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プロローグ 諦めきれない恋心
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私もいい加減しつこい性格をしてるとはわかってる。
いやいや、しつこいのではなく一途なのだと思いたい。
だって、本当に好きなんだもん。
「はいハイゼル、これ今日の差し入れ。それから好きよ大好き!私たち、幼馴染をやめて恋人になりましょ」
「お前なぁ……昼飯渡すついでに告るなよ」
「だって何度告白してもフラレちゃうんだもの。こうなったら数打ちゃ当たるに賭けるつもりよ」
「どんだけ連発しても無駄だ。アユリカ、俺はお前とは付き合わねえよ。わかってんのか?恋人なんかになって別れでもしたら、もうこれまでの関係ではいられなくなるんだぞ?ガキん時からの関係が壊れちまうんだぞ?」
「付き合う前から別れること考える必要あるかな?」
「……俺の親を思い出せ。幼馴染同士で駆け落ちして俺まで作っておいて、冷めたからと互いに愛人作って挙句別れただろ。お前の親だってそうだ。親父が浮気して出てったんだろ?それでお袋さんも育児放棄して……だからポム小母さんに面倒見てもらったんじゃないか、俺と同じく……」
「そうだけど……」
「な?悪いことは言わん。俺はやめておけ。俺はガキん頃から一番近くにいたお前とどーこうなるなんてイヤなんだよ」
「やめておけ言われてハイそうですかって、そんな簡単にいかないのが恋心なのよね……だってもうずっとハイゼルのことが好きなんだもん」
「アユリカ……」
「……せっかく作ったんだから差し入れは食べてほしい……すりおろしりんごが隠し味のジンジャーポークソテーをたっぷり挟んだこのサンドイッチに罪はないと思うの……それも、ダメ?」
「……クッ、お前っ……どこでそんな小悪魔的な上目遣いを覚えたんだっ……」
「ねぇお願い、ハイゼル……」
「っ~~~……お前なっ」
結局、ハイゼルは差し入れの入ったサンドイッチを受け取ってくれたけど、仲間に呼ばれてすぐに行ってしまった。
私はその後ろ姿を見送る。
(あ、……また女の子たちと一緒だ……)
ハイゼルが向かった先には同じく聖騎士を目指す予科練生たちと数名の女の子がいた。
そしてわいわいと賑やかに楽しそうに笑いながら行ってしまったのだった。
ハイゼルは聖騎士の見習い騎士だ。
全寮制の聖騎士予科練学校に通い、幼い頃からの夢だった聖騎士になるために脇目も振らずに日々研鑽している。
……な、はず。
決して遊び呆けてなどいないはず。
だけど……
近頃ハイゼルと見習い仲間の周りには遊び慣れてそうなキラキラとした女の子たちの姿が目に付くようになった。
みんなオシャレで綺麗で、私とはタイプが違う華やかな女の子たち。
彼女たちはハイゼルを含むカッコイイ騎士見習いたちと並んで立ってもちっとも引けを取らない。
そしてそんな彼女たちが寄ってくるのを、ハイゼルも彼の仲間たちも満更でもない様子で受け入れているのだ。
やっぱりハイゼルも綺麗で華のある女の子の方が好きなんだろうか。
だから私をハイゼルの“特別”にしてくれないのかな……。
幼い頃から知る私が一番近しくて家族のように特別な存在だとハイゼルは言うけれど、
私の欲しい特別はそれじゃないんだけどな。
私、アユリカ・リィズ(十七)とハイゼル・モルト(十七)は同じ町内に生まれ、同じように親に育児放棄をされた者同士だ。
親に見捨てられた私たちの世話を何も言わずにしてくれたのが、近所に住むポム小母さんだった。
そして私とハイゼルを家に引き取り、育ててくれたのだ。
ポム小母さんは古の森の魔女の縁者だそうで、彼女自身も魔術が扱え小さな魔法薬店を営んでいる。
奇しくも私にもハイゼルにも魔力があり、そんな私たちにポム小母さんは魔術のいろはも教えてくれた。
この世界が広いことも、この世界とは違う別の世界があることも知っているけれど、私の世界はポム小母さんと、幼い頃から共にありいつしか恋心を抱いていたハイゼルがその全てだった。
私はハイゼルが大好きだから。
ずっとずっと一緒にいたいから彼の特別な存在になりたいと願う。
だけどハイゼルはずっと変わらず傍にいるために私に恋愛感情は持ちたくないと言う。
そう言うけれど、
ハイゼルは町内の外では私を遠避ける。
見習い仲間には絶対に紹介してくれないし、彼らと一緒の時に近付くなとさえ言われてしまっている。
すっかり疎遠になってしまい、傍にいないのなら意味がないんじゃないのかな?
