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とある夫婦(14)王妃の矜持

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「側妃をお迎えください」

ローラント国王、ローラント=オ=ジュール=リカルド(23)に王妃として嫁いだ元ハイラム王女、アンジェリカ(21)がそう進言した事により起こった夫婦喧嘩から三日目、

アンジェリカの部屋にリカルドが無言のまま訪れた。

そろそろ来る頃だなと思っていたアンジェリカは読んでいた本を置き、夫リカルドの前へと静かに進み出た。

「陛下」

アンジェリカが呼んでもリカルドは俯いたまま応えない。

「リカルド様」

今度は名で呼ぶと、リカルドは顔をくしゃっと歪めてアンジェリカを抱き寄せた。
いや、縋り付いたという方がしっくり来るかもしれない。

「アンジェ……」

力なく掠れた声で王妃を愛称で呼ぶリカルド。

長身の背を丸めてアンジェリカに甘えるように抱きしめる夫に、アンジェリカは小さく笑みを浮かべて背中を摩って宥めた。

「三日もお顔を見せてくれなくて寂しかったわ」

「っ……アンジェ……」

アンジェリカを抱きしめる力が強くなった。

夫婦喧嘩により三日間顔を合わせなかった打撃と焦燥は間違いなくリカルドの方が大きいだろう。

「キミがあんなくだらない事を言うからっ……」

声を押し出すように言うリカルドにアンジェリカは答えた。

「くだらない事ではありません。この国の為には大切な事です。そして必要な事」

「アンジェ以上に必要なものなんてないっ」

「あります。本当は分かっているくせに。そしてわたくしも分かっております。貴方がこの国の事を、民の事を大切に思っている事を」

「それでも絶対に側妃は迎えないっ!俺の妃はアンジェだけだっ」

「リカルド様……」

その言葉がどれほどアンジェリカにとって嬉しいものか、そしてどれほど幸せなものか、リカルドはちゃんと理解してくれているのだろうか。

そしてそれがどれほどアンジェリカの立場を悪くしているのかも。

結婚して三年。
未だ懐妊の兆しが見られないアンジェリカに臣下達は柳眉を顰めている。

本来なら二年、懐妊しなければ直ぐに側妃をもうける慣例があるのにも関わらず、国王リカルドはそれを認めない。

その為に、裏でアンジェリカが国王に側妃を持つなと我儘を言っているのだとまことしやかに囁かれているのだ。

自分の悪評が出るのは構わない(嫌だけど)、しかしリカルドが王妃の言いなりで国の大事を決める愚王であるような言い方をされるのは我慢ならないのだ。

その為にはリカルドを説得して側妃を迎え、一日でも早く世継ぎをもうけなければならない。

「まだたった三年だ。それなのに俺とキミではもう子が成せないような言われようには我慢ならない」

リカルドの言いたい事はわかる。
その気持ちはアンジェリカとて同じだ。 

でもこれを理由に我が娘を、または家門の娘を側妃に…という貴族達の思惑は日に日にひしめき合い、諍いの元に成りかねない状態にまでなって来ているのだ。

この状況を見て見ぬふりは出来ない。

