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プロの雇用妻 (2)
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未亡人となった恋人と再会したと見られる夫のテオドア。
明らかに様子がおかしくなった事から二人の関係が再燃し、10年前に予測していた通りに元準男爵夫人となった元恋人と再婚する運びとなるのであろうと、クラリサは考えた。
テオドアは何も言ってはくれないが、おそらく今着々とその為の手続きを取っているのだろう。
魔術を施し、クラリサの目に触れないようにされた書類がテオドアの書斎に幾つもあるのがその証拠だと思う。
何も驚く事はない。
最初からそのつもりで持ちかけた雇用結婚なのだから。
雇用妻は不要となれば解雇出来る、他ならぬクラリサが提案した事だ。
なので何の不平も不満もない。
不平不満はない筈なのだが、
仮にも契約夫婦として10年も連れ添って来たのだから、ちゃんと話をして欲しかった。
今さらクラリサが解雇に応じないとでも思っているのか。
10年前にきちんと正規の契約書も交わしたのだから、無条件で解雇には応じるのに……クラリサは別の意味で寂しさを感じていた。
この10年、契約の上であったとしても、信頼を寄せ絆を深めてきたと思っていたのはクラリサだけだったのだろうか。
それは既に、愛情と呼ぶべき感情に変わっていたと思っていたのはクラリサだけだったというのか。
『女々しいわねクラリサ。こうなる事も想定していた事じゃない……』
クラリサは嘆息した。
そして自分に言い聞かせる。
いつ雇用妻を解雇されてもいいように準備はしておこう。
10年間で給金はかなり貯まっている。
そのお金で住む所や新しい生活を整える。
クラリサの中で、最後までプロの雇用妻として全うしようという決意が生まれた。
もちろん雇用主にアレコレ詰め寄って詮索する事はしない。
テオドアが元恋人と復縁したのは不貞でもなんでもないのだから。
それよりも来るべき解雇通告までに、クラリサにはやらなくてはならない事が山ほどある。
家政の引き継ぎはとりあえずメイド長にしておこう。
テオドアの真の妻となる人に、クラリサが指導する訳にはいかない。
あとの細々としたものは家令に。
嫡男の今後の教育の事や成長過程において気をつけてやって欲しい事は長年通って貰っている信頼出来る家庭教師に。
次男の事は義父母に。
後継者である長男と分け隔てなく育ててやって欲しい。
それらの事を、私用でしばらく実家に帰るので……という名目で先に伝えておくつもりだ。
いずれ分かる事だとしても、今の段階で他の者に真実を告げるべきではないと思うから。
末娘はまだ幼い事もあり、出来れば引き取りたい。
勤続年数により退職金は考慮するとあったので、金銭は要らないから末娘の親権が欲しいと頼んでみよう。
そこまで考えて、クラリサは胸の苦しさを感じた。
胸が苦しくて息が出来ない。
いやだ……本当は失いたくはない。
子爵夫人としての生活が、ではない。
愛する家族との幸せな暮らしを失うのが辛いのだ。
子ども達と、義父母と、屋敷の使用人達と、
そして……
なんて事だ。
雇用結婚を持ちかけたのは自分なのに、いつの間にかこんなにも手放し難き大切なものになってしまっている。
こうなる事は最初に予測していた、だからこそ給金を貰ってプロとして一線を画して来たというのに……
結局はなんの意味もなかったというのか……
でも、仕方のない事だ。
自分で選んだ事だ。
一体誰を責められようか。
解雇の理由が他の事なら謝罪して改善するなりそれなりの方法はある。
だけど元恋人と復縁し、正式な妻として迎えるという事であるならば本当にどうしようもない。
クラリサは最初の約束通りにここを出て行くだけである。
こんな千々に乱れた心のままテオドアと顔を合わせて、果たして正常でいられるだろうか……
しかしこのような時だからこそ、毅然とした態度を取らねばならない。
クラリサが情けない対応を見せれば、テオドアに迷惑を掛けてしまう。
この雇用結婚を持ち掛けたのはクラリサなのだから、きちんと最後まで雇用契約に基づいて対処する。
それが、プロの雇用妻としてのクラリサの矜持であった。