私という幼馴染がいることを、そんなにも知られたくないのだろうか……。
そりゃあ私は、ハイゼルたちにくっついて遊んでいる女の子たちに比べたら地味で面白味もなくて霞んで見えるのもしれないけど……。
ねぇ、どうしたら私を幼馴染以上の存在として見てくれる?
どうしたら、私を恋愛対象として見てくれるの?
……それは私の高望みなの?
ダークブラウンの髪と紫紺の瞳が美くしい、背が高くて顔も良くて腕っ節が強くて、将来有望な聖騎士見習いのハイゼルには、私なんて相応しくない?
……うん、釣り合ってないな……相応しくないかもしれない。
でも、それでも、釣り合わないとはわかっていても、私はこの恋を諦められないんだ。
この恋を、諦めたくないんだ……。
──────────────────────◇
ハジマリマシタよ新連載。
今作もよろしくお願いします!
夕方以降の霞み目と、ついうっかり口を滑らせちまうネタバレ予防のためにお返事はままなりませんが、感想欄は解放しておりますので皆さんお好きにブツブツとつぶやいてくださいませ。
もちろん叫んでいただいても結構ですよ♡
( º дº)<キエェェェエエェェェ
いやいや、しつこいのではなく一途なのだと思いたい。
だって、本当に好きなんだもん。
「はいハイゼル、これ今日の差し入れ。それから好きよ大好き!私たち、幼馴染をやめて恋人になりましょ」
「お前なぁ……昼飯渡すついでに告るなよ」
「だって何度告白してもフラレちゃうんだもの。こうなったら数打ちゃ当たるに賭けるつもりよ」
「どんだけ連発しても無駄だ。アユリカ、俺はお前とは付き合わねえよ。わかってんのか?恋人なんかになって別れでもしたら、もうこれまでの関係ではいられなくなるんだぞ?ガキん時からの関係が壊れちまうんだぞ?」
「付き合う前から別れること考える必要あるかな?」
「……俺の親を思い出せ。幼馴染同士で駆け落ちして俺まで作っておいて、冷めたからと互いに愛人作って挙句別れただろ。お前の親だってそうだ。親父が浮気して出てったんだろ?それでお袋さんも育児放棄して……だからポム小母さんに面倒見てもらったんじゃないか、俺と同じく……」
「そうだけど……」
「な?悪いことは言わん。俺はやめておけ。俺はガキん頃から一番近くにいたお前とどーこうなるなんてイヤなんだよ」
「やめておけ言われてハイそうですかって、そんな簡単にいかないのが恋心なのよね……だってもうずっとハイゼルのことが好きなんだもん」
「アユリカ……」
「……せっかく作ったんだから差し入れは食べてほしい……すりおろしりんごが隠し味のジンジャーポークソテーをたっぷり挟んだこのサンドイッチに罪はないと思うの……それも、ダメ?」
「……クッ、お前っ……どこでそんな小悪魔的な上目遣いを覚えたんだっ……」
「ねぇお願い、ハイゼル……」
「っ~~~……お前なっ」
結局、ハイゼルは差し入れの入ったサンドイッチを受け取ってくれたけど、仲間に呼ばれてすぐに行ってしまった。
私はその後ろ姿を見送る。
(あ、……また女の子たちと一緒だ……)
ハイゼルが向かった先には同じく聖騎士を目指す予科練生たちと数名の女の子がいた。
そしてわいわいと賑やかに楽しそうに笑いながら行ってしまったのだった。
ハイゼルは聖騎士の見習い騎士だ。