本当はアンジェリカだってリカルドに側妃なんて持って欲しくはない。

いつだってリカルドにはアンジェリカだけを見つめていて欲しい。

しかし王族として、王妃として、自分の望みだけを優先することは許されないのだ。

「リカルド様、わたくしがこれからも王妃として貴方の隣にいる為にはそれが必要な事なのです。どうか、どうか側妃を。そして一日も早く、お世継ぎの誕生を」

リカルドの腕の中で、アンジェリカはぎゅっと抱きしめ返して告げた。

「………………」

リカルドにどれくらい長くそうやって抱きしめられていただろう。

やがてリカルドが呟くように言った。

「………分かった……キミの願いを叶えよう……」

その言葉を聞いた瞬間、胸に鋭利な刃物に突き刺されるような痛みを感じた。

「…よくぞお決めくだ…「しかしっ」

アンジェリカの言葉は、リカルドにより遮られる。

「慣例なら側妃の選定は王妃が行うとあるが、それには倣わず側妃は俺自身で選ぶ」

「え……」

「いいな?アンジェ、これだけは絶対に譲らない」

アンジェリカの見つめるリカルドの目には強い意志が感じられた。
これは簡単には覆らないと悟らされる。

「……わかりました。どうか貴方のお好きな方をお選びくださいませ」

指先から冷たくなっていくのを感じながら、アンジェリカはそう答えたのだった。



そうしてリカルドは側妃を迎える事を正式に発表した。

リカルド自ら決めると言っただけの事はあり、側妃は直ぐに決定した。

リカルドの遠縁にあたり幼馴染でもあるヘインズ侯爵令嬢ジャクリーヌ(20)が新たに王室に迎えられる事になる。

ジャクリーヌは侯爵令嬢でありながら不思議と今まで縁遠く、今だに結婚は疎か婚約者もいない。

本人に結婚する意思がないと聞いていたが、ジャクリーヌはお相手がリカルド様ならばとこの縁談を承諾したという。

聞けば二人は幼少の頃よりとても仲が良かったそうだ。

リカルドも気心の知れたジャクリーヌなら側妃に迎えてもいいと乗り気であるという。

『あんなに側妃なんか要らない、わたくしだけだと豪語していたのにっ……』

と思わずアンジェリカは思ってしまったが、こうなるように仕向けたのは他ならぬ自分だ。

アンジェリカには悋気を起こす資格も、寂しさを感じる資格もない。

自分の内側にある身勝手で情けないドロドロとした感情を、アンジェリカは心の奥底に封じ込めた。

側妃を迎えるに当たって、リカルドの政務が増えたのだろう。
何やら忙しくしている様子で、近頃リカルドはアンジェリカの元へ訪れていない。

しばらくバタバタするので、会いに行けないと知らせもあった。

それに対しアンジェリカは何も言わず、「ご無理をなされず、お体をおいとい下さい」とだけ返事をした。


そうこうしている間にジャクリーヌは後宮入りをし、リカルドとの最初の閨の儀が行われる日となった。

その日は朝からアンジェリカの気持ちは重く、深く沈み込んでいた。

夜になるのが怖い。

夜になればリカルドはジャクリーヌと褥を共にする。

あの優しい手で、自分以外の女に触れるのだ。
今まではアンジェリカだけを大切に想ってくれていたリカルドだが、体を重ねる事できっとジャクリーヌにも特別な感情を抱くようになるのかもしれない。