そうやっていつも通りを心掛けてテオドアと接しようと決めたというのに、家令からテオドアが三日ほど家に帰らない事を告げられる。
「所用の為に三日間王都に留まられるそうです」
「……そう。お忙しいのね」
王都には元準男爵夫人が亡夫より譲り受けた屋敷があるらしい。
そこに滞在するという事か……
次男が寂しそうな顔をして、母を見上げる。
「おかぁさま。おとぅさまはしばらくかえれないの?」
クラリサは優しく頭を撫でてやり、次男に答えた。
「お父様はね、お仕事でお忙しいのよ。お利口さんに待っていたらすぐに帰って来られますからね」
「うん!」
次男の嬉しそうな顔にクラリサも思わず微笑む。
子煩悩のテオドア。
子ども達の事は本当に愛してくれている。
クラリサが去った後も、きっと子ども達の事は大切にしてくれるだろう。
テオドアが戻った日、その日がきっとそうだろうとクラリサは覚悟した。
解雇通告を言い渡されるその日だと。
三日後、テオドアは少し疲れた顔をしつつもいつもと変わらない様子で帰って来た。
まるで憑き物が取れたようなスッキリとした様子でもあるような……
『私に雇用契約終了を告げられるのがそんなに清々する事なのかしら』
クラリサは少々やさぐれた気持ちでテオドアを見た。
しかしいつも通りに振る舞い、プロの妻としてきちんと応対する。
そうでもしないと感情の赴くままに行動してしまいそうだから。
着替えをすませたテオドアがクラリサに話があるから書斎に来てくれと言った。
『いよいよね』
クラリサは端的に返事をする。
「わかりました」
そしてテオドアの書斎のソファーに対面で座る。
クラリサは姿勢を正して真っ直ぐにテオドアを見た。
彼は緊張しているのだろうか。
お茶で口を湿らし、少し逡巡してからテオドアが話し出した。
「聡いキミの事だ。このところ俺が家の仕事以外で忙しくしていた事はわかっていたと思うが……」
やはりその話だ。
今まで思い悩み過ぎたクラリサ、いつもなら相手の話の途中に口を挟むような事は決してしない彼女だが、この時はついテオドアが言い終わる前に自分から話を切り出した。
「わかっています。未亡人となられた元準男爵夫人を正妻としてお迎えするにあたり、私との雇用契約を終了する旨のお話でしょう?」
わかっているから、ちゃんと応じるから皆まで言うなとクラリサは一気に告げた。
しかしテオドアは充分に間を空けてからひと言、その内容を理解出来ないと言わんばかりの声を発した。
「…………………は?」
「え?」
テオドアのその反応にクラリサは驚く。
あまりにも性急だっただろうか。
だけどテオドアの口から聞かされるよりは自分で告げた方がマシだと思ったのだ。
クラリサは構わず話を続けた。
「貴方の恋人であった方のご夫君が亡くなられ、未亡人になられた事は存じております。なので貴方は私達が取り決めた最初の計画通りにあの方を正式な妻に迎えたいのでしょう?だからこの雇用結婚を終了させたいと。大丈夫です、私の方は準備が出来ております。ここを出て新しく住む場所も見つけております。ただ退職金を頂けるなら金銭ではなく、まだ3歳の娘を残していくのは偲びないので、娘の親権を頂きたいのです。それさえ叶えば他には何も望みません。今夜息子達に話をきちんとして、明日には出て行きますから」
そこまで矢継ぎ早にクラリサは告げた。
テオドアはしばらくポカンと口を開いてクラリサの事を見ていて、やがて頭が取れるのではないかと心配になるくらいに首を横に振った。
「ち、違う!違う!違うっ!!
元恋人と結婚なんかしない!!俺の妻はお前だけだっ!!」
「?」
クラリサは訝しんだ。
何故わざわざそんな必死に否定するのだろう。
不貞だとか責めるつもりはないのだから、さっさと話を進めればいいものを。
「テオ、いいのよ。あの方に会うために時間を作って王都まで通っているのでしょう?現に三日も帰って来なかったし、本当は早くあの方をこの屋敷に妻としてお迎えしたいのよね……私はきちんと、解雇に応じますから……」
クラリサのその言葉に、テオドアは焦ったように告げた。
「違う!誤解だっ!!帰宅が遅かったり王都に滞在したのは、元恋人の虚偽を真っ向から突っぱねる証拠を揃える為に奔走していたからだっ!」
「……………………………え?」
今度はクラリサがたっぷりの間を空けて声を発した。
虚偽?証拠を揃える?
