上 下
9 / 25

昼下がりのお喋り

しおりを挟む
「仕方ないから一度だけ許してやることにした」

「「えっ、」」

とある日の昼下がり。
イリナとセィラはまた店を訪れ、惣菜を買ったついでに店内のテーブル席でお喋りが始まった。

ちなみに今日イリナが買い求めた惣菜はイワシとオリーブのオイル煮で、セィラが購入した惣菜は林檎がアクセントのフレッシュリーフサラダだ。(毎度あり)

そしてお喋りのお供にと注文したカルダモン入りのコーヒーをブラックで飲みながら、冒頭の言葉を告げたのはイリナである。

その言葉に以前のようにまた声を揃えて驚いたアユリカとセィラ。
その反応は至極当然と肩を竦めるイリナが二人に言う。

イ・「どうやらね、アイツは媚薬を盛られたみたいなの」

ア、セ・「「えっ、」」

イ・「飲んだ酒の中に知らない間に混入されたみたいで。酒瓶と一緒に小さな薬瓶も転がってたからおかしいと思って調べてみたのよ。そしたらそれが即効性の媚薬だったとわかって……」

セ・「じゃあ浮気はその薬物のせいだったということ?」

イ・「まぁ……そうなる、かな。媚薬が原因だろうがヤっちゃっことは確かなんだけどね……」

ア・「でも、許すことにしたんですね」

イ・「なんだかそれで別れたら負けたような気がして悔しくなっちゃって……ま、あの女は許せないから、指紋がベッタリ付いた薬瓶と一緒に自警団に告げ口してやったけどね」

ア・「じゃあ薬瓶が証拠品となって捕縛されますね」

イ・「うん。ざまぁみろだわ。……あとアイツがずっと泣いててね……私に捨てられたら死んでしまうって……泣いて泣いて、可愛いの」

セ・「それで絆されちゃったのね」

一瞬脳内に、
「そらヒモが捨てられたら言葉通り生きてはいけんわな」という誰か(読者)の声が聞こえたような気がしたが、あまり聞き取れなかったアユリカである。

イ・「まぁ初犯だし?本意ではなかったようだし?私にメロメロだし?一回くらいは許してやってもいいかな~なんて。まぁ……惚れた弱みよね」

そう言ってイリナはコーヒーをぐびっと飲み干した。
そしてカップを置いて、セィラに視線を向ける。

「貴女のところはどうなのよ?まだあのブラコン義妹は居座ってるの?」

イリナの言葉に今度はセィラが肩を竦めた。

「先日、みんなに店で会ってから2日後に帰ったわ」

「良かったわね、新婚家庭なのに義妹にウロウロされるって、不気味じゃない」

「不気味……」

アユリカは言い得て妙だと思いつつ、ちらりとセィラの方へと視線を向ける。
セィラは困った表情で笑みを浮かべていた。

「でも、ラペルはそう思ってないみたいで……」

「セィラさんはちゃんと自分の気持ちを彼に伝えてるの?夫婦の時間を大切にしたいからあまり家に来ないようにと義妹いもうとさんに伝えて貰ったら?」

イリナがそう言うと、セィラはさらに困り顔になる。

「それとなくやんわりと言ってみたの……せめて滞在はひと月に一度、長くても二泊三日程度にして欲しいって……」

その言葉にアユリカは引っ掛かりを覚え、セィラに尋ねた。

「毎月来てるのが驚きなんですが……それでいつもはどくらいの頻度で居座る…コホン、滞在するんですか?」

「いつもだいたい月に二度ほど来て、一週間は居るわね……」

「それって月の半分は家に居るってことじゃないですか!」

「ないわーー……」

アユリカとイリナの反応にセィラは大きく嘆息する。

「私もそれが異常だとようやくわかってきたわ……まぁ私は勤めがあるから日中は家にサーニャさんと居なくて接点を持たなくていいというのが救いね」

「自分の家なのにおかしくない?ていうか旦那、妹だからって甘やかしすぎよ」

「大病を患った期間が長かったから、甘やかす癖がついてるみたいなの。それしてそれを変だとは思ってないみたいなのね……」

「カーーッ!妹が妹なら兄も兄なわけね!」

「困りましたね……」

その後もなんとか打開策はないものかと三人で頭を付き合わせて考えるものの、東方の言葉で言う“三人寄れば文殊の知恵”とはならなかった。

が、セィラの妊娠が判明することにより、事態はさらに深刻さを増すのであった。







◇───────────────────◇



セィラとイリナのお話。

書いてみたい案件ではあるものの、タイトルをつけてヒロインとして描くほどでもないなと自分の中で思い、登場人物として書かせて貰うことにしました。

一作品で三度美味しいと思ってお付き合い頂けますと幸いです。

アユリカとセィラとイリナの行く末を、見届けてやってくださいませ。

そしてそろそろ、奴が出てくるんじゃないかな~?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢の立場を捨てたお姫様

羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ 舞踏会 お茶会 正妃になるための勉強 …何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる! 王子なんか知りませんわ! 田舎でのんびり暮らします!

この恋は幻だから

豆狸
恋愛
婚約を解消された侯爵令嬢の元へ、魅了から解放された王太子が訪れる。

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。

豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」 「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」 「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」

【完結】冤罪で殺された王太子の婚約者は100年後に生まれ変わりました。今世では愛し愛される相手を見つけたいと思っています。

金峯蓮華
恋愛
どうやら私は階段から突き落とされ落下する間に前世の記憶を思い出していたらしい。 前世は冤罪を着せられて殺害されたのだった。それにしても酷い。その後あの国はどうなったのだろう? 私の願い通り滅びたのだろうか? 前世で冤罪を着せられ殺害された王太子の婚約者だった令嬢が生まれ変わった今世で愛し愛される相手とめぐりあい幸せになるお話。 緩い世界観の緩いお話しです。 ご都合主義です。 *タイトル変更しました。すみません。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

国王の情婦

豆狸
恋愛
この王国の王太子の婚約者は、国王の情婦と呼ばれている。

愛を乞うても

豆狸
恋愛
愛を乞うても、どんなに乞うても、私は愛されることはありませんでした。 父にも母にも婚約者にも、そして生まれて初めて恋した人にも。 だから、私は──

処理中です...