嘘コクのゆくえ

キムラましゅろう

文字の大きさ
上 下
4 / 13

馬車でお迎え

しおりを挟む
わたしの朝は早い。
公園に自生する朝露滴る植物を採取する為だ。

今朝の狙いはタンポポ。
葉はサラダに。根はコーヒーに。
タンポポの根を綺麗に洗い、乾燥させてフライパンで焙煎する。
(熱源は自分の魔力で!魔術って素晴らしい)
それを普通のコーヒーと同じようにドリップして飲むのだ。
脳内でこれはコーヒーと変換すればちゃんとコーヒーとして美味しい。
ノンカフェインで体にもいいしね。

葉は帰ってすぐに洗ってしばらく水に浸してアク抜きをする。
それからサッと湯掻いてボイルドサラダにするのだ。
これを肉屋さんで値切りに値切った見切り品のベーコンと一緒に食べると、ベーコンの塩気と脂で美味しく戴ける。

朝はちゃんと食べないとね。
授業が頭に入らなくなって困るから。

それから姉のお古の制服を着て登校する。
奨学生の為に国が無料で貸してくれているアパートを出ると、一台の馬車が停まっているのに気付いた。

このエリアではあまり見ない立派な馬車を見て、珍しい事もあるもんだとその横を通り過ぎようとした時、徐に馬車の扉が開いた。
そしてその中から顔を出したのは……

「おはよう、アニー」

「えっ?ハ、ハミルトンさん?」

それはなんとロンド=ハミルトンだった。

「どうしてこんな所に?」

わたしが素朴に思った疑問を口にすると、ロンドは少し困ったような顔をして答えた。

「どうしてって、恋人を迎えに来ただけだよ。一緒に登校しよう」

え?何のために?
という言葉が口から出かけたけれど、とりあえずはおつき合いをしているという形なんだからそういうものなのだろうと思い、その言葉をのみ込んだ。

「ありがとうハミルトンさん」

わたしはそう言って、彼が差し伸べてくれていた手を取る。
ロンドのエスコートで馬車に乗って着席すると、ほどなくして馬車は動き始めた。

「とても楽チンね。ハミルトンさんはいつもこうやって歴代の恋人たちと登校していたの?」

これまた素朴に思った疑問をロンドにぶつけると、彼は何やら意味ありげな表情を浮かべて言った。

「歴代の彼女なんていないよ。個人としての付き合いはアニーが初めてだ」

嘘でしょう?あんなに男女問わず周りに侍らかしておいて?
あ、“個人として”という事は複数人と同時におつき合いをしていた、という意味なのかも。

ふむふむそうかと一人勝手に納得しているわたしに、ロンドが言う。

「呼び方が戻ってるんだけど」

「へ?」

「呼び方がハミルトンになってる。ロンドと呼んで欲しいと言ったよな?」

「あー……いや、わたしがそう呼ぶのはおかしいかなーなんて」

「アニーが呼んでおかしいなら家族以外、他の誰も呼べなくなるぞ?」

「えー……だってほら、ねぇ?」

「わけが分からない。とにかくファミリーネームで呼ぶのは禁止、分かった?」

「わ、わかった」

ロンドにしては珍しく強めに言われて、わたしは頷くしかなかった。

そうこうしているうちに学校に着き、
わたしたちはまた好奇と嫉妬と奇怪な目線に晒される。

朝イチはキツいけど、ロンドと朝バシャなんて貴重な経験をしたな~と心のロンドメモリアルに記録しておいた。




───────────────────────




しばらくは小刻みな朝・夜投稿となります。

という事は?

明日の朝、投稿ありまーす!

よろしくお願いします(´>∀<`)ゝ

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

【完結】貴方を愛するつもりはないは 私から

Mimi
恋愛
結婚初夜、旦那様は仰いました。 「君とは白い結婚だ!」 その後、 「お前を愛するつもりはない」と、 続けられるのかと私は思っていたのですが…。 16歳の幼妻と7歳年上23歳の旦那様のお話です。 メインは旦那様です。 1話1000字くらいで短めです。 『俺はずっと片想いを続けるだけ』を引き続き お読みいただけますようお願い致します。 (1ヶ月後のお話になります) 注意  貴族階級のお話ですが、言葉使いが…です。  許せない御方いらっしゃると思います。  申し訳ありません🙇💦💦  見逃していただけますと幸いです。 R15 保険です。 また、好物で書きました。 短いので軽く読めます。 どうぞよろしくお願い致します! *『俺はずっと片想いを続けるだけ』の タイトルでベリーズカフェ様にも公開しています (若干の加筆改訂あります)

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。 スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。 そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。 捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。

夜会で婚約破棄……復讐が待っている

岡暁舟
恋愛
夜会で婚約者である第一王子スミスから婚約破棄を宣言された少女クリス。人生のどん底に突き落とされたクリスが出会ったのは「白馬の王子様」であるロベルトだった。復讐劇が始まる。 ロベルト視点から描いています。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

処理中です...