「どういうこと?」
クラリサが眉根を寄せて尋ねると、テオドアは情けなそうな顔をして事の顛末を話し出した。
今から二ヶ月ほど前、亡夫の喪がそろそろ明けようかという頃に元恋人から突然連絡が来たという。
亡き準男爵への弔意を伝えた後に、周囲の誤解を招く恐れもあるので個人的な連絡は止して欲しい、愛する妻に要らぬ心配をさせたくないのだと告げると、その元恋人の口からとんでもない言葉を投げかけられた。
なんと、元恋人が産んだ男児は本当はテオドアの子だというのだ。
そこまで聞き、クラリサは思わず「はぁっ!?」という声を上げてしまった。
それをテオドアは慌てて制す。
「待てリサ、待ってくれ、こめかみに青筋を立てるのは待ってくれ。最後まで話を聞いて欲しい」
あら青筋が立ってたのね…とクラリサは自身のこめかみを摩り、テオドアの説明を聞く事にした。
「俺と彼女は確かに恋人同士だった。そうだったが、極めて清い関係だったんだ。ガキだからイキがって“恋人”なんて呼んでたが、実際にはガールフレンドと言うべき存在だったんだ。神に誓ってもいい、とにかく俺は彼女と致した事はない。そんな記憶は一切ないっ」
「それならどうして先方は貴方の子どもだなんて言えるの?」
「それなんだよ……それがじつは……」
テオドアは確かに元恋人と致した覚えはない。
致した覚えがないのに、戯言だと突っぱねられなかったのは、あの時にと言われれば真っ向から否定できない出来事があったのだ。
それはかつて、つい悪ノリをして未成年であったにも関わらず、元恋人を含む幼馴染達と酒を呑んだ時の事だった。
テオドアは酒にとてつもなく弱く、ワインを二杯呑んだところで眠ってしまったのだ。
酔い潰れたテオドアを子爵家に連れ帰るわけにはいかない。
テオドアの他は皆平民で、未成年であった子爵令息に飲酒をさせた事を咎められるのを恐れた幼馴染達は困り果てたそうだ。
そしてやむを得ずその幼馴染達は、酒屋から一番近い距離にあったテオドアの元恋人の家に運んだらしい。
その後テオドアが目を覚ましたのは次の日の朝で、酒で酔い潰れるなんてカッコ悪い……とそれを黒歴史として封印する事にした。
しかしその時に実は関係を持ち、それにより妊娠してそのまま亡夫の後妻になったというのだ。
テオドアはまさかと思ったらしい。
どう考えてもその時に何かしたとは、いやグデングデンだったテオドアが致せたとは思えないのだ。
だが100%致してないとは言えない状況でもある。
なのでワトソン家の本当の嫡男はこの子だと言い張る元恋人の主張が真実か、テオドアは白黒ハッキリ付ける事にした。
その子どもとテオドアが事実親子であるのかどうかを明らかにするために秘密裏と、魔法親子鑑定を魔法省に依頼していたのだそうだ。
その為に何度も王都へ行ったり、帰りが遅くなったりしていたらしい。
そして結果が出るまではクラリサには何も話せないと思い、黙っていたと。
聡いクラリサに気取られるのを恐れて避けていた……と、いう訳なのだとテオドアは白状した。
クラリサは軽く頭痛を感じ、再びこめかみに手をやりながら訊いた。
「そ、それで……?結果はどうだったの?やはりその時致していて、テオドアの実子に間違いはなかったという事なの?」
テオドアはまた激しく首を横に振り、否定した。
「やはり俺の子ではなかった。そして当然、元恋人の体内からも俺の魔力片は見つからなかった」
魔力片とは他者の魔力が体内に入った後に消えずに残る魔力の欠片の事だ。
高魔力保持者の唾液や血液などの体液にも魔力が宿る。
そのため口付けや性交などをすると必ずその相手の体内には魔力片が残るのだ。
ましてや高魔力保持者の子を妊娠、出産したとなると、かなりの量の魔力片が残っている筈なのだという。
それが全くない、という事はテオドアと元恋人は口付けすらしていない清い関係であったと、法的に認められる事にもなる。
そんな相手の子を妊娠して産むなど、神にでもならない限り無理な話だ。
そして元恋人の子どもとテオドアの魔力は別ものであったという。
元恋人は、裕福な暮らしをする為に亡くなった準男爵の後妻になったものの、テオドアに対して10年間も未練タラタラだったらしい。
そして夫亡き後、なんとかしてテオドアと復縁をしたくて子どもの父親がテオドアであると嘘を吐いたのだそうだ。
子どもを理由に繋がられれば、きっとテオドアを手に入れられると、元恋人はそう思ったらしい。
嘘をつかれたテオドアは当然怒りを露わにして元恋人に正式な謝罪を要求した。
そうする事で本人にも周囲にも虚偽であった事を知らしめる事が出来る。
そして魔法省の魔法書士を介して厳重な抗議を入れた上で二度と連絡をして来ない事と接触禁止を認めさせた。
その諸々の手続きの為に、テオドアは三日間王都から出られなかったのだという……。
そこまで話を聞き、クラリサは驚きを隠せない様子でテオドアに確認した。
「テオ……貴方、本当にそれで良かったの?子どもの件は置いておくとしても、あれほど望んだ彼女との結婚を棒に振るような事をして……私ならちゃんと解雇に応じる覚悟は出来ているのよ……?」
そこまで言って、クラリサはまた胸の苦しみを感じた。
だって本当は別れたくない、それがクラリサの本心だから。
「リサ、あくまでもプロ妻として…というキミの意志を尊重して今まで敢えて何も言わなかったが、俺は最初からリサを雇用妻だと思って接した事はなかったよ」
「……え?」
「キミがどうしてもというから、形だけは雇用結婚として契約書も作成したが、俺の中ではあんなものは紙キレ同然の物だ。俺は最初から元恋人とヨリを戻すつもりなんてなかったし、リサと結婚すると決めた時からキミを本当の妻として迎えると決めていた。あの時もちゃんとそう言っただろう?」
確かに。一番初めにもテオドアはクラリサを妻として迎えると、ちゃんと結婚しようと言ってくれた。
それに彼は一度だって雇用結婚や雇用妻という単語を口にした事はない。
じゃあテオドアは最初からクラリサと生涯を共にするつもりで……?