全寮制の聖騎士予科練学校に通い、幼い頃からの夢だった聖騎士になるために脇目も振らずに日々研鑽している。
……な、はず。
決して遊び呆けてなどいないはず。
だけど……
近頃ハイゼルと見習い仲間の周りには遊び慣れてそうなキラキラとした女の子たちの姿が目に付くようになった。
みんなオシャレで綺麗で、私とはタイプが違う華やかな女の子たち。
彼女たちはハイゼルを含むカッコイイ騎士見習いたちと並んで立ってもちっとも引けを取らない。
そしてそんな彼女たちが寄ってくるのを、ハイゼルも彼の仲間たちも満更でもない様子で受け入れているのだ。
やっぱりハイゼルも綺麗で華のある女の子の方が好きなんだろうか。
だから私をハイゼルの“特別”にしてくれないのかな……。
幼い頃から知る私が一番近しくて家族のように特別な存在だとハイゼルは言うけれど、
私の欲しい特別はそれじゃないんだけどな。
私、アユリカ・リィズ(十七)とハイゼル・モルト(十七)は同じ町内に生まれ、同じように親に育児放棄をされた者同士だ。
親に見捨てられた私たちの世話を何も言わずにしてくれたのが、近所に住むポム小母さんだった。
そして私とハイゼルを家に引き取り、育ててくれたのだ。
ポム小母さんは古の森の魔女の縁者だそうで、彼女自身も魔術が扱え小さな魔法薬店を営んでいる。
奇しくも私にもハイゼルにも魔力があり、そんな私たちにポム小母さんは魔術のいろはも教えてくれた。
この世界が広いことも、この世界とは違う別の世界があることも知っているけれど、私の世界はポム小母さんと、幼い頃から共にありいつしか恋心を抱いていたハイゼルがその全てだった。
私はハイゼルが大好きだから。
ずっとずっと一緒にいたいから彼の特別な存在になりたいと願う。
だけどハイゼルはずっと変わらず傍にいるために私に恋愛感情は持ちたくないと言う。
そう言うけれど、
ハイゼルは町内の外では私を遠避ける。
見習い仲間には絶対に紹介してくれないし、彼らと一緒の時に近付くなとさえ言われてしまっている。
すっかり疎遠になってしまい、傍にいないのなら意味がないんじゃないのかな?
私という幼馴染がいることを、そんなにも知られたくないのだろうか……。
そりゃあ私は、ハイゼルたちにくっついて遊んでいる女の子たちに比べたら地味で面白味もなくて霞んで見えるのもしれないけど……。
ねぇ、どうしたら私を幼馴染以上の存在として見てくれる?
どうしたら、私を恋愛対象として見てくれるの?
……それは私の高望みなの?
ダークブラウンの髪と紫紺の瞳が美くしい、背が高くて顔も良くて腕っ節が強くて、将来有望な聖騎士見習いのハイゼルには、私なんて相応しくない?
……うん、釣り合ってないな……相応しくないかもしれない。
でも、それでも、釣り合わないとはわかっていても、私はこの恋を諦められないんだ。
この恋を、諦めたくないんだ……。
──────────────────────◇
ハジマリマシタよ新連載。
今作もよろしくお願いします!
夕方以降の霞み目と、ついうっかり口を滑らせちまうネタバレ予防のためにお返事はままなりませんが、感想欄は解放しておりますので皆さんお好きにブツブツとつぶやいてくださいませ。
もちろん叫んでいただいても結構ですよ♡
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