ましてやジャクリーヌはリカルド自らの意思で選んだ妃だ。

国と国の政略で結ばれたアンジェリカとは情の置きどころがまた違うのだろう。

『もしかしてリカルド様は以前からジャクリーヌ様の事を……?』

幼馴染であるならば、ジャクリーヌが初恋の相手だったとしてもおかしくはない。

全てはアンジェリカの憶測に過ぎない。
憶測に過ぎないが、考えれば考えるほどそれが正しい答えなのではないかと思えてくるのであった。


アンジェリカの心に比例して、空は段々と暗くなってゆく。

やがて夕餉の時間も過ぎ、とうとう閨の儀が執り行われる時刻となった。

『こんな時、前王妃様がご存命であれば……きっとこのモヤモヤを打ち明けていた事でしょう……』

アンジェリカは大きくため息を吐いた。

それでも侍女達がアンジェリカを気遣ってくれる。

少しでも気が晴れるようにと食事やお茶に気を遣ってくれているのが分かった。

皆の優しさに包まれながら、アンジェリカはその夜は早く休む事にした。

眠ってしまえば辛い思いをしなくて済む。

アンジェリカは子どもの時のように布団に包まり、丸くなって眠った。

そして夢を見る。


『ここは……』

王宮の最も大きく立派な庭園の中、初めてリカルドとあった場所だ。

春の薔薇が咲き誇り、優しく甘い香りを漂わせていた。

庭園の中に16歳だった自分がいる。

2歳年上のリカルドがとても大人びて見えて、素敵でドキドキしたのを覚えている。

庭園でアンジェリカが転ばないように、手を繋いで歩いてくれたのだ。

その時の手の温もりを、アンジェリカは今も鮮明に覚えている。

リカルドは違うだろうが、アンジェリカにとってリカルドは初恋だった。

リカルドと一緒にいるといつも心が温かくて幸せな気持ちになれる。
抱きしめられると心から安心出来て、自分の居場所はここだと落ち着けるのだ。

リカルドの腕の中が、アンジェリカの安らぎの場だった。

夢の中のアンジェリカはいつの間に今のアンジェリカになっていた。

リカルドが優しく抱き寄せてくれる。

『温かい……』


どうか、どうかこのまま。
二人だけのこの時が長く続けばいい。

彼はもう自分だけの夫ではない。

だけど今、この夢の中だけは彼は自分だけのものだ。

アンジェリカは強く、目の前の夫にしがみついた。

『………ん?』


抱きしめる肉厚加減がやけにリアルだ。

夢の中であるはずなのに、体温も香りもまるで本物のようだった。

そう、まるで………「!?」

そこでぱちっと目が覚めたアンジェリカの視界に、いつものように隣で眠るリカルドの姿が飛び込んできた。

「っ!?ちょっ……えっ?えぇっ!?リカルド様っ!?」

アンジェリカは驚き過ぎて思わず飛び起きた。

そして夜中であるにも関わらず大声でリカルドの名を呼んでしまう。

それに反応して、リカルドも目を覚ます。

目を擦りながらアンジェリカの名を呼んで、彼女を懐に抱き寄せて抱え込んだ。

どうやら寝ぼけているらしい。

アンジェリカの方はプチパニックである。

「リカルド様っ、どうしてわたくしのベッドにっ!?今夜はジャクリーヌ様との初夜だったのではっ!?」

アンジェリカに激しく揺さぶられ、さすがにリカルドも目を覚さずにはいられなかった。

「あぁ……アンジェ…寝ぼけているのか?まだ夜中だよ……」

「わたくしは寝ぼけてなどおりませんっ!リカルド様っ、ジャクリーヌ様はどうしたのっ?もう閨の儀は終わったのっ?だとしてもどうしてここにっ?」

悪いけど他の女を抱いて直ぐに自分の寝所へ来る神経がわからない。

アンジェリカは怒りを露わにリカルドから距離を取った。

その様子を見て、リカルドは少し寂しそうな顔をして答える。

「ジャクリーヌとの閨の儀は形だけだよ。この婚儀はいわば契約婚だ。側室として迎えたのも、それがジャクリーヌも望んでいると知っていたからからだ」

「ど、どういう事なのっ……?」

「ジャクリーヌはね、気高き白百合の君なんだよ」

「気高き……?白百合の……君?」

アンジェリカには何の事だか分からない。

リカルドは迂遠な言い回しをやめてハッキリと言った。

「ジャクリーヌは女性でありながら女性しか愛せない。つまりジャクリーヌの恋愛対象は女性だけだ」

「……え?………えぇぇっ!?」

アンジェリカは王妃らしからぬ大きな声を上げて驚いた。

「ジャクリーヌには既に生涯を共にと誓った相手女性がいるんだよ。だから結婚を拒否してた。だけど侯爵家の娘として、いつまでもそれは許されない。だから俺はジャクリーヌに取り引きを持ちかけたんだ。形だけの側妃となってくれたら、侍女として連れてきた相手の女性と後宮での生活を保障しようと。そうする事により、俺は側妃を持てという臣下達の軋轢から解放されて、生涯アンジェだけを愛する事が出来るからね」

「……だから…側妃は自分で選ぶと仰ったの……?」

「そうだよ。プレッシャーに追い詰められたアンジェの負担を無くしたくてかねてよりこの方法を計画していたんだ。ジャクリーヌが白百合の君だって、昔から知ってたから」

「っ……リカルド様……」

どうしよう。
側室を持てと薦めたのは自分なのに。
どうしよう。
決して喜んではいけない状況なのに。
どうしよう。
どうしようもなく、嬉しい。

そのぐちゃぐちゃな感情を気取られたくなくて俯くアンジェリカを、リカルドが優しく包み込んた。

「アンジェリカ、諦めて。俺は初めて会った時からキミだけを愛している。他は要らない、絶対に要らないんだ……」

「リカルド様っ………」

とうとうアンジェリカの瞳から涙が溢れた。

「わたくしだって、リカルド様を愛しています。本当は他の誰にも渡したくないっ……わたくしだけの貴方でいて欲しい……」

「うん、アンジェ……ありがとう」

リカルドの腕に力が込められる。

より強く抱きしめられて、アンジェリカは幸せな気持ちになった。

でも……これでは何の解決にもならない。

アンジェリカには王妃としての責務がある。
その責を正しく果たそうとする事が、無力なアンジェリカの王妃としての矜持だ。

腕に力を込めてそっとリカルドを押し離す。

「リカルド様、それでもやはりわたくし達は王と王妃。お互いの気持ちだけで物事を進めてゆくわけにはまいりません。わたくしはもう迷いませんわ、全力で貴方をお支えしますから、どうか…どうか……」

「うん。そうだね、全力で頑張らないととね」

「?」

「俺達で全力で頑張って世継ぎを成そう」

「それは…つまり……やはり側室は持たない方向で…という事かしら?」

「うん、そういう方向だね」

それがなかなか出来ないからこんなに苦労をしてるんじゃないのっ!

と、いう言葉が歯列の手前まで出かかったが、アンジェリカはそれをなんとかゴクンと飲み込んだ。

そんなアンジェリカを他所にリカルドは語り出す。

「キミも俺も結婚適齢期になって、子を成せるかどうかのチェックは受けたはずだ」

「そうですわね……年頃になった貴族の子女なら必ず受けるものだから……」

「それで何の問題も無かったよな?」

「ええ。そう聞いておりますわ」

「身体的な問題がないとして、後はタイミングなどが関係してくるがそれも管理されているからクリアなはずだ」

「そうですわね」

「だとすれば考えられるのはあと一つ」

「それは……?」

アンジェリカは食い入るようにリカルドの言葉を待った。

「お互いの魔力の融合による弊害、だ」

「魔力の融合?それによる弊害が起きていると、リカルド様はお考えなのですか」

「うん」

そう頷いてから、リカルドは自身の考えを述べた。

リカルドは前々から一向に子が出来ない要因を独自に探していたらしい。

王宮内の図書室から始まり、王立図書館や文書室で古い文献や王家が所蔵する禁書まで、あらゆる書物に目を通して調べてみたという。

そしてその調べた事を王宮筆頭魔術師に見て貰い、助言を得た上で辿り着いた答えが、先ほどリカルドが口にした魔力融合の弊害という考えだ。

交合により、リカルドの魔力とアンジェリカの魔力が混ざり合う。

本来であればどちらか強い方の魔力により相殺されるのだが、一分いちぶんの差もなく全く同等レベルの魔力同士の場合、そうはならないらしい。

その拮抗する魔力同士が融合する事により新たな魔力が生み出され、それにより受精し難い状態に陥ってしまう場合があるそうなのだ。

寸分違わぬ魔力を持つ者同士が結ばれるなど、10000組に一組有るか無いか、それくらい稀な事であるらしい。

「で、では……一体どうすれば……やはりわたくしではリカルド様のお子は授かれないのでは……?」

「大丈夫。方法はあるよ」

「え?それは?」

「片方の魔力を高めて、均衡を崩せばいいんだよ」

「でも魔力を高めるのは簡単なようで実はとても難しい事なのでしょう?それなりの期間、魔力を高める鍛錬をしなくてはならないとか……」

そんな長い時間を費やしている内に子を産む年齢が過ぎてしまう。

アンジェリカの表情を汲み取ったリカルドが悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「居るじゃないかキミの母国に。相手の魔力を高めるも奪うも一瞬で出来てしまうお方が」

「え?……誰……?」

「実はもうキミのご両親に手紙を書いて、その方の協力を要請してるんだ。それで今日、お父君のハイラム王から返書が届いた。明日にでもサクッ☆と転移魔法で駆けつけてくれるそうだよ」

「え?お父様からの返書?サクッ☆と……って…だ、誰が来られるの……?」

アンジェリカはなんだか不安になった。


そして次の日。




「アンジェーー!僕が来たからにはもう心配いらないよ~☆」

「イ、イグリードおじさまっ!?」

リカルドの要請を受けハイラム王家から派遣されて来たのは、
西方大陸一の精霊魔術師と謳われる大賢者バルク=イグリードであった。

「話は聞いたよぉ~大変だったねアンジェ~」

おーいおいと涙するイグリードをアンジェリカは背中を摩って慰める。

「な、泣かないでおじさま……」


イグリードはかつて親友だったという、ひぃひぃひぃ祖母に瓜二つだというアンジェリカを“ジュリのマッスル遺伝子”と呼んで殊の外可愛がってくれた。

そしてイグリードの見立てでも、リカルドが言った通り魔力融合の弊害という事だった。

「いい?じゃあアンジェの魔力を爆上がりにしちゃうよ☆」

「え?わたくしを?リカルド様の魔力を上げる方が国の為になりますわ」

アンジェリカのその言葉にリカルドは首を振った。

「俺の魔力が上がっても大して変わりはないよ。それよりアンジェはこれから妊娠、出産と魔力も体力も大量に消費する事になるんだから、キミの魔力を高めて貰えるように頼んだんだ」

「リカルド様……」

「じゃあアンジェ、いくよ♪」

イグリードがそう言ってアンジェの手を握った途端に、二人は光に包まれた。

魔法陣も術式の詠唱も必要ない、相変わらず滅茶苦茶なお人だ。

「ハイOK!」

「「え?もう?」」

一瞬の出来事に、思わずリカルドと声を揃えて言ってしまう。

「もうこれでアンジェは結構な高魔力保持者だよ♪旦那が浮気したらぶっ飛ばしちゃえ☆」

イグリードの不吉な言葉にリカルドが苦笑する。

「しませんよ、浮気なんか」

そう。
側妃すら拒否したリカルドの事だ。
彼は絶対にアンジェリカを裏切るような真似はしない。

イグリードもそれが分かってての軽口であろう。

その後イグリードはローラント王宮のシェフ自慢のご馳走を全て平らげ、アンジェリカとカードゲームやボードゲームをして遊び倒してから、
「じゃあね~!アンジェリカルド~☆」と勝手に名前を一纏めにして機嫌よくハイラムへと戻って行った。

そしてその夜からリカルドはせっせとアンジェリカの寝所に通い……
(こうなる前からマメに通っていたそうだが)

見事ひと月で懐妊させたのであった。

懐妊を告げられた時、
アンジェリカもリカルドも思わず涙して互いに喜び合ったという。


そして十月十日、母体の中で羊水とたっぷりの魔力の中を漂った赤ん坊は……

立派なタマタマを携えて元気良く生まれて来たという。

待望の世継ぎの誕生である。


そうなればもう誰も側妃を持てとは言わなくなり、王と王妃は互いを唯一としていつまでも幸せに暮らしましたとさ。



           おしまい☆



あ、後宮の白百合の君たちも、そのまま誰に邪魔される事なく幸せに暮らしましたとさ。

こちらもめでたしめでたし☆

















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