何も言葉を発せずに一心に自身を見てくるクラリサに、テオドアは少し得意気な顔をして言う。
「リサ、俺は老衰であの世に旅立つときに、“終身雇用という名の幸せな結婚生活だっただろう?”と言って、キミに看取られながら死ぬつもりなんだぞ」
「……どうして私が看取る前提なのよ」
「いやどう考えてもリサの方が長生きするだろう」
今まで必死に堪えていたクラリサの涙が溢れ出た。
「ふ…ふふ……」
クラリサが泣き笑いになる。
ソファーの向かいに座っていたテオドアがクラリサの隣に座り直した。
そして涙を流すクラリサの顔を両手で包み、真剣でありながらも優しい眼差しを向けてくる。
「リサ。この10年、俺達は雇用関係なんかじゃなく、ちゃんと夫婦として絆を深めて一緒に生きてきたと思わないか?初めは打算的に結婚を決めた俺達だが、今ではどんな夫婦にも負けないくらいに互いを必要として愛し合っている……違うか?」
「違わない…違わないわ……」
「でも男の俺が、ちゃんと最初から堂々と口にし続ければ良かったんだよな。リサに結婚を辞めると言われるのが怖くて告げられなかったんだが、これからは毎日キミに想いを伝えるよ。リサ、キミを愛している。妻として嫁として母親として何事にも真摯に向き合うキミや、心根が強く優しいキミに、結婚して直ぐに惹かれた。以来10年、ずっとキミに恋をしている。キミへの想いに比べれば、元恋人への感情は友情に近いそれだったんだなぁとわかる。だからどうかリサ、これからはもう雇用妻ではなく本当の妻と認識して俺と共に生きて欲しい」
テオドアの口から次々と溢れる言葉を聞く度に、クラリサの涙がとめどなく流れてゆく。
こんなに嬉しい涙はない。
流した側から温もりが広がってゆくような、そんな温かい涙だった。
テオドアを愛してる。
それはクラリサの中でもずっとあった答えだ。
だけど自分は雇用妻だからと一歩引いて、敢えて気付かないふりをして来た。
もう、いいのだろか。
もう隠さなくても、知らないふりをしなくてもいいのだろうか。
気付けばクラリサはテオドアに抱きついていた。
「テオっ……!私も貴方が好きっ……自分のプライドの為だけに、傷付くのが怖くてプロの妻だなんて強がってきたけどもう無理。これからは本当の意味で貴方と夫婦になり、一緒に幸せになりたいっ……」
「……リサっ……」
テオドアがぎゅっと抱きしめ返してくれる。
夫の腕の中は温かくて心地よい。
酷く安心している自分を感じ、クラリサはゆっくりと目を閉じた。
共に暮らして10年、
その月日の分だけ確かな何かが二人の中にはある。
それは簡単に手放せるものでもなく、手放していいものでなかったとクラリサは知った。
こうなったら真の妻として、シワくちゃになるまでテオドアの側にいる。
そして彼が望むようにいずれはクラリサが看取ってあげよう。
クラリサは夫の名を呼んだ。
「テオ……」
「なに?」
「一緒に、一緒に長生きしましょうね」
そのクラリサの言葉を受け、テオドアが大きく破顔した。
その時の夫の嬉しそうな笑顔を、クラリサはきっと生涯忘れないだろう。
終わり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補足です。
プロの雇用妻を辞めたクラリサですが、テオドアはそのまま給金を支払い続けたそうです。
それがクラリサの個人資産となり、自分の身にもしもの事があってもクラリサが困らないからと。
この後クラリサは離婚後に住む為に借りていたアパートを解約しました。
その他にも短期間で解雇という名の離婚に備えて色々と準備を整え終わっていたクラリサの手腕に、テオドアは舌を巻いたそうです。
「そして、さすがはプロの妻、プロの子爵夫人だ。仕事に無駄がなく手抜かりがない」と苦笑しながら、絶対に離すもんかとしばらく寝室から出さなかったとか……。
当然ベッドから起き上がれない母を心配する子ども達には、風邪だと誤魔化すテオドア。
それから直ぐに四人目の子どもを授かったのは言うまでもない……ですね♡
明らかに様子がおかしくなった事から二人の関係が再燃し、10年前に予測していた通りに元準男爵夫人となった元恋人と再婚する運びとなるのであろうと、クラリサは考えた。
テオドアは何も言ってはくれないが、おそらく今着々とその為の手続きを取っているのだろう。
魔術を施し、クラリサの目に触れないようにされた書類がテオドアの書斎に幾つもあるのがその証拠だと思う。
何も驚く事はない。
最初からそのつもりで持ちかけた雇用結婚なのだから。
雇用妻は不要となれば解雇出来る、他ならぬクラリサが提案した事だ。
なので何の不平も不満もない。
不平不満はない筈なのだが、
仮にも契約夫婦として10年も連れ添って来たのだから、ちゃんと話をして欲しかった。
今さらクラリサが解雇に応じないとでも思っているのか。
10年前にきちんと正規の契約書も交わしたのだから、無条件で解雇には応じるのに……クラリサは別の意味で寂しさを感じていた。
この10年、契約の上であったとしても、信頼を寄せ絆を深めてきたと思っていたのはクラリサだけだったのだろうか。
それは既に、愛情と呼ぶべき感情に変わっていたと思っていたのはクラリサだけだったというのか。
『女々しいわねクラリサ。こうなる事も想定していた事じゃない……』
クラリサは嘆息した。
そして自分に言い聞かせる。
いつ雇用妻を解雇されてもいいように準備はしておこう。
10年間で給金はかなり貯まっている。
そのお金で住む所や新しい生活を整える。
クラリサの中で、最後までプロの雇用妻として全うしようという決意が生まれた。
もちろん雇用主にアレコレ詰め寄って詮索する事はしない。
テオドアが元恋人と復縁したのは不貞でもなんでもないのだから。
それよりも来るべき解雇通告までに、クラリサにはやらなくてはならない事が山ほどある。
家政の引き継ぎはとりあえずメイド長にしておこう。
テオドアの真の妻となる人に、クラリサが指導する訳にはいかない。
あとの細々としたものは家令に。
嫡男の今後の教育の事や成長過程において気をつけてやって欲しい事は長年通って貰っている信頼出来る家庭教師に。
次男の事は義父母に。
後継者である長男と分け隔てなく育ててやって欲しい。
それらの事を、私用でしばらく実家に帰るので……という名目で先に伝えておくつもりだ。
いずれ分かる事だとしても、今の段階で他の者に真実を告げるべきではないと思うから。
末娘はまだ幼い事もあり、出来れば引き取りたい。
勤続年数により退職金は考慮するとあったので、金銭は要らないから末娘の親権が欲しいと頼んでみよう。
そこまで考えて、クラリサは胸の苦しさを感じた。
胸が苦しくて息が出来ない。
いやだ……本当は失いたくはない。
子爵夫人としての生活が、ではない。
愛する家族との幸せな暮らしを失うのが辛いのだ。
子ども達と、義父母と、屋敷の使用人達と、
そして……
なんて事だ。
雇用結婚を持ちかけたのは自分なのに、いつの間にかこんなにも手放し難き大切なものになってしまっている。
こうなる事は最初に予測していた、だからこそ給金を貰ってプロとして一線を画して来たというのに……
結局はなんの意味もなかったというのか……
でも、仕方のない事だ。
自分で選んだ事だ。
一体誰を責められようか。
解雇の理由が他の事なら謝罪して改善するなりそれなりの方法はある。
だけど元恋人と復縁し、正式な妻として迎えるという事であるならば本当にどうしようもない。
クラリサは最初の約束通りにここを出て行くだけである。
こんな千々に乱れた心のままテオドアと顔を合わせて、果たして正常でいられるだろうか……
しかしこのような時だからこそ、毅然とした態度を取らねばならない。
クラリサが情けない対応を見せれば、テオドアに迷惑を掛けてしまう。
この雇用結婚を持ち掛けたのはクラリサなのだから、きちんと最後まで雇用契約に基づいて対処する。
それが、プロの雇用妻としてのクラリサの矜持であった。
そうやっていつも通りを心掛けてテオドアと接しようと決めたというのに、家令からテオドアが三日ほど家に帰らない事を告げられる。
「所用の為に三日間王都に留まられるそうです」
「……そう。お忙しいのね」
王都には元準男爵夫人が亡夫より譲り受けた屋敷があるらしい。
そこに滞在するという事か……
次男が寂しそうな顔をして、母を見上げる。
「おかぁさま。おとぅさまはしばらくかえれないの?」
クラリサは優しく頭を撫でてやり、次男に答えた。
「お父様はね、お仕事でお忙しいのよ。お利口さんに待っていたらすぐに帰って来られますからね」
「うん!」
次男の嬉しそうな顔にクラリサも思わず微笑む。
子煩悩のテオドア。
子ども達の事は本当に愛してくれている。
クラリサが去った後も、きっと子ども達の事は大切にしてくれるだろう。
テオドアが戻った日、その日がきっとそうだろうとクラリサは覚悟した。
解雇通告を言い渡されるその日だと。
三日後、テオドアは少し疲れた顔をしつつもいつもと変わらない様子で帰って来た。
まるで憑き物が取れたようなスッキリとした様子でもあるような……
『私に雇用契約終了を告げられるのがそんなに清々する事なのかしら』
クラリサは少々やさぐれた気持ちでテオドアを見た。
しかしいつも通りに振る舞い、プロの妻としてきちんと応対する。
そうでもしないと感情の赴くままに行動してしまいそうだから。
着替えをすませたテオドアがクラリサに話があるから書斎に来てくれと言った。
『いよいよね』
クラリサは端的に返事をする。
「わかりました」
そしてテオドアの書斎のソファーに対面で座る。
クラリサは姿勢を正して真っ直ぐにテオドアを見た。
彼は緊張しているのだろうか。
お茶で口を湿らし、少し逡巡してからテオドアが話し出した。
「聡いキミの事だ。このところ俺が家の仕事以外で忙しくしていた事はわかっていたと思うが……」
やはりその話だ。
今まで思い悩み過ぎたクラリサ、いつもなら相手の話の途中に口を挟むような事は決してしない彼女だが、この時はついテオドアが言い終わる前に自分から話を切り出した。
「わかっています。未亡人となられた元準男爵夫人を正妻としてお迎えするにあたり、私との雇用契約を終了する旨のお話でしょう?」
わかっているから、ちゃんと応じるから皆まで言うなとクラリサは一気に告げた。
しかしテオドアは充分に間を空けてからひと言、その内容を理解出来ないと言わんばかりの声を発した。
「…………………は?」
「え?」
テオドアのその反応にクラリサは驚く。
あまりにも性急だっただろうか。
だけどテオドアの口から聞かされるよりは自分で告げた方がマシだと思ったのだ。
クラリサは構わず話を続けた。
「貴方の恋人であった方のご夫君が亡くなられ、未亡人になられた事は存じております。なので貴方は私達が取り決めた最初の計画通りにあの方を正式な妻に迎えたいのでしょう?だからこの雇用結婚を終了させたいと。大丈夫です、私の方は準備が出来ております。ここを出て新しく住む場所も見つけております。ただ退職金を頂けるなら金銭ではなく、まだ3歳の娘を残していくのは偲びないので、娘の親権を頂きたいのです。それさえ叶えば他には何も望みません。今夜息子達に話をきちんとして、明日には出て行きますから」
そこまで矢継ぎ早にクラリサは告げた。
テオドアはしばらくポカンと口を開いてクラリサの事を見ていて、やがて頭が取れるのではないかと心配になるくらいに首を横に振った。
「ち、違う!違う!違うっ!!
元恋人と結婚なんかしない!!俺の妻はお前だけだっ!!」
「?」
クラリサは訝しんだ。
何故わざわざそんな必死に否定するのだろう。
不貞だとか責めるつもりはないのだから、さっさと話を進めればいいものを。
「テオ、いいのよ。あの方に会うために時間を作って王都まで通っているのでしょう?現に三日も帰って来なかったし、本当は早くあの方をこの屋敷に妻としてお迎えしたいのよね……私はきちんと、解雇に応じますから……」
クラリサのその言葉に、テオドアは焦ったように告げた。
「違う!誤解だっ!!帰宅が遅かったり王都に滞在したのは、元恋人の虚偽を真っ向から突っぱねる証拠を揃える為に奔走していたからだっ!」
「……………………………え?」
今度はクラリサがたっぷりの間を空けて声を発した。
虚偽?証拠を揃える?
「どういうこと?」
クラリサが眉根を寄せて尋ねると、テオドアは情けなそうな顔をして事の顛末を話し出した。
今から二ヶ月ほど前、亡夫の喪がそろそろ明けようかという頃に元恋人から突然連絡が来たという。
亡き準男爵への弔意を伝えた後に、周囲の誤解を招く恐れもあるので個人的な連絡は止して欲しい、愛する妻に要らぬ心配をさせたくないのだと告げると、その元恋人の口からとんでもない言葉を投げかけられた。
なんと、元恋人が産んだ男児は本当はテオドアの子だというのだ。
そこまで聞き、クラリサは思わず「はぁっ!?」という声を上げてしまった。
それをテオドアは慌てて制す。
「待てリサ、待ってくれ、こめかみに青筋を立てるのは待ってくれ。最後まで話を聞いて欲しい」
あら青筋が立ってたのね…とクラリサは自身のこめかみを摩り、テオドアの説明を聞く事にした。
「俺と彼女は確かに恋人同士だった。そうだったが、極めて清い関係だったんだ。ガキだからイキがって“恋人”なんて呼んでたが、実際にはガールフレンドと言うべき存在だったんだ。神に誓ってもいい、とにかく俺は彼女と致した事はない。そんな記憶は一切ないっ」
「それならどうして先方は貴方の子どもだなんて言えるの?」
「それなんだよ……それがじつは……」
テオドアは確かに元恋人と致した覚えはない。
致した覚えがないのに、戯言だと突っぱねられなかったのは、あの時にと言われれば真っ向から否定できない出来事があったのだ。
それはかつて、つい悪ノリをして未成年であったにも関わらず、元恋人を含む幼馴染達と酒を呑んだ時の事だった。
テオドアは酒にとてつもなく弱く、ワインを二杯呑んだところで眠ってしまったのだ。
酔い潰れたテオドアを子爵家に連れ帰るわけにはいかない。
テオドアの他は皆平民で、未成年であった子爵令息に飲酒をさせた事を咎められるのを恐れた幼馴染達は困り果てたそうだ。
そしてやむを得ずその幼馴染達は、酒屋から一番近い距離にあったテオドアの元恋人の家に運んだらしい。
その後テオドアが目を覚ましたのは次の日の朝で、酒で酔い潰れるなんてカッコ悪い……とそれを黒歴史として封印する事にした。
しかしその時に実は関係を持ち、それにより妊娠してそのまま亡夫の後妻になったというのだ。
テオドアはまさかと思ったらしい。
どう考えてもその時に何かしたとは、いやグデングデンだったテオドアが致せたとは思えないのだ。
だが100%致してないとは言えない状況でもある。
なのでワトソン家の本当の嫡男はこの子だと言い張る元恋人の主張が真実か、テオドアは白黒ハッキリ付ける事にした。
その子どもとテオドアが事実親子であるのかどうかを明らかにするために秘密裏と、魔法親子鑑定を魔法省に依頼していたのだそうだ。
その為に何度も王都へ行ったり、帰りが遅くなったりしていたらしい。
そして結果が出るまではクラリサには何も話せないと思い、黙っていたと。
聡いクラリサに気取られるのを恐れて避けていた……と、いう訳なのだとテオドアは白状した。
クラリサは軽く頭痛を感じ、再びこめかみに手をやりながら訊いた。
「そ、それで……?結果はどうだったの?やはりその時致していて、テオドアの実子に間違いはなかったという事なの?」
テオドアはまた激しく首を横に振り、否定した。
「やはり俺の子ではなかった。そして当然、元恋人の体内からも俺の魔力片は見つからなかった」
魔力片とは他者の魔力が体内に入った後に消えずに残る魔力の欠片の事だ。
高魔力保持者の唾液や血液などの体液にも魔力が宿る。
そのため口付けや性交などをすると必ずその相手の体内には魔力片が残るのだ。
ましてや高魔力保持者の子を妊娠、出産したとなると、かなりの量の魔力片が残っている筈なのだという。
それが全くない、という事はテオドアと元恋人は口付けすらしていない清い関係であったと、法的に認められる事にもなる。
そんな相手の子を妊娠して産むなど、神にでもならない限り無理な話だ。
そして元恋人の子どもとテオドアの魔力は別ものであったという。
元恋人は、裕福な暮らしをする為に亡くなった準男爵の後妻になったものの、テオドアに対して10年間も未練タラタラだったらしい。
そして夫亡き後、なんとかしてテオドアと復縁をしたくて子どもの父親がテオドアであると嘘を吐いたのだそうだ。
子どもを理由に繋がられれば、きっとテオドアを手に入れられると、元恋人はそう思ったらしい。
嘘をつかれたテオドアは当然怒りを露わにして元恋人に正式な謝罪を要求した。
そうする事で本人にも周囲にも虚偽であった事を知らしめる事が出来る。
そして魔法省の魔法書士を介して厳重な抗議を入れた上で二度と連絡をして来ない事と接触禁止を認めさせた。
その諸々の手続きの為に、テオドアは三日間王都から出られなかったのだという……。
そこまで話を聞き、クラリサは驚きを隠せない様子でテオドアに確認した。
「テオ……貴方、本当にそれで良かったの?子どもの件は置いておくとしても、あれほど望んだ彼女との結婚を棒に振るような事をして……私ならちゃんと解雇に応じる覚悟は出来ているのよ……?」
そこまで言って、クラリサはまた胸の苦しみを感じた。
だって本当は別れたくない、それがクラリサの本心だから。
「リサ、あくまでもプロ妻として…というキミの意志を尊重して今まで敢えて何も言わなかったが、俺は最初からリサを雇用妻だと思って接した事はなかったよ」
「……え?」
「キミがどうしてもというから、形だけは雇用結婚として契約書も作成したが、俺の中ではあんなものは紙キレ同然の物だ。俺は最初から元恋人とヨリを戻すつもりなんてなかったし、リサと結婚すると決めた時からキミを本当の妻として迎えると決めていた。あの時もちゃんとそう言っただろう?」
確かに。一番初めにもテオドアはクラリサを妻として迎えると、ちゃんと結婚しようと言ってくれた。
それに彼は一度だって雇用結婚や雇用妻という単語を口にした事はない。
じゃあテオドアは最初からクラリサと生涯を共にするつもりで……?
何も言葉を発せずに一心に自身を見てくるクラリサに、テオドアは少し得意気な顔をして言う。
「リサ、俺は老衰であの世に旅立つときに、“終身雇用という名の幸せな結婚生活だっただろう?”と言って、キミに看取られながら死ぬつもりなんだぞ」
「……どうして私が看取る前提なのよ」
「いやどう考えてもリサの方が長生きするだろう」
今まで必死に堪えていたクラリサの涙が溢れ出た。
「ふ…ふふ……」
クラリサが泣き笑いになる。
ソファーの向かいに座っていたテオドアがクラリサの隣に座り直した。
そして涙を流すクラリサの顔を両手で包み、真剣でありながらも優しい眼差しを向けてくる。
「リサ。この10年、俺達は雇用関係なんかじゃなく、ちゃんと夫婦として絆を深めて一緒に生きてきたと思わないか?初めは打算的に結婚を決めた俺達だが、今ではどんな夫婦にも負けないくらいに互いを必要として愛し合っている……違うか?」
「違わない…違わないわ……」
「でも男の俺が、ちゃんと最初から堂々と口にし続ければ良かったんだよな。リサに結婚を辞めると言われるのが怖くて告げられなかったんだが、これからは毎日キミに想いを伝えるよ。リサ、キミを愛している。妻として嫁として母親として何事にも真摯に向き合うキミや、心根が強く優しいキミに、結婚して直ぐに惹かれた。以来10年、ずっとキミに恋をしている。キミへの想いに比べれば、元恋人への感情は友情に近いそれだったんだなぁとわかる。だからどうかリサ、これからはもう雇用妻ではなく本当の妻と認識して俺と共に生きて欲しい」
テオドアの口から次々と溢れる言葉を聞く度に、クラリサの涙がとめどなく流れてゆく。
こんなに嬉しい涙はない。
流した側から温もりが広がってゆくような、そんな温かい涙だった。
テオドアを愛してる。
それはクラリサの中でもずっとあった答えだ。
だけど自分は雇用妻だからと一歩引いて、敢えて気付かないふりをして来た。
もう、いいのだろか。
もう隠さなくても、知らないふりをしなくてもいいのだろうか。
気付けばクラリサはテオドアに抱きついていた。
「テオっ……!私も貴方が好きっ……自分のプライドの為だけに、傷付くのが怖くてプロの妻だなんて強がってきたけどもう無理。これからは本当の意味で貴方と夫婦になり、一緒に幸せになりたいっ……」
「……リサっ……」
テオドアがぎゅっと抱きしめ返してくれる。
夫の腕の中は温かくて心地よい。
酷く安心している自分を感じ、クラリサはゆっくりと目を閉じた。
共に暮らして10年、
その月日の分だけ確かな何かが二人の中にはある。
それは簡単に手放せるものでもなく、手放していいものでなかったとクラリサは知った。
こうなったら真の妻として、シワくちゃになるまでテオドアの側にいる。
そして彼が望むようにいずれはクラリサが看取ってあげよう。
クラリサは夫の名を呼んだ。
「テオ……」
「なに?」
「一緒に、一緒に長生きしましょうね」
そのクラリサの言葉を受け、テオドアが大きく破顔した。
その時の夫の嬉しそうな笑顔を、クラリサはきっと生涯忘れないだろう。
終わり
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補足です。
プロの雇用妻を辞めたクラリサですが、テオドアはそのまま給金を支払い続けたそうです。
それがクラリサの個人資産となり、自分の身にもしもの事があってもクラリサが困らないからと。
この後クラリサは離婚後に住む為に借りていたアパートを解約しました。
その他にも短期間で解雇という名の離婚に備えて色々と準備を整え終わっていたクラリサの手腕に、テオドアは舌を巻いたそうです。
「そして、さすがはプロの妻、プロの子爵夫人だ。仕事に無駄がなく手抜かりがない」と苦笑しながら、絶対に離すもんかとしばらく寝室から出さなかったとか……。
当然ベッドから起き上がれない母を心配する子ども達には、風邪だと誤魔化すテオドア。
それから直ぐに四人目の子どもを授かったのは言うまでもない……ですね♡
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(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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