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プロローグ 都合のいい妻

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夫となる人に毎週必ず逢瀬に通う女性がいると承知で嫁いだのだ。

覚悟の上だ。
というより最初から全てを諦めていた。

夫婦として、妻として、彼の唯一の存在となることを。
愛されることを。

私が彼の伴侶にと選ばれたのは魔術師団での働きぶりを認められたからだろう。

言葉足らずで人間嫌いの彼の面倒を見れる、無駄に察しがよく都合のいい女。
だから私が選ばれた。
それだけのこと。

それならば、妻は私でなくてもいいだろう。

私はもう、
耐えられそうにない。

あの美しい庭であの美しい女性と共にいる、彼の姿を見てしまったから。

私はきっと、彼にとっては押し付けられただけの都合のよい妻。

二人の間に割り込んだ邪魔な女。


それでも私が、魔術機械人形オートマタのように無感情で従順なだけの女であったのなら、ずっと彼の傍にいられたのだろう。

だけど私は人形じゃない。

一緒に暮らすうちに、いつしか彼に対し抱いてははいけない感情を抱いてしまったから。
彼を愛してしまったから。

だから、だからもう……


終わりにしたい。

都合のよい妻という役割を、終えたい……。




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