリナ様と良好な関係を築こうとするのは当然の事だ。
でも、
それじゃあ、
もう彼女でいいじゃないですか
切っても切れない癒しの乙女と妻との板挟みで苦しむ未来しか見えないのなら、
最初から癒しの乙女を妻にすれば良いのだ。
まぁ癒しの乙女は処女でないとダメらしいから?
夜の夫婦生活は営めないだろうけど?
そこは愛妾でも囲えばよいのではないでしょうか、みたいな?
そんな事を考えつつも、信じていた殿下との未来が閉ざされた胸の痛みがどうしようもなく辛い。
でもそれが一番、殿下の安寧な暮らしに繋がると思うのだ。
わたしが身を引けば。
わたしが居なくなれば殿下は楽になれる。
そう心を決めた途端、わたしの心は羽のように軽くなった。
確かに胸の痛みはあるけれど、もともとドライな性格なのでいつまでもウジウジ悩むのはバカらしいと思ってしまう。
行動あるのみ。
まずは殿下のお父上であり、わたしの母の兄で伯父でもある国王陛下に婚約解消の許しを貰わないと。
それと一応、
試作中で頓挫している魔道具の開発も進めておこう。
そしてわたしの少ない魔力でギリギリ発動できる転移魔法の練習も。
やる事が沢山あるのは有り難い事だ。
忙しさのあまり悩んでる暇もないし、
殿下とリリナ様がイチャイチャしてるのも見なくて済む。
わたしはわたしに出来る事をやっていこう。
頑張れわたし、
負けるなわたし!
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