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閑話 ラビニアのつぶやき 〜ある日、王女は魅了という魔法を知った〜
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わたくしの名前はラビニア。
この国の王様の娘で王女という恵まれた立場に生まれたわ。
まぁお母様は第三側妃とかいうパッとしない地位だったけど、それでも国王の寵愛を一身に受けた恵まれた立場の人間だったそうよ。
流行り病で儚くなってしまったけど、幼くして母親を亡くしたわたくしをお父様は哀れんでより一層可愛がってくださったの。
わたくしが亡きお母様に生き写しと言われるくらい美しく生まれたのも余計にお父様の溺愛に拍車をかけたようだけど。
綺麗なドレスも美しい宝石も美味しい食べ物も、欲しいものは何でも買って貰えたわ。
そしてわたくしに仕える人間も全て、お父様はわたくしが望むように与えてくださったの。
年頃になって素敵な男性に興味を持ちはじめたらすぐに周りの騎士や侍従を見目の良い若い男性に変えてもくれたし。
全員に貞操帯の着用義務を強いたらしいけど、それは王女であるわたくしと接するのであればとうぜんの処置ね。
お父様が過剰に心配されるのもわかるわ。
でもそうまでしてわたくしの希望を叶えてくれるお父様が大好きよ。
ええ、わたくしは本当に幸せな女の子だわ。
間違いなく大陸中のどの国の王女よりも恵まれているんじゃないかしら?
だからわたくしはこの生活を、わたくしの幸せな世界がいつまでも続くことを望んだの。
結婚なんかしてはこの幸せが壊れてしまうかもしれないでしょう?
お父様のことだから、とても裕福で優しい殿方を見つけてくださるとは思うけれど、うんと年上かもしれないし、見た目はイマイチな方かもしれない。
幼い頃から常に美しいものに囲まれて育ったわたくしの美意識を満足させる容姿の方と結婚出来るなんて限らないもの。
だからわたくし、ある日お父様にお願いしたの。
一生どこにも嫁がずこの国で、この王宮で暮らしたいと。
でもここにきて初めて、お父様はわたくしのお願いを叶えてはくださらなかった。
王女として婚姻は義務だとおっしゃるの。
そしてお父様の御世がいつまでも続くわけではないとも。
いずれお父様が退位され、異母弟であるアルマールが即位したら、わたくしの居場所は無くなるとお父様はおっしゃったわ。
なぜ?どうしてそのようなことを言うの?
アルマールが国王になったとしても、わたくしが王族であることは変わらないわ。
でも何度お願いしてもお父様はわたくしの望みに対し、首を縦に振ってはくださらなかった。
今までどんなお願いも聞いてくださったのに。
どうしてなの?
わたくしは訳がわからず、侍従や侍女に聞いてみたの。
そうしたら誰もが国王の心情を汲み取るなんて畏れ多い事はできないと言うのよ。おかしいわよね。
王様だから?尊い存在である王族だから人とは違う考えなのかしら。
それは確かにそうかもしれないわ。
わたくしの考えを、身分の低い賎しい者たちに理解できるとは思わないもの。
では王族の事を訊くにはどうしたらいいの?と年若い文官に訊ねてみたら、王家が所有する書物の中になら、その答えがあるかもしれないと言ったの。
だからわたくしはお勉強と称してお父様に蔵書庫の鍵を借りたわ。
そして役に立ちそうな書物を探した。
そこで鍵を掛けられた大きな本を数冊、見つけたの。
鍵を掛けてあるくらいだからきっと良いことが書かれているに違いないと思い、その鍵を開いて中を読んでみたら、それはカビの生えそうなほど古い魔法ばかりが記されていた魔導書だった。
その中でわたくしは答えを見つけたのよ。
“魅了魔法”
魔法でわたくしのことを好きという気持ちを植え付けて、お願いを何でもきいて貰える素敵な魔法。
わたくしは魔力量は少ないけれど、それでも魔導学は王女として一流の先生に学んできたのよ?
この魔導書に従い、術を扱うなんて容易いことだわ。
まずは魔法生物と契約ね、もちろん契約するわ。
そしてその魔法生物を使役して魅了魔法を発動させるのね。
あら、その魔法生物に支払う対価がいるの?それは何かしら?
金品?宝石?……えぇと……
まぁ!血液か臓器ですって?
なんて恐ろしい……!野蛮だわ。でも魔法生物だもの、そういうものなのでしょう。
本には大概の術者が二つある臓器や部位を差し出すと書いてあるわ。
たとえば肺、腎臓、卵巣、眼球、腕、足、耳……
支払う部位によって対価の価値が変わり、魔法の質が上がるのね……。
でも、必ずしも契約者本人の体の一部てなくとも良い、とも書いてあるわ。
魔法生物を召喚する際には契約者の微量の血液を要するとあるけれど、そのくらいは許容範囲ね。
ふふ。わたくしは王女よ。
わたくしの変わりに自分の体を差し出す者はいくらでもいるわ。
そうねぇ、まずは乳母の体を差し出しましょう。
その後、もし見つからなければ侍女や下男を魅了にかけて従わせればよいのよ。
魅了を手に入れたらまずはお父様に掛けるの。
もともとがわたくしの事が大好きなお父様だもの。
きっともっとわたくしの事を好きになって、ずっと側に置いてくれるわ。
わたくしは結婚なんてしない。
ずっとこの国で、お気に入りのドレスや装飾品や素敵な男性に囲まれて思うままに暮らすの。
だって素敵な男性がいっぱい居るのよ?
夫なんてたった一人に縛られるのは嫌だし、誰か一人だけなんて選べないしつまらないもの。
わたくしはわたくしの幸せな世界をもっともっと広げるの。
そして誰よりも幸せな人生を送るのよ。
────────────────────
そして王女は魅了に手を出した…と。
今日はもう一話ありまーす。
この国の王様の娘で王女という恵まれた立場に生まれたわ。
まぁお母様は第三側妃とかいうパッとしない地位だったけど、それでも国王の寵愛を一身に受けた恵まれた立場の人間だったそうよ。
流行り病で儚くなってしまったけど、幼くして母親を亡くしたわたくしをお父様は哀れんでより一層可愛がってくださったの。
わたくしが亡きお母様に生き写しと言われるくらい美しく生まれたのも余計にお父様の溺愛に拍車をかけたようだけど。
綺麗なドレスも美しい宝石も美味しい食べ物も、欲しいものは何でも買って貰えたわ。
そしてわたくしに仕える人間も全て、お父様はわたくしが望むように与えてくださったの。
年頃になって素敵な男性に興味を持ちはじめたらすぐに周りの騎士や侍従を見目の良い若い男性に変えてもくれたし。
全員に貞操帯の着用義務を強いたらしいけど、それは王女であるわたくしと接するのであればとうぜんの処置ね。
お父様が過剰に心配されるのもわかるわ。
でもそうまでしてわたくしの希望を叶えてくれるお父様が大好きよ。
ええ、わたくしは本当に幸せな女の子だわ。
間違いなく大陸中のどの国の王女よりも恵まれているんじゃないかしら?
だからわたくしはこの生活を、わたくしの幸せな世界がいつまでも続くことを望んだの。
結婚なんかしてはこの幸せが壊れてしまうかもしれないでしょう?
お父様のことだから、とても裕福で優しい殿方を見つけてくださるとは思うけれど、うんと年上かもしれないし、見た目はイマイチな方かもしれない。
幼い頃から常に美しいものに囲まれて育ったわたくしの美意識を満足させる容姿の方と結婚出来るなんて限らないもの。
だからわたくし、ある日お父様にお願いしたの。
一生どこにも嫁がずこの国で、この王宮で暮らしたいと。
でもここにきて初めて、お父様はわたくしのお願いを叶えてはくださらなかった。
王女として婚姻は義務だとおっしゃるの。
そしてお父様の御世がいつまでも続くわけではないとも。
いずれお父様が退位され、異母弟であるアルマールが即位したら、わたくしの居場所は無くなるとお父様はおっしゃったわ。
なぜ?どうしてそのようなことを言うの?
アルマールが国王になったとしても、わたくしが王族であることは変わらないわ。
でも何度お願いしてもお父様はわたくしの望みに対し、首を縦に振ってはくださらなかった。
今までどんなお願いも聞いてくださったのに。
どうしてなの?
わたくしは訳がわからず、侍従や侍女に聞いてみたの。
そうしたら誰もが国王の心情を汲み取るなんて畏れ多い事はできないと言うのよ。おかしいわよね。
王様だから?尊い存在である王族だから人とは違う考えなのかしら。
それは確かにそうかもしれないわ。
わたくしの考えを、身分の低い賎しい者たちに理解できるとは思わないもの。
では王族の事を訊くにはどうしたらいいの?と年若い文官に訊ねてみたら、王家が所有する書物の中になら、その答えがあるかもしれないと言ったの。
だからわたくしはお勉強と称してお父様に蔵書庫の鍵を借りたわ。
そして役に立ちそうな書物を探した。
そこで鍵を掛けられた大きな本を数冊、見つけたの。
鍵を掛けてあるくらいだからきっと良いことが書かれているに違いないと思い、その鍵を開いて中を読んでみたら、それはカビの生えそうなほど古い魔法ばかりが記されていた魔導書だった。
その中でわたくしは答えを見つけたのよ。
“魅了魔法”
魔法でわたくしのことを好きという気持ちを植え付けて、お願いを何でもきいて貰える素敵な魔法。
わたくしは魔力量は少ないけれど、それでも魔導学は王女として一流の先生に学んできたのよ?
この魔導書に従い、術を扱うなんて容易いことだわ。
まずは魔法生物と契約ね、もちろん契約するわ。
そしてその魔法生物を使役して魅了魔法を発動させるのね。
あら、その魔法生物に支払う対価がいるの?それは何かしら?
金品?宝石?……えぇと……
まぁ!血液か臓器ですって?
なんて恐ろしい……!野蛮だわ。でも魔法生物だもの、そういうものなのでしょう。
本には大概の術者が二つある臓器や部位を差し出すと書いてあるわ。
たとえば肺、腎臓、卵巣、眼球、腕、足、耳……
支払う部位によって対価の価値が変わり、魔法の質が上がるのね……。
でも、必ずしも契約者本人の体の一部てなくとも良い、とも書いてあるわ。
魔法生物を召喚する際には契約者の微量の血液を要するとあるけれど、そのくらいは許容範囲ね。
ふふ。わたくしは王女よ。
わたくしの変わりに自分の体を差し出す者はいくらでもいるわ。
そうねぇ、まずは乳母の体を差し出しましょう。
その後、もし見つからなければ侍女や下男を魅了にかけて従わせればよいのよ。
魅了を手に入れたらまずはお父様に掛けるの。
もともとがわたくしの事が大好きなお父様だもの。
きっともっとわたくしの事を好きになって、ずっと側に置いてくれるわ。
わたくしは結婚なんてしない。
ずっとこの国で、お気に入りのドレスや装飾品や素敵な男性に囲まれて思うままに暮らすの。
だって素敵な男性がいっぱい居るのよ?
夫なんてたった一人に縛られるのは嫌だし、誰か一人だけなんて選べないしつまらないもの。
わたくしはわたくしの幸せな世界をもっともっと広げるの。
そして誰よりも幸せな人生を送るのよ。
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そして王女は魅了に手を出した…と。
今日はもう一話ありまーす